有価証券報告書-第48期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/30 16:47
【資料】
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【項目】
153項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、次の使命を掲げております。
「創薬と医療技術の向上を支援し、人類を苦痛から解放する事を絶対的な使命とします。」
当社グループは、この使命の実現に向け、医薬品開発分野におきまして、網羅的に前臨床試験と臨床試験を受託できる研究機関として事業基盤の確立を図ってまいりました。半世紀を超えて長年培った研究実績や豊富な経験を活かして、最新の設備と確かな技術であらゆる疾患分野における医薬品開発のサポートを実施しております。
一方、科学技術の進展により、医薬品の開発環境は大きく変化します。このような新しい環境の変化にも迅速に対応し、世界に通用するビジネスモデルを構築して、当社の理念を共有でき優れた発想や卓越した才能を持つバイオベンチャーなどと共存共栄を図っていくトランスレーショナル リサーチ事業にも積極的に取り組んでまいります。
社会貢献と企業価値の極大化を経営の基本方針として、株主、顧客、取引先、従業員等すべてのステークホルダーの期待に応えるべく努力を重ねてまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、各事業、セグメントの創出する利益を極大化することを重視し、営業利益、経常利益の増大を経営目標にしており、これらの経営指標の中期的向上を目指しております。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社グループの中長期的な経営ビジョンは、顧客となる製薬企業の研究開発が、大型化、高度化、国際化しつつある中で、バリューチェーンの構築を通じてグローバルマーケットにおいてクライアントから選択される「オンリーワンカンパニー」となることを標榜しております。
基幹事業である医薬品開発受託事業に加えて、知的財産を導出することにより収益を上げていく研究開発型のトランスレーショナル リサーチ事業にも注力し、より一層の付加価値を付けた質の高い技術と特化したサービスを提供できる体制を整備し、受託試験事業に依存した従来形態から創薬研究支援型の事業会社にパラダイムシフトしてまいります。
(4)経営環境
医薬品業界は、国内外において研究開発のスピードアップと効率化を目指したアウトソーシングが引き続き堅調です。このようなトレンドを受け、当社は顧客から選ばれ続けるパートナーとなるべく、顧客ニーズを満たす迅速な対応とサービスの向上並びに継続的な質の向上に注力しております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
こうした中で、当社グループが対処すべき課題は次のとおりです。
① CRO事業の更なる強化
新型コロナウイルス感染症により経済社会生活へ世界規模での影響が続く中、特に医薬品業界では、国内、海外問わず、ワクチン開発、治療薬開発が急速に進むとともに、迅速かつ質の高い医薬品開発業務受託機関(CRO)のニーズが高まっております。こうした中、次のような観点からCRO事業の強化を図ってまいります。
サービス拡充という観点からは、前年度に引き続き適切な新型コロナウイルス感染症対策を講じつつワクチン並びに感染症治療薬開発にCROとして参画するとともに、従来型の安全性試験に加え、候補化合物選定のための創薬スクリーニングから臨床試験に至るまでの開発に必要な試験を一貫して受託することで、開発者側の視点に立ったより付加価値の高いサービスを提供することを目指します。
また、昨今の医薬品開発において、低分子医薬から抗体医薬・核酸医薬、さらに再生医療・遺伝子治療へと創薬モダリティの多様化が進む中、再生医療分野で京都大学iPS細胞研究所との共同研究経験を活かしたiPS細胞を用いた安全性試験に関する受託業務を行ってきたように、今後とも常に業界の動きに逸早く対応した幅広いサービスを提供してまいります。
オペレーションの観点からは、システム化も含めた内部業務プロセスの見直しと改善を進め、ペーパーレス化などによる業務効率化、コストの削減、試験の早期開始などに努めるとともに、年々需要が高まっているバイオ医薬品開発に不可欠な実験動物(主にカニクイザル)のサプライチェーンマネジメントについても、日本・中国・カンボジアのグループ関連施設における検疫・繁殖・育成能力をそれぞれ増強することにより、リスク分散を図りつつ今後の事業成長に必要な品質の高い実験動物を安定的に確保できる体制を構築していきます。
マーケティングという観点からは、医薬品開発受託市場の規模が大きく、より高い成長が期待できる米国やアジアといった海外市場に対し、これまでSNBL USAで培った海外における経験や顧客とのネットワークも有効に活用しながら、グローバルな顧客からのニーズにも積極的に対応し、市場拡大を目指してまいります。
② トランスレーショナル リサーチ事業の取り組み
トランスレーショナル リサーチ事業では、当社グループの医薬品開発における機能、経験とネットワークに独自の知的財産に基づく基盤技術を加えることで、創薬型の医薬品開発事業へとパラダイムシフトするという戦略に基づき、次の複数のプロジェクトに取り組んでまいります。
当社TRカンパニーの経鼻投与基盤技術(Nasal Delivery System: NDS)を応用した薬物吸収フィージビリティ試験や製剤研究結果に基づいて、複数の候補化合物の新規事業化を進めてまいりました。併せて、標的鼻内部位への送達を的確に実現するため、新規デバイスを開発し、さらなる改良を加えます。未充足医薬品市場を確実に予測しつつ製剤開発をおこない、NDSを用いた薬物吸収フィージビリティ試験を繰り返すことにより候補化合物を絞り込み、経鼻神経変性疾患レスキュー薬の最終処方を決定しております。子会社として株式会社SNLDを2020年10月に設立、本剤開発権をライセンスアウトし、第Ⅰ相臨床試験実施体制を構築してまいります。当社よりライセンスアウトした経鼻片頭痛治療薬を開発中のSatsuma Pharmaceuticals, Inc. (カリフォルニア州;以下Satsuma社)は、2019年9月に米国ナスダック市場に上場を遂げており、昨年第Ⅲ相臨床試験結果を得ました。当カンパニーからの技術支援と助言を経て、同社は次のステップに踏み出します。一方、鼻から脳へと薬物を送達させる技術(Nose-to-Brain送達技術)研究が進展しております。本研究では、薬物を能動的に中枢神経細胞へ移行させるメカニズムを解析中です。鼻腔内標的である嗅部への送達、そこから脳内への送達、さらに脳内分布や薬効判定などを安全に効率的に行うためにMRIやSPECTなど薬物脳移行イメージング解析などをアカデミアと共同で進めてまいります。
一方、子会社のGemseki社では、これまで推進してきたグローバルな創薬シーズ・技術のライセンス仲介事業とともに、2020年8月に組成したGemseki社を無限責任組合員とするファンドによる投資・インキュベーション機能を加えることで、国内外の顧客に対し、当社グループが保有する豊富な創薬経験とグローバルネットワークを活用した開発支援サービスを幅広く提供してまいります。
③ ESG、SDGs達成に向けた貢献
環境・エネルギー分野では、地熱発電が2050年のカーボンニュートラルに向けた純国産ベースロード電源として期待される中、当社は2014年より1.5MWクラスの地熱発電所を稼働させております。今後は、この既存の発電所に加え、更に温泉泉源を活用した温泉発電や新たな地熱発電システムの実証実験に取り組んでまいります。
ウェルネス分野では、ウェルネスリゾート、つまり全人的な健康の実現をメインコンセプトとする宿泊施設として、2020年12月に開業した「別邸天降る丘」など、3つの宿泊業を運営してまいります。
ダイバーシティに関しては、「私も幸せ、あなたも幸せ、みんな幸せ」というスローガンを掲げ、育児や介護と仕事の両立、男性の育児と家事参加といったワークライフバランスへの取組に加えて、働き方改革を促進し、社員が働きやすい環境や仕組みを創りだすことで、ダイバーシティ社会の実現を積極的に推進しております。
健康経営に関しては、新型コロナウイルス感染症対策を含む健康経営の各種取り組みが評価され、経済産業省と日本健康会議が共同で認定する健康経営優良法人(大規模法人部門(ホワイト500))に2017年度より5年連続で選定されており、今後もこうした活動を推進してまいります。
④ 優秀な人材の確保と育成
当社グループの事業継続及び拡大にあたっては、各分野における専門的な知識・技能を有する技術系研究員等の人材を多数確保する必要があります。また、昨今のAI・ビッグデータ・IoTといったデジタル化の流れを受け、IT技術や変化する経営環境に適応するためのマネジメントに優れた人材も多く必要とされております。
当社グループの競争力を強化する上で最も強く求められるのは、顧客から高く評価される質の高いサービスの提供であり、これを実現するためには優秀な人材の確保とレベルアップが必要であります。
こうした人材の確保や教育研修のために、当社では社内教育機関の「SNBLアカデミー」を中心として、職種、職位に応じた研修を最重要課題として取り組んでおります。また、女性が社員の過半数を占める当社では、女性活躍に注力しており、産休・育休からの復帰もほぼ100%の状況となる中、引き続き女性の管理職登用数の増加に努めてまいります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在(2021年3月31日)において当社グループが判断したものであります。