有価証券報告書-第25期(令和1年5月1日-令和2年4月30日)

【提出】
2020/07/30 9:11
【資料】
PDFをみる
【項目】
124項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において、当社が判断したものであります。
(1) 経営方針
① 会社の経営の基本方針
当社は、「思いをかたちに」を経営理念とし、最新のデジタルテクノロジーと独自のネットワークシステムで、写真そのものが持つ表現力を深め、広げていきたいと考えております。当社が目指すのは、撮影後のフォトイノベーションであり、新しい写真文化の創造を使命としております。
当社のビジネスは、ITデジタル技術・印刷および色管理技術・ヒューマンリテラシーなど広範囲にわたる複合的な技術やノウハウの集約によって成り立っています。インターネットなどの通信インフラにより提供された画像データに高度な画像処理技術や写真印刷技術などを施すことで、完全にカスタマイズされたサービスを一人一人のお客様に提供し、究極の顧客満足を得る企業を目指してまいります。
さらに、画像映像の新しい表現方法や、ITや最新技術を活用した新規ビジネスなど、新しい取り組みにも常に挑戦してまいります。
② 目標とする経営指標
当社は、新しい写真文化の創造を使命としており、事業の拡大を通じて、より多くの感動を提供してまいりたいと考えております。そのために、事業の安定的成長と適切な利益の獲得が重要な経営目標であると認識しております。従いまして、当社は、経営指標として、売上高増加率と売上高経常利益率を重要視しております。
③ 経営環境及び中長期的な会社の経営戦略
当社は、ニッチストック型ビジネスであるメモリアルデザインサービス事業と安定成長型ビジネスであるパーソナルパブリッシングサービス事業、空中結像という新しい市場の創造を目指すエアリアルイメージング事業という位置づけの異なる3つの事業にバランスよく力を注いでまいります。
3つの事業に共通する経営環境としましては、従来より進んでおりますIT化、ネットワーク化がさらに加速していくとともに、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、事業環境の変容が見られます。その環境変化に適応したサービスの開発や、社内体制の適応が不可欠と認識しております。
また、ユニークな技術を有するスタートアップ企業と提携することで、新しいビジネスの創出とともに、当社の顧客基盤のニーズに対応したサービスの提供も進めていく方針です。
各事業の経営環境および事業戦略は以下のとおりです。
(メモリアルデザインサービス事業)
メモリアルデザインサービス事業が属しております葬儀葬祭業界は、高齢化社会の進展とともに葬儀件数の漸増が期待されるものの、家族葬に見られるような葬儀の小型化が進行し、経営環境は決して楽観できるものではありません。また、新型コロナウイルス感染拡大により葬儀の小型化がさらに進む可能性もあります。そのような環境のもと、葬儀社からは新たな収益機会の提案や業務効率化ツールに対するニーズが高まってきております。
メモリアルデザインサービス事業は、当社設立以来の中核事業であり、長年培ってきた画像処理技術や全国的な自社サポート拠点の設置及び新サービス開発力によって、安定的な成長と利益獲得の基盤が確立しております。当事業では、遺影写真加工のさらなるシェアアップを図るとともに、葬儀社向けに新しいサービスの開発、拡充を進めてまいります。またAIを含めた最新技術の導入やテレワーク対応などへの対応を進めてまいります。
(パーソナルパブリッシングサービス事業)
パーソナルパブリッシングサービス事業が属しております写真業界は、デジタル化が進行し、一眼レフカメラでの撮影を主力としたプロフェッショナルを含めたハイエンド層と、スマートフォンでの撮影を主とするカジュアル層の2分化が見られます。インスタグラムなど様々な写真の楽しみ方が見られ、写真撮影の機会は増加傾向にあります。また、プロフェッショナル写真家向けサービスのメインターゲットであるウェディング業界は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受け、結婚式の在り方が変化する可能性もあります。
パーソナルパブリッシングサービス事業は、数千億円といわれる写真アウトプット市場をターゲットにしているため、大きなポテンシャルを有しており、当事業の認知度が一定程度広まってまいりましたが、未だ十分とはいえません。当社が誇る高い写真印刷技術や製品開発力及び充実した営業・サポート体制という強みを背景に、当事業の認知度の向上に努め、印刷による1冊から写真集という新しい写真文化の浸透に注力してまいります。高品質・多品種をコンセプトにしておりますプロフェッショナル写真家向けの「アスカブック」及びコンシューマ向けの「マイブック」はそれぞれにおいて、新製品を継続的に投入し成長を持続してまいります。また、少品種・低価格をコンセプトとするOEM供給は順調に拡大しており、パートナーと良好な提携関係を継続してまいります。生産面においては、業容の拡大に応じた適切な生産能力の増加と生産効率の向上に努めるとともに、顧客ニーズに即した発注ツールの開発や製品ラインナップの充実に注力いたします。また、新しいウェディングや撮影スタイルに適応した新しいサービスの開発にも努めてまいります。
(エアリアルイメージング事業)
エアリアルイメージング事業は、空中結像という新しいマーケットの創造にチャレンジしております。事業環境としましては、従来より提案しておりました空中結像による非接触操作が、新型コロナウイルス感染拡大を機に大きな注目を受けております。
当社独自の空中結像技術は高輝度、高精細、高い飛び出し距離などで優位性があります。この技術を活用して画像映像の新しい表現方法の確立を目指しており、結像を可能にするプレートの開発、生産、販売により当社の成長の原動力とすべくチャレンジしてまいります。用途としては、サイネージ用途と、センサーとの組み合わせによる製品組込用途に分けられ、前者はガラス製プレートが、後者は樹脂製プレートが適しており、ガラス製プレートと樹脂製プレートともに開発、生産、販売を進めております。国内外の展示会への出展や活用用途の具体的な提案などにより、プレートの普及を推進してまいります。プレートの生産につきましては、ファブレス形態による生産に加え、技術開発センターを設立し、量産技術の内製化にもチャレンジしてまいります。
また、上記3事業にとどまらず、ベンチャー企業との提携を含め、新しいビジネスや市場の創造に取り組んでまいります。
(2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
今後の見通しとしましては、新型コロナウイルス感染拡大により、世界的な経済停滞が生じており、先行きは厳しい状況で推移するものと思われます。葬儀葬祭業界、写真業界ともデジタル化、IT化に対するニーズが増加していることに加え、新型コロナウイルス感染症の経験を経て、求められるサービスも変化する可能性があります。このような環境のもと、継続して成長していくために、以下の項目を対処すべき課題と認識しております。
① エアリアルイメージング事業の収益化
2011年より開始しましたエアリアルイメージング事業は、そのユニークな技術力、シンプルな構造、利用可能性の広さなどから、展示会やデモンストレーションなどでの評価は高いものの、ASKA3Dプレートの低コストでの量産化には想定以上の時間を要しており、十分に事業として確立していないのが現状です。
新型コロナウイルス感染拡大の状況のもと、空中結像による非接触操作が高い注目を受けており、スピード感をもって受注に注力してまいります。また、ガラス製ASKA3Dプレートについてはサイネージ用途への供給を強化するため、技術開発機能の充実を目的として技術開発センターを設置し、量産化へ向けた取組みを加速してまいります。
② アフターコロナを意識した既存事業のさらなる成長
従来より展開しておりますメモリアルデザインサービス事業、パーソナルパブリッシングサービス事業とも安定した売上、利益を獲得しておりますが、さらなる飛躍を課題として認識しております。
両事業とも、豊富な顧客基盤や技術力を強みとしており、それぞれの顧客に向けたITサービスの開発、普及に努めておりますが、今般の新型コロナウイルス感染拡大により、冠婚葬祭業界や写真業界におきましても変化の兆しが見えており、この変化に対応した製品・サービスの開発や既存製品・サービスの改良が必要であると考えております。
③ イノベーション創出基盤の醸成
変化の激しいこの時代において持続的な成長をするためには、新しい技術との融合や社員のイノベーティブな発想を通じて、新しいサービスの提案、開発が不可欠だと考えております。
そこで、イノベーション推進の専門部署の強化や、広島大学との提携によるイノベーション教育の継続的な実施、社内提案制度の充実などを通じて社内のイノベーション創出基盤を醸成していくとともに、ベンチャー企業との提携などにより社外の技術やノウハウとの融合を進めてまいります。