有価証券報告書-第20期(2022/04/01-2023/03/31)

【提出】
2023/06/23 15:00
【資料】
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【項目】
131項目
(3)戦略
① 社会課題の解決を通じた持続可能な社会の実現
日本では、急速な少子高齢化と人口減少が同時に進行する、かつて誰も経験したことのない時代が到来しています。このような人口動態の変化を背景として、経済動向や国家政策、人々の価値観といった社会のありようは大きく変容し、これまでにない新たな課題が生じています。これらの高齢社会の課題を解決しない限り、持続可能な社会は実現できません。当社グループは、高齢社会の課題解決を事業機会と捉え、「高齢社会に適した情報インフラを構築することで人々の生活の質を向上し、社会に貢献し続ける」ことをグループミッションに掲げています。事業活動を通じて社会課題の解決を図ることで、高齢社会の持続可能性を高めていきたいと考えています。
このような考え方のもと、当社グループでは、高齢社会に関連する3つの社会課題に対し、具体的な解決の方向性を考え、解決を目指し、事業を展開しています。これらの高齢社会における社会課題と解決の方向性を踏まえ、日本においては、キャリア、介護事業者、ヘルスケア、シニアライフの4つの戦略的事業領域で、課題解決に取り組んでいます。
海外においては、アジア・パシフィック地域(APAC)では相対的に「医薬品・医療機器等の普及が遅く、医療の質が十分ではない」という社会課題に対し、メディカルプラットフォーム事業を通じ、「医療の普及と安全性の向上を促進」することで解決を目指しています。また、経済発展や高齢化に伴い世界的に医療サービスに対するニーズが高まる中で「世界的な医療従事者の不足と偏在」が生じているという社会課題に対し、グローバルキャリア事業を通じ世界の医療従事者と医療事業者をつなぐ医療従事者供給プラットフォームを構築することで解決を目指しています。
具体的な社会課題、各事業における取組については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。また、事業活動に伴うリスクについては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。
② 人的資本
(a)人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針
基本的な考え方に記載のとおり、当社グループの成長は社会課題の解決を通して社会貢献へとつながります。長期の時間軸で組織が成長し続けるには、当社グループの成長に必要な能力を有した従業員を確保し続けることが不可欠です。当社グループでは医療・介護従事者向けキャリア事業、介護事業者向け経営支援プラットフォーム事業、健康経営支援プラットフォーム事業、困りごと解決プラットフォーム事業、海外におけるメディカルプラットフォーム事業やグローバルキャリア事業等、多様な事業を展開しており、その運営に関わる従業員も多様であることが求められます。多様性を実現するための前提として、年齢・性別・国籍・人種・民族・障がいの有無・宗教・性的指向・性自認・雇用形態・ライフスタイル等に関わらず、各個人が差別されることなく互いを尊重しあい承認され、ともに成長していく企業風土の醸成に取り組んでいます。また、多様なバックグラウンドを持つ優秀な人材を新卒・中途問わず数多く採用し、従業員のさらなる成長のための支援と、各個人が能力を活かしながら生産性高くやりがいをもって働ける環境の整備を行うことで、多様性を伴った組織規模の拡大が可能だと考えています。
加えて、組織の発展・成長のためには、従業員一人ひとりが成長していくこと、また、従業員のやりがいと組織の理念・ミッションが結びついていくことが、非常に重要です。当社グループは、経営理念である「永続する企業グループとして成長し続け、社会に貢献し続ける」を実現するため、経営原則として「組織と個人の相互発展」「経営プロセスの縦横リンク」を掲げています。経営理念の実現には中長期での持続的な人材育成が不可欠であり、経営原則は人材育成の根幹となるものです。この「組織と個人の相互発展」「経営プロセスの縦横リンク」という考え方により、従業員の成長と理念の浸透を促進することで、各個人の力が組織の力に正しく変換され、組織の発展・成長につながっていきます。
「組織と個人の相互発展」
当社グループは、創業以来増収増益を続け、継続的な成長とそれを通じた社会への貢献を実現し続けています。長期的に組織が成長し続けるには、その構成員である従業員一人ひとりの成長が不可欠です。
当社グループでは、組織の成長によって生まれる新たな機会を個人に提供することで、個人の成長を促進しています。個人の成長によって個人が創出する価値は高まり、グループミッションを各組織から個人目標へとつなぐことで、個人が創出した価値を組織の成長と社会貢献へとつなげています。
機会を通じた従業員の成長が会社の成長につながり、それがまた新たな成長機会の創出につながる、こうした成長と貢献のサイクルを回し続けることで、中長期にわたって組織と個人の相互発展を実現し続けていきたいと考えています。
「経営プロセスの縦横リンク」
経営プロセスとは戦略、人材、オペレーションという経営及び事業運営に求められる3つの側面を統合的に思考し、実行することです。複雑性が高く、長期の時間軸で変化し続ける環境下では、全ての従業員が自立的に経営プロセスを回すことが必要不可欠だと考えています。そのため、当社グループでは、経営者や事業責任者だけではなく、全ての役割の従業員が主体者として経営プロセスを回すことで、より高い価値を創出することを求めています。
また、全社、SU(Strategic Unit:戦略的事業領域)、BU(Business Unit:事業)、個人の各階層で経営プロセスを回すだけではなく、経営プロセスを全社から個人まで縦につなぐことで、グループミッション実現に向けて各階層間の創出する価値を整合させながら、各階層で創出した貢献を全社の貢献へとつないでいます(経営プロセスの縦リンク)。
さらに、隣接する組織間や個人間で経営プロセスを横につなぐことで、シナジーを生み、単独では成し得ないより大きな貢献を生み出します(経営プロセスの横リンク)。
このように経営プロセスを縦と横につなぐことにより、組織と個人の相互発展を実現し、組織一丸となってグループミッション実現を目指していきます。また、継続的な成長を通じて蓄積されたナレッジ及びケイパビリティを組織や従業員間で共有することにより、ひとりでは成し得ないより大きな成長につなげ、社会貢献の総量を増やし続けたいと考えています。
(b)社内環境整備に関する方針
多様な従業員を採用・育成しながら組織規模を拡大し、生産性高く価値を創出し続けるには、バックグラウンドの違いや、育児・介護等のライフステージの変化等、多様な状況下にある従業員が働きやすく、かつ、働きがいのある環境を整備していくことが非常に重要です。各個人が心身ともに健やかに働けるよう従業員の健康維持・増進に取り組むとともに、個人の成長とワークライフバランスを実現するための支援を行う等、主体的なキャリア形成を可能にするための取組を行っています。
<主な取組>・働きやすく働きがいのある環境の整備
‐完全退館時刻の設定
時間内で生産性高く働くと同時に、退社後の自己研鑽やプライベートの充実を促すため、19時30分(※職種により20時30分)を完全退館時刻に定めています。
‐アニバーサリー休暇
各従業員が年1回、任意の日に設定できるアニバーサリー休暇(有給)を付与しています。
‐育児・介護支援制度
育児・介護休業制度のほか、子どもが中学1年になるまで利用できる時短制度や、保育園・学童・ベビーシッター等の利用をサポートする手当の支給等を通じて、育児や介護と仕事の両立を支援しています。
‐社員持株会制度
福利厚生の充実と事業成長に対する意欲の向上を目的として、役職を問わず入会可能な社員持株会制度を設け、10%の奨励金を付与しています。
‐有償ストック・オプションの付与
会社の成長に対する貢献意欲や士気を高めるため、一定のグレード以上の従業員に対して有償のストック・オプションを付与しています。
‐健康経営の推進
代表取締役社長直轄の健康推進室を設置し、従業員の健康促進と生産性向上を推進するための様々な取組を行っています。
‐障がい者採用と個性・能力に応じた配置
従業員数の継続的な増加に合わせ、障がいを持った従業員の雇用数も年々増加しています。
障がいの特性への配慮を前提としながらも、各人の個性・能力・意向に応じた職務への配置を通じ、障がいの有無に関わらず従業員が協働することにより、誰もがやりがいをもって生き生きと活躍できる環境を整備しています。
・成長の支援
‐1on1ミーティング
上長と部下が定期的に1対1で、経営プロセスを前提とした目標設定のすり合わせを行い、また、当社で実現したいキャリアやそれを実現するための課題・具体的な取組等を議論することで、理念の浸透と着実な人材育成を図っています。
‐資格取得支援制度
業務に関わる資格を取得した従業員に対し、受験料や教材費を支給しています。
‐スキルアップ研修
業務スキルや語学力、マネジメントスキルの向上を目的とした各種研修を実施しています。
‐書籍購入制度
従業員の自律的な能力向上や業務遂行に必要となる書籍の購入費用を会社で負担しています。
‐スキルアップ手当
従業員の自己研鑽やキャリアアップを支援する目的で、年1回15万円の手当を支給しています。
③ 「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言に沿った情報開示
気候変動による影響は不確実性が高いため、一定のシナリオを想定したうえで分析を行い、当社グループに与える影響を定性的に評価しています。シナリオについては、現状を上回る追加的な対策がされず温暖化が進行する4℃シナリオ、脱炭素への移行を想定した2℃未満シナリオの2つを検討しました。検討にあたっては、物理的な影響については主にIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の共有社会経済経路・代表的濃度経路シナリオを参照し、移行に伴う影響については主にIEA(国際エネルギー機関)が発行する「World Energy Outlook」における各シナリオを参照しました。
なお、気候変動に伴う主な影響は当社グループにとってのリスクとして捉えておりますが、適切な対応を進めることで、売上の増加、コストの抑制、顧客・人材の獲得、資金調達コストの低減等の機会に転じることが可能だと考えています。
シナリオ
4℃シナリオ気候変動対策の政策・法規制、及び脱炭素社会への移行について、現時点を超える追加的な対策がされないことにより温暖化がさらに進行し、21世紀末の平均気温が産業革命前に比べて4℃程度上昇するシナリオ。気候変動に伴う物理的なリスクが顕在化する。
2℃未満シナリオ気候変動対策の政策・法規制が大幅に強化され、地球温暖化を抑えられ、21世紀末の平均気温が産業革命前に比べて2℃未満の上昇にとどまるシナリオ。脱炭素に向けて社会が大きく変化し、移行に伴うリスクが顕在化する。




項目想定される変化主な影響影響度対応
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自然災害の多発化・激甚化自然災害による物理的被害の増加・自然災害に伴う売上の減少及び損失の発生
・BCP(事業継続計画)対応に係るコストの増加
平時よりBCPを策定し適宜見直すことで、自然災害発生時でも可能な限り事業が継続できるよう対応を定め、トータルでの対応コストを抑制できるよう努めています。
平均気温の上昇気温上昇に伴うオフィスの空調効率の低下・電力利用に伴うコストの増加オフィス内の空調の稼働はフロア別に時間管理し、完全退館時刻を過ぎると自動的に空調を停止する等、必要のない利用を防ぐ取組をしています。
気温上昇に伴う感染症拡大、健康被害・従業員の稼働、生産性の低下に伴う売上の減少及び損失の発生従業員が心身ともに健やかに働くことができるよう、社長直轄の健康推進室を設置し、健康経営を推進しています。常駐保健師による相談窓口を社内に設け、産業医・健康保険組合と連携しながら、健康増進、リテラシー向上、各種相談・メンタルヘルスサポートなど従業員の健康支援に取り組んでいます。
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政策・法規制の強化カーボンプライシング(炭素税、排出権取引等)の適用・電力利用に伴うコストの増加オフィスで利用する照明を蛍光灯からLEDに変更し電力利用料を削減するとともに、オフィスオーナーへの再生可能エネルギーの導入の要請や、オフィス移転時に再生可能エネルギーを導入したオフィスビルを選定する等の取組を行っていきます。
環境に対する意識の高まり気候変動を含めた環境に対する取組の遅れに伴う社会的評価の毀損・顧客流出や人材採用力の低下等に伴う売上の減少TCFD等の枠組みに沿って必要な情報を開示することで、社会的なレピュテーション毀損の予防に努めていきます。
投資家の評価基準の変化・投資判断において環境への取組の重要度が増し、当社グループの取組が不十分と判断されることに伴う株価下落や資金調達コストの増加TCFD等の枠組みに沿って必要な情報を開示することで、投資家が適切な投資判断が行えるようにするとともに、ESG評価機関による評価の改善を図っていきます。
また、長期的な視点を持った投資家との関係性構築を通じ、当社グループの持続的な成長が長期的な企業価値向上に適時適切に変換されることで、安定的な株価形成と資金調達コストの低減を図っていきます。