有価証券報告書-第18期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社はiPS細胞及び体細胞に関する世界最先端の研究成果を広く一般的に利用できる形で事業化することで、研究開発をより促進し、さらに、再生医療など次世代医療を通じて人々の健康福祉に貢献することを目指しています。
短中期的な事業の柱としてiPS細胞に関連した研究試薬や創薬支援サービスを提供する「研究支援事業」を推進し、中長期的な成長戦略として巨大市場が見込める「メディカル事業」へ積極的に投資することにより、当分野のマーケットリーダーを目指します。
また、真のグローバル企業として成長していくことも当社の大きな基本方針としています。病気や医療ニーズに国境はなく、再生医療を含む次世代医療は全世界中の人々から求められています。現時点で、市場の大きい米国、欧州、日本、また将来大きな成長が見込めるインドにそれぞれ拠点を有しており、事業展開を進めております。
さらに、再生医療分野において持続的な成長を可能にするために顧客、社員、事業パートナー、株主といった重要なステークホルダーのバランスの取れた関係を重視し、これらのステークホルダーと長期的にWin-Winの関係となれる体制を構築してまいります。また、我々は社会の一員であるという自覚を持ち、社会全体への貢献についても重視してまいります。
(2)経営戦略等
当社の中核事業領域であるiPS細胞は、山中伸弥教授によるヒトiPS細胞の発明以降、世界中で研究が盛んに行われております。
最近では、iPS細胞を活用した病態解明や再生医療への応用など、実用的な研究開発が多く行われるようになりました。2017年には、希少難病の患者から作製したiPS細胞を活用して病態を解明し、新薬候補の治験へつなげた事例が報告され、さらに、再生医療に関しても、加齢黄斑変性、パーキンソン病に続き、重症心筋症及び角膜疾患でも臨床研究/試験が開始されました。
当社では、前者のようにiPS細胞を病態解明や創薬研究に使用する事業を「研究支援事業」、後者の再生医療を「メディカル事業」と位置づけ、2つのセグメントに分け、推進しております。
現時点では、研究支援事業の売上が90%以上を占めており、今後とも、短中期的な主力事業としてグローバルに推進してまいります。一方、メディカル事業では、現在、脊髄小脳変性症を対象とした再生医療製品ステムカイマル及び、筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び横断性脊髄炎等の中枢神経系疾患を対象としたiPS神経グリア細胞の研究開発を進めております。これら再生医療製品は中長期的な成長事業として、積極的な投資を行い、早期の製造販売承認の取得を目指します。
当社の基本事業戦略を下記にまとめます。
① 積極的なグローバル化の推進
当社では、日本に加え、米国、欧州、インドにも拠点を保有しております。いずれの拠点も、販売、製造、研究開発の機能を有しており、各拠点が有機的に連携しながらグループシナジーを追求しています。
営業では、各拠点がそれぞれの地域の顧客をカバーしており、時差や言語の壁なく営業活動を推進しております。日本市場に加え、バイオ業界における最大の市場である米国、それに続く欧州、さらに世界人口第2位を誇るインドの4拠点をカバーすることで、ターゲット顧客である世界中の多くの大学/公的研究機関及び製薬企業等にアクセスが可能になっております。各地域で製造している製品やサービスを別の地域で販売することで、売上を拡大してまいります。
② 研究支援事業とメディカル事業による持続的成長モデル
研究支援事業では、大学/公的研究機関及び製薬企業等を顧客として、研究試薬や細胞などの研究用製品及びiPS細胞作製受託などのサービスを提供しております。研究用途であるため、医薬品のような製造販売承認は必要とされず、新しい技術を比較的短期間で事業化し収益を上げることができます。
現在、世界中の製薬企業では、動物愛護の観点や、ヒトと動物の種の違いによる試験結果の差といった問題点などから「動物実験からヒト細胞実験」への大きなシフトが進んでいます。今後、ヒト細胞実験が普及することで、これまで十数年かかっていた新薬開発のプロセスが大幅に短縮され、さらに、従来と比べて性能の高い新薬が開発できることが期待されています。中でもヒトiPS細胞はその中心的存在として注目を集めており、例えば、アルツハイマー病患者から作製したiPS細胞を研究で使うことで、アルツハイマー病の病態解明及び新薬開発が加速されると期待されています。
当社では、iPS細胞を中心とした幅広い「ヒト細胞ビジネスプラットフォーム」を有しており、競争優位性の高い製品やサービスを世界中で展開し短中期の収益の柱として推進しております。
メディカル事業では、再生医療及び臨床検査を実施しております。再生医療に関しては、上市までに臨床試験を行い製造販売承認を取得する必要があるため、研究支援事業より事業化に時間が必要とされますが、日本では2014年の法改正により、世界で最も再生医療の産業化に適した環境が整いつつあります。「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(通称 薬機法)」では、治験において安全性が確認され、有効性が推定された再生医療等製品に対して早期承認(条件・期限付き承認)を与えることが可能になりました。これにより、患者様に対して新たな治療機会を早期に提供すると共に、治験期間の短縮や治験費用の削減が期待できます。
また、経済産業省の報告書(「平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備「根本治療の実現」に向けた適切な支援のあり方の調査」)によると、再生医療産業のグローバルでの市場規模は2030年で約5~10兆円となっており、今後、巨大市場に成長することが見込まれています。
このように、再生医療を中長期的な成長事業と位置づけ、早期の製造販売承認の取得を目指します。
短中期的な収益の柱である「研究支援事業」と、中長期的な成長事業である「メディカル事業」の両方を組み合わせることで、短期→中期→長期と、持続的な成長を目指します。
③ 最先端技術による持続的な技術優位性の確保
iPS細胞は世界中で研究開発競争が繰り広げられており、飛躍的に技術が進歩してきました。当社は、引き続き技術開発を積極的に推進することで競争力の強化を図ってまいります。また、リプロセルグループ内の各要素技術を組み合わせ、シナジーを追求することで競争優位性の高い新規ビジネスの開発を行ってまいります。引き続き、世界中のトップ大学及び企業等とのコラボレーションを通じて、世界最先端の技術を積極的に開発・導入してまいります。
(3)経営環境
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が進む中、米国での失業率の増加など世界経済全体への影響が大きく、当社グループの拠点である、日本、米国、英国、インドでも経済の先行きが不透明な状況が続いております。一方、ロックダウン等の規制は各国とも徐々に解除されており、適切な感染拡大防止策を行いながら経済活動を再開する動きが出ております。
当社の事業はライフサイエンス分野に属しており、大学/製薬企業の研究所及び医療機関が対象顧客であるため本質的に新型コロナウイルスの影響を受けにくいと考えております。但し、顧客先となる大学/製薬企業の研究所において一時的に研究活動が制限されているため、研究支援事業は短期的な影響を受けると予想しております。一方、メディカル事業に関しては、現時点で影響は出ておらず、今後とも影響は限定的と考えております。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社が持続的に成長して企業価値を高めるとともに、我々のビジョンやミッションを達成するために優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題を以下のように考えております。
① 全社的課題
1)人材の確保・育成
当社の事業は新しい領域であり、技術及びビジネスの両面で、新しい取り組みが必要とされます。また、変化が非常に大きく、ビジネスもグローバル化しており、様々な局面への対応が求められます。企業の強さは最終的には「人材」であり「チーム」であると考えます。このため、当社ではポテンシャルの高い人材を確保し、当分野を牽引できるような優秀な人材に育成し、長期的に活躍できる場を提供してまいります。
2)技術革新への対応
iPS細胞は世界中で研究競争が行われており、短期間で技術革新が進んでいます。革新的な技術が開発された場合、既存技術は陳腐化し競争力を失います。このため、当社グループとしては、今後とも積極的に技術開発を推進し当分野のマーケットリーダーとなることを目指します。
技術開発については自社開発だけでなく、これまでと同様、大学、公的研究機関、民間企業との連携及び共同開発を中心に進めてまいります。さらに、当社グループは非常に幅広い「iPS技術プラットフォーム」を保有しており、これが競合との差別化要因となっています。今後、さらにグループ内での技術シナジーを追求し、新規製品・サービスの提供を進めてまいります。
3)新型コロナウイルスへの対応
2020年2月より、全世界的に新型コロナウイルスの感染拡大が始まりました。海外各国でロックダウンの措置がなされ、日本で緊急事態宣言が出されるなど、一時的に大きな影響が出ましたが、現在は徐々に措置が緩和されています。当社の事業は、本質的に新型コロナウイルスの影響を受けるものではないため、これまでの事業内容や成長戦略は変更せず継続してまいります。
但し、活動の方法や働き方に変更を求められる部分もあり、臨機応変に対応してまいります。例えば、当社ではこれまで、顧客訪問による営業を積極的に行っておりましたが、現在は、ビデオ会議を多用しております。また、主要学会への出展の機会も減ったため、Webマーケティングに軸足を移し、認知度のアップとブランド力の強化を行っております。
② セグメント別課題
1)研究支援事業
(a) 多様化する顧客ニーズへの対応
iPS細胞の研究は、これまで大学・公的研究機関における基礎研究が中心でしたが、近年、製薬企業やバイオテック企業における創薬研究及び再生医療研究に拡大しております。大学・公的研究機関では、研究用製品を購入し、自分たちで実験・研究を行うことが通常ですが、製薬企業やバイオテック企業では、研究の一部を外注することも多く、研究受託サービスの需要が拡大しています。研究受託サービスでは、多様な顧客ニーズに対応する必要があり、単一の技術だけでは、顧客ニーズに対応できず競争力を失う可能性が高いと言えます。
当社グループでは、製薬企業やバイオテック企業が多く存在する日本、米国、欧州の3拠点にそれぞれラボを構え、各地域の顧客ニーズに対応したサービスを提供しております。
技術的にも、多様な顧客ニーズに対応するために、ヒト細胞の調達、RNAリプログラミング、遺伝子編集、及び様々な細胞への分化誘導など幅広い「iPS技術プラットフォーム」を有しております。これらの技術により、iPS細胞患者由来疾患モデル、iPS細胞遺伝子編集、iPS細胞からの各種分化誘導など、幅広いサービスを提供しております。
今後とも、当社グループでは、「iPS技術プラットフォーム」を拡大し、顧客ニーズに合わせた付加価値の高いサービスを提供してまいります。
2)メディカル事業
(a) 再生医療製品ステムカイマルの早期承認
ステムカイマルは台湾のステミネント社が開発した再生医療製品であり、当社は脊髄小脳変性症を対象とした日本における独占的商業ライセンス契約を有しております。
2020年2月には、国立学校法人名古屋大学において、第II相臨床試験の第1例目の被験者への投与が開始されました。本治験ではステムカイマルを腕の血管から静脈注射(点滴)で投与します。
治験実施医療機関は日本国内10か所、組み入れ症例数計53例で、2021年12月の完了を予定しております。本治験では、「多施設共同、プラセボ対照、ランダム化、二重盲検、並行群間比較」という非常にエビデンスレベルが高いデザインを採用しております。今後、安全性と有効性について評価を行い、早期の製造販売承認の取得を目指します。
また、ステムカイマルは、厚生労働省より、希少疾病用再生医療等製品として指定されているため、承認申請時に、優先審査を受けることができます。
(b) iPS細胞を用いた再生医療の早期実現
現在、iPS細胞の臨床応用における最大の技術課題として安全性の確保があげられています。これに対し、当社グループでは独自技術である第3世代RNAリプログラミング技術を用い、遺伝子変異リスクを最小化し、外来遺伝子やウイルス残存リスクのない安全性の高い臨床用iPS細胞の作製に成功しております。
また、今後、再生医療製品を製造するための設備・体制の整備も大きな課題となってきます。このため、当社は、2019年5月に、神奈川県が川崎市殿町地区に設置したライフイノベーションセンター(LIC)内に再生医療用の細胞加工を行う「殿町・リプロセル再生医療センター」を開設し、再生医療用製品の製造の準備を平行して進めております。
現在、このような課題に対処しながら、筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び横断性脊髄炎を対象とするiPS神経グリア細胞の研究開発に取り組んでおります。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、売上高と経常利益となります。中期経営計画(2021年3月期~2023年3月期)の3年目である2023年3月期の目標値は、売上高3,565百万円、経常利益491百万円としています。
(1)経営方針
当社はiPS細胞及び体細胞に関する世界最先端の研究成果を広く一般的に利用できる形で事業化することで、研究開発をより促進し、さらに、再生医療など次世代医療を通じて人々の健康福祉に貢献することを目指しています。
短中期的な事業の柱としてiPS細胞に関連した研究試薬や創薬支援サービスを提供する「研究支援事業」を推進し、中長期的な成長戦略として巨大市場が見込める「メディカル事業」へ積極的に投資することにより、当分野のマーケットリーダーを目指します。
また、真のグローバル企業として成長していくことも当社の大きな基本方針としています。病気や医療ニーズに国境はなく、再生医療を含む次世代医療は全世界中の人々から求められています。現時点で、市場の大きい米国、欧州、日本、また将来大きな成長が見込めるインドにそれぞれ拠点を有しており、事業展開を進めております。
さらに、再生医療分野において持続的な成長を可能にするために顧客、社員、事業パートナー、株主といった重要なステークホルダーのバランスの取れた関係を重視し、これらのステークホルダーと長期的にWin-Winの関係となれる体制を構築してまいります。また、我々は社会の一員であるという自覚を持ち、社会全体への貢献についても重視してまいります。
(2)経営戦略等
当社の中核事業領域であるiPS細胞は、山中伸弥教授によるヒトiPS細胞の発明以降、世界中で研究が盛んに行われております。
最近では、iPS細胞を活用した病態解明や再生医療への応用など、実用的な研究開発が多く行われるようになりました。2017年には、希少難病の患者から作製したiPS細胞を活用して病態を解明し、新薬候補の治験へつなげた事例が報告され、さらに、再生医療に関しても、加齢黄斑変性、パーキンソン病に続き、重症心筋症及び角膜疾患でも臨床研究/試験が開始されました。
当社では、前者のようにiPS細胞を病態解明や創薬研究に使用する事業を「研究支援事業」、後者の再生医療を「メディカル事業」と位置づけ、2つのセグメントに分け、推進しております。
現時点では、研究支援事業の売上が90%以上を占めており、今後とも、短中期的な主力事業としてグローバルに推進してまいります。一方、メディカル事業では、現在、脊髄小脳変性症を対象とした再生医療製品ステムカイマル及び、筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び横断性脊髄炎等の中枢神経系疾患を対象としたiPS神経グリア細胞の研究開発を進めております。これら再生医療製品は中長期的な成長事業として、積極的な投資を行い、早期の製造販売承認の取得を目指します。
当社の基本事業戦略を下記にまとめます。
① 積極的なグローバル化の推進
当社では、日本に加え、米国、欧州、インドにも拠点を保有しております。いずれの拠点も、販売、製造、研究開発の機能を有しており、各拠点が有機的に連携しながらグループシナジーを追求しています。
営業では、各拠点がそれぞれの地域の顧客をカバーしており、時差や言語の壁なく営業活動を推進しております。日本市場に加え、バイオ業界における最大の市場である米国、それに続く欧州、さらに世界人口第2位を誇るインドの4拠点をカバーすることで、ターゲット顧客である世界中の多くの大学/公的研究機関及び製薬企業等にアクセスが可能になっております。各地域で製造している製品やサービスを別の地域で販売することで、売上を拡大してまいります。
② 研究支援事業とメディカル事業による持続的成長モデル
研究支援事業では、大学/公的研究機関及び製薬企業等を顧客として、研究試薬や細胞などの研究用製品及びiPS細胞作製受託などのサービスを提供しております。研究用途であるため、医薬品のような製造販売承認は必要とされず、新しい技術を比較的短期間で事業化し収益を上げることができます。
現在、世界中の製薬企業では、動物愛護の観点や、ヒトと動物の種の違いによる試験結果の差といった問題点などから「動物実験からヒト細胞実験」への大きなシフトが進んでいます。今後、ヒト細胞実験が普及することで、これまで十数年かかっていた新薬開発のプロセスが大幅に短縮され、さらに、従来と比べて性能の高い新薬が開発できることが期待されています。中でもヒトiPS細胞はその中心的存在として注目を集めており、例えば、アルツハイマー病患者から作製したiPS細胞を研究で使うことで、アルツハイマー病の病態解明及び新薬開発が加速されると期待されています。
当社では、iPS細胞を中心とした幅広い「ヒト細胞ビジネスプラットフォーム」を有しており、競争優位性の高い製品やサービスを世界中で展開し短中期の収益の柱として推進しております。
メディカル事業では、再生医療及び臨床検査を実施しております。再生医療に関しては、上市までに臨床試験を行い製造販売承認を取得する必要があるため、研究支援事業より事業化に時間が必要とされますが、日本では2014年の法改正により、世界で最も再生医療の産業化に適した環境が整いつつあります。「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(通称 薬機法)」では、治験において安全性が確認され、有効性が推定された再生医療等製品に対して早期承認(条件・期限付き承認)を与えることが可能になりました。これにより、患者様に対して新たな治療機会を早期に提供すると共に、治験期間の短縮や治験費用の削減が期待できます。
また、経済産業省の報告書(「平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備「根本治療の実現」に向けた適切な支援のあり方の調査」)によると、再生医療産業のグローバルでの市場規模は2030年で約5~10兆円となっており、今後、巨大市場に成長することが見込まれています。
このように、再生医療を中長期的な成長事業と位置づけ、早期の製造販売承認の取得を目指します。
短中期的な収益の柱である「研究支援事業」と、中長期的な成長事業である「メディカル事業」の両方を組み合わせることで、短期→中期→長期と、持続的な成長を目指します。
③ 最先端技術による持続的な技術優位性の確保
iPS細胞は世界中で研究開発競争が繰り広げられており、飛躍的に技術が進歩してきました。当社は、引き続き技術開発を積極的に推進することで競争力の強化を図ってまいります。また、リプロセルグループ内の各要素技術を組み合わせ、シナジーを追求することで競争優位性の高い新規ビジネスの開発を行ってまいります。引き続き、世界中のトップ大学及び企業等とのコラボレーションを通じて、世界最先端の技術を積極的に開発・導入してまいります。
(3)経営環境
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が進む中、米国での失業率の増加など世界経済全体への影響が大きく、当社グループの拠点である、日本、米国、英国、インドでも経済の先行きが不透明な状況が続いております。一方、ロックダウン等の規制は各国とも徐々に解除されており、適切な感染拡大防止策を行いながら経済活動を再開する動きが出ております。
当社の事業はライフサイエンス分野に属しており、大学/製薬企業の研究所及び医療機関が対象顧客であるため本質的に新型コロナウイルスの影響を受けにくいと考えております。但し、顧客先となる大学/製薬企業の研究所において一時的に研究活動が制限されているため、研究支援事業は短期的な影響を受けると予想しております。一方、メディカル事業に関しては、現時点で影響は出ておらず、今後とも影響は限定的と考えております。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社が持続的に成長して企業価値を高めるとともに、我々のビジョンやミッションを達成するために優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題を以下のように考えております。
① 全社的課題
1)人材の確保・育成
当社の事業は新しい領域であり、技術及びビジネスの両面で、新しい取り組みが必要とされます。また、変化が非常に大きく、ビジネスもグローバル化しており、様々な局面への対応が求められます。企業の強さは最終的には「人材」であり「チーム」であると考えます。このため、当社ではポテンシャルの高い人材を確保し、当分野を牽引できるような優秀な人材に育成し、長期的に活躍できる場を提供してまいります。
2)技術革新への対応
iPS細胞は世界中で研究競争が行われており、短期間で技術革新が進んでいます。革新的な技術が開発された場合、既存技術は陳腐化し競争力を失います。このため、当社グループとしては、今後とも積極的に技術開発を推進し当分野のマーケットリーダーとなることを目指します。
技術開発については自社開発だけでなく、これまでと同様、大学、公的研究機関、民間企業との連携及び共同開発を中心に進めてまいります。さらに、当社グループは非常に幅広い「iPS技術プラットフォーム」を保有しており、これが競合との差別化要因となっています。今後、さらにグループ内での技術シナジーを追求し、新規製品・サービスの提供を進めてまいります。
3)新型コロナウイルスへの対応
2020年2月より、全世界的に新型コロナウイルスの感染拡大が始まりました。海外各国でロックダウンの措置がなされ、日本で緊急事態宣言が出されるなど、一時的に大きな影響が出ましたが、現在は徐々に措置が緩和されています。当社の事業は、本質的に新型コロナウイルスの影響を受けるものではないため、これまでの事業内容や成長戦略は変更せず継続してまいります。
但し、活動の方法や働き方に変更を求められる部分もあり、臨機応変に対応してまいります。例えば、当社ではこれまで、顧客訪問による営業を積極的に行っておりましたが、現在は、ビデオ会議を多用しております。また、主要学会への出展の機会も減ったため、Webマーケティングに軸足を移し、認知度のアップとブランド力の強化を行っております。
② セグメント別課題
1)研究支援事業
(a) 多様化する顧客ニーズへの対応
iPS細胞の研究は、これまで大学・公的研究機関における基礎研究が中心でしたが、近年、製薬企業やバイオテック企業における創薬研究及び再生医療研究に拡大しております。大学・公的研究機関では、研究用製品を購入し、自分たちで実験・研究を行うことが通常ですが、製薬企業やバイオテック企業では、研究の一部を外注することも多く、研究受託サービスの需要が拡大しています。研究受託サービスでは、多様な顧客ニーズに対応する必要があり、単一の技術だけでは、顧客ニーズに対応できず競争力を失う可能性が高いと言えます。
当社グループでは、製薬企業やバイオテック企業が多く存在する日本、米国、欧州の3拠点にそれぞれラボを構え、各地域の顧客ニーズに対応したサービスを提供しております。
技術的にも、多様な顧客ニーズに対応するために、ヒト細胞の調達、RNAリプログラミング、遺伝子編集、及び様々な細胞への分化誘導など幅広い「iPS技術プラットフォーム」を有しております。これらの技術により、iPS細胞患者由来疾患モデル、iPS細胞遺伝子編集、iPS細胞からの各種分化誘導など、幅広いサービスを提供しております。
今後とも、当社グループでは、「iPS技術プラットフォーム」を拡大し、顧客ニーズに合わせた付加価値の高いサービスを提供してまいります。
2)メディカル事業
(a) 再生医療製品ステムカイマルの早期承認
ステムカイマルは台湾のステミネント社が開発した再生医療製品であり、当社は脊髄小脳変性症を対象とした日本における独占的商業ライセンス契約を有しております。
2020年2月には、国立学校法人名古屋大学において、第II相臨床試験の第1例目の被験者への投与が開始されました。本治験ではステムカイマルを腕の血管から静脈注射(点滴)で投与します。
治験実施医療機関は日本国内10か所、組み入れ症例数計53例で、2021年12月の完了を予定しております。本治験では、「多施設共同、プラセボ対照、ランダム化、二重盲検、並行群間比較」という非常にエビデンスレベルが高いデザインを採用しております。今後、安全性と有効性について評価を行い、早期の製造販売承認の取得を目指します。
また、ステムカイマルは、厚生労働省より、希少疾病用再生医療等製品として指定されているため、承認申請時に、優先審査を受けることができます。
(b) iPS細胞を用いた再生医療の早期実現
現在、iPS細胞の臨床応用における最大の技術課題として安全性の確保があげられています。これに対し、当社グループでは独自技術である第3世代RNAリプログラミング技術を用い、遺伝子変異リスクを最小化し、外来遺伝子やウイルス残存リスクのない安全性の高い臨床用iPS細胞の作製に成功しております。
また、今後、再生医療製品を製造するための設備・体制の整備も大きな課題となってきます。このため、当社は、2019年5月に、神奈川県が川崎市殿町地区に設置したライフイノベーションセンター(LIC)内に再生医療用の細胞加工を行う「殿町・リプロセル再生医療センター」を開設し、再生医療用製品の製造の準備を平行して進めております。
現在、このような課題に対処しながら、筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び横断性脊髄炎を対象とするiPS神経グリア細胞の研究開発に取り組んでおります。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、売上高と経常利益となります。中期経営計画(2021年3月期~2023年3月期)の3年目である2023年3月期の目標値は、売上高3,565百万円、経常利益491百万円としています。