四半期報告書-第15期第3四半期(平成30年7月1日-平成30年9月30日)

【提出】
2018/11/14 15:00
【資料】
PDFをみる
【項目】
27項目

財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

文中の将来に関する事項は、当第3四半期会計期間の末日において当社が判断したものであります。
(1)業績の状況
当第3四半期累計期間におけるわが国経済は、政府の経済政策の効果により、企業収益及び雇用環境は、緩やかな回復傾向が見られております。一方で、国内における個人消費の弱さに加え、周辺地域情勢の不安定化、米国通商政策の動向に対する警戒感が増大するなど、世界的な経済情勢に対する懸念は払拭されておらず、依然として先行き不透明な状況が続いております。
わが国医薬品業界においては、医療費抑制策により医療用医薬品市場の伸びが鈍化しており、グローバル医薬品開発による世界市場での展開が一層重要になっております。
このような経営環境の中にあって、当社は、より高い有効性及び効率的な生産が可能な付加価値の高い「*次世代ロジカルワクチン」の創製を目指す「次世代バイオ医薬品自社開発事業」、ならびに安定的な収益確保実現を目指す「バイオ医薬品等受託製造事業」の2事業を中心に取り組んでまいりました。
「次世代バイオ医薬品自社開発事業」においては、平成29年10月31日に、塩野義製薬株式会社と締結した、ヒト用感染症予防ワクチンをはじめとする創薬に関する基盤技術整備、ならびに当社が次世代バイオ医薬品自社開発事業で開発を進めている自社開発パイプラインの一部及び自社開発パイプライン以外の新規開発候補ターゲットを当初の開発候補品として選定し基礎的研究を進めることを目的とした資本業務提携に基づき、基盤技術整備及び開発候補品の基礎的研究に係る研究開発活動を積極的に推進しております。平成30年5月29日に、資本業務提携契約にてあらかじめ定められた半年毎の成果達成状況に基づき、第1回マイルストーン条件を達成したことを確認、第2四半期において当該マイルストーンに係るフィーを受領いたしました。また、平成30年10月25日に、第2回マイルストーン条件を達成したことが確認されました。当該第2回マイルストーン達成確認に係る売上計上に伴い、平成30年2月14日に開示した通期業績予想の売上高計画102百万円は達成する見込みであります。本書提出日現在においては、第3回マイルストーン条件達成に向けた基盤技術整備に係る研究開発活動を推進しております。並行して進めている開発候補品の基礎的研究については、複数の開発候補品において次世代ロジカルワクチンの創製に係る重要な知見を得つつあり、開発候補品の選定に係る検討が進展しております。
自社開発パイプラインについては、これまでの提携関係の整理等に伴い、新たに以下の開発コードを付与し、独自技術に基づき研究開発を推進しております。なお、本書提出日現在における進捗は、いずれも基礎的研究段階にあります。
・UMN-101:組換え季節性インフルエンザワクチン
・UMN-102:組換え新型インフルエンザワクチン
・UMN-103:組換えロタウイルスワクチン
・UMN-104:組換えノロウイルスワクチン
また、平成29年6月26日及び平成29年12月1日に、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(以下、「医薬健栄研」といいます。)と締結した、医薬健栄研が保有する新規**アジュバントシーズ及び当社が保有するワクチン等製造技術を融合し、新規ワクチンをはじめ最先端バイオ医薬品を創出することを目的とする共同研究契約に基づき、「次世代ロジカルワクチン」の創製に向けた研究開発活動を推進しております。当社の複数のワクチン候補抗原と医薬健栄研の複数のアジュバントの最適な組み合わせを見出すことを目的とした動物における免疫応答の解析を実施中で、次世代ロジカルワクチンの創製につながる知見を得つつあり共同研究が進展していることから、平成30年6月22日に、共同研究期間を平成31年6月まで延長することで合意いたしました。
一方、「バイオ医薬品等受託製造事業」においては、前事業年度に受注した大学等研究機関からの案件2件を納品いたしました。売上確保に向け、引き続き、塩野義製薬株式会社との提携に資する案件を中心に大学及び公共研究機関からの受注に取り組んでおります。
新規開発パイプラインの導入については、これまでの大学及び公共研究機関との受託の実績から、研究段階の製造受託にとどまらず、製品化も想定した案件候補も出てきており、新規開発パイプラインの導入経路の一つとして積極的に取り組んでおります。
平成30年7月31日付「特別損失の計上に関するお知らせ」にて開示した通り、秋田工場土地に関し、時価の著しい下落が認められるため、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、第2四半期累計期間において、80,605千円の減損損失を特別損失として計上いたしました。また、平成30年10月31日付「ジカウイルス感染症ワクチン開発に関する基本契約解約及び特別損失の計上に関するお知らせ」にて開示した通り、塩野義製薬株式会社との資本業務提携契約等の状況ならびに昨今のジカウイルイスの感染状況等を考慮し、当社における開発優先度が低いことから、脱退を協議しておりましたジカ感染症ワクチン開発のためのコンソーシアムについて、基本契約を解約し、コンソーシアムから脱退することで、Protein Sciences Corporation(本社所在地:米国コネチカット州 代表者ミレリ・フィノ)と合意いたしました。基本契約解約にあたり、支出した費用の当社負担分348,706米ドル(36,272千円 換算レート:米ドル=104.02円)について、事業整理損として特別損失に計上いたしました。これら特別損失計上に対し、研究開発費及び一般管理費の進捗状況ならびに第4四半期以降における費用想定より、役員報酬削減をはじめとするコスト削減を実施、人件費、消耗品費、外注費を中心に、特別損失計上額と同額程度の費用減少を見込んでいることから、特別損失の影響をほぼ吸収する結果、平成30年2月14日に開示した平成30年12月期通期業績予想への影響は軽微であります。
財務面におきましては、平成30年10月31日付にて、第1回無担保転換社債型新株予約権付社債に関し、当該新株予約権付社債1,460,200千円(4,900千株)のうち745,000千円(2,500千株)について、割当先である塩野義製薬株式会社より行使請求がなされた結果、当事業年度第4四半期において、資本金及び資本準備金がそれぞれ372,500千円増加いたします。当該行使により、塩野義製薬株式会社が保有する当社普通株式は3,100千株、持分比率は20.27%となります。
なお、平成29年12月期に債務超過を解消したことから、平成30年3月30日付にて、株式会社東京証券取引所において、上場廃止に係る猶予期間入り銘柄から解除されております。
以上の結果、当第3四半期累計期間の売上高は、53,610千円(前年同四半期比1,223.5%増)となりました。一方、塩野義製薬株式会社との業務提携に係る研究開発費用、横浜研究所実験環境整備費用及び秋田工場再立ち上げ費用等を計上したことにより、営業損失は469,630千円(前年同四半期は412,034千円の営業損失)、経常損失は470,056千円(前年同四半期は60,994千円の経常損失)、四半期純損失は、特別損失として減損損失を80,605千円及び事業整理損を36,272千円計上したことにより587,412千円(前年同四半期は61,471千円の四半期純損失)となりました。
なお、当社は、医療用医薬品の研究開発及びこれに関連する事業の単一セグメントであるため、セグメント別の業績に関する記載を省略しております。
*次世代ロジカルワクチン:当社が目指す次世代ロジカルワクチンとは、これまで10年以上に亘り開発してきたバイオ医薬品技術プラットフォームの各種知見・ノウハウ・技術を活用して、ヒト用感染症予防ワクチンをはじめとする次世代バイオ医薬品の原薬となる組換えタンパク抗原の製造技術、アジュバント技術及び製剤/ドラッグ・デリバリー技術を統合したワクチンの開発コンセプトです。次世代ロジカルワクチンにより、対象となる感染症に最適な高い有効性及び高生産性の実現を目指しています。すなわち、製剤/ドラッグ・デリバリー技術を活用して、対象となる感染症毎に最適な免疫を誘導することにより、高い有効性を実現することが可能となります。また、アジュバント技術を活用して、より少ない抗原量で高い有効性を実現するのみならず、組換えタンパク抗原を効率よく生産する技術により、当社の現生産体制にて市場をカバー可能な供給量を確保することが可能になるとともに、コスト低減に寄与することが可能となります。
**アジュバント:ワクチン等の有効性を高めるための免疫増強を目的とする医薬品添加物
(2)キャッシュ・フローの状況
当第3四半期会計期間末における現金及び現金同等物の残高は、前事業年度に比べ585,751千円減少し、1,148,520千円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前四半期純損失586,934千円等により、451,612千円の支出(前年同四半期は472,849千円の支出)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得等により、133,539千円の支出(前年同四半期は50千円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、新株予約権の発行により、599千円の支出(前年同四半期は102,916千円の収入)となりました。
(3)経営方針・経営戦略等
当第3四半期累計期間において、当社が定めている経営方針・経営戦略について重要な変更はありません。
(4)研究開発活動
当第3四半期累計期間における当社の研究開発費の総額は340,286千円であります。
なお、当第3四半期累計期間において、当社の研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(5)継続企業の前提に関する重要事象を改善するための対応策について
当社は、「1 事業等のリスク」に記載した、継続企業の前提に関する重要事象の存在する当該状況を解消するべく、以下の対策を講じ、当該状況の改善に努めてまいります。
① 塩野義製薬株式会社との資本業務提携に係る第1フェーズにおける開発マイルストーンの着実な達成及び提携第2フェーズへの移行
塩野義製薬株式会社との資本業務提携に係る研究開発業務に経営資源を集中し積極的に推進することにより、提携第1フェーズに係る第3回以降の開発マイルストーンの着実な達成を実現し、計画通りのマイルストーン収益の収受を目指してまいります。また、提携第2フェーズへの移行を通じて、ライセンス契約その他の協業スキームの発展を目指すとともに、開発候補品の本格的な開発進展に伴う収益向上を目指してまいります。
② 第1回無担保転換社債型新株予約権付社債に係る新株予約権の転換の実現
第1回無担保転換社債型新株予約権付社債に係る新株予約権の転換について、本書提出日現在において745,000千円(2,500千株)が当社普通株式に転換された結果、未転換の残高は715,200千円(2,400千株)となっております。当該未転換残高に関し、上記①における開発マイルストーンを引き続き計画通りに達成することにより、割当先である塩野義製薬株式会社における転換政策に関して協議し、着実に当社普通株式への転換を実現、当社財務基盤の確実な強化を目指してまいります。また、提携第2フェーズ移行を通じて、平成32年12月期以降において必要となる長期的な研究開発資金を含む事業資金の獲得を目指してまいります。