有価証券報告書-第27期(2022/04/01-2023/03/31)

【提出】
2023/06/30 15:00
【資料】
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【項目】
126項目

事業内容

当社グループの主たる事業は、最先端のサイエンスをいち早く治療現場へ届けるため、世界中の製薬企業にIPを提供し、世界の人々の健康に貢献することです。
当社はミセル化ナノ粒子技術を活用し、ナノ粒子内に低分子などの医薬品を封入した抗がん剤を中心に、革新的な医薬品の開発を進めてまいりましたが、2023年1月、ビジネスモデルを転換いたしました。創業以来実施してまいりました低分子抗がん剤や核酸医薬開発及びDDS技術の知見を活かし、新たな治療技術として注目されるmRNAに特化し、効率的に複数のmRNA医薬の創薬及び知財獲得を進め、後期臨床開発ステージに入る時点までに、臨床開発を実施可能な製薬企業にライセンスアウトいたします。当社は、mRNA医薬の研究開発に国内企業に先駆けて取り組んできた経験と実績及びこれまでに築いた豊富なネットワークを生かして、大手製薬企業の開発体制に匹敵する開発及び事業開発体制を構築しており、多数のパイプラインを同時並行でインキュベートしmRNA治療薬のIPを継続的に創出します。
(1)当社設立の経緯
当社は、東京大学の片岡一則名誉教授(現 当社取締役)、東京女子医科大学の岡野光夫名誉教授(現 当社取締役)らが発明したミセル化ナノ粒子技術による医薬品の開発を目的に、1996年6月に設立されました。同教授らは、医薬品を封入したミセル化ナノ粒子が静脈内投与された場合、薬物が血中に長時間循環することにより、効果が持続する薬物キャリアとなり得ること及びがん組織等の病変部へ集積(標的化)することを示しました。
2022年までに、低分子抗がん剤として、複数のパイプラインの後期臨床開発を進めてまいりましたが、実用化には至らず、開発をすべて中止いたしました。その間、DDS技術が不可欠である核酸医薬の研究も並行して実施しており、その経験を活かしたmRNA創薬に特化した事業に転換することを2023年1月に決定し、新たなビジネスモデルを推進しております。
(2)当社開発品の特長
当社開発品は、mRAN医薬に特化しております。mRNA医薬とは、人工的に製造したmRNAを生体に投与し、mRNAにコードされたタンパク質を体内で発現させることにより疾患の予防もしくは治療を行う医薬品です。COVID-19の感染予防ワクチンの開発成功により、急激に市場が拡大したmRNA創薬分野ですが、感染症ワクチン以外の治療薬等の領域はこれから医薬品としての開発競争が始まります。当社は、国内企業に先駆けて、mRNA創薬ビジネスモデルの旗艦プロジェクトとして、既に変形性膝関節症に対する再生医薬の開発を推進しています。今後、製薬企業や非製薬企業、アカデミア等との共同研究を推進し、新規パイプラインの拡充を推進してまいります。
(3)当社の事業展開
当社は、非臨床試験を実施して得られた研究シーズを製薬会社等に導出し、市場に高品質のmRNA新薬を効率的にもたらすmRNA創薬ビジネスを展開しております。当社がmRNA創薬を推進するうえで、mRNA創薬の製造及び非臨床試験実施における包括的な業務提携関係にある株式会社アクセリード、及びIPガイア株式会社の保有するネットワークからの情報をもとに、当社保有パイプラインの導出活動をIPガイアが支援する包括的な業務提携契約を締結しております。当社はIPガイア及びアクセリードとの一体化により、大手製薬企業の創薬体制に匹敵する、研究開発及び事業開発体制を構築しており、製薬企業が求める質の高いmRNA医薬品候補を創出し、医薬品開発に速やかに進むことが可能となるアセットとして導出してまいります。
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①当社の収益モデル
当社は、mRNA創薬を目指すアカデミアやバイオベンチャー、企業との共同研究を推進し、当社のmRNA創薬にかかるノウハウを活かしIPを創出、非臨床試験まで実施し、mRMA医薬候補のアセットとして、臨床開発が実施可能な大手製薬企業等に導出いたしします。アセットの導出時に、マイルストーンを受領し、また開発に成功し販売に至った場合には、ロイヤリティを受領します。
②当社のパイプラインについて
本書提出日現在、当社パイプラインは以下のとおりです。
(mRNA医薬パイプライン)
RUNX1:
アクセリード株式会社と共同で株式会社PrimRNAを設立し、医師主導第Ⅰ相臨床試験開始に向けた研究開発を行っております。非臨床薬効試験において良好な成績が得られましたので、非臨床安全性試験及び原薬・製剤などの準備を現在進めております。RUNX1(mRNA)は、軟骨の増殖・分化に関わる転写因子RUNX1のmRNA医薬です。軟骨組織の修復を促進することにより、変形性膝関節症の進行を抑制するとともに疼痛の軽減も実現する革新的な疾患修飾型治療薬を目指し、局組織再生mRNA医薬として研究を推進しております。本プロジェクトは、日本医療研究開発機構(AMED)の医療研究開発革新基盤創成事業に採択されております。
(mRNA医薬以外のパイプライン)
これまで実施してまいりましたパイプラインの開発も継続して行っております。
コムレクス®耳科用液1.5%(開発コードENT103):
国内における中耳炎を対象とした第Ⅲ相臨床試験において、主要評価項目を達成し、2022年4月、セオリアファーマ株式会社(以下「セオリアファーマ」といいます。)が外耳炎及び中耳炎を対象に製造販売承認申請を行い、2023年3月、同社は国内製造販売承認を取得しました。 コムレクス®(開発コードENT103)はセオリアファーマとの耳鼻咽喉科領域における共同開発品で、新規耳科用抗菌薬です。2023年6月より販売を開始いたしました。
NC-6100:
公益財団法人がん研究会有明病院において、再発・進行HER2陰性乳がんを対象に医師主導第Ⅰ相臨床試験を実施しております。 NC-6100は、慶應義塾大学との共同開発プロジェクトによる転写因子PRDM14に対するsiRNA DDS製剤です。
TUG1:
脳腫瘍の中でも悪性度が高い膠芽腫を対象とした医師主導第Ⅰ相臨床試験開始に向け、鍵となる非臨床安全性試験を終え現在治験薬の準備などを進めております。 TUG1 ASO(ASO:アンチセンスオリゴ)は、長鎖非翻訳RNA TUG1に対するASO DDS製剤です。本プロジェクトは、名古屋大学との共同研究であり、AMEDの革新的がん医療実用化研究事業に採択されております。