有価証券報告書-第47期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2020/06/26 16:48
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156項目

事業等のリスク

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 法的規制について
当社グループ国内企業の事業は、「薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)」及びそれに関連する厚生労働省令等による諸規制を受けております。前臨床事業においては、実験動物の調達にあたって、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」、動物の輸入届出制度等による諸規制を受け、試験実施施設は「医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準」(GLP)に基づく各省庁の専門査察官による定期調査(試験施設のGLP適合性確認のための調査)の対象となっております。臨床事業においては、「医薬品の臨床試験の実施の基準」(GCP)を厳格に遵守して臨床試験を実施することが義務付けられております。
また、当社グループの在外企業においては、国内と同様に所在する各国における関連法律・制度による諸規制を受けております。
当社グループの事業において、何らかの要因によりこれらの諸規制に抵触する事象が生じた場合には、事業展開に支障が生じる可能性があります。この場合、当社グループに対する製薬企業や医療機関等からの信頼が損なわれ、受託試験が中止あるいは削減され、その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
② 製薬業界の動向による影響について
当社グループは、製薬企業等の委託を受け前臨床及び臨床試験を行っております。このため、当社グループの経営成績は、製薬業界の研究開発活動並びに前臨床及び臨床試験等の動向に大きな影響を受けております。
日本、米国、欧州における前臨床及び臨床試験データは、新薬の承認申請において相互に利用することが可能になってきており、近年においては国内大手製薬企業が海外において前臨床、臨床試験を行うケースが増加する傾向にあります。また、近年、製薬業界は研究開発における新薬開発競争力の強化を狙いとして合併・再編が進められており、わが国の製薬企業等の研究開発能力は、欧米大手製薬企業との規模の格差に起因して、相対的に低下していく可能性があります。
そうした中で、当社グループは国内においてもFDA(米国食品医薬品局)査察をはじめとする海外のGLP法令に対応可能な試験施設としての要件を備えるなど、成長性のある欧米市場の需要を取り込む体制を構築しております。
加えて、将来の市場拡大を見据えた中国における前臨床試験施設の立ち上げその他により、アジア地域を含めたグローバル展開の強化も推進していく方針であります。
しかしながら、世界的に製薬業界における前臨床・臨床試験に対する取り組みに変化が生じた場合、また当社グループが製薬業界の変化に対して十分な対応が出来ない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 自然災害等による影響について
当社グループは、国内に加えて米国、中国等に事業所を保有し、そのうち現地法規制に適合した研究施設において、前臨床試験の受託業務を行っております。
これらの地域における台風、地震、火災など大型の自然災害の発生・罹災や伝染病の流行等により、施設・機器の損壊及び従業員の就業状況に支障を来たす事態が生じた場合には、予定していた受託試験の実施スケジュールの変更を余儀なくされます。その結果、施設の稼働率低下、収益計上時期のずれ込み、施設の補修等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 前臨床事業に係るリスク要因について
(a) 実験動物の取得について
当社グループが行う前臨床試験において使用される実験動物には、サル、イヌ、ウサギ、ラット、マウス等が含まれます。サルを除いた諸動物は、多産かつ妊娠期間が比較的短く、取得に関して特に大きな障害はありませんが、実験用に供するサルは、一回当たりの出産頭数が1匹で、妊娠期間も5か月近くあり、成熟するのに2年ほどかかることから、他の実験動物と比較して繁殖が容易ではありません。
当社グループにとって最も重要な実験動物はカニクイザルであり、前臨床事業の拡大に伴い必要とされるカニクイザルの数量も増加しており、今後もこのような傾向が続くと予想されます。当社グループは、この需要に対応すべく複数の国からの輸入体制を整備しておりますが、今後、我が国又は輸出国の法規制改正や伝染病の発生等により、カニクイザルの確保及び輸入に支障が生じた場合、円滑な試験実施に支障が生じ、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(b) 前臨床試験におけるサルの優位性について
現状、実験用サルはヒトとの遺伝子類似性が9割以上もあることから、前臨床試験における優位性は高いとされており、前臨床試験における当該需要は、拡大する傾向にあるものと考えております。しかしながら、サル以外の動物においてヒトでの安全性評価に対する優位性が認められた場合、競合他社との十分な差別化が図れず、当社グループの事業戦略、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(c) 研究施設における感染症等の発生について
実験動物の調達、特に霊長類の輸入にあたっては、動物輸入届出制度等の規制のもと、農林水産省動物検疫所に輸入届出書と衛生証明書の提出が義務付けられており、輸出国では、日本の農林水産省の審査を受けて認可された施設において厳格な輸出検疫を受け、基準を満たした個体だけが輸入されております。さらに、国内では農林水産省に認可を受けた指定動物(霊長類)検疫施設にて、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」に定められた厳格な検疫を実施した上で試験に使用しております。実験動物は、試験施設において、外部と遮断され、圧調整により相互の汚染が防止された室内で、新鮮な空気を定められた換気回数で入れ替え、温度・湿度ともに一定に制御された環境下にて飼育されております。また、GLP基準に基づく研究施設は、試験従事者等の入退出管理を含めて、安全管理・衛生管理には万全の態勢を構築しております。
また、当社グループの在外企業においては、所在する各国における関連法律・制度による諸規制を受けておりますが、いずれも国内と同様に、安全管理・衛生管理には万全の態勢を構築しております。
しかしながら、施設内のトラブルや感染症(新型コロナウイルス感染症を含む)等、予期せぬ事態が生じた場合には、適正な試験の進行に支障をきたし、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(d) 動物愛護について
当社グループでは、製薬企業等から実験動物等を用いた前臨床試験を実施しておりますが、GLP基準に適合した業務遂行を行うと共に、実験動物を用いるに際しては「動物の愛護及び管理に関する法律」、「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」等の適用法令及び動物実験に関する指針を遵守し、実験動物の適正な管理を行うと共に、実験動物の苦痛の軽減に務め、試験に用いる実験動物数の削減につながる代替法の開発にも注力しております。
しかしながら、生命の尊厳等の観点から動物実験全体を否定する立場もあり、動物愛護の風潮が高まる等により実験動物の利用に対して社会的評価が著しく低下した場合、当社グループのイメージに悪影響を与え、前臨床事業の円滑な遂行に支障を来たし、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 臨床事業に係るリスク要因について
(a) CRO業界における競争の激化の可能性について
日本国内におけるCRO業界は市場規模が拡大しているものの、今後もその成長性に着目した新規参入が予想され、業界に市場競争の激化が考えられます。このような競争激化の結果、当社グループの提供するサービス価格の低下や売上の減少を余儀なくされる可能性や、要員獲得競争による人件費の上昇の可能性があります。その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(b) 被験者の健康被害について
治験に係る被験者に健康被害が生じた場合には、治験依頼者である製薬企業等が治療に要する費用やその他の損失を補償することがGCP省令で義務付けられておりますが、当社の過失によるものである場合には、製薬企業、医療機関等から損害賠償請求を受ける可能性があります。また、係る訴訟が社会問題に発展した場合には、当社グループの信用が損なわれ、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 研究開発活動について
当社グループにおきましては、新しい環境にも迅速に対応した質の高い業務ができるよう、前臨床事業及び臨床事業において最先端水準の技術を利用しております。また、必要に応じて他社、大学等の研究機関等との共同開発研究や技術提携等を行っております。また、関係会社においても研究開発活動(後述⑩を参照)を展開しており、当社グループは、今後も独自又は他社、大学等の研究機関等との連携を図った効率的かつ効果的な研究開発を進めていく方針であります。
当社グループの2020年3月期における研究開発費は400,853千円でありますが、こうした研究開発活動に費やした費用が、当社グループに十分な成果をもたらすという保証はありません。
⑦ 知的財産権について
当社グループの事業において、研究開発活動に関わる成果を特許やその他知的財産権として確保することは、事業推進上重要であると考えております。しかしながら、当社の研究成果を全て権利化できるという保証はなく、また、保有している特許や将来取得する特許によって当社グループの権利を確実に保全できるという保証もありません。
有価証券報告書提出日現在、当社グループの開発に関連した特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟やクレームが発生したという事実はありません。当社グループにおきましては、このような問題を未然に防止するため、事業展開に際しては弁護士への相談や特許事務所を活用して知的財産権の侵害等に関する事前調査を実施しておりますが、知的財産権侵害問題の発生を完全に回避することは困難であります。また、仮に当社グループが第三者との間の法的紛争に巻き込まれた場合、当該第三者の主張の正当性の有無にかかわらず、解決には多大な時間及び費用を要する可能性があり、場合によっては当社グループの事業戦略や財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑧ バイオベンチャー企業との提携について
当社グループは連結子会社及び持分法適用関連会社に対する投融資の他、当社グループの企業戦略に則り、当社事業とのシナジー効果を期待して、国内外のバイオベンチャー等と資本提携関係を結んでおります。
提携先企業の財政状態及び事業計画の変更等により投資の回収可能性が懸念される事態が生じた場合には、当社として投資に対する評価損を計上することとなり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑨ トランスレーショナル リサーチ事業について
注射による薬剤や経口剤など、従来の投与剤型に工夫を施して、薬効成分を鼻粘膜から吸収させる経鼻投与システム及び経鼻投与に必要な医療器具を自社開発しております。現時点において、鼻粘膜からの高い吸収率と十分な安全性を示す前臨床試験及び臨床試験のデータを得ております。並行して、経鼻投与システムの新たな活用も含めた製薬企業との共同研究、共同開発やライセンス供与について交渉を進めております。
これらの事業については、確実に収益をもたらすという保証はなく、その進捗等により当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑩ 関係会社について
当社グループは、2011年3月期より2018年3月期まで連続して営業損失、2011年3月期より2015年3月期の間並びに2017年3月期及び2018年3月期において、親会社株主に帰属する当期純損失を計上しております。また、営業キャッシュ・フローにおいても、2014年3月期より2017年3月期の間の4期連続してマイナスとなっております。
そうした状況の中で、SNBL U.S.A., Ltd.をはじめとする下記の関係会社について、業績改善に向けた取り組みを強化しております。
(a) SNBL U.S.A., Ltd.について
米国前臨床事業のSNBL U.S.A., Ltd.(米国 ワシントン州)は、2009年3月期においては黒字化が図られておりましたが、2010年3月期以降においては損失を計上しており、2015年3月期、2017年3月期、2018年3月期及び2020年3月期において、当社単体の投資額に対して関係会社株式評価損を計上いたしました。
そのような中で、中長期的な視点で米国事業の成長を加速するためにシナジー効果が期待できる海外CROとの提携がより効果的と考え、米国前臨床事業を分社化したうえで、北米を拠点とする臨床CROであるAltasciencesグループ(カナダ ケベック州)に2018年9月に事業譲渡いたしました。
(b) その他の関係会社について
その他の関係会社においても研究開発型企業があり、研究開発活動に対して資金を投下しておりますが、これら関係会社においても十分な収益化が図られる保証はありません。
⑪ 情報セキュリティ管理体制について
前臨床及び臨床試験に係る秘密情報の管理について
当社グループの事業では、製薬企業等から預託された開発品目の情報等(以下「秘密情報」)を得て前臨床及び臨床試験を実施しております。秘密情報については、事前の承諾なしに第三者に開示、譲渡、貸与、漏洩してはならない旨を規定した秘密保持契約を製薬会社等と締結しており、当社グループでは秘密情報を厳重に管理すると共に、役職員に対しては、個別に秘密情報の保全を義務付ける機密保持契約を締結して、在籍中、退職後を問わず、厳重に機密保持が遵守されるように注力しております。しかしながら、万が一、当社グループより秘密情報が第三者に流出した場合には、製薬企業等からの信頼が損なわれ、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑫ 人員の確保、育成について
当社グループの事業推進にあたっては、医学、薬学、化学、理学、獣医学及び農学等の専門性が求められることから、博士、修士並びに医師、獣医師、薬剤師、看護師、臨床検査技師等の有資格者、かつ医療業務への従事経験を有する者が不可欠となります。また、昨今のAI・ビッグデータ・IoTといったデジタル化の流れを受け、IT技術や変化する経営環境に適応するためのマネジメントに優れた人材も多く必要とされております。
当社グループは今後も事業の拡大に伴い、積極的に人材の確保、育成を図る方針でありますが、こうした人材の確保や教育研修が当社の計画どおりに進むという保証はなく、人員の確保、育成が順調に進まない場合、当社グループの事業推進に支障が生じ、当社グループの経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、現在在籍するこれら人材の流出が生じた場合にも同様のリスクがあります。
なお、当社グループの事業拡大の進捗によっては、人員の増加による固定費負担が増加し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑬ 有利子負債への依存について
当社グループでは事業拡大の必要資金の多くを金融機関からの借入により調達しており、当連結会計年度末における連結決算における有利子負債残高(リース債務、短期借入金、長期借入金の合計額)は15,122,776千円であり、総資産比で38.8%と相応の水準にあります。また、2020年3月期には235,012千円の支払利息が生じております。
また、当社グループでは、今後の金利上昇リスクを回避するため、長期借入金の大半は固定金利による調達等を実施しておりますが、今後における金融機関借入(借換えを含む)等においてはその時点の市場金利によることとなることから、当社グループの経営成績等は今後の金利変動に影響を受ける可能性があります。
今後も、国内及び米国等における設備資金並びに金融機関借入の約定返済を中心に相応の資金需要が生じるものと考えております。今後の資金調達に関しては資本市場からの調達と金融機関借入(借換えを含む)等のバランスを考慮しつつ、実施していく方針でありますが、これが当社グループの希望する条件で実行できる保証はなく、当社グループの事業展開の制約要因となる可能性があり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑭ 為替の変動について
当社グループでは、海外製薬企業等からの試験受託や実験動物等の輸入仕入に関わる外貨建取引の決済に際しては為替相場の影響を受けております。また、連結子会社20社中9社は在外子会社であり、連結に際しては為替相場の影響を受けております。従って、為替の動向によっては当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑮ 業績の季節変動等について
過去3期間における当社グループの業績の上半期及び下半期の状況は下表のとおりであります。
当社グループの業績は、顧客である製薬企業等の検収が年度末である期末に集中する傾向にあることから、売上高は下半期に偏重する傾向にあります。しかしながら、利益面では、各期における個別又は複数の売上計上案件の利益率の差異及び計上時期並びに連結子会社における事業の進展状況その他の要因により変動しており、過年度においては必ずしも下期偏重は生じておりません。今後においても、当社グループの業績は、これら各種要因等により変動が生じる可能性があります。
(単位:千円)

2018年3月期2019年3月期2020年3月期
上半期下半期上半期下半期上半期下半期
(連結決算)
売上高7,552,8929,047,6588,880,5216,778,1566,389,2748,171,809
営業利益△779,38281,911△137,246967,0421,078,5831,149,668
経常利益△640,187△172,894885,827727,8261,258,6751,862,629
親会社株主に帰属する当期純利益△1,650,261△1,905,687912,2351,038,072877,2511,673,127
(単体決算)
売上高4,474,6926,233,3694,925,1116,107,3285,750,6477,416,782
営業利益△273,996677,496320,108763,083907,898924,103
経常利益△436,260219,2701,554,811578,166777,0852,505,626
当期純利益△2,387,0437,605,3072,206,084△347,774613,729△3,295,352