有価証券報告書-第12期(平成27年1月1日-平成27年12月31日)

【提出】
2016/03/29 15:07
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84項目

事業等のリスク

当社の事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスク事項を以下に記載しております。あわせて、必ずしもそのようなリスクに該当しない事項についても、投資者の判断にとって重要であると考えられる事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。なお、本項の記載内容は当社株式の投資に関する全てのリスクを網羅しているものではありません。
当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容もあわせて慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
なお、本項記載の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
1.事業環境に由来するリスクについて
(1) 抗体医薬品市場
平成26年11月現在、欧米で上市されている治療用抗体は47品目あり、年平均4品目が上市されている最近の動向から平成32年には約70品目に達するとの予測もある等、抗体医薬品市場は安定的に成長するものと見込んでおります。しかしながら、各種疾患のメカニズムや病態の解明により、疾患特異的に作用する分子標的低分子医薬の開発、更に低分子特有の副作用を軽減するために疾患部位だけに到達するデリバリーシステムの開発等により想定どおりに市場が拡大しない場合には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。また、平成25年11月に新規制定された再生医療関連法や改正薬事法等による再生医療による根本的な治療の普及等も抗体医薬品市場の拡大に影響を与える1つの要因と言えます。
(2) 技術革新
当社が属する医薬品開発分野では技術革新が著しく速いため、独自の創薬基盤技術で常に競合優位性を確保すべく、当社は内外の英知と資源を結集してダイナミックに研究開発を展開しております。
完全ヒトADLib®システムは、治療用としての機能性を持つヒト抗体を数週間で作製することを可能とするものであり、将来的なビジョンとして「パンデミック等の新興感染症の発生に即応し、安全で有効な抗体を迅速に提供すること」や「患者さんから疾患に関連する細胞や組織の提供を受け、最適な抗体を迅速に作製・選択するオーダーメイド医療を実現する」等に対応することを描いております。
しかしながら、急激な技術革新等により医薬品開発分野での競合優位性が保持できない場合、また、必要な技術進歩を常に追求するために想定以上の費用と時間を要する場合は、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 他社との競合
競合他社が同じターゲットで優れた機能をもつ抗体を創出した場合は、導出候補先である製薬企業へのライセンスアウト活動が容易でなくなる可能性があります。また、複数の同業他社の参入に伴いアライアンス活動の競争が激化し当社事業の優位性に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 法的規制等
平成16年2月に「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」(遺伝子組換え生物等規制法)が施行されました。当社の完全ヒトADLib®システムの技術開発には、当該法律が適用されます。今後、法改正等により規制が強化された場合には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 海外取引
当社は、全世界の製薬企業等を対象とした事業展開を図っており、製薬企業等に対して創薬基盤技術を紹介し、取引開始に向けた交渉を行っております。今後、当社の海外における事業展開が進展し、海外の製薬企業等との取引規模が拡大した場合、海外における法的規制や商取引慣行等により、当社の事業展開が制約を受ける可能性があります。また、外貨預金においては、急激な為替相場の変動が生じた場合、当社の財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
2.事業内容に由来するリスクについて
(1) 特許権
当社が創製した技術等について、当社の特許権を侵害されるリスク又は当社が他社の特許権を侵害してしまうリスクがあります。こうしたリスクに対応するために、積極的かつ速やかに特許出願等を行うことで排他性の確保を図るとともに、特許情報データベース等を活用して情報収集を行い、当社特許権の侵害及び他社関連特許権の早期発見・対応に努めております。すでに基盤技術特許は国内外で特許が成立しておりますが、第三者の特許の存在により特許侵害訴訟を提起された場合には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 特定の技術への依存
当社は、理研と創薬基盤技術であるADLib®システムに関する特許ライセンス契約を締結し、積極的な研究開発により技術改良を行いながら事業を展開しておりますが、競合他社が画期的な技術で先行した場合や特許期間が満了した場合、また、当社の技術が他の安価な技術で代替できる場合や技術自体が陳腐化した場合、あるいは当社の技術改良の対応が遅れた場合は、当社の技術優位性が低下し、事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 特定の取引先への依存
当社は、中外製薬グループと抗体医薬品開発に係る研究契約を締結しており、平成27年12月期における当社の売上高に占める同社グループの割合は高い水準となっております。当社では事業の核となるADLib®システムの更なる技術改良を推進し、付加価値を向上させることで、その他製薬企業等からの収益を高めながら、各クライアントとの良好な取引関係を維持・継続していく方針であります。
しかしながら、中外製薬グループの経営方針の変更による委託業務量の減少や契約条件の変更、また本契約の解除等が生じた場合には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 複数の製薬企業との関係について
当社が製薬企業と共同研究契約を締結する場合、当該契約が定めるターゲット(抗原)に重複が生じないよう配慮しておりますが、研究内容によっては、一部に重なりが発生する可能性も考えられます。その結果、当社がどちらか一方の企業との共同研究の機会を喪失することで当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 提携先に影響されるリスク
当社は、治療用抗体創出のため戦略的アライアンス推進の一環として共同研究での補完関係を前提とした事業を推進しております。しかしながら、提携先の技術及び研究開発の進捗に大きな差が生じた場合、また経営不振や経営方針の変更があった場合には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 収益計上について
契約の締結時期、医薬品開発の進捗状況、医薬品販売開始時期等の遅れによる収益上の期ずれ、また何らかの事由により医薬品開発、販売が中止となる場合には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 事業計画の主な前提条件について
① 既存提携先との提携事業の確実な推進
当社は、中外製薬グループや富士レビオをはじめとした既存提携先との継続的な事業提携を基盤として事業計画を策定しております。しかしながら、当社の想定どおりに事業提携が進捗しない場合、あるいは想定していた成果が得られない場合には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
② 取引先数及び契約締結数の増加
当社は、複数の製薬企業への継続的な導出活動による契約獲得を目指し、事業計画を策定しております。当社の事業特性として、契約金額が計画を下回る場合、契約締結時期が計画よりも遅れる場合、計画している契約が締結できない場合等には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
③ 医薬品開発の進捗状況、規制当局への申請時期と規制当局からの承認時期
当社は、契約締結時に生じる一時金の他、医薬品開発の進捗に応じて生じるマイルストーン、医薬品販売後に獲得するロイヤルティの収益獲得を前提とした事業構造となっております。
医薬品の開発には、一般的に探索研究、創薬研究、開発、製造、販売のプロセスがあり、抗体医薬品開発においては、初期の研究から販売まで一般的に6.5年~9年の期間が必要となり、各プロセスの進捗や必要となる期間は、対象疾患、開発者の経営状況、規制当局の審査判断等の影響を受けることがあります。
当社はこのような状況を鑑み、医薬品開発の進捗状況や規制当局への申請時期と規制当局からの承認時期等を勘案し事業計画を策定しておりますが、必ずしも当社が計画しているとおりになるわけではありません。医薬品開発の進捗が計画を下回る場合、規制当局への申請時期が計画よりも遅れる場合、規制当局からの承認時期が計画よりも遅れる場合等には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
④ 当社の創薬基盤技術に関する研究開発の進捗
当社は、ADLib®システムのバージョンアップをはじめとした研究開発活動の進捗を前提として、事業計画を策定しております。しかしながら、研究開発活動を中断せざるを得ない場合、研究開発に想定以上の開発コストがかかる場合、あるいは研究開発から想定どおりの成果が得られない場合等には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(8)減損会計のリスク
当社は事業用の有形・無形の固定資産を保有しておりますが、経営環境や事業の著しい変化などにより事業計画が想定どおり進まない場合や価値の低下があった場合、減損会計の適用により当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
3.その他のリスクについて
(1) 経営管理体制
① 小規模組織であること
当社は小規模な組織であるため、研究開発体制及び社内管理体制もこの規模に応じたものとなっております。このような限られた人材の中で、業務遂行上、取締役及び幹部社員が持つ専門知識・技術・経験に負う部分が大きいため、当社の業容の拡大に応じた人員の増強や社内管理体制の充実等を図っておりますが、一部の取締役及び執行役員の退職により事業活動に不備が生じた場合には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
② 特定の人物への依存
当社の経営戦略、研究開発並びに事業開発等の事業推進については、当社代表取締役、取締役に大きく依存してまいりました。これらの人材は、業務に必要となる知識や経験及びスキルを有し、当社の事業において重要な存在でありますが、当社ではこれら特定の人材に過度に依存しない経営体制を構築するため平成27年4月より執行役員制度を導入し組織体制の強化を図っております。しかしながら、このような状態においても、これらの取締役や執行役員等の業務執行が何らかの理由により困難となる場合には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
③ 人材の確保・育成等
当社の事業を組織的に推進していくためには、高度な専門的知識や技能、経験を有する人材の確保が不可欠であります。当社は優秀な人材を採用及び確保しながら教育研究等通じてその育成に努めておりますが、このような人材が短期間に大量に流出した場合には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 過年度の経営成績
① 社歴が浅いこと
当社は社歴が浅い会社であるため、業績の期間比較を行うための十分な財務数値が得られておりません。従って、過年度の経営成績及び財政状態だけでは、今後の当社の業績を判断する材料としては十分な期間とは言えないと考えております。
② マイナスの繰越利益剰余金の計上
当社は、創業時よりADLib®システムを利用した医薬品開発のための研究開発活動を重点的に推進してきたことから、多額の研究開発費用が先行して計上され、第1期から第12期まで当期純損失を計上しております。平成27年12月期(第12期)には、△4,343,594千円の繰越利益剰余金を計上しております。当社は安定的な利益計上による強固な財務基盤の確立を目指しておりますが、事業が計画どおりに進展せず、当期純利益を計上できない場合には、マイナスの繰越利益剰余金が計画どおりに解消できない可能性があります。
③ 資金調達
当社では、研究開発活動における成果創出のため多額の研究開発費が先行して計上され、継続的な営業損失が生じております。今後も事業運転資金や研究開発投資及び設備投資等の資金需要が予想されます。製薬企業等とのアライアンスによる収益や新株予約権の権利行使等によるキャッシュイン及び人件費や研究開発活動にかかる投資活動等のキャッシュアウトを見込んだ資金計画を策定しておりますが、充分な事業活動資金を確保できない場合には、当社の事業継続に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 新株式の発行による株式価値の希薄化
当社は資金調達を目的とした増資や新株予約権行使による新株式の発行を機動的に実施していく可能性があります。新株式の発行は当社の事業計画を達成する上で合理的な資金調達手段であると判断しておりますが、発行済株式総数が増加することにより、当社株式の1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。当社は役職員に対して新株予約権を付与しており、今後も優秀な人材の採用や役職員の業績向上に対する意欲を高めるインセンティブとして活用し、当社の中長期的な企業価値の向上を図ることを目的として新株予約権を付与していくことを予定しております。
(4) 営業機密の漏洩
当社における事業では、当社は顧客である製薬企業から抗原の情報を預かる立場にあります。従いまして、当社は役職員との間において顧客情報を含む機密情報に係る契約を締結しており、さらに退職時にも個別に同様の契約を締結し顧客情報を含む機密情報の漏洩の未然防止に努めております。また、抗原名をプロジェクトコード化した社内共通言語を用いた顧客情報管理を実施するとともに、顧客情報へのアクセス制限も行っております。しかしながら、万一顧客の情報が外部に漏洩した場合は、当社の信用低下等により当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 自然災害等の発生
当社は、東京都渋谷区及び川崎市宮前区に研究所を設置しており、事業活動や研究開発活動に関わる設備及び人員が同研究所に集中しております。そのため、同研究所の周辺地域において、地震等の自然災害、大規模な事故、火災、テロ等が発生し、当社が保有する抗体ライブラリの滅失、研究所設備の損壊、各種インフラの供給制限等の不測の事態が発生した場合、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。