有価証券報告書-第45期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/28 14:24
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対処すべき課題

医薬品業界におきましては、創薬開発競争が激化し、開発自体が国際化、高度化及び大型化してゆく中で、引続きバイオベンチャー企業が活発な事業展開を進めております。特に米国においては、機関投資家からの積極的な資金提供が原動力となり、外部リソースとしてCROを有効活用する動きが鮮明になってきております。このような顧客動向を受け、当社グループは顧客から選ばれるパートナーとなるべく、顧客ニーズに応えられるサービスの深化と継続的な質の向上を目指しております。
こうした中で、当社グループが対処すべき課題は次のとおりです。
① 戦略的アライアンスによるグローバルバリューチェーンの強化
医薬品業界は、国際化が急速に進んでおります。当社グループは、これらのニーズに対応してグローバルな創薬支援体制を構築すべく、これまで国内事業の強化に加えて、米国事業、アジア事業を強化し、グローバルバリューチェーンの構築を図って参りました。今後は、各拠点における他社とのアライアンスを構築し、グローバルバリューチェーンの強化を進め、効率的な経営を行うことが課題であります。
② 人材の育成
当社グループの事業継続及び拡大にあたっては、各分野における専門的な知識・技能を有する技術系研究員のほか、CRC(Clinical Research Coordinator)や統計解析スキルの高い人材、IT技術、マネジメントに優れた人材等を多く確保する必要がおります。
当社グループの競争力を強化する上で最も強く求められるのは、顧客から高く評価される質の高いサービスの提供であり、これを実現するためには優秀な人材の確保とレベルアップが必要であります。こうした人材の確保や教育研修のために、当社では社内教育機関の「SNBLアカデミー」を中心として、職種、職位に応じた教育研修を最重要課題として取り組んでおります。
③ トランスレーショナル リサーチ事業に対する取り組み
当社グループの持つ知財をもとに、創薬型の医薬品開発支援事業へパラダイムシフトするトランスレーショナル リサーチ事業は、すでに当社が独自開発した経鼻投与基盤技術(Nasal Delivery System:NDS)について種々の化合物による技術評価試験が実施されており、対象薬剤の科学的性状から世界的市場性までを確実に評価し、上市を見据えた開発を行っております。具体的にはNDSを応用したインフルエンザ経鼻ワクチン(開発コード:TR-Flu)の開発は、ワクチン会社から提供されたインフルエンザ抗原を用いて、TR-Fluによる抗体産生を評価するための非臨床試験を積み重ねており、優位性を確実に証明する段階へと進展しました。インフルエンザ抗原粉末投与専用デバイスとともにコンビネーション製品として開発しております。加えて、NDSを用いたフィージビリティ試験の受託については、国内外の大手製薬企業から新規化合物の経鼻応用を探索する試験を継続して受託し、共同研究にステップアップできる段階となっております。さらに、NDSの応用的発展である鼻から脳へと薬物を送達させる技術(Nose-to-Brain送達技術)の研究や、ヒト遺伝子の解析を基にした個別化医療の手法探索等、新規事業開発に着手いたしました。今後、開発中の薬剤を早期に市場に出すことが課題であります。
④ SNBL USAの事業に対する取り組み
米国で前臨床事業を展開しておりますSNBL USAは、平成21年3月期まで数年間黒字が続いておりましたが、平成22年8月にFDA(米国食品医薬品局)からGLP改善指示書を受領し、その後、平成24年11月にFDAによる改善の確認は完了いたしましたが、受注への影響は大きく、平成22年3月期以降損失を計上しております。かかる中、当社グループが総力を挙げて抜本的な組織改革を行うとともに、経営体制及び現場オペレーションを体系的に再構築し、法令の厳守に加えて、専門的な科学知識や高品質のサービスがお客様に速やかに提供できる組織体制を整えた結果、米国政府主導の下で進められているARS試験や新規顧客からの問い合わせ増加に加えて、大手顧客からのリピート案件も着実に獲得しており、受注は回復傾向に転じてきております。今後も高い品質の試験実施を徹底して維持すると共に、営業体制を強化することで、米国市場でのSNBLブランドを再構築しつつ業績改善に向けての積極的な受注活動と経費削減の徹底を進めております。
⑤ 実験動物の安定的確保
当社の前臨床試験において主体となる実験動物はサル(主にカニクイザル)であります。サルはヒトとの遺伝子類似性が9割以上もあり、前臨床試験においては他の動物と比較して優位性が最も高いとされており、当社の前臨床事業の特色の一つであります。
当社は、品質の高い実験動物を安定的に確保するために、戦略的統括拠点として、中国及びカンボジア王国内に検疫・繁殖・育成施設を有し、日本国内では鹿児島に検疫・育成施設を設けております。米国では、SNBL USAが研究受託事業に専念し、固定費の負担軽減を含めて効率的な経営体制を構築するため、テキサス州において運営してきた動物輸入検疫および飼育・販売事業を分社化し、同事業の経営権をOrient Bio Inc.(韓国 Seoul 市)に譲渡しましたが、同社との間で長期の動物輸入検疫に関する契約を締結し、安定的な供給体制を整えております。今後も、これらの施設運営の効率化と質向上をはかると共に、実験動物の安定的確保に向けた取り組みを強化してまいります。
⑥ 再生医療分野への取り組み
国内では、人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell、以下「iPS 細胞」)を用いた新薬の研究開発、移植治療などの再生医療への応用・実用化の期待が高まっており、先進医療技術の実現や革新的な新薬・医療機器の創出が、日本の国際競争力の強化、経済再生に結びつく重要な国家戦略の一環と位置付けられました。
このような状況下において、当社は、平成25年2月、京都大学iPS細胞研究所と「人工多能性幹細胞(iPS細胞)由来神経細胞による脳移植治療実現化に向けた安全性試験法の確立」に係る共同研究契約を締結し、iPS細胞を用いたパーキンソン病治療の臨床応用に必要な安全性試験のデファクトスタンダードの確立に向けた研究開発に着手いたしました。また、上記契約の満了を受け、平成28年4月に発展する形で新たな共同研究を開始し、京都大学iPS細胞研究所に派遣しておりました当社スタッフを中心に安全性試験の受託を実施しております。今後、新たな手法を見出し、着実に安全性を担保できる試験を確立することが課題であります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在(平成30年3月31日)において当社グループが判断したものであります。