有価証券報告書-第21期(平成31年3月1日-令和2年2月29日)

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2020/05/29 14:32
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有報資料

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、著作物を公正利用のもと、出来るだけ広く頒布し著作者に収益を還元するという「著作物の健全なる創造サイクルの実現」をミッションに、「ひとつでも多くのコンテンツをひとりでも多くの人へ」をビジョンに掲げ、日本における文化の発展、及び豊かな社会づくりに貢献し続ける会社となることを目指しています。
(2)中長期の経営戦略と対処すべき課題
当社グループは、2018年7月に公表した中期経営計画において「電子書籍取次事業から“Publishing Platformer”への転換」を基本方針として掲げております。
当社グループが持つ最大の「強み」は、電子書籍流通における圧倒的なポジションだと考えております。2020年2月期の当社グループの流通総額は当社試算で1,200億円となっております。当社グループが取引する電子書店数は150店以上存在し、なかでもユーザー利用上位20書店(※1)の全てと取引があることから、大手電子書店によるプロモーション強化の流れに伴って、このシェアは急速に高まりを見せています。
(※1 インプレス総合研究所「電子書籍ビジネス調査報告書2019」における「半年以内に購入したことのある電子書籍ストア Top20」)
さらに4大出版社(KADOKAWA、講談社、集英社、小学館 ※50音順)に当社株主として参画いただいているほか、出版社との取引口座は2,000以上を数え、全ての主要出版社と取引可能な独自のポジションを有しています。非マンガ出版社だけでも1,530社となり、これは他の業界プレーヤーには到底真似のできない水準です。
このポジションと当社グループが持つテクノロジーを組み合わせることによって、当社は今後、“Publishing Platformer”、すなわち、電子書籍流通全体を支える存在への転換を図るべく、新時代のプラットフォームを創造し、電子書籍をより世に広め、出版市場の拡大に貢献し、更なる成長と可能性に挑戦してまいります。
[経営戦略]
① 事業基盤の強化
本業である電子書籍流通事業において当社グループが担うべき役割を「LEGACYを作る」「LEGACYを創りに行く」の2つに分け、出版市場の更なる拡大に貢献してまいります。
「LEGACYを作る」 ⇒ 電子書籍市場の拡大並びに流通カロリーの低減に貢献するべく、以下を実施。
・コンテンツ流通プラットフォーム構築
・メディア・プロモーション事業活性化
・電子書籍流通を支えるプロフェッショナル集団の更なる強化・育成
「LEGACYを創りに行く」 ⇒ 最先端技術の活用により更なる市場拡大及び新市場の創造に貢献するべく、以下を実施。
・メタデータマーケティング提供
・最先端技術を活用したサービス創出
・出版社横断的な新サービス展開
② 経営基盤の強化
イ.連結経営の強化
ロ.優秀な人材の確保
ハ.ミッション・ビジョンを軸にしたESGを推進
「環境」
・当社グループが事業活動において利用する資源・エネルギーの効率化
・電子書籍の利用拡大による紙使用量削減と物流にかかるエネルギー消費量の抑制
「社会」
・企業理念に基づく事業活動の遂行(著作物の公正利用と頒布)
・著作者、出版社、ユーザー(読者)が安心・信頼して利用できるシステム基盤の構築と強化
・地方創生と地域社会活性化
「ガバナンス」
・様々なステークホルダーとの対話を通じたコーポレート・ガバナンスの強化
・コンプライアンス強化
・リスクマネジメント強化
[財務戦略・資源配分計画]
当社グループは、高い資本効率と財務健全性のバランスを重視し、企業価値向上のために戦略的に経営資源を配分することを財務戦略の基本方針としております。
当連結会計年度末における自己資本比率は17.0%となっており、他同業種企業等に比して決して高い水準ではないものと認識しております。これは、2017年3月に実施した株式会社出版デジタル機構の子会社化に伴う資金調達を金融機関からの借入で行ったことによって低下したものでありますが、株式会社出版デジタル機構は現在の当社グループの主力事業である電子書籍取次において当時最大手の企業であり、この買収を実現できたことによる当社グループの事業基盤の強化は極めて重要なものでありました。また、借入で実施したことで、資本市場からの調達に比べてグループ全体における資本コストを低減し、資本効率を高めることができたものと考えております。本件のPMIにおいても従来の当社電子書籍取次事業と株式会社出版デジタル機構との統合は順調に進捗しており、その後の電子書籍市場の想定以上の拡大も奏功し、買収当時に想定していた企業価値への貢献、並びに債務償還能力も十分に高いと判断しております。
今後は、有利子負債の返済や利益積み上げに伴い、自己資本比率を改善していくことで財務健全性を向上させていくほか、適切な情報開示・IR活動を通じて株主資本コストの低減を図ってまいります。財務レバレッジを考慮しつつ負債の規律ある活用も進めることにより、資本効率を向上させながら企業価値の創出に努めてまいります。
設備投資に関しては、企業価値の向上に資する成長のための投資、特にシステム開発を積極的に推進してまいります。なお、各年度の設備投資額は営業キャッシュ・フローの範囲内とすることを原則とし、強固な財務体質を維持し、十分な水準の手元流動性を確保してまいります。
イ.経営資源の配分に関する考え方
当社グループは、当連結会計年度においては連結売上高の98.0%を電子書籍流通事業にて計上しております。電子書籍市場は将来にわたって拡大が見込まれることから、経営資源(人材、投資)の多くは今後も電子書籍流通事業に投下する方針であります。そのため、電子書籍取次システムの追加開発や、ブロックチェーン技術を用いた新たな流通プラットフォームの開発、自社電子書店「コミなび」の広告宣伝費は、企業価値向上に直結するものと考え、積極的な投資を実行いたします。
一方で、グループ全体における電子書籍流通事業への偏重がリスクにもなり得るとの認識から、その他事業への経営資源の配分が、グループ全体の企業価値向上にも資するものと考え、回収可能性や、手元現預金及び今後創出するフリーキャッシュ・フローを十分に考慮したうえで、投資を実行してまいります。
さらに当社は、株主の皆様に対する利益還元を重要な経営課題と認識するとともに、将来の持続的な成長に必要な設備投資等や経営基盤の強化も重要な経営目標と考えております。そのため、内部留保を確保しつつ、財政状態及び業績動向等、経営状態を総合的に判断して利益配当を行っていく方針であります。
この方針に基づき、株主の皆様への利益還元については、配当及び自社株式の取得による総還元性向(注)20%以上を念頭に置き、配当と自己株式の取得の配分は、株価水準等に応じて判断致します。
(注)総還元性向=(配当支払総額+自己株式取得総額)/親会社株主に帰属する当期純利益
ロ.資金需要の主な内容
当社グループの資金需要は、営業活動に係る資金支出では、事業運営にかかる人件費や業務委託費、広告宣伝費などがあります。また、投資活動に係る資金支出は、競争力の維持・強化に向けたシステム開発などがあります。
ハ.資金調達
当社グループにおける設備投資額は営業キャッシュ・フローの範囲内とすることを原則としております。そのため、事業活動の維持拡大において外部資金が必要となる可能性は低いものと認識しております。
一方で、今後は更なる企業価値向上に資するM&A等を実施する場合に必要となる可能性があり、その場合には、内部資金及び外部資金を有効に活用する必要があるものと考えております。その際には、M&A案件の事業計画の確からしさの検証に加え、高い資本効率と財務健全性のバランスを重視して検討を行います。
[経営目標]
2020年2月期
実績
2021年2月期
計画
2023年2月期
計画
流通総額1,200億円1,400億円1,650億円
連結売上高658億円770億円900億円
連結EBITDA26億円30億円60億円
EPS65円77円135円

[対処すべき課題]
当社グループが属する著作物のデジタルコンテンツ流通市場は、高速通信網の整備によるスマートフォンをはじめとした各種デバイスの普及などを背景に、市場が急速に拡大するとともにサービス内容が多様化しております。
こうした環境のもと、当社グループは、2018年7月に公表した中期経営計画に掲げた基本方針「電子書籍取次事業から “Publishing Platformer”への転換」に取り組んでおります。当社グループの継続的な業績の拡大、業界における信頼度のさらなる向上を図ることが、電子書籍の認知向上に寄与していくだけなく、出版市場の拡大にも貢献するものと認識しております。
そのためには、当社グループとして最大の「強み」と考える電子書籍流通における圧倒的なポジションとデジタルテクノロジー分野における開発能力の一層の強化が不可欠となります。
これらを実現していくために下記事項を対処すべき課題として認識し、積極的に取り組んでおります。
① システム技術の強化
当社グループの主力事業である電子書籍流通事業において、出版社や電子書店の業務負担を軽減し、出版社や電子書店がよりコンテンツの創作や販売に注力できる環境を整え、電子書籍市場ひいては出版市場全体を活性化させるべく、業界における当社の電子書籍取次システムの重要度はますます高まっております。
当社グループの新たな電子書籍取次システムは2019年3月に完成しておりますが、今後の業務効率化実現のために各電子書店と新電子書籍取次システムとの連携を完了させる必要があります。加えて、出版業界の発展に向けた技術革新・改善への取り組みとして、クライアントのニーズに応える新電子書籍取次システムの機能拡充や、ブロックチェーン技術などの先進技術を活用した新たな流通プラットフォームの構築に着手しております。
また、当社グループが今後も安定した事業運営を行うためには、システム面でのセキュリティ強化が重要であると認識しております。そのためにも、引き続き市場環境や技術動向の変化に対応した適切な投資や開発・運用体制の整備に取り組んでまいります。
② 事業の基盤強化
当社グループが、市場での競争優位性を確立し企業として成長を持続するためには、経営資源の確保と高度化に努め、既存事業の強化を図りながら、さらに、新規事業に対する積極的な取り組みが必須であります。そのための課題点は、以下のとおりであります。
a)電子書籍流通事業における付加価値提供並びに効率的な運用
当社グループの主力事業である電子書籍流通事業においては、2019年3月に子会社である株式会社メディアドゥと株式会社出版デジタル機構が合併し、国内最大の電子書籍取次事業者となりました。今後も出版社、電子書店、読者のニーズに応え、電子書籍市場を拡大するとともに、社内運用コストの削減を実現するためには、出版営業、書店営業、運用管理総勢300名以上となった組織において、技術革新やノウハウ共有、社内外における密なコミュニケーションをもって組織の効率化と強化を進め、オペレーショナル・エクセレンスを確立する必要があります。
具体的には、クライアントニーズに応える新電子書籍取次システムの機能拡充、自社電子書籍書店「コミなび」のマーケティング強化、複雑なキャンペーン施策管理などのサービスによる付加価値提供、株式会社メディアドゥテック徳島を活用した効率的なオペレーション運用を実施することで、市場拡大、シェア拡大、料率の維持・向上、社内管理コスト抑制を推進し、利益率の改善を図ります。
b)将来に向けた研究開発・新規事業への取り組み
当社グループが事業を展開する電子書籍業界においては、ボーダレス化の加速や競合企業の台頭など、市場環境や顧客ニーズ、競合他社の状況が常に変化しており、今後も変化の激しい事業環境になることが想定されます。このような事業環境においては、将来を見据えた新規事業の創出や研究開発、成長領域における企業のM&Aは重要な課題であると考えております。
当社グループにとって最大規模のM&A案件であった株式会社出版デジタル機構をはじめ、買収した子会社や投資先のなかには当初の計画以上に業績が好調に推移している企業も存在している一方で、過去のM&Aに関してはPMI(注)が想定通りに進んでいない案件もあります。
現在、当社グループは明確な投資方針や厳格な投資基準を有し、子会社や投資先の事業成長を実現するための適切な人材を配置することで管理体制を強化し、有効なPMIのノウハウを社内に蓄積しつつあります。今後も引き続き厳格な投資基準のもとで、当社の強みである業界におけるポジションを有効活用し、事業拡大に資する買収先や投資先を選定するとともに、より有効なPMIを実施することで、成功確率の高い、中長期の競争力確保につながるM&Aに取り組んでまいります。
(注)Post Merger Integration(ポスト・マージャー・インテグレーション)。経営統合に伴って、計画したシナジー効果を獲得するためのプロセス統合とマネジメント
c)海外事業展開の推進
当社グループの電子書籍流通事業は主に国内で事業を展開しておりますが、日本のマンガ作品は海外でも高い評価を受けていることから、グローバル市場での事業展開は高いポテンシャルを有しているものと想定されます。当社グループとしましては、2016年に米国カリフォルニア州サンディエゴ市に「Media Do International, Inc.」を設立し、海外市場への進出に取り組んでまいりました。
一方で、当初の想定に比べて海外事業は拡大しておらず、依然として当社売上高のほとんどが国内市場からもたらされております。海外進出に当たり、国内と同じく、電子書店に向けてコンテンツの流通を行うことを計画しておりましたが、海外向けの翻訳コンテンツの少なさや、取次業態は海外にはほぼ存在しないビジネスモデルであり、その浸透に時間を有したことが原因として挙げられます。
今後は助成金活用等により海外向けの翻訳コンテンツを増やしていくほか、現地の出版社や電子書店とのネットワークを構築することで、コンテンツ輸出を行っていきたいと考えております。また、2019年3月にMedia Do International, Inc.を通じて買収したMyAnimeList, LLC.を活用し、ユーザーとのダイレクトアクセスを獲得することで、コンテンツの知名度向上や購入意欲増加を図ってまいります。
加えて、当社は2019年よりインターネット技術の世界的標準化推進団体である「W3C(World Wide Web Consortium)」に加盟、さらにMedia Do International, Inc.にてPresident & CEOを務める塩濵大平がW3C内のPublishing Business Groupの共同議長を務めています。こうした海外ネットワークを活用し、当社グループは電子書籍の国際標準規格策定への提言活動をより強化するとともに、アジアの代表として出版業界全体のデジタル化を推進することで存在感を発揮し、海外事業の成長につなげていきたいと考えております。
③ 優秀な人材の確保
当社グループは、イノベーターとして電子書籍市場の成長促進、既存事業にとらわれない新規事業創出、グループ会社管理体制強化に貢献する人材を確保し育成することが、更なる業容拡大や業界におけるポジションの差別化及び強化にとって重要であると考えております。
当社グループとしましては、「本」文化を育て、出版市場の拡大に寄与することができる点や、テクノロジーの進化の最前線に立ち、社会課題の解決や業界変革に挑戦できる点について説くことで、会社の魅力訴求に取り組んでまいります。また、働き方改革への対応、社内教育制度の整備を図っていくことで採用強化につなげたいと考えております。
④ コーポレート・ガバナンスの強化
当社グループは、これまでに、執行役員制度及び取締役の任期1年制の導入による責任体制の明確化、社外取締役2名を含む、独立役員の要件を充足する社外役員の招聘による監督・監査機能の強化、取締役会付議基準の見直しによる意思決定の迅速化及び取締役会全体の機能向上などコーポレートガバナンスの実践に努めてまいりましたが、持続的な成長を遂げ、ひいては中長期的な企業価値の向上を図るためには、更なるコーポレートガバナンスの実践・強化は重要な課題のひとつであると認識しています。
このような認識のもと、今後も引き続き、経営の透明性・公正性・迅速性の維持・向上及びガバナンスの中核を担う取締役会全体の更なる機能向上に努めるとともに、財務情報をより正確に、かつ分かりやすく提供することはもとより、経営戦略、ガバナンスや社会・環境問題に関する事項などいわゆる非財務情報を具体的かつ積極的に提供するなどの情報開示の充実、株主との建設的な対話を促進することを含むIR活動の更なる強化に努めてまいります。

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