有価証券報告書-第47期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/26 16:48
【資料】
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【項目】
156項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、次の使命を掲げております。
「創薬と医療技術の向上を支援し、人類を苦痛から解放する事を絶対的な使命とします。」
当社グループは、この使命の実現に向け、医薬品開発分野におきまして、網羅的に前臨床試験と臨床試験を受託できる研究機関として事業基盤の確立を図ってまいりました。半世紀を超えて長年培った研究実績や豊富な経験を活かして、最新の設備と確かな技術であらゆる疾患分野における医薬品開発のサポートを実施しております。
一方、科学技術の進展により、医薬品の開発環境は大きく変化します。このような新しい環境の変化にも迅速に対応し、世界に通用するビジネスモデルを構築して、当社の理念を共有でき優れた発想や卓越した才能を持つバイオベンチャーなどと共存共栄を図っていくトランスレーショナル リサーチ事業にも積極的に取り組んでまいります。
社会貢献と企業価値の極大化を経営の基本方針として、株主、顧客、取引先、従業員等すべてのステークホルダーの期待に応えるべく努力を重ねてまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、各事業、セグメントの創出する利益を極大化することを重視し、営業利益、経常利益の増大を経営目標にしており、これらの経営指標の中期的向上を目指しております。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社グループの中長期的な経営ビジョンは、顧客となる製薬企業の研究開発が、大型化、高度化、国際化しつつある中で、バリューチェーンの構築を通じてグローバルマーケットにおいてクライアントから選択される「オンリーワンカンパニー」となることを標榜しております。
基幹事業である医薬品開発受託事業に加えて、知的財産を導出することにより収益を上げていく研究開発型のトランスレーショナル リサーチ事業にも注力し、より一層の付加価値を付けた質の高い技術と特化したサービスを提供できる体制を整備し、受託試験事業に依存した従来形態から創薬研究支援型の事業会社にパラダイムシフトしてまいります。
(4)経営環境
医薬品業界は、国内外において研究開発のスピードアップと効率化を目指したアウトソーシングが引き続き堅調です。このようなトレンドを受け、当社は顧客から選ばれ続けるパートナーとなるべく、顧客ニーズを満たす迅速な対応とサービスの向上並びに継続的な質の向上に注力しております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
こうした中で、当社グループが対処すべき課題は次のとおりです。
① グローバル事業展開の更なる強化
医薬品業界は、国際化が急速に進んでおります。当社グループは、これらのニーズに対応してグローバルな創薬支援体制を構築すべく、これまで国内事業の強化に加えて、米国事業、アジア事業を強化し、グローバルな事業展開を図って参りました。特に、国内製薬企業においても薬価改定や特許切れによるコスト圧力を受け海外承認申請への動きが高まる中、当社グループとしても、これまでに培った海外市場における経験やネットワークを有効に活用しながら、グローバル事業展開の更なる強化を進め、顧客基盤の拡充に取り組んでおります。
② 人材の育成
当社グループの事業継続及び拡大にあたっては、各分野における専門的な知識・技能を有する技術系研究員等の人材を多数確保する必要があります。また、昨今のAI・ビッグデータ・IoTといったデジタル化の流れを受け、IT技術や変化する経営環境に適応するためのマネジメントに優れた人材も多く必要とされております。
当社グループの競争力を強化する上で最も強く求められますのは、顧客から高く評価される質の高いサービスの提供であり、これを実現するためには優秀な人材の確保とレベルアップが必要であります。こうした人材の確保や教育研修のために、当社では社内教育機関の「SNBLアカデミー」を中心として、職種、職位に応じた研修を最重要課題として取り組んでおります。
③ トランスレーショナル リサーチ事業に対する取り組み
当社グループの持つ知財を基に、創薬型の医薬品開発支援事業へパラダイムシフトするトランスレーショナル リサーチ事業は、すでに当社が独自開発した経鼻投与基盤技術(NDS)について種々の化合物による技術評価試験が実施されており、対象薬剤の科学的性状から世界的市場性までを確実に評価し、上市を見据えた開発を行っております。
特に、当社の基盤技術ライセンスに基づき経鼻偏頭痛薬の早期上市に向け臨床開発を行っているSatsuma Pharmaceuticals, Inc.が、同じく当社が設立したWave Life Sciences Ltd.に続き昨年米国ナスダック市場に上場した事もあり、新規開発中のNose-to-Brain送達技術も含めた他の経鼻投与製品の自社開発・共同開発・ライセンスアウトを積極的に進めております。
④ 多様化する創薬モダリティへの対応
昨今の医薬品開発においては、低分子医薬品から抗体医薬・核酸医薬、さらに再生医療・遺伝子治療へと創薬モダリティの多様化が進んでおります。当社グループは、こうした業界の動きに一早く対応し、常に新たな創薬ニーズに応えるべく取り組んで参りました。特に再生医療分野においては、京都大学iPS細胞研究所との共同研究に基づくiPS細胞を用いた治療に向けた安全性試験に関する研究開発経験を活かして受託しているほか、重要投資先である株式会社リジェネシスサイエンスを通じたライセンス事業にも取り組んでおります。
今後とも創薬モダリティの多様化により生じる顧客からの様々な新規ニーズに迅速に対応し、付加価値の高いサービスを効率的に提供してまいります。
⑤ 実験動物の安定的確保
当社の前臨床試験において主体となる実験動物はサル(主にカニクイザル)であります。サルはヒトとの遺伝子類似性が9割以上もあり、ヒト特異性の高い抗体医薬品等へ交差反応性を示すことが知られております。前臨床試験においては他の動物と比較して優位性が最も高いとされており、当社の前臨床事業の特色の一つであります。
当社は、品質の高い実験動物を安定的に確保するために、戦略的統括拠点として、中国及びカンボジア王国内に検疫・繁殖・育成施設を有し、日本国内では鹿児島に検疫・育成施設を設けております。
今後も、これらの施設運営の効率化と質向上を図ると共に、実験動物の安定的確保に向けた取り組みを強化してまいります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在(2020年3月31日)において当社グループが判断したものであります。