有価証券報告書-第42期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

【提出】
2015/06/29 16:49
【資料】
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【項目】
125項目

対処すべき課題

① 日本、米国、アジアでの三極展開によるグローバルバリューチェーンの構築と強化
医薬品開発は、国際化、高度化及び大型化が急速に進んでおります。当社グループは、これらのニーズに対応してグローバルな創薬支援体制を構築すべく、国内事業の強化に加えて、米国事業、アジア事業を強化し、グローバルバリューチェーンの構築を図っております。
こうした中、SNBL U.S.A., Ltd.(SNBL USA)は、ワシントン州に前臨床試験施設を保有し、テキサス州には霊長類の検疫・飼育施設を有しております。また、メリーランド州立大学構内にSNBL Clinical Pharmacology Center, Inc.を設立し、PhaseⅠを主体とした臨床試験の受託事業に取り組んでおります。
アジアでは、実験動物(霊長類)の検疫・繁殖・育成施設として、中国広東省に肇慶創薬生物科技有限公司、カンボジア王国にANGKOR PRIMATES CENTER INC.及びTIAN HU (CAMBODIA) ANIMAL BREEDING RESEARCH CENTER Ltd.を有しており、品質の高い実験動物の安定的供給と確保を図っております。
② 戦略的アライアンスの強化と受託拡大
製薬会社では研究開発に係る固定費を削減し、アウトソーシングを活用する動きが国内外で進んでおり、こうした新たなマーケット機会に対応するため、顧客との従前のリレーションシップをさらに深めたアライアンスを構築し、顧客との信頼関係構築を進めてまいります。
③ 人材の育成
当社グループの事業継続及び拡大にあたっては、各分野における専門的な知識・技能を有する技術系研究員のほか、CRA(Clinical Research Associate)やCRC(Clinical Research Coordinator)等の人材を多数確保する必要があります。また、統計解析スキルの高い人材、IT技術やマネジメントに優れた人材も多く必要とされております。
当社グループの競争力を強化する上で最も強く求められますのは、顧客から高く評価される質の高いサービスの提供であり、これを実現するためには優秀な人材の確保とレベルアップが必要であります。こうした人材の確保や教育研修のために、当社では社内教育機関の「SNBLアカデミー」を中心として、職種、職位に応じた研修を最重要課題として取り組んでおります。
④ トランスレーショナル リサーチ事業に対する取り組み
トランスレーショナル リサーチ事業は、当社の持つ知財を製薬会社へライセンス供与し、創薬型の医薬品開発支援事業へパラダイムシフトすることを目指しています。特に、当社が独自開発した経鼻投与基盤技術(Nasal Delivery System:NDS)は種々の薬物に対して幅広く応用できることが実証され、大手を含む国内外の複数の製薬企業が保有する化合物の経鼻投与による評価試験の実施が活発化してきております。この事業においては、契約時締結一時金のほか、開発段階等に応じたマイルストーンを収受するとともに、当該製剤の販売開始後は、製剤の売上高に応じたロイヤリティ(数%~十数%程度)を収受することになり、長期的に安定した収益の計上が可能になります。また、これらの承認申請に必要な前臨床試験や臨床試験は、当社グループが受託することが期待できます。受託事業との相乗効果を実現しつつ、収益性を高める事業形態を実現することが課題となります。
⑤ SNBL USAの事業に対する取り組み
米国で前臨床事業を展開しておりますSNBL USAは、平成21年3月期まで数年黒字が続いておりましたが、平成22年8月にFDA(米国食品医薬品局)からGLP改善指示書を受領し、その後、FDAによる改善の確認(平成24年11月)を完了するまでの間、受注に大きな影響が出た結果、平成22年3月期以降損失を計上しております。かかる中、当社グループが総力を挙げて抜本的な組織改革を行うとともに、経営体制及び現場オペレーションを体系的に再構築し、法令の厳守に加えて、専門的な科学知識や高品質のサービスがお客様に速やかに提供できる組織体制を整えた結果、受注は回復傾向に転じてきております。今後も高い品質の試験実施を徹底して維持すると共に、営業体制を強化することで、米国市場でのSNBLブランドを再構築し、当社グループの中核事業として強化してまいります。
⑥ 実験動物の安定的確保
当社の前臨床試験において主体となる実験動物はサル(主にカニクイザル)であります。サルはヒトとの遺伝子類似性が9割以上もあり、前臨床試験においては他の動物と比較して優位性が最も高いとされており、当社の前臨床事業の特色の一つであります。
当社は、品質の高い実験動物を安定的に確保するために、戦略的統括拠点として、中国及びカンボジア王国内に検疫・繁殖・育成施設を有し、日本国内では鹿児島に、米国ではテキサス州に検疫・育成施設を設けております。今後も、これらの施設運営の効率化と質向上をはかると共に、実験動物の安定的確保に向けた取り組みを強化します。
⑦ 再生医療分野への取り組み
国内では、人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell、以下「iPS 細胞」)を用いた新薬の研究開発、移植治療などの再生医療への応用・実用化の期待が高まっております。また、現政権が主導する我が国の成長戦略の柱の一つにも医療・健康領域の産業が据えられたことなどから、先進医療技術の実現や革新的な新薬・医療機器の創出が、日本の国際競争力の強化、経済再生に結びつく重要な国家戦略の一環と位置づけられました。このことにより、新薬の研究開発、特にiPS細胞の早期臨床応用に向けた手法の確立に国内外から注目が寄せられております。
このような状況下において、当社は、平成25年2月、京都大学iPS細胞研究所と「人工多能性細胞(iPS細胞)由来神経細胞による脳移植治療実現化に向けた安全性試験法の確立」に係る共同研究契約を締結し、iPS細胞を用いたパーキンソン病治療の臨床応用に必要な安全性試験のデファクトスタンダードの確立に向けた研究開発に着手しております。また、京都大学iPS細胞研究所には当社スタッフを派遣してエキスパート養成にも注力しております。
一方、当社は、平成25年4月に独立行政法人理化学研究所の認定ベンチャーである株式会社ヘリオスによる3億円の第三者割当増資を引き受けました。株式会社ヘリオスは、理化学研究所が発明したiPS細胞技術に係る特許の実施許諾に基づき、iPS細胞から分化誘導した網膜色素上皮細胞移植による、加齢黄斑変性症の新たな治療法を開発中です。また、当該治療開発を端緒として、視細胞移植、網膜再生薬、検査法開発等により、未だ治療法のない難治性網膜疾患の治療を目標とされています。当社は、基幹事業とする前臨床試験受託事業で培ったノウハウを活用し、株式会社ヘリオスが推進するiPS細胞由来の網膜色素上皮胞移植による再生医療の技術確立に貢献するため、安全性を担保する非臨床試験分野において優先的な受託関係を構築すべく業務提携契約を締結させていただきました。
併せて、当社は、平成25年7月に独立行政法人理化学研究所と「iPS細胞等を利用した眼科疾患領域細胞治療の実現に向けた薬効評価法の確立」に関して共同研究契約を締結し、早期実用化へ向けたサポートに取り組んでおります。