有価証券報告書-第17期(2025/07/01-2026/06/30)
② 戦略
当社グループは、人材を確保・育成し、待遇改善と生産性向上を両立できるか否かが、事業の持続性を左右する重要課題であると認識しております。この課題に取り組み、長期ビジョン「En-Vision2035」の実現を担う組織像として掲げているのが、「創発的能力を備えた自律した個人の規律ある集団」であります。現場で判断・行動し結果を導き出す「創発的能力」、自主性・創造性に満ち主体的に生きる「自律した個人」、時を守り、場を清め、礼を正すことができる「規律ある集団」の3つの要素で構成されております。当社グループは、この組織イメージの実現を到達点として、採用・配置・育成・評価のすべての人事施策を設計しております。この組織イメージを実現する土壌となるのが、良い組織風土と強い企業文化であります。組織風土とは、助け合い・認め合い・支え合う関係性を基盤とし、風通しが良く、主体的かつ挑戦的で協力的な環境を指します。これは日々の業務の中での信頼関係と心理的安全性によって育まれるものであります。一方、企業文化とは、組織内で働く人々が当たり前のように共有し、信じている価値観や信念であり、「らしさ」という個性・独自性・こだわり・DNAによって表されるものであります。企業文化が強く根付いた組織は独自の存在となり、競争力の源泉となります。良い組織風土を醸成し、強い企業文化を形成することは、持続的な企業価値向上の根幹であり、戦略を実行するための卓越した組織能力の源泉であると考えており、当社グループは、この組織風土と企業文化を、各人事施策と相互に高め合いながら育んでおります。
ア 人材育成方針
・企業理念の浸透
当社グループの企業理念は、2004年に制定したものであります。事業環境が大きく変化するなかで、表面の変化に左右されない確固たる思想が必要であるとの認識のもと、創業者の人生観や理念、幹部社員の想いなど、当社グループに内在していた考え方を紡ぎだし、約1年をかけて明文化いたしました。どのような環境変化があっても揺らぐことのない、全ての行動の規範となる「最も大切にする考え方」として、今日まで受け継いでおります。当社グループは、企業理念の浸透を最重要テーマの一つと位置づけ、「企業理念浸透への執念」をもって取り組んでおります。全従業員による朝礼(昼礼)での企業理念唱和を日々継続的に実施するとともに、理解を深めるための勉強会を、企業理念の制定者である取締役会長が自ら少人数制で継続的に開催しております。少人数制とすることで参加者との密なコミュニケーションが生まれ、制定に至った経緯や理念に込められた想いを、参加者一人ひとりの疑問や受け止め方に応じて丁寧に伝えることを重視しております。また、取締役会長と参加者が双方向で対話を重ねることを通じて、日々の業務の中で得た気づきや前向きな気持ちを互いに確認し合える場としても機能していると捉えております。この取組は、毎年繰り返し実施しております。
当連結会計年度においては40名が参加し、正社員数に対する受講割合は86%となりました。一方で、これまでの運営は説明会の開催そのものに重点があり、参加者の選定から開催後のフォローに至るまで、グループ各社及び各事業所のトップが理念浸透に継続的に関与する仕組みとはなっておりませんでした。企業理念の浸透は、説明会という機会のみで完結するものではなく、日々の業務のなかで経営に携わる者が自ら関与し続けることによって定着するものと認識しております。こうした認識のもと、次期(2027年6月期)より説明会の運営方法を改めております。具体的には、参加者の選定にグループ各社及び各事業所のトップが関与し、参加者一人ひとりへの紹介コメントを寄せる仕組みとするとともに、開催後には説明会の内容を報告し、参加者へのフォローに活かす運営といたします。これにより、経営に携わる者が理念浸透の当事者として関わり続け、全社で企業理念の浸透に取り組む文化を醸成してまいります。
(注)「正社員数に対する受講割合」は、各年度末に在籍する正社員に対する企業理念説明会の受講済みの人数の割合を表示しております。
当社グループは、従業員が生き生きと働ける職場環境の実現を顧客満足向上の基盤と位置づけるとともに、企業文化の徹底こそが顧客満足の継続的な向上に不可欠であるという考えのもと、従業員満足度アンケートを毎年実施しております。企業理念への共感度は、当連結会計年度において83.4%となりました。組織の構成員が入れ替わるなかにあっても、8割を超える水準を維持していることを、理念浸透の取組が一定の成果を挙げているものと捉えております。一方で、当社グループが目指すのは、全従業員が企業理念を自らの判断や行動の拠り所とする状態であり、現状はその途上にあると認識しております。愚直にこだわりを持って企業文化を実践し続けた先に「創発的能力を備えた自律した個人の規律ある集団」が実現されると確信しており、今後は、従業員満足度アンケートを単なる職場環境の把握にとどまらず、企業文化の浸透・実践度合いを継続的に検証するための手段として明確に位置づけ、その趣旨に沿った実施方法へと見直しを行ってまいります。
・事業推進人材(次世代経営層)の育成
当社グループは、「次世代経営層・リーダー層研修」と銘打って、次世代の経営を担う事業推進人材の選抜・育成に着手しました。「育てる」から「育つ」への転換を図り、会社側が成長の機会・役割を与える実践と試練の場と、参加者本人が主体的・意欲的に取り組む姿勢という両輪を意図的につくり、成長を促すことを目的として運営しております。具体的には、取締役・執行役員クラスから管理職クラス、主任・一般職クラスまで、階層に応じた育成プログラムを運用しております。育成目標は個人別に設定しており、プログラムの体系自体についても継続的な整備を続けております。特に管理職以上に対しては、後任となる人材を育成することを重要な責務と位置づける方針を掲げております。事業推進人材の拡充は、事業の実行力と成長投資の遂行力を高め、長期の収益成長に寄与するものと考えております。
なお、当社グループは、従前、事業推進人材の人数を指標として掲げておりましたが、階層別育成プログラムの開始に伴い、実際の育成の取組に即した指標として、研修参加者数及び参加者の昇進実績を用いることといたしました。当社グループは、次の育成方針を掲げております。
育成方針5か条
①人は育てるものではなく育つもの
②役割を与え、任せる
③実践と試練を学びの場とする
④振り返りで育てる
⑤個人の学びを組織の力に変える
階層別育成プログラム(次世代経営層・リーダー層の育成)においては、参加者自らが手を挙げて選抜される方式を採用しており、参加者が自らの意志で手を挙げ選抜されたこと自体が、「育てる」から「自ら育つ」への転換を体現するものであると当社グループは認識しております。手を挙げるに至った背景には、参加者本人の発意に加え、日頃の業務を通じて成長の可能性を認めた上席者からの後押しがあり、本人の意志と周囲の働きかけの双方が、参加の契機となっております。当連結会計年度における具体的な成果として、参加者のうち7名が昇進したほか、常勤役員への事業展望・AI活用提言のプレゼンテーション、グループ内経営者との面談を通じた経営視点の獲得、社内のデジタル化推進委員会との連携による実務レベルの改善提案など、主体的な取組と経営層との対話とフィードバックが成長の機会につながっています。
また、育成方針の一つに掲げる「役割を与え、任せる」「振り返りで育てる」の実践については、当連結会計年度が本格運用の初年度であったこともあり、課題が残ったと認識しております。会社側においては、参加者一人ひとりに求める役割や取り組むべき業務(挑戦的な役割の付与、実践と試練の場の提供等)、すなわち会社が本人に何を期待しているのかを、十分に伝えきれていなかった面がありました。また、参加者本人が自らの成長と役割について考え抜くための機会や対話の場を、十分に用意できていなかったと認識しております。進捗確認のための面談は定期的に実施したものの、期待される役割や到達目標が明確でない状態での運営となった部分もあり、面談を通じたフィードバックが十分に機能していたかについては課題が残ります。今後は、会社が期待する役割と到達目標をあらかじめ本人に明確に伝えたうえで、参加者自身がその役割をどう担うかを考え抜き、対話を通じて深めていく運営へと改めてまいります。「育てる」から「育つ」への転換は、会社が機会と役割を与えることと、本人が自ら考え主体的に取り組むことの両輪によって実現されるものと考えており、この両面から進捗確認面談の実効性を高めてまいります。役割の付与にあたっては、これまで人材の能力や適性の把握が各職場の上長に委ねられておりました。今後は、人事部門がグループ横断で人材の能力・適性を把握し、第三者の視点を加えたうえで配置及び役割の付与を検討することにより、一人ひとりの成長につながる機会の提供を進めてまいります。
・目標管理とフィードバック
当社グループは、現在の業務を確実に遂行する「業務遂行能力」に加え、新たな価値を創出する「創造力」が組織能力の両輪であると考えております。新しい価値は日常業務の改善の延長線上にあり、日々のオペレーションを「狭く・深く・強く」掘り下げる「業務改善能力」が不可欠であると考えております。また、役割を明確に与え、成果や行動に対する適切なフィードバックを行うことで、社員が方向性を見失わずに成長できる環境を整えることを重視しております。
当連結会計年度においても引き続き、グループトップがビジョンを共有、続いて各社・各部署が課題認識、目標設定、アクションプランを発表する経営計画・実行計画発表会を実施しました。各部署では、目標達成に向けたアクションプランを記載した実行計画書を運用し、社長・役員・経営幹部が週次報告を通じて進捗確認と課題共有を行いました。さらに週次報告や発表会でのやり取りを通じ、上位者からのフィードバックと社員からの意見を双方向で交換することで、改善の方向性を明確化し、全社員が組織的な気づきや改善のヒントを得られる環境を醸成しました。あわせて、日報や実行計画等の記録をAIで活用し、評価やフィードバックの質を高める取組も進めております。
一方で、当社グループが毎年実施している従業員満足度アンケートにおける「成長できる環境への満足度」は、当連結会計年度において68.4%となり、前連結会計年度からは回復したものの、この3年間は横ばいで推移しており、目標として掲げる水準には至っておりません。この背景には、二つの要因があると認識しております。第一に、日々の業務において、新しい役割や挑戦の機会を一人ひとりに十分に提供できていないことであります。管理職・主任層を対象としたアンケート及び個別面談においても、新たな挑戦の機会の不足が課題として挙げられております。第二に、目標設定とフィードバックが、必ずしも一人ひとりの成長実感に結びつく内容となっていないことであります。目標が日常業務の延長にとどまる場合、フィードバックもその達成度の確認に終始し、成長の手応えにつながりにくいものと考えております。これらを踏まえ、当社グループは、二つの面から対応を進めてまいります。役割の面では、前述のとおり人事部門がグループ横断で人材の能力・適性を把握し、第三者の視点を加えたうえで配置及び役割の付与を検討することにより、挑戦の機会を広げてまいります。目標管理の面では、目標設定のプロセスそのものを見直し、一人ひとりの成長につながる挑戦的な要素を織り込むとともに、フィードバックの内容及び頻度を改めることで、成長の実感につながる運用としてまいります。あわせて、アンケート結果を定点的に分析し、施策の効果を検証してまいります。
・教育研修
当社グループは、人材育成のあり方について、現場における実践と試練を通じて「育つ」仕組みをより重視する方向へ見直しております。育成リソースは、OJT及びストレッチアサインメント(挑戦的な役割付与)による実践型育成に重点的に振り向けており、役割を与え、実践と試練を経験させ、振り返りを通じて得られた学びを組織知に転換する仕組みづくりを行っております。研修につきましては、一般的な座学形式の研修は行わず、社内の人材が講師を務め、実務に即した内容を扱うことを基本としております。当連結会計年度においては、評価者研修、契約管理に関する研修、生成AIの活用に関する実習等を実施いたしました。教える経験を通じて得られる難しさや達成感が、講師を務める者自身の学びと成長姿勢を高めるものと考えており、内部人材による研修は、受講者と講師の双方にとっての学びの機会となっております。今後は、これらに加えて、当社グループのマネジメントシステムを組織に定着させるための研修を実施してまいります。企業理念と経営計画書を中核に、計画の立案、日常の実践、進捗の確認、結果の検証を繰り返すという当社グループの経営の型を、全員が共通の理解のもとで実行できる状態とすることを目指しており、こうした取組の積み重ねが、強い企業文化の形成につながるものと考えております。なお、育成の重点を実践型育成へ移したことに伴い、当連結会計年度より、研修の実施回数ではなく、実践を通じた育成の状況によって進捗を把握することといたしました。
イ 社内環境整備方針
・報酬待遇の改善
当社グループは、定期昇給に加えベースアップを実施し、待遇改善に取り組んでおり、当連結会計年度において定期昇給及びベースアップを実施しております。こうした待遇改善を今後も継続的に実施していくためには、とりわけ「稼ぐ力」の向上が重要であると考えております。 事業を通じて生み出す収益、すなわち「稼ぐ力」こそが待遇改善の原資であり、これを高めるためには、生産性の向上が不可欠であると認識しております。 一人ひとりの成長が組織の成長を通じて「稼ぐ力」を高め、企業価値の向上につながります。そして、その成果を更なる成長投資と待遇改善へつなげ、「稼ぐ力」をさらに高めてまいります。当社グループは、この正の循環を持続的に回すことによって、企業価値を向上させ続けてまいります。
この循環を支える生産性の向上について、当社グループは、少数精鋭による高付加価値化を進め、人員数と利益のデカップリングを図っております。そのためには、AI・DXの活用にとどまらず、仕事の進め方そのものを見直すことが不可欠であると考えております。すなわち、真に取り組むべき業務に力を集中させるとともに、行わないことを決めること、そして一人ひとりが自らの業務を「稼ぐ力」につなげる意識を持つことであります。行わないことを決めるとは、裏を返せば、当社グループが何にこだわるのかを明確にすることであり、その積み重ねが企業文化を形づくるものと考えております。これらを前提として、定型業務の自動化にとどまらずAI・DXの活用領域を企画・分析・意思決定支援などへと広げるとともに、間接機能から直接収益に貢献する業務へ人員配置を重点化することで、生産性の向上に取り組んでおります。なお、生産性の向上を支えるAI・DXの活用に関する取組の詳細については、「(1) サステナビリティ共通 ② 戦略 エ 事業基盤(AI・DXの活用)」に記載のとおりであります。こうした循環の進捗を測る具体的な指標として、労働生産性(限界利益÷人件費)を位置づけております。労働生産性は、下表のとおり前連結会計年度の189%から当連結会計年度は231%へと向上しております。これらの待遇改善に係る人事施策は、人材の定着と採用競争力の向上を通じて、長期的な企業価値の向上に資するものと考えております。
(※)2025年6月の追加ベースアップについては、安定給部分を厚くし従業員の雇用の安心感を高めることを目的として実施しております。なお総人件費のバランスを保つため、成果給である賞与支給原資にて調整しております。
・採用
当社グループは、持続的な成長と企業価値向上のためには、企業理念や組織風土と企業文化に共鳴し、変化を推進できる人材の確保が不可欠であると考えております。企業理念へ共鳴し得ること、そして後述する当社グループの「育つ環境」を理解し、自らその環境に身を置くことを望むことを、最も重視する判断基準としております。そのうえで、課題発見・実行力、耐性・変化適応力を判断基準としております。これらの判断基準に加え、当社グループが経営計画書に掲げる「成長を促す基本的態度」も、採用における重要な視点としております。具体的には、目の前の事実から逃げずに直面する姿勢、責任は我にありという当事者意識を持って主体的にとらえる姿勢、あらゆる場面であとひと手間を惜しまずていねいに対応する姿勢です。採用活動は単なる人員補充ではなく長期的な人的資本投資と位置づけ、生産・輸送・技術等の直接収益に貢献する職種を中心に、中途採用と新卒採用をバランスよく行っております。新卒採用については、組織風土との親和性、将来のリーダー候補としての成長のポテンシャルを重視しており、中途採用では、専門性の高い職種や、生産・輸送等、経験を活かして早期に活躍できる人材の確保を重視しております。
選考の過程においては、当社グループが考える「育つ環境」がどのようなものであるかを候補者に伝えることを重視しております。当社グループは、人は育てられるのではなく自ら育つものと考え、役割を与え、実践と試練の場を経験することを通じて成長を促すことを育成の基本としております。それは、与えられた枠のなかで着実に業務を遂行することよりも、自ら課題を見出し、責任を引き受けて取り組むことが求められる環境であります。こうした環境の実際を率直にお伝えし、候補者の価値観との相互のすり合わせを重ねたうえで、採用の判断を行っております。人材の定着において当社グループが重視しているのは、待遇のみによる引き留めではなく、企業理念と価値観を共有する人材が働き続けられる組織であることであります。実際に業務に従事して初めて、当社グループの価値観との違いに気づくこともあり、その場合の離職は避けがたいものと受け止めております。同時に、それは採用の段階において、当社グループが大切にする価値観や求める働き方を十分に伝えきれていなかったことの表れでもあると認識しております。選考における対話をさらに重ね、相互の理解を深めることにより、入社後の乖離を減らしてまいります。学卒者の初任給については、新卒採用競争力の維持・強化を目的に、段階的な引き上げを実施しております。
(注)当社及び主要子会社の株式会社エコネコルの本社所在地である静岡地区の金額。
・多様性
組織風土の醸成には多様性を尊び、透明性の高い組織マネジメントを志向することは重要な要素であります。また新たな価値を生み出すには、私たちに染みついている固定観念や常識を否定すること、発想の柔軟性や意識の壁を超えることが求められます。様々な観点から学ぶために多様性を尊重し、建設的な対立を厭わず率直に発言することを心理的安全性と位置づけて連帯感を生み出すことが大切と考えております。 あわせて、当社グループでは中核人材の登用において、性別・国籍・年齢・経歴等の属性を登用の適否の判断に用いておりません。当社グループが一つにするのは、企業理念及びミッションが示す目的に共鳴するという価値観であり、その目的に向かうにあたっては、属性を問わず多様な人材を受け入れ、多様な視点や経験を活かすことを重視しております。実力を測る軸として重視しているのは「事実に直面する」「主体的にとらえる」「ていねいに対応する」という三つの態度であり、これらは属性にかかわらず一人ひとりに備わり得るものであります。 人員の増加を抑えつつ生産性を高め、その成果を処遇の改善として還元する長期戦略のもとでは、一人ひとりの質が成果を左右するため、属性によって登用の母集団を狭めないことがその成立要件となります。こうした方針のもとでは、女性管理職比率は、属性に着目した登用によって達成すべき数値ではなく、育成と登用の結果として表れる指標であります。そのため当社グループは、同比率を、人材構成の状況を継続的に検証するための指標として位置づけたうえで、育成の進展に伴い到達すると見込まれる水準を目標として掲げております。 女性管理職比率につきましては、従前、2021年6月末比で女性管理職2.0倍とする目標を掲げておりましたが、2026年6月末時点において未達となりました。また、2028年6月期における目標を20%としておりましたが、これを10%に改めることといたしました。管理職として職責を担うために必要な経験の蓄積には相応の年数を要し、育成には時間がかかること、また、当社グループの事業においては職種による男女構成の偏りがあり、管理職として登用し得るポジションが限られていることを踏まえたものであります。もっとも、当社グループの従業員に占める女性の割合はおよそ2割であり、女性管理職比率との間には差が存在しております。当社グループは、この差を今後の課題として認識しております。なお、管理職の一歩手前の層においては、母集団の状況に変化が生じております。主任に占める女性の割合は近年上昇を続け、従業員に占める女性の割合とおおむね同水準に達しております。次世代経営層・リーダー層研修には、当連結会計年度において10名の女性が参加しておりますが、これに加えて、管理職として職責を担い得る人材が他にいないかを、個々の育成計画を通じて確認してまいります。その結果につきましては、人事労務改革委員会がサステナビリティ委員会において協議したうえで、取締役会に報告し、必要な対応を検討してまいります。 男性の育児休業取得率は、当連結会計年度において44.4%となりました。当社グループにおいては対象となる従業員数が限られており、年度によって数値が変動しやすい面がありますが、育児休業を取得するか否かは、それぞれの家庭の事情や本人の考えによるものであり、当社グループは個人の判断を尊重しております。一方で、業務の属人化や職場の受入体制の不足など、取得をためらわせる潜在的な要因が組織の側にあるものと認識し、その解消に取り組んでまいります。男女間での役割固定化を見直すとともに、取得時に互いを補完できる体制(脱属人化、多能工化、生産性向上)を整備し、取得を希望する従業員が支障なく取得できる環境を整えてまいります。また、年齢構成の偏りや管理職層の業務負荷といった課題にも対応が必要であると認識しております。
(注)1 女性管理職比率及び男性育児休業取得率は、当社及び連結子会社を対象として算出しております。
2 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の規定に基づく提出会社及び主要子会社ごとの数値については、「第4 提出会社の状況 5 従業員の状況等」に記載しております。
ウ 社会的包摂
当社グループは、資源循環事業をはじめとする事業活動を通じて社会課題の解決に取り組むとともに、多様な人材が共に働き活躍できる職場づくりも重要な社会的責任の一つであると捉えております。連結子会社である株式会社アストコ(長野県松本市)は、就職を希望する障がいのある方に対して、就職に向けた技能・知識の習得支援や、適切な仕事の提供を行う障がい福祉サービス事業を展開しており、当社グループにおける障がい者の社会参画を支える中核的な役割を担っております。「アストコ」という社名は、「明日が“かがやく”ところをつくる」という考えのもと、「あす」と「とこ(ろ)」を組み合わせて名付けられたものであり、障がいのある方々が自分らしく活躍できる明日を共につくるという思いを込めております。
当連結会計年度には、主要子会社である株式会社エコネコルが、機械による一括選別の難しい給湯器の手解体・分別作業を株式会社アストコへ業務委託いたしました。株式会社アストコは、障がいのある方の就労体験の受入れを通じてこれを担いました。分別された素材は株式会社エコネコルが引き受け、長年培ってきた高度な選別技術により高品質なリサイクル原料として社会へ再供給しております。福祉と資源循環がそれぞれの強みを持ち寄り、一貫したリサイクル体制を構築いたしました。当社グループの障がい者雇用率は、当連結会計年度において2.8%となり近年はやや低下しておりますが、法定雇用率を上回る水準を維持しております。今後も障がいのある方が能力を発揮しやすい職場環境の整備や、資源循環事業との連携による就労機会の創出を通じて、雇用率の維持・向上と社会的包摂の推進に取り組んでまいります。
当社グループは、人材を確保・育成し、待遇改善と生産性向上を両立できるか否かが、事業の持続性を左右する重要課題であると認識しております。この課題に取り組み、長期ビジョン「En-Vision2035」の実現を担う組織像として掲げているのが、「創発的能力を備えた自律した個人の規律ある集団」であります。現場で判断・行動し結果を導き出す「創発的能力」、自主性・創造性に満ち主体的に生きる「自律した個人」、時を守り、場を清め、礼を正すことができる「規律ある集団」の3つの要素で構成されております。当社グループは、この組織イメージの実現を到達点として、採用・配置・育成・評価のすべての人事施策を設計しております。この組織イメージを実現する土壌となるのが、良い組織風土と強い企業文化であります。組織風土とは、助け合い・認め合い・支え合う関係性を基盤とし、風通しが良く、主体的かつ挑戦的で協力的な環境を指します。これは日々の業務の中での信頼関係と心理的安全性によって育まれるものであります。一方、企業文化とは、組織内で働く人々が当たり前のように共有し、信じている価値観や信念であり、「らしさ」という個性・独自性・こだわり・DNAによって表されるものであります。企業文化が強く根付いた組織は独自の存在となり、競争力の源泉となります。良い組織風土を醸成し、強い企業文化を形成することは、持続的な企業価値向上の根幹であり、戦略を実行するための卓越した組織能力の源泉であると考えており、当社グループは、この組織風土と企業文化を、各人事施策と相互に高め合いながら育んでおります。
ア 人材育成方針
・企業理念の浸透
当社グループの企業理念は、2004年に制定したものであります。事業環境が大きく変化するなかで、表面の変化に左右されない確固たる思想が必要であるとの認識のもと、創業者の人生観や理念、幹部社員の想いなど、当社グループに内在していた考え方を紡ぎだし、約1年をかけて明文化いたしました。どのような環境変化があっても揺らぐことのない、全ての行動の規範となる「最も大切にする考え方」として、今日まで受け継いでおります。当社グループは、企業理念の浸透を最重要テーマの一つと位置づけ、「企業理念浸透への執念」をもって取り組んでおります。全従業員による朝礼(昼礼)での企業理念唱和を日々継続的に実施するとともに、理解を深めるための勉強会を、企業理念の制定者である取締役会長が自ら少人数制で継続的に開催しております。少人数制とすることで参加者との密なコミュニケーションが生まれ、制定に至った経緯や理念に込められた想いを、参加者一人ひとりの疑問や受け止め方に応じて丁寧に伝えることを重視しております。また、取締役会長と参加者が双方向で対話を重ねることを通じて、日々の業務の中で得た気づきや前向きな気持ちを互いに確認し合える場としても機能していると捉えております。この取組は、毎年繰り返し実施しております。
当連結会計年度においては40名が参加し、正社員数に対する受講割合は86%となりました。一方で、これまでの運営は説明会の開催そのものに重点があり、参加者の選定から開催後のフォローに至るまで、グループ各社及び各事業所のトップが理念浸透に継続的に関与する仕組みとはなっておりませんでした。企業理念の浸透は、説明会という機会のみで完結するものではなく、日々の業務のなかで経営に携わる者が自ら関与し続けることによって定着するものと認識しております。こうした認識のもと、次期(2027年6月期)より説明会の運営方法を改めております。具体的には、参加者の選定にグループ各社及び各事業所のトップが関与し、参加者一人ひとりへの紹介コメントを寄せる仕組みとするとともに、開催後には説明会の内容を報告し、参加者へのフォローに活かす運営といたします。これにより、経営に携わる者が理念浸透の当事者として関わり続け、全社で企業理念の浸透に取り組む文化を醸成してまいります。
| 2024年6月期 | 2025年6月期 | 2026年6月期 | |
| 企業理念説明会 累計受講者数 | 676名 | 773名 | 813名 |
| 正社員数に対する受講割合 | 77% | 85% | 86% |
(注)「正社員数に対する受講割合」は、各年度末に在籍する正社員に対する企業理念説明会の受講済みの人数の割合を表示しております。
| 2024年6月期 | 2025年6月期 | 2026年6月期 | 目標 | |
| 企業理念への共感度 (従業員満足度アンケート) | 80.3% | 83.4% | 83.4% | 86% |
当社グループは、従業員が生き生きと働ける職場環境の実現を顧客満足向上の基盤と位置づけるとともに、企業文化の徹底こそが顧客満足の継続的な向上に不可欠であるという考えのもと、従業員満足度アンケートを毎年実施しております。企業理念への共感度は、当連結会計年度において83.4%となりました。組織の構成員が入れ替わるなかにあっても、8割を超える水準を維持していることを、理念浸透の取組が一定の成果を挙げているものと捉えております。一方で、当社グループが目指すのは、全従業員が企業理念を自らの判断や行動の拠り所とする状態であり、現状はその途上にあると認識しております。愚直にこだわりを持って企業文化を実践し続けた先に「創発的能力を備えた自律した個人の規律ある集団」が実現されると確信しており、今後は、従業員満足度アンケートを単なる職場環境の把握にとどまらず、企業文化の浸透・実践度合いを継続的に検証するための手段として明確に位置づけ、その趣旨に沿った実施方法へと見直しを行ってまいります。
・事業推進人材(次世代経営層)の育成
当社グループは、「次世代経営層・リーダー層研修」と銘打って、次世代の経営を担う事業推進人材の選抜・育成に着手しました。「育てる」から「育つ」への転換を図り、会社側が成長の機会・役割を与える実践と試練の場と、参加者本人が主体的・意欲的に取り組む姿勢という両輪を意図的につくり、成長を促すことを目的として運営しております。具体的には、取締役・執行役員クラスから管理職クラス、主任・一般職クラスまで、階層に応じた育成プログラムを運用しております。育成目標は個人別に設定しており、プログラムの体系自体についても継続的な整備を続けております。特に管理職以上に対しては、後任となる人材を育成することを重要な責務と位置づける方針を掲げております。事業推進人材の拡充は、事業の実行力と成長投資の遂行力を高め、長期の収益成長に寄与するものと考えております。
なお、当社グループは、従前、事業推進人材の人数を指標として掲げておりましたが、階層別育成プログラムの開始に伴い、実際の育成の取組に即した指標として、研修参加者数及び参加者の昇進実績を用いることといたしました。当社グループは、次の育成方針を掲げております。
育成方針5か条
①人は育てるものではなく育つもの
②役割を与え、任せる
③実践と試練を学びの場とする
④振り返りで育てる
⑤個人の学びを組織の力に変える
階層別育成プログラム(次世代経営層・リーダー層の育成)においては、参加者自らが手を挙げて選抜される方式を採用しており、参加者が自らの意志で手を挙げ選抜されたこと自体が、「育てる」から「自ら育つ」への転換を体現するものであると当社グループは認識しております。手を挙げるに至った背景には、参加者本人の発意に加え、日頃の業務を通じて成長の可能性を認めた上席者からの後押しがあり、本人の意志と周囲の働きかけの双方が、参加の契機となっております。当連結会計年度における具体的な成果として、参加者のうち7名が昇進したほか、常勤役員への事業展望・AI活用提言のプレゼンテーション、グループ内経営者との面談を通じた経営視点の獲得、社内のデジタル化推進委員会との連携による実務レベルの改善提案など、主体的な取組と経営層との対話とフィードバックが成長の機会につながっています。
また、育成方針の一つに掲げる「役割を与え、任せる」「振り返りで育てる」の実践については、当連結会計年度が本格運用の初年度であったこともあり、課題が残ったと認識しております。会社側においては、参加者一人ひとりに求める役割や取り組むべき業務(挑戦的な役割の付与、実践と試練の場の提供等)、すなわち会社が本人に何を期待しているのかを、十分に伝えきれていなかった面がありました。また、参加者本人が自らの成長と役割について考え抜くための機会や対話の場を、十分に用意できていなかったと認識しております。進捗確認のための面談は定期的に実施したものの、期待される役割や到達目標が明確でない状態での運営となった部分もあり、面談を通じたフィードバックが十分に機能していたかについては課題が残ります。今後は、会社が期待する役割と到達目標をあらかじめ本人に明確に伝えたうえで、参加者自身がその役割をどう担うかを考え抜き、対話を通じて深めていく運営へと改めてまいります。「育てる」から「育つ」への転換は、会社が機会と役割を与えることと、本人が自ら考え主体的に取り組むことの両輪によって実現されるものと考えており、この両面から進捗確認面談の実効性を高めてまいります。役割の付与にあたっては、これまで人材の能力や適性の把握が各職場の上長に委ねられておりました。今後は、人事部門がグループ横断で人材の能力・適性を把握し、第三者の視点を加えたうえで配置及び役割の付与を検討することにより、一人ひとりの成長につながる機会の提供を進めてまいります。
| 次世代経営層・リーダー層研修参加者数(2026年6月期) | 男性 | 女性 | 合計 |
| 次世代経営層候補(管理職層) | 14名 | 1名 | 15名 |
| リーダー層候補(主任層) | 11名 | 4名 | 15名 |
| リーダー層候補(一般職層) | 8名 | 5名 | 13名 |
| 合計 | 33名 | 10名 | 43名 |
| 上記参加者のうち、昇進実績 | 6名 | 1名 | 7名 |
・目標管理とフィードバック
当社グループは、現在の業務を確実に遂行する「業務遂行能力」に加え、新たな価値を創出する「創造力」が組織能力の両輪であると考えております。新しい価値は日常業務の改善の延長線上にあり、日々のオペレーションを「狭く・深く・強く」掘り下げる「業務改善能力」が不可欠であると考えております。また、役割を明確に与え、成果や行動に対する適切なフィードバックを行うことで、社員が方向性を見失わずに成長できる環境を整えることを重視しております。
当連結会計年度においても引き続き、グループトップがビジョンを共有、続いて各社・各部署が課題認識、目標設定、アクションプランを発表する経営計画・実行計画発表会を実施しました。各部署では、目標達成に向けたアクションプランを記載した実行計画書を運用し、社長・役員・経営幹部が週次報告を通じて進捗確認と課題共有を行いました。さらに週次報告や発表会でのやり取りを通じ、上位者からのフィードバックと社員からの意見を双方向で交換することで、改善の方向性を明確化し、全社員が組織的な気づきや改善のヒントを得られる環境を醸成しました。あわせて、日報や実行計画等の記録をAIで活用し、評価やフィードバックの質を高める取組も進めております。
一方で、当社グループが毎年実施している従業員満足度アンケートにおける「成長できる環境への満足度」は、当連結会計年度において68.4%となり、前連結会計年度からは回復したものの、この3年間は横ばいで推移しており、目標として掲げる水準には至っておりません。この背景には、二つの要因があると認識しております。第一に、日々の業務において、新しい役割や挑戦の機会を一人ひとりに十分に提供できていないことであります。管理職・主任層を対象としたアンケート及び個別面談においても、新たな挑戦の機会の不足が課題として挙げられております。第二に、目標設定とフィードバックが、必ずしも一人ひとりの成長実感に結びつく内容となっていないことであります。目標が日常業務の延長にとどまる場合、フィードバックもその達成度の確認に終始し、成長の手応えにつながりにくいものと考えております。これらを踏まえ、当社グループは、二つの面から対応を進めてまいります。役割の面では、前述のとおり人事部門がグループ横断で人材の能力・適性を把握し、第三者の視点を加えたうえで配置及び役割の付与を検討することにより、挑戦の機会を広げてまいります。目標管理の面では、目標設定のプロセスそのものを見直し、一人ひとりの成長につながる挑戦的な要素を織り込むとともに、フィードバックの内容及び頻度を改めることで、成長の実感につながる運用としてまいります。あわせて、アンケート結果を定点的に分析し、施策の効果を検証してまいります。
| 2024年6月期 | 2025年6月期 | 2026年6月期 | 目標 | |
| 成長できる環境への満足度 (従業員満足度アンケート) | 69.4% | 66.0% | 68.4% | 80%(将来的には90%) |
・教育研修
当社グループは、人材育成のあり方について、現場における実践と試練を通じて「育つ」仕組みをより重視する方向へ見直しております。育成リソースは、OJT及びストレッチアサインメント(挑戦的な役割付与)による実践型育成に重点的に振り向けており、役割を与え、実践と試練を経験させ、振り返りを通じて得られた学びを組織知に転換する仕組みづくりを行っております。研修につきましては、一般的な座学形式の研修は行わず、社内の人材が講師を務め、実務に即した内容を扱うことを基本としております。当連結会計年度においては、評価者研修、契約管理に関する研修、生成AIの活用に関する実習等を実施いたしました。教える経験を通じて得られる難しさや達成感が、講師を務める者自身の学びと成長姿勢を高めるものと考えており、内部人材による研修は、受講者と講師の双方にとっての学びの機会となっております。今後は、これらに加えて、当社グループのマネジメントシステムを組織に定着させるための研修を実施してまいります。企業理念と経営計画書を中核に、計画の立案、日常の実践、進捗の確認、結果の検証を繰り返すという当社グループの経営の型を、全員が共通の理解のもとで実行できる状態とすることを目指しており、こうした取組の積み重ねが、強い企業文化の形成につながるものと考えております。なお、育成の重点を実践型育成へ移したことに伴い、当連結会計年度より、研修の実施回数ではなく、実践を通じた育成の状況によって進捗を把握することといたしました。
イ 社内環境整備方針
・報酬待遇の改善
当社グループは、定期昇給に加えベースアップを実施し、待遇改善に取り組んでおり、当連結会計年度において定期昇給及びベースアップを実施しております。こうした待遇改善を今後も継続的に実施していくためには、とりわけ「稼ぐ力」の向上が重要であると考えております。 事業を通じて生み出す収益、すなわち「稼ぐ力」こそが待遇改善の原資であり、これを高めるためには、生産性の向上が不可欠であると認識しております。 一人ひとりの成長が組織の成長を通じて「稼ぐ力」を高め、企業価値の向上につながります。そして、その成果を更なる成長投資と待遇改善へつなげ、「稼ぐ力」をさらに高めてまいります。当社グループは、この正の循環を持続的に回すことによって、企業価値を向上させ続けてまいります。
この循環を支える生産性の向上について、当社グループは、少数精鋭による高付加価値化を進め、人員数と利益のデカップリングを図っております。そのためには、AI・DXの活用にとどまらず、仕事の進め方そのものを見直すことが不可欠であると考えております。すなわち、真に取り組むべき業務に力を集中させるとともに、行わないことを決めること、そして一人ひとりが自らの業務を「稼ぐ力」につなげる意識を持つことであります。行わないことを決めるとは、裏を返せば、当社グループが何にこだわるのかを明確にすることであり、その積み重ねが企業文化を形づくるものと考えております。これらを前提として、定型業務の自動化にとどまらずAI・DXの活用領域を企画・分析・意思決定支援などへと広げるとともに、間接機能から直接収益に貢献する業務へ人員配置を重点化することで、生産性の向上に取り組んでおります。なお、生産性の向上を支えるAI・DXの活用に関する取組の詳細については、「(1) サステナビリティ共通 ② 戦略 エ 事業基盤(AI・DXの活用)」に記載のとおりであります。こうした循環の進捗を測る具体的な指標として、労働生産性(限界利益÷人件費)を位置づけております。労働生産性は、下表のとおり前連結会計年度の189%から当連結会計年度は231%へと向上しております。これらの待遇改善に係る人事施策は、人材の定着と採用競争力の向上を通じて、長期的な企業価値の向上に資するものと考えております。
| 2024年6月期 | 2025年6月期 | 2026年6月期 | |
| 基本給に対する昇給率 | 5.62% | 4.30% 5.64%(6月)※ | 5.40% |
| ベースアップ | 10,000円 | 10,000円 20,000円(6月)※ | 12,000円 |
| 労働生産性 (限界利益÷人件費) | 199% | 189% | 231% |
(※)2025年6月の追加ベースアップについては、安定給部分を厚くし従業員の雇用の安心感を高めることを目的として実施しております。なお総人件費のバランスを保つため、成果給である賞与支給原資にて調整しております。
・採用
当社グループは、持続的な成長と企業価値向上のためには、企業理念や組織風土と企業文化に共鳴し、変化を推進できる人材の確保が不可欠であると考えております。企業理念へ共鳴し得ること、そして後述する当社グループの「育つ環境」を理解し、自らその環境に身を置くことを望むことを、最も重視する判断基準としております。そのうえで、課題発見・実行力、耐性・変化適応力を判断基準としております。これらの判断基準に加え、当社グループが経営計画書に掲げる「成長を促す基本的態度」も、採用における重要な視点としております。具体的には、目の前の事実から逃げずに直面する姿勢、責任は我にありという当事者意識を持って主体的にとらえる姿勢、あらゆる場面であとひと手間を惜しまずていねいに対応する姿勢です。採用活動は単なる人員補充ではなく長期的な人的資本投資と位置づけ、生産・輸送・技術等の直接収益に貢献する職種を中心に、中途採用と新卒採用をバランスよく行っております。新卒採用については、組織風土との親和性、将来のリーダー候補としての成長のポテンシャルを重視しており、中途採用では、専門性の高い職種や、生産・輸送等、経験を活かして早期に活躍できる人材の確保を重視しております。
選考の過程においては、当社グループが考える「育つ環境」がどのようなものであるかを候補者に伝えることを重視しております。当社グループは、人は育てられるのではなく自ら育つものと考え、役割を与え、実践と試練の場を経験することを通じて成長を促すことを育成の基本としております。それは、与えられた枠のなかで着実に業務を遂行することよりも、自ら課題を見出し、責任を引き受けて取り組むことが求められる環境であります。こうした環境の実際を率直にお伝えし、候補者の価値観との相互のすり合わせを重ねたうえで、採用の判断を行っております。人材の定着において当社グループが重視しているのは、待遇のみによる引き留めではなく、企業理念と価値観を共有する人材が働き続けられる組織であることであります。実際に業務に従事して初めて、当社グループの価値観との違いに気づくこともあり、その場合の離職は避けがたいものと受け止めております。同時に、それは採用の段階において、当社グループが大切にする価値観や求める働き方を十分に伝えきれていなかったことの表れでもあると認識しております。選考における対話をさらに重ね、相互の理解を深めることにより、入社後の乖離を減らしてまいります。学卒者の初任給については、新卒採用競争力の維持・強化を目的に、段階的な引き上げを実施しております。
| 2024年6月期 | 2025年6月期 | 2026年6月期 | |
| 大卒基本給 | 229,120円 | 249,120円 | 261,120円 |
| (手当含む初任給) | 232,310円 | 252,310円 | 264,310円 |
| 高卒基本給 | 200,070円 | 220,070円 | 232,070円 |
| (手当含む初任給) | 204,260円 | 223,260円 | 235,260円 |
| 新卒採用人数 | 10名 | 6名 | 10名 |
| 中途採用人数 (正社員) | 53名 | 38名 | 38名 |
(注)当社及び主要子会社の株式会社エコネコルの本社所在地である静岡地区の金額。
・多様性
組織風土の醸成には多様性を尊び、透明性の高い組織マネジメントを志向することは重要な要素であります。また新たな価値を生み出すには、私たちに染みついている固定観念や常識を否定すること、発想の柔軟性や意識の壁を超えることが求められます。様々な観点から学ぶために多様性を尊重し、建設的な対立を厭わず率直に発言することを心理的安全性と位置づけて連帯感を生み出すことが大切と考えております。 あわせて、当社グループでは中核人材の登用において、性別・国籍・年齢・経歴等の属性を登用の適否の判断に用いておりません。当社グループが一つにするのは、企業理念及びミッションが示す目的に共鳴するという価値観であり、その目的に向かうにあたっては、属性を問わず多様な人材を受け入れ、多様な視点や経験を活かすことを重視しております。実力を測る軸として重視しているのは「事実に直面する」「主体的にとらえる」「ていねいに対応する」という三つの態度であり、これらは属性にかかわらず一人ひとりに備わり得るものであります。 人員の増加を抑えつつ生産性を高め、その成果を処遇の改善として還元する長期戦略のもとでは、一人ひとりの質が成果を左右するため、属性によって登用の母集団を狭めないことがその成立要件となります。こうした方針のもとでは、女性管理職比率は、属性に着目した登用によって達成すべき数値ではなく、育成と登用の結果として表れる指標であります。そのため当社グループは、同比率を、人材構成の状況を継続的に検証するための指標として位置づけたうえで、育成の進展に伴い到達すると見込まれる水準を目標として掲げております。 女性管理職比率につきましては、従前、2021年6月末比で女性管理職2.0倍とする目標を掲げておりましたが、2026年6月末時点において未達となりました。また、2028年6月期における目標を20%としておりましたが、これを10%に改めることといたしました。管理職として職責を担うために必要な経験の蓄積には相応の年数を要し、育成には時間がかかること、また、当社グループの事業においては職種による男女構成の偏りがあり、管理職として登用し得るポジションが限られていることを踏まえたものであります。もっとも、当社グループの従業員に占める女性の割合はおよそ2割であり、女性管理職比率との間には差が存在しております。当社グループは、この差を今後の課題として認識しております。なお、管理職の一歩手前の層においては、母集団の状況に変化が生じております。主任に占める女性の割合は近年上昇を続け、従業員に占める女性の割合とおおむね同水準に達しております。次世代経営層・リーダー層研修には、当連結会計年度において10名の女性が参加しておりますが、これに加えて、管理職として職責を担い得る人材が他にいないかを、個々の育成計画を通じて確認してまいります。その結果につきましては、人事労務改革委員会がサステナビリティ委員会において協議したうえで、取締役会に報告し、必要な対応を検討してまいります。 男性の育児休業取得率は、当連結会計年度において44.4%となりました。当社グループにおいては対象となる従業員数が限られており、年度によって数値が変動しやすい面がありますが、育児休業を取得するか否かは、それぞれの家庭の事情や本人の考えによるものであり、当社グループは個人の判断を尊重しております。一方で、業務の属人化や職場の受入体制の不足など、取得をためらわせる潜在的な要因が組織の側にあるものと認識し、その解消に取り組んでまいります。男女間での役割固定化を見直すとともに、取得時に互いを補完できる体制(脱属人化、多能工化、生産性向上)を整備し、取得を希望する従業員が支障なく取得できる環境を整えてまいります。また、年齢構成の偏りや管理職層の業務負荷といった課題にも対応が必要であると認識しております。
| 2024年6月期 | 2025年6月期 | 2026年6月期 | 2028年6月期目標 | |
| 女性管理職比率 | 8.6% | 9.3% | 9.3% | 10% |
| 男性育休取得率 | 44.4% | 54.5% | 44.4% | 90% |
(注)1 女性管理職比率及び男性育児休業取得率は、当社及び連結子会社を対象として算出しております。
2 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の規定に基づく提出会社及び主要子会社ごとの数値については、「第4 提出会社の状況 5 従業員の状況等」に記載しております。
ウ 社会的包摂
当社グループは、資源循環事業をはじめとする事業活動を通じて社会課題の解決に取り組むとともに、多様な人材が共に働き活躍できる職場づくりも重要な社会的責任の一つであると捉えております。連結子会社である株式会社アストコ(長野県松本市)は、就職を希望する障がいのある方に対して、就職に向けた技能・知識の習得支援や、適切な仕事の提供を行う障がい福祉サービス事業を展開しており、当社グループにおける障がい者の社会参画を支える中核的な役割を担っております。「アストコ」という社名は、「明日が“かがやく”ところをつくる」という考えのもと、「あす」と「とこ(ろ)」を組み合わせて名付けられたものであり、障がいのある方々が自分らしく活躍できる明日を共につくるという思いを込めております。
当連結会計年度には、主要子会社である株式会社エコネコルが、機械による一括選別の難しい給湯器の手解体・分別作業を株式会社アストコへ業務委託いたしました。株式会社アストコは、障がいのある方の就労体験の受入れを通じてこれを担いました。分別された素材は株式会社エコネコルが引き受け、長年培ってきた高度な選別技術により高品質なリサイクル原料として社会へ再供給しております。福祉と資源循環がそれぞれの強みを持ち寄り、一貫したリサイクル体制を構築いたしました。当社グループの障がい者雇用率は、当連結会計年度において2.8%となり近年はやや低下しておりますが、法定雇用率を上回る水準を維持しております。今後も障がいのある方が能力を発揮しやすい職場環境の整備や、資源循環事業との連携による就労機会の創出を通じて、雇用率の維持・向上と社会的包摂の推進に取り組んでまいります。
| 2024年6月期 | 2025年6月期 | 2026年6月期 | |
| 障がい者雇用率 | 3.1% | 2.9% | 2.8% |