有価証券報告書-第22期(平成30年1月1日-平成30年12月31日)

【提出】
2019/03/28 15:25
【資料】
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【項目】
62項目

対処すべき課題

(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「変革する経済環境に対して英知と創意工夫を結集し、生産の効率向上に寄与することにより、ものづくり日本の発展と明るく豊かな社会の実現に貢献します。」という経営理念を実践すべく、経営基本方針として、以下の3つを掲げております。
・経営環境の変化に素早く対応するため、常に創造と革新を行い当社の付加価値を高めてまいります。
・アウトソーシング事業における高付加価値ビジネスモデルを構築し推進いたします。
・キャッシュ・フローを重視した軽量経営を図ります。
(2)目標とする経営指標
当社グループが事業展開する国内製造業向けアウトソーシング市場は、中長期的には、国内人口の減少や国内メーカーの海外移管等による縮小リスクが内在しております。これに対して、国内でも当面は拡大が見込まれるIT分野や建設分野、景気変動の影響を受けにくい米軍施設向け事業やコンビニエンスストア向け事業等、海外でも展開地域や分野を拡大する余地があり、全体としてみれば非常に大きな市場が見込まれております。
当社グループでは、国内において製造業向けに加えてITや建設といった他分野への展開を加速させるとともに、海外では、以前より進出していたアジア・オセアニアに加え、2015年に進出した欧州や南米の各地域における事業強化を推進し、さらに市場規模も大きく好調な北米へ進出することによって売上を伸長させるとともに、業務の効率化によって販管費の増加抑制を図り、利益の拡大に努めてまいります。
(3)中長期的な会社の経営戦略
国内におきましては、製造業向けのアウトソーシング市場は、景気動向や法改正等により一時的な市場拡大が見込まれますが、中長期的なトレンドとしては労働人口減少の影響に加え、メイドインジャパンの付加価値低下によって、興隆する製造業向けの海外市場とは相対的に、緩やかに縮小していくことが予想されます。
その中にあって、ボラティリティの高い国内製造系アウトソーシング事業は、労働市場が非常にタイトな昨今において、期間社員を活用し、景気悪化時に大量解約して乗り切ると、その後の景気回復時に再雇用が困難になり、解約した人数を回復できず業績がボトムのまま推移する可能性が高まります。これに対し、当社グループでは、景気悪化時に雇用を維持しながらグループ全体で黒字を確保し、景気回復時は景気悪化時に雇用を維持した社員を順次活用することで、業績を即時伸長できる強靭なグループ体制を構築することを目指します。具体的には、同事業をPEOスキーム中心に伸長させてまいりますが、それ以上に国内製造系アウトソーシング事業以外の事業を拡大させ、国内製造系アウトソーシング事業の売上構成比を抑制した体制構築を目指します。
国内技術系アウトソーシング市場では、直近の安定した景気に対して労働人口減少のトレンドとなっており、多くの業種で人材不足に陥っている一方、景気の先行き不透明感から、顧客企業は正社員の技術者採用を控えているため、人材ビジネスを活用する傾向は相応に続くと予想されます。また、自動車の電動化を中心に開発競争が世界規模で激化しており、市場の縮小は製造系アウトソーシング事業よりも緩やかであると予想します。また、メーカーの景気サイクルと異なるIT分野や建設分野は、一定規模の市場を形成している上、様々なモノのインターネット接続が進むIoTやビッグデータビジネス、クラウド化といった新たな市場が生まれ、道路等インフラや商業ビル・学校等の耐震補強・建て替えやオリンピック等の大型需要による成長も見込まれており、魅力的な市場であります。このような市場に対して当社グループでは、グループ内のKENスクールにて、メーカー向け機械・電子の設計開発の育成プログラムのほか、通信キャリアや大手ゼネコンと共同開発したエンジニア育成カリキュラムを活用し、未経験者を教育していく「KENスクールモデル」による差別化を図りながら、他社の追随を許さない成長をしてまいります。
国内サービス系アウトソーシング事業において、当社グループが進出している米軍施設向け事業やコンビニエンスストア向け事業の市場は、景気変動に左右されにくい上に相応の規模を有する安定的な市場であります。このような魅力的な市場に対して、当社グループでは、それぞれの中核会社を中心に拡大を図り、将来的には海外展開も図ってまいります。
このように国内事業については、それぞれ特色あるビジネスモデルを展開し、製造系・技術系を中心としたアウトソーシング事業者の中で、名実ともにリーディングカンパニーとして業界をリードしてまいります。海外におきましては、新興国を中心に、人口増加トレンドとともに一定の経済成長が続くことが見込まれ、人材ビジネス市場も大きく成長するものと思われます。また、欧米先進国では、巨大な市場規模を保ちながらM&Aによる再編が進み、新たな進出機会も生じております。このような環境に対して当社グループでは、国家間で人材流動化を図るアジア人材ネットワークを拡充させてまいりましたが、欧米先進国や日系メーカーの進出も多い中南米へのM&Aを加速させ、この人材流動化モデルを同地域にも展開してまいります。また、安定的な公共向けアウトソーシング事業の拡大も図ることにより、特色を持った一大グループを形成してまいります。
これらの戦略を国内外で強力に推進することにより、グローバルプレーヤーの一角となることを目指してまいります。
(4)会社の対処すべき課題
今後の世界経済の見通しにつきましては、北米の景気は好調であり、欧州も堅調でありますが、中国をはじめとする新興国の景気減退リスク、宗教や民族の対立に関連した問題、さらには、朝鮮半島をはじめとした核兵器の拡散問題等、国際情勢に重大な影響を及ぼす事象の発生が続いており、これらのリスク増大により先行きの不透明感が拡大しております。国内においても、経済政策やオリンピック等による需要増加によって国内生産も短期的には増加しておりますが、生産拠点の海外移管や人口減少によって中長期的に市場が縮小していく可能性が高まっています。
当社グループでは、このように先行きが不透明な事業環境の中でも、国内事業の市場縮小に対応した改革を行い、海外事業においても多地域への展開を強化・推進し、持続的成長を実現していくために、以下を対処すべき主要課題と捉えております。
① 変動の激しい事業を補完する体制の構築
国内を中心とした製造系事業は、生産変動の激しい量産工程に対する人材派遣や業務請負を行っている性質上、リーマンショックのような大きな景気後退時には、急激かつ大量の雇用解約が発生するのに対し、景気回復時の増産時には採用が追い付かず、往時の業績に戻ることのできない同業者が散見され、機会損失が非常に大きな問題となっています。
このような状況に対し、当社グループでは、急な大型減産でもグループ全体では黒字を維持しながら雇用解約せずに人材を確保しておき、その後の増産に即時配属して業績を回復できる体制が必要と考えます。そのために製造とは異なるサイクルの分野や景気の影響を受けにくい分野の事業拡大を推進し、中期的に国内製造系事業の売上構成比を10%以下にすることを目指してまいります。
② 成長機会を逃がさない事業運営体制の構築
日本国内の人口は減少傾向にあるため市場は限定的となり、今後の大きな成長は望めませんが、世界全体では人口は増加傾向にあり、今後30億人増加するともいわれております。当社グループの事業の多くは稼働している人員数に業績が連動しているため、人口が増加し余剰感のある国から不足している国へ、グローバルに人材を流動化させる体制を構築し、この成長ポテンシャル獲得に取り組んでまいります。この体制構築及び運用を実現した暁には、世界一の人材サービス企業への道も拓けると考えており、体制構築に向けた成長投資を推進してまいります。
③ M&A及びアライアンスによる成長の加速
当社グループでは、製造とは異なるサイクルの分野や景気の影響を受けにくい分野の事業拡大を推進しており、それらの分野強化に向けたM&Aや他企業とのアライアンスを積極的に推進いたします。また、国際的な人材流動化を実現するため、必要な経営資源の獲得にもM&Aや他企業とのアライアンスを積極的に行い、これまで培ってきた当社グループのノウハウと融合させた高度なサービスを提供し、今後激化が予想されるグローバル競争を勝ち抜いてまいります。
④ ガバナンス体制の強化
積極的なM&Aも行いグローバルに事業拡大している当社グループでは、買収した会社も含めて上場企業のグループ会社にふさわしい健全な経営を行う必要があります。これを継続して実現するため、グローバル経営の視点に立った同一目標・同一管理手法を確立し、加えて、内部統制システムを全社に適用し、当社グループ全体のガバナンス強化及びコンプライアンス体制の拡充を図ってまいります。
⑤ 人材育成による企業体質の強化
人材を活用したビジネスを行う当社グループは、人材を最も重要な資産として捉えております。人材を適正に扱うため、また人材を扱った各種サービスを適正に提供するための基礎的な知識・能力や、生産現場における労務管理能力及び生産管理能力を向上するための教育・育成を徹底しております。また、高度・多様化し続ける顧客ニーズに迅速、柔軟かつ的確に対応するためにも、優秀な人材確保及び人材育成を重要課題として取り組んでおります。
特に今後は、当社グループの新規分野及び海外分野の経営を展開できる、世界で通用する規律・遵法意識を兼ね備え、多様な知識と経験を有する有能な人材を、国籍や性別を問わず、グローバルに採用・教育することが急務であります。