有価証券報告書-第52期(令和2年10月1日-令和3年9月30日)
以下の文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)経営方針
当社グループは、1970年の創業以来、シンクタンク、コンサルティング、ITソリューションの3つの機能を持つ強みを活かし、独創的な知見に基づく企業活動を通じて、お客様の価値創造並びに社会の発展に貢献してまいりました。
2020年に創業50周年を迎えたことを契機に、当社は以下のとおりミッション・ビジョン・コミットメントの3つからなる経営理念を掲げております。
「経営理念」
三菱総合研究所は、豊かで持続可能な未来の共創を使命として、世界と共に、あるべき未来を問い続け、社会課題を解決し、社会の変革を先駆ける
ミッション 当社の果たすべき普遍的な使命
社会課題を解決し、豊かで持続可能な未来を共創する
ビジョン 当社の目指す姿(企業像)
未来を問い続け、変革を先駆ける
コミットメント 当社の約束(役員・社員のマルチステークホルダーへの約束)
第1の約束 研鑽 :社会や顧客への提供価値を磨き続ける
第2の約束 知の統合 :知の結節点となり、多彩な知をつなぐ
第3の約束 スタンス :科学的知見に基づき、あるべき未来への道筋を示す
第4の約束 挑戦 :前例にとらわれず、社会の変革に挑戦する
第5の約束 リアリティ:責任を持って実現に取り組む
本経営理念は、過去50年間に培ってきた当社グループの特長・強みを継承するとともに、これからの時代・社会潮流を見通し、当社の長期的な存在意義・提供価値を再定義したものです。
社会とお客様の持続的な発展のため、新たな経営理念に基づき、多様な社会課題の解決と、あるべき未来の実現に貢献してまいります。
(2)経営戦略
(中期経営計画2023)
当連結会計年度は、「中期経営計画2023」(以下、中計2023)の初年度にあたります。中計2023の対象期間は2021年9月期から2023年9月期までの3カ年ですが、前述の経営理念にもとづき、5年、さらにはその先を見据えた戦略と位置づけています。
中計2023では、目指すべき社会像と企業像を次のとおり掲げています。
●社会像:レジリエントで持続可能な『自律分散・協調型』の社会
●企業像:社会課題解決企業
~新たな経営理念に基づき、社会課題を解決し、社会変革を先駆ける
この社会像・企業像の実現に向け、次の3つの基本方針に基づき事業を推進しております。
① VCP経営
VCPとは、価値創造プロセス(Value Creation Process)の略称です。社会課題を起点に、その解決と未来社会の実現をゴールとして、お客様や社会への提供価値の向上と持続的成長を目指す、当社グループの価値連鎖(バリューチェーン)の展開プロセスを意味するものです(下図参照)。VCPを意識・重視した経営を推進することで、財務・非財務・社会価値それぞれを拡大していくことにつながります。

価値連鎖の重要な構成要素は、
●シンクタンクとしての「研究・提言」(VCP-A)
●お客様や社会の現状と課題の「分析」及び戦略や施策の「構想」(VCP-B)
●事業や制度の「設計・実証」(VCP-C)
●課題解決策の社会やお客様への「実装」(VCP-D)
の4つです。
当社グループが備える価値創造プロセス(VCP-A~D)の4つの機能を連接させ、グループの事業活動をVCPに基づいて推進することで、社会変革の実現を目指します。
これまで、総合シンクタンクである当社の強みであり、収益基盤となってきたのは「分析・構想」事業(VCP-B・C)でした。一方で、社会課題を実際に解決し、社会変革を実現するために「研究・提言」(VCP-A)及び「実装」(VCP-D)の強化・成長が欠かせません。プロセスの中核である「分析・構想」事業(VCP-B・C)を維持しながら、プロセスの起点と終点である「研究・提言」(VCP-A)と「実装」(D)を多面的につないで成長を加速させるため、重点的な投資を行います。
当社グループのVCPは、事業全体を社会課題解決に向けた一連の活動として捉えるものであり、SDGs(*1)、ESG(*2)などの概念も包含した独自のプロセスです。こうした当社グループならではのVCP経営を推進してまいります。
(*1) SDGs:Sustainable Development Goals、2015年9月に国連で採択された国際社会が2030年までに達成
すべき持続可能な開発目標。
(*2) ESG:企業が持続的に成長できるか否かを判断する指標として用いられる、Environment、Social、
Governanceの3要素の総称。
② 連結経営
VCP経営の実効性を高めるために、連結経営による事業のさらなる多角化を図り、攻守両面においてグループとしての競争力を向上させます。特に、ITソリューションや社会実装サービスを含む「実装」(VCP-D)の強化(事業)とグループの持続的成長(経営基盤)の観点から、連結経営を一層強化します。
当社と中核子会社である三菱総研DCS株式会社を中心に、持分法適用会社である日本ビジネスシステムズ株式会社(JBS)、株式会社アイネスを含む多様なパートナーとの連携により、「実装」(VCP-D)領域の事業を一層拡充します。
また、連結経営におけるリスク管理の高度化、業務遂行の生産性・効率性の向上を進め、グループガバナンスを強化します。
③ 新常態経営
新型コロナウイルス感染症が収束に向かうまでの「ウィズコロナ」から収束後の「ポストコロナ」へ、社会環境・事業環境は今後も大きく変化していきます。感染拡大・継続に伴い事業・業績に大きな影響を受けた業種・企業も多く、当社グループにおける特に民間企業のお客様向け事業にマイナスの影響が続く可能性もあります。一方で、こうした状況は、長年の社会課題を解決する機会であり、当社グループにとっての事業機会でもあります。
この状況を見据え、当社の強みである科学的知見に基づき、ICT・AI・IoTなどの先端技術を活用して新たな社会への変革を先駆ける「新常態」の経営を推進します。新たな潮流の分析・研究・提言(VCP-A領域)を強化するとともに、変革を余儀なくされる状況に対応するためのコンサルティングや具体的手法・ノウハウ等ツールを当社グループ自身が変革することで強化し、新常態に向けた事業を加速してまいります。
「ポストコロナ」に向けた働き方改革の推進に加え、リモートワークが浸透する中でのセキュリティ確保や社員の健康管理など新しいタイプのリスクへの対処も強化してまいります。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、社会価値(社会課題解決)・非財務価値(人と組織の持続的成長)・財務価値(事業成長)の3つの創出価値を向上させていく好循環を実現し、多様な提供価値の向上と持続的成長の両立を目指します。

「レジリエントで持続可能な社会像」の実現のために必要な社会解決に向け(社会価値の向上)、当社グループとして人と組織を成長(非財務価値の向上)させるとともに、事業成長もあわせて実現(財務価値の向上)してまいります。
(財務価値)
財務価値については、経常利益及びROEを重要な経営指標とし、これらの持続的向上を中長期的な経営目標として、株主価値の持続的な向上に努めてまいります。
本中計最終年度(2023年9月期)の目標水準
●経常利益 :100億円
●ROE :10%
(非財務価値)
経営の基本方針に沿って人と組織を成長させ、目指す社会像の実現に取り組むために非財務価値の向上に努めてまいります。
具体的には、総合シンクタンクグループとしての社会課題解決力、その源泉である「知」(知的価値)、「人財」(人的価値)、「共創基盤」(社会関係価値)の3つに加え、企業の責務、当社グループの持続的成長の観点から「ESG」の向上に取り組んでまいります。
これらの非財務価値については、本中計期間中、適切な指標の検討・把握を進め、必要に応じて追加・入れ替え等を行いつつ進捗を確認してまいります。
(社会価値)
財務・非財務資本を投入し、目指す社会像の実現を目指します。当社グループ・パートナーによる社会実装に加え、お客様の課題解決や、当社も含む多様な主体による社会課題解決の実現を通じた、社会価値の創出・向上を図ります。
当社では、独自の活動や多様な企業・研究機関・公的団体等との連携によって、取り組むべき社会課題を明確化する活動を重ねてきました。そのなかで、特に重要と考えられ、かつ当社グループが事業基盤を有しており、その解決への貢献が期待できる分野を、「VCP分野」と位置づけ、積極的に取り組んでいます。
具体的には、「ヘルスケア」「人財」「エネルギー」「MaaS(*)」「情報通信」「食農」「循環」「レジリエンス」の8分野において、それぞれ目指す社会像における目標及び関連する当社グループ事業の関連指標を設定し、達成状況を確認していく予定です。
(*) MaaS:Mobility as a Service、住民や旅行者の移動需要に対応して、複数の公共交通やそれ以外の
移動サービスを最適に組み合わせ検索・予約・決済等を一括で行うサービス。
(4)経営環境
今、世界は新型コロナウイルス感染症の拡大と経済活動との両立の模索のなかにあり、ますます「不安定」「不確実」「複雑」「不明瞭」(VUCA(*))な時代となっています。わが国では、長年にわたる構造的問題の解決、デフレ経済の脱却、産業・企業の国際競争力の向上など乗り越えなければならない課題が山積し、お客様や社会が直面する課題はますます多様化かつ複雑化しています。また、社会全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速する中でICTやAIをはじめとして新しい技術が次々と登場し、社会や企業は抜本的な、時に破壊的ともいえる変革を迫られています。
当社グループは、創業以来半世紀にわたって、官公庁や金融機関、民間企業等のお客様に対して、シンクタンク、コンサルティング、ITソリューション機能を組み合わせたサービスを提供し、事業成長を果たしてきました。創業50周年を機に、当社グループは、「未来を問い続け、変革を先駆ける」ことをビジョンとした経営理念に刷新いたしました。
不確実で必ずしも唯一の正解がない時代にあっては、従来、当社グループが強みとしてきた官公庁や金融機関のお客様への政策・戦略立案・提言や調査・分析等に加え、お客様や社会への課題解決手段の実装・実現に踏み込むことへの価値が高まっています。本中計で示したVCP経営に沿い、これら一連の価値連鎖を強化し、お客様や社会にさらに高い価値をお届けしてまいります。
世界的な潮流として、SDGsやESGのような枠組みで目標となる未来社会像を設定し、多くのステークホルダーとともに、自律分散・協調的にビジネスを通じた社会課題解決を図る機会と領域が増えてきています。また、その手段としてのICTやAI、DXの重要性が広く認識されるようになるなかで、担い手となる様々な事業主体が存在・登場し、競合環境は厳しさを増しています。当社グループは、経営理念及び本中計に基づき、目指す未来社会の実現を先駆ける「社会課題解決企業」として、他に類のない独自の地位を確立し、社会的使命を果たすとともに、事業機会の拡大と持続的に成長してまいります。
(*) VUCA:Volatility, Uncertainty, Complexity, Ambiguityの略。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、目指す社会像・企業像を実現するため、中期経営計画2023(以下、中計2023)に掲げた5つの事業並びに経営基盤に係る改革に取り組み、事業上及び財務上の課題に対処します。
① 成長事業改革
当社グループの持続的な成長のためには、独自性の高いサービスを提供し続ける必要があります。中計2023では、当社グループは、DX(デジタルトランスフォーメーション)事業、ストック型(知的資産を活用した汎用サービス提供)事業、海外事業を成長事業と位置づけています。これらを軸に新たな収益基盤の創出と価値創造プロセス(VCP)経営に基づく事業モデル及び事業ポートフォリオへの転換を図ります。
成長事業の開発・育成に向けては、戦略的な先行投資、事業・協業パートナーとの業務・資本提携等を積極的に行い、新たな収益基盤の確立に結びつける未来志向で経営を進めてまいります。
DX事業では、当社、三菱総研DCS株式会社(DCS)、日本ビジネスシステムズ株式会社(JBS)及び株式会社アイネス(アイネス)の4社による連携をさらに進め、グループ横断の事業展開を図りつつ、各社の強みを活かせる分野や対象となるお客様にリソースを重点的に投資していきます。
当連結会計年度では、新たに設置したMRI・DCS対面組織や営業一体化が機能を発揮し、すでに公共DXなどの分野で新規受注の実績が表れてきました。アイネス、JBSを加えた4社連携についても、相互補完やクロスセルで進展がみられました。
ストック型事業は、社会課題を解決し得る要素技術の特定・活用に関する分析力、政策提案力、目利き力に裏づけられた当社グループの知的資産を活用して、継続的かつ汎用性のある価値提供を展開しようとするものです。ヘルスケア、人財、エネルギー、MaaS、情報通信、食農、循環、レジリエンスを重点分野と位置づけ、前述の4社連携に加え、さらに強みを発揮できる柔軟なパートナー連携や戦略的事業マネジメントを進めることで事業拡大を目指します。
海外事業では、ハノイ・ドバイの2拠点を設立しました。新型コロナウイルスの世界的な感染の影響が続くなかでの開設となり、当初計画した活動に制約を伴う面もありますが、可能な範囲で案件開拓や受注活動を進め、一部案件では受注に至りました。引き続き現地での活動を強化し、我が国での社会課題解決経験に基づく事業構想・ノウハウを起点として現地の課題・ニーズに即した事業を展開してまいります。
② 基盤事業改革
成長事業への戦略的な投資を行い、価値創出の循環を生み出すためには、当社グループの価値提供並びに競争力の源泉である基盤事業を維持・強化することが必要です。リサーチ・コンサルティング事業、金融ソリューション事業という当社グループの基盤事業について、選択と集中を進めるとともに、品質及び生産性の向上を図る改革を進めます。
リサーチ・コンサルティング事業は、ヘルスケア・環境エネルギー・モビリティ・人財循環・情報インフラ(5G・電波)・食農など中長期な対応が必要とされる分野で、官公庁・自治体・民間企業に対して社会・制度・システムのあるべき姿を提案しつつ、能動的な事業展開・案件形成を進めています。今後は、VCP経営における社会実装を意識した事業展開をさらに進めてまいります。
金融ソリューション事業は、当社グループやパートナーとの連携を深めることで、金融機関におけるデータの多面活用、DX推進事業創出、金融市場及び金融行政、規制対応の在り方への提言を踏まえた事業創出など、新たな展開を図っています。当連結会計年度は、市場リスク管理や新規制対応の分野で連携効果による受注拡大の成果があった一方で、既存事業の持続可能性やリソース不足などの課題も顕在化しています。引き続きお客様が直面している経営環境を見極め、それに対応する提供価値の向上を図ることで当社グループの業容維持・転換を目指してまいります。
③ シンクタンク事業改革
価値創造プロセスの起点が「研究・提言」です。シンクタンク事業の改革を通じて社会変革をリードする独創的な研究・提言を行うとともに、官における政策検討の場への参画や提案等を行うなど、ステークホルダーへの情報発信力を強化します。また、「シンクタンクDX」の取り組みとして自らデジタル化やAI活用を通じた新たな価値を創出し、シンクタンク業界における破壊的創造を視界に入れます。
研究・提言活動では、公式サイトを通じた「新型コロナウイルス危機対策:分析と提言」において経済、財政、社会、ヘルスケア、環境(カーボンニュートラル)など幅広い分野で情報発信を継続しています。
引き続きシンクタンクの本来の機能である研究・提言力強化に向けて、人財の育成、プロセスの確立、社外ネットワーク活用を通じて研究の質の向上を図ってまいります。
また、「シンクタンクDX」では、DXツールの環境整備を進め、企業・官公庁の企画、研究開発、営業・マーケティング部門等に向けた企画業務DXサービスの提供を6月に開始しました。
④ 人財・風土改革
当社グループにおいては、多彩な分野を横断する高度プロフェッショナル人財が、最も重要な経営資源です。社会課題解決・未来社会実現に向けて事業や提供価値を高めていく中で、必要とされる人財の要件も変化しています。優秀な人財を確保・育成し、存分に能力を発揮・活躍できる環境をさらに充実させるため、働き方改革も含めた人財・風土の改革を進めます。
人財戦略では、VCP経営や連結経営推進に適った人財ポートフォリオを構築するため、新卒・中途両面の採用強化を図るとともに、ダイバーシティや専門性を意識した人事制度、人財育成プランの策定を順次行っています。組織風土面では、刷新した経営理念や行動規準を全社に浸透し、変革に挑戦する組織風土づくりと社員の意識改革を進めてまいります。
働き方改革では、「新常態の働き方(骨太方針)」を策定し、リアルとリモートのベストミックスを目指すとともに、今後の環境変化(ICT、雇用形態多様化、意識変化等)にもスムーズに対応できるインフラの整備を進めています。
⑤ 経営システム改革
会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のためには、株主をはじめお客様・社員・地域社会等のステークホルダーとの調和を図りつつ、透明・公正かつ迅速・果断に意思決定を行うガバナンスを継続的に向上させることが求められます。
当社グループに対する信頼の源は品質にあり、高い品質のサービスを提供してお客様に満足いただくとともに、情報セキュリティなどの面で高い信頼性を確保・維持することが重要です。目覚ましく進展するICTに対応していくうえで、ICTを活用したDX事業拡大や業務生産性の向上といった「攻め」の対応に加え、情報セキュリティに代表される「守り」の対応が、企業ブランド・信頼の維持・強化に欠かせません。
そのため、経営システム改革を通じて、ガバナンスの継続的な高度化と高い品質・信頼性確保に取り組んでいます。具体的には、経営会議のもとで重要事項を諮問する各種社内委員会をはじめとして審査・管理体制を一層充実させております。また、連結経営における総合的なリスク管理体制を強化し、新事業・新常態などに伴う新たなリスクにも能動的な対応を進めております。加えて、経営を支える基盤システムとして、高い信頼性を備えたデジタルインフラ整備、新たな価値創造に貢献するDX推進を図るなど、攻守両面の施策を進めてまいります。
(1)経営方針
当社グループは、1970年の創業以来、シンクタンク、コンサルティング、ITソリューションの3つの機能を持つ強みを活かし、独創的な知見に基づく企業活動を通じて、お客様の価値創造並びに社会の発展に貢献してまいりました。
2020年に創業50周年を迎えたことを契機に、当社は以下のとおりミッション・ビジョン・コミットメントの3つからなる経営理念を掲げております。
「経営理念」
三菱総合研究所は、豊かで持続可能な未来の共創を使命として、世界と共に、あるべき未来を問い続け、社会課題を解決し、社会の変革を先駆ける
ミッション 当社の果たすべき普遍的な使命
社会課題を解決し、豊かで持続可能な未来を共創する
ビジョン 当社の目指す姿(企業像)
未来を問い続け、変革を先駆ける
コミットメント 当社の約束(役員・社員のマルチステークホルダーへの約束)
第1の約束 研鑽 :社会や顧客への提供価値を磨き続ける
第2の約束 知の統合 :知の結節点となり、多彩な知をつなぐ
第3の約束 スタンス :科学的知見に基づき、あるべき未来への道筋を示す
第4の約束 挑戦 :前例にとらわれず、社会の変革に挑戦する
第5の約束 リアリティ:責任を持って実現に取り組む
本経営理念は、過去50年間に培ってきた当社グループの特長・強みを継承するとともに、これからの時代・社会潮流を見通し、当社の長期的な存在意義・提供価値を再定義したものです。
社会とお客様の持続的な発展のため、新たな経営理念に基づき、多様な社会課題の解決と、あるべき未来の実現に貢献してまいります。
(2)経営戦略
(中期経営計画2023)
当連結会計年度は、「中期経営計画2023」(以下、中計2023)の初年度にあたります。中計2023の対象期間は2021年9月期から2023年9月期までの3カ年ですが、前述の経営理念にもとづき、5年、さらにはその先を見据えた戦略と位置づけています。
中計2023では、目指すべき社会像と企業像を次のとおり掲げています。
●社会像:レジリエントで持続可能な『自律分散・協調型』の社会
●企業像:社会課題解決企業
~新たな経営理念に基づき、社会課題を解決し、社会変革を先駆ける
この社会像・企業像の実現に向け、次の3つの基本方針に基づき事業を推進しております。
① VCP経営
VCPとは、価値創造プロセス(Value Creation Process)の略称です。社会課題を起点に、その解決と未来社会の実現をゴールとして、お客様や社会への提供価値の向上と持続的成長を目指す、当社グループの価値連鎖(バリューチェーン)の展開プロセスを意味するものです(下図参照)。VCPを意識・重視した経営を推進することで、財務・非財務・社会価値それぞれを拡大していくことにつながります。

価値連鎖の重要な構成要素は、
●シンクタンクとしての「研究・提言」(VCP-A)
●お客様や社会の現状と課題の「分析」及び戦略や施策の「構想」(VCP-B)
●事業や制度の「設計・実証」(VCP-C)
●課題解決策の社会やお客様への「実装」(VCP-D)
の4つです。
当社グループが備える価値創造プロセス(VCP-A~D)の4つの機能を連接させ、グループの事業活動をVCPに基づいて推進することで、社会変革の実現を目指します。
これまで、総合シンクタンクである当社の強みであり、収益基盤となってきたのは「分析・構想」事業(VCP-B・C)でした。一方で、社会課題を実際に解決し、社会変革を実現するために「研究・提言」(VCP-A)及び「実装」(VCP-D)の強化・成長が欠かせません。プロセスの中核である「分析・構想」事業(VCP-B・C)を維持しながら、プロセスの起点と終点である「研究・提言」(VCP-A)と「実装」(D)を多面的につないで成長を加速させるため、重点的な投資を行います。
当社グループのVCPは、事業全体を社会課題解決に向けた一連の活動として捉えるものであり、SDGs(*1)、ESG(*2)などの概念も包含した独自のプロセスです。こうした当社グループならではのVCP経営を推進してまいります。
(*1) SDGs:Sustainable Development Goals、2015年9月に国連で採択された国際社会が2030年までに達成
すべき持続可能な開発目標。
(*2) ESG:企業が持続的に成長できるか否かを判断する指標として用いられる、Environment、Social、
Governanceの3要素の総称。
② 連結経営
VCP経営の実効性を高めるために、連結経営による事業のさらなる多角化を図り、攻守両面においてグループとしての競争力を向上させます。特に、ITソリューションや社会実装サービスを含む「実装」(VCP-D)の強化(事業)とグループの持続的成長(経営基盤)の観点から、連結経営を一層強化します。
当社と中核子会社である三菱総研DCS株式会社を中心に、持分法適用会社である日本ビジネスシステムズ株式会社(JBS)、株式会社アイネスを含む多様なパートナーとの連携により、「実装」(VCP-D)領域の事業を一層拡充します。
また、連結経営におけるリスク管理の高度化、業務遂行の生産性・効率性の向上を進め、グループガバナンスを強化します。
③ 新常態経営
新型コロナウイルス感染症が収束に向かうまでの「ウィズコロナ」から収束後の「ポストコロナ」へ、社会環境・事業環境は今後も大きく変化していきます。感染拡大・継続に伴い事業・業績に大きな影響を受けた業種・企業も多く、当社グループにおける特に民間企業のお客様向け事業にマイナスの影響が続く可能性もあります。一方で、こうした状況は、長年の社会課題を解決する機会であり、当社グループにとっての事業機会でもあります。
この状況を見据え、当社の強みである科学的知見に基づき、ICT・AI・IoTなどの先端技術を活用して新たな社会への変革を先駆ける「新常態」の経営を推進します。新たな潮流の分析・研究・提言(VCP-A領域)を強化するとともに、変革を余儀なくされる状況に対応するためのコンサルティングや具体的手法・ノウハウ等ツールを当社グループ自身が変革することで強化し、新常態に向けた事業を加速してまいります。
「ポストコロナ」に向けた働き方改革の推進に加え、リモートワークが浸透する中でのセキュリティ確保や社員の健康管理など新しいタイプのリスクへの対処も強化してまいります。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、社会価値(社会課題解決)・非財務価値(人と組織の持続的成長)・財務価値(事業成長)の3つの創出価値を向上させていく好循環を実現し、多様な提供価値の向上と持続的成長の両立を目指します。

「レジリエントで持続可能な社会像」の実現のために必要な社会解決に向け(社会価値の向上)、当社グループとして人と組織を成長(非財務価値の向上)させるとともに、事業成長もあわせて実現(財務価値の向上)してまいります。
(財務価値)
財務価値については、経常利益及びROEを重要な経営指標とし、これらの持続的向上を中長期的な経営目標として、株主価値の持続的な向上に努めてまいります。
本中計最終年度(2023年9月期)の目標水準
●経常利益 :100億円
●ROE :10%
(非財務価値)
経営の基本方針に沿って人と組織を成長させ、目指す社会像の実現に取り組むために非財務価値の向上に努めてまいります。
具体的には、総合シンクタンクグループとしての社会課題解決力、その源泉である「知」(知的価値)、「人財」(人的価値)、「共創基盤」(社会関係価値)の3つに加え、企業の責務、当社グループの持続的成長の観点から「ESG」の向上に取り組んでまいります。
これらの非財務価値については、本中計期間中、適切な指標の検討・把握を進め、必要に応じて追加・入れ替え等を行いつつ進捗を確認してまいります。
(社会価値)
財務・非財務資本を投入し、目指す社会像の実現を目指します。当社グループ・パートナーによる社会実装に加え、お客様の課題解決や、当社も含む多様な主体による社会課題解決の実現を通じた、社会価値の創出・向上を図ります。
当社では、独自の活動や多様な企業・研究機関・公的団体等との連携によって、取り組むべき社会課題を明確化する活動を重ねてきました。そのなかで、特に重要と考えられ、かつ当社グループが事業基盤を有しており、その解決への貢献が期待できる分野を、「VCP分野」と位置づけ、積極的に取り組んでいます。
具体的には、「ヘルスケア」「人財」「エネルギー」「MaaS(*)」「情報通信」「食農」「循環」「レジリエンス」の8分野において、それぞれ目指す社会像における目標及び関連する当社グループ事業の関連指標を設定し、達成状況を確認していく予定です。
(*) MaaS:Mobility as a Service、住民や旅行者の移動需要に対応して、複数の公共交通やそれ以外の
移動サービスを最適に組み合わせ検索・予約・決済等を一括で行うサービス。
(4)経営環境
今、世界は新型コロナウイルス感染症の拡大と経済活動との両立の模索のなかにあり、ますます「不安定」「不確実」「複雑」「不明瞭」(VUCA(*))な時代となっています。わが国では、長年にわたる構造的問題の解決、デフレ経済の脱却、産業・企業の国際競争力の向上など乗り越えなければならない課題が山積し、お客様や社会が直面する課題はますます多様化かつ複雑化しています。また、社会全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速する中でICTやAIをはじめとして新しい技術が次々と登場し、社会や企業は抜本的な、時に破壊的ともいえる変革を迫られています。
当社グループは、創業以来半世紀にわたって、官公庁や金融機関、民間企業等のお客様に対して、シンクタンク、コンサルティング、ITソリューション機能を組み合わせたサービスを提供し、事業成長を果たしてきました。創業50周年を機に、当社グループは、「未来を問い続け、変革を先駆ける」ことをビジョンとした経営理念に刷新いたしました。
不確実で必ずしも唯一の正解がない時代にあっては、従来、当社グループが強みとしてきた官公庁や金融機関のお客様への政策・戦略立案・提言や調査・分析等に加え、お客様や社会への課題解決手段の実装・実現に踏み込むことへの価値が高まっています。本中計で示したVCP経営に沿い、これら一連の価値連鎖を強化し、お客様や社会にさらに高い価値をお届けしてまいります。
世界的な潮流として、SDGsやESGのような枠組みで目標となる未来社会像を設定し、多くのステークホルダーとともに、自律分散・協調的にビジネスを通じた社会課題解決を図る機会と領域が増えてきています。また、その手段としてのICTやAI、DXの重要性が広く認識されるようになるなかで、担い手となる様々な事業主体が存在・登場し、競合環境は厳しさを増しています。当社グループは、経営理念及び本中計に基づき、目指す未来社会の実現を先駆ける「社会課題解決企業」として、他に類のない独自の地位を確立し、社会的使命を果たすとともに、事業機会の拡大と持続的に成長してまいります。
(*) VUCA:Volatility, Uncertainty, Complexity, Ambiguityの略。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、目指す社会像・企業像を実現するため、中期経営計画2023(以下、中計2023)に掲げた5つの事業並びに経営基盤に係る改革に取り組み、事業上及び財務上の課題に対処します。
① 成長事業改革
当社グループの持続的な成長のためには、独自性の高いサービスを提供し続ける必要があります。中計2023では、当社グループは、DX(デジタルトランスフォーメーション)事業、ストック型(知的資産を活用した汎用サービス提供)事業、海外事業を成長事業と位置づけています。これらを軸に新たな収益基盤の創出と価値創造プロセス(VCP)経営に基づく事業モデル及び事業ポートフォリオへの転換を図ります。
成長事業の開発・育成に向けては、戦略的な先行投資、事業・協業パートナーとの業務・資本提携等を積極的に行い、新たな収益基盤の確立に結びつける未来志向で経営を進めてまいります。
DX事業では、当社、三菱総研DCS株式会社(DCS)、日本ビジネスシステムズ株式会社(JBS)及び株式会社アイネス(アイネス)の4社による連携をさらに進め、グループ横断の事業展開を図りつつ、各社の強みを活かせる分野や対象となるお客様にリソースを重点的に投資していきます。
当連結会計年度では、新たに設置したMRI・DCS対面組織や営業一体化が機能を発揮し、すでに公共DXなどの分野で新規受注の実績が表れてきました。アイネス、JBSを加えた4社連携についても、相互補完やクロスセルで進展がみられました。
ストック型事業は、社会課題を解決し得る要素技術の特定・活用に関する分析力、政策提案力、目利き力に裏づけられた当社グループの知的資産を活用して、継続的かつ汎用性のある価値提供を展開しようとするものです。ヘルスケア、人財、エネルギー、MaaS、情報通信、食農、循環、レジリエンスを重点分野と位置づけ、前述の4社連携に加え、さらに強みを発揮できる柔軟なパートナー連携や戦略的事業マネジメントを進めることで事業拡大を目指します。
海外事業では、ハノイ・ドバイの2拠点を設立しました。新型コロナウイルスの世界的な感染の影響が続くなかでの開設となり、当初計画した活動に制約を伴う面もありますが、可能な範囲で案件開拓や受注活動を進め、一部案件では受注に至りました。引き続き現地での活動を強化し、我が国での社会課題解決経験に基づく事業構想・ノウハウを起点として現地の課題・ニーズに即した事業を展開してまいります。
② 基盤事業改革
成長事業への戦略的な投資を行い、価値創出の循環を生み出すためには、当社グループの価値提供並びに競争力の源泉である基盤事業を維持・強化することが必要です。リサーチ・コンサルティング事業、金融ソリューション事業という当社グループの基盤事業について、選択と集中を進めるとともに、品質及び生産性の向上を図る改革を進めます。
リサーチ・コンサルティング事業は、ヘルスケア・環境エネルギー・モビリティ・人財循環・情報インフラ(5G・電波)・食農など中長期な対応が必要とされる分野で、官公庁・自治体・民間企業に対して社会・制度・システムのあるべき姿を提案しつつ、能動的な事業展開・案件形成を進めています。今後は、VCP経営における社会実装を意識した事業展開をさらに進めてまいります。
金融ソリューション事業は、当社グループやパートナーとの連携を深めることで、金融機関におけるデータの多面活用、DX推進事業創出、金融市場及び金融行政、規制対応の在り方への提言を踏まえた事業創出など、新たな展開を図っています。当連結会計年度は、市場リスク管理や新規制対応の分野で連携効果による受注拡大の成果があった一方で、既存事業の持続可能性やリソース不足などの課題も顕在化しています。引き続きお客様が直面している経営環境を見極め、それに対応する提供価値の向上を図ることで当社グループの業容維持・転換を目指してまいります。
③ シンクタンク事業改革
価値創造プロセスの起点が「研究・提言」です。シンクタンク事業の改革を通じて社会変革をリードする独創的な研究・提言を行うとともに、官における政策検討の場への参画や提案等を行うなど、ステークホルダーへの情報発信力を強化します。また、「シンクタンクDX」の取り組みとして自らデジタル化やAI活用を通じた新たな価値を創出し、シンクタンク業界における破壊的創造を視界に入れます。
研究・提言活動では、公式サイトを通じた「新型コロナウイルス危機対策:分析と提言」において経済、財政、社会、ヘルスケア、環境(カーボンニュートラル)など幅広い分野で情報発信を継続しています。
引き続きシンクタンクの本来の機能である研究・提言力強化に向けて、人財の育成、プロセスの確立、社外ネットワーク活用を通じて研究の質の向上を図ってまいります。
また、「シンクタンクDX」では、DXツールの環境整備を進め、企業・官公庁の企画、研究開発、営業・マーケティング部門等に向けた企画業務DXサービスの提供を6月に開始しました。
④ 人財・風土改革
当社グループにおいては、多彩な分野を横断する高度プロフェッショナル人財が、最も重要な経営資源です。社会課題解決・未来社会実現に向けて事業や提供価値を高めていく中で、必要とされる人財の要件も変化しています。優秀な人財を確保・育成し、存分に能力を発揮・活躍できる環境をさらに充実させるため、働き方改革も含めた人財・風土の改革を進めます。
人財戦略では、VCP経営や連結経営推進に適った人財ポートフォリオを構築するため、新卒・中途両面の採用強化を図るとともに、ダイバーシティや専門性を意識した人事制度、人財育成プランの策定を順次行っています。組織風土面では、刷新した経営理念や行動規準を全社に浸透し、変革に挑戦する組織風土づくりと社員の意識改革を進めてまいります。
働き方改革では、「新常態の働き方(骨太方針)」を策定し、リアルとリモートのベストミックスを目指すとともに、今後の環境変化(ICT、雇用形態多様化、意識変化等)にもスムーズに対応できるインフラの整備を進めています。
⑤ 経営システム改革
会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のためには、株主をはじめお客様・社員・地域社会等のステークホルダーとの調和を図りつつ、透明・公正かつ迅速・果断に意思決定を行うガバナンスを継続的に向上させることが求められます。
当社グループに対する信頼の源は品質にあり、高い品質のサービスを提供してお客様に満足いただくとともに、情報セキュリティなどの面で高い信頼性を確保・維持することが重要です。目覚ましく進展するICTに対応していくうえで、ICTを活用したDX事業拡大や業務生産性の向上といった「攻め」の対応に加え、情報セキュリティに代表される「守り」の対応が、企業ブランド・信頼の維持・強化に欠かせません。
そのため、経営システム改革を通じて、ガバナンスの継続的な高度化と高い品質・信頼性確保に取り組んでいます。具体的には、経営会議のもとで重要事項を諮問する各種社内委員会をはじめとして審査・管理体制を一層充実させております。また、連結経営における総合的なリスク管理体制を強化し、新事業・新常態などに伴う新たなリスクにも能動的な対応を進めております。加えて、経営を支える基盤システムとして、高い信頼性を備えたデジタルインフラ整備、新たな価値創造に貢献するDX推進を図るなど、攻守両面の施策を進めてまいります。