訂正有価証券報告書-第10期(2024/04/01-2025/03/31)
①気候変動に関する事項
当社グループは、サステナビリティ優先課題の一つに「気候変動対策」を掲げています。これまでに、2019年6月にTCFD提言へ賛同、2020年9月にUNEP FI(国連環境計画・金融イニシアティブ)が提唱するPRB(責任銀行原則)に署名し、サステナブルファイナンスの推進に努め、2024年7月のPRB報告書ならびにESG投融資実行額(うち国際原則に準拠したサステナブルファイナンス商品)について監査法人による保証を得ております。また、2025年4月温室効果ガス排出量データにおける第三者認証を取得するなど、一連のサステナビリティの取り組みについて、透明性ある開示に努めております。
A.リスクと機会
当社グループは、気候変動に起因するリスクが、事業運営、戦略、財務計画に影響を与えることを認識しております。シナリオ分析などを活用した気候関連のリスク管理に取り組むと同時に、脱炭素社会の実現に向け、お客様の温室効果ガス排出量削減やエネルギー効率向上に向けた投融資(サステナブルファイナンス)を事業機会と捉え、環境負荷軽減を目的とした金融面ならびにコンサルティングなどの非金融面での取り組みを積極的に展開しております。
肥後銀行では、2024年10月に預金総額の一定割合を環境団体等に寄付する法人のお客様向けの「サステナビリティ定期預金」、2025年1月に個人のお客様向けの「サステナビリティ定期預金」、2025年4月にお預かりした預金を再生可能エネルギー等の融資に資金を充当する「肥後銀行グリーン預金」の取扱を開始いたしました。
また鹿児島銀行では、脱炭素先行地域である鹿児島県日置市において、2024年9月締結した「脱炭素先行地域づくり事業の円滑な実施に向けた日置市のサポートに関する契約」にもとづき、ファイナンスを通した一貫した支援を実施しております。
気候変動対応をビジネス機会と捉え、投融資をはじめとするソリューションを提供するとともに、資金の流れを気候変動対応へ転換することに取り組んでおります。
B.移行計画の策定
脱炭素社会の実現に関して重要な役割を担う地域価値共創グループとして、Scope1・2における2030年度までのカーボンニュートラル(算定範囲:当社及び当社100%出資子会社)の達成を目指すとともに、地域・お客様の脱炭素を促進するための移行戦略を策定しております。
当社グループでは、2023年度より、「Partnership for Carbon Accounting Financials(PCAF)」の基準に準じて全事業性融資先のCO2排出量を算定・開示しております。事業性融資先の排出量を分析するとともに、肥後銀行では、CO2排出量算定システム「炭削くん」を開発・提供し、お客様のCO2排出量の算定及び削減支援を実施しております。2025年3月現在で、累計4,000先を超えるお客様にご利用いただいています。
加えて、脱炭素社会の実現には、自治体と連携が不可欠であるとの考えのもと、肥後銀行では、2024年11月に産学官金の連携による「芦北地域におけるアマモ場等の再生に関する連携協定」を締結し、ブルーカーボンクレジットの創出に向けた活動を開始いたしました。
鹿児島銀行では、2024年4月に産学官金の連携による「鹿児島県畜産業におけるGX推進及び産業振興に向けた連携協定」を締結いたしました。鹿児島県の基幹産業である畜産業の脱炭素化を図るべく、牛から排出される温室効果ガスの削減及び生産コストの低減・生産性向上に向けた取り組みを進めております。
今後も、グループ全体での知見を深め、移行戦略の遂行を通して、地域・お客様とともに脱炭素社会の実現に取り組んでまいります。


C.シナリオ分析
当社グループでは、気候変動リスクとして「物理的リスク」「移行リスク」を認識し、事業における気候変動の影響を具体的に把握するため、肥後銀行、鹿児島銀行において2050年までのシナリオ分析を実施し、シナリオ分析の高度化、精緻化を行いました。
<物理的リスク>気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の4℃シナリオ(RCP8.5シナリオ)を前提とし、気候変動に起因する自然災害の大半を占め、九州で特に発生確率の高い水災による信用コストへの影響を試算しました。
具体的には、事業性融資先の水災などによる肥後銀行と鹿児島銀行が設定している担保不動産の損傷に起因する価値毀損の推計結果(直接影響)及び建物の損傷に起因するお客様の事業停滞日数の推計結果(間接影響)、ならびに2024年度は住宅ローン先の担保価値毀損の推計結果(直接影響)を加え、2050年までの信用コストの増加額は最大で67億円程度という結果になりました。
※国土交通省が公表するハザードマップ及び「治水経済調査マニュアル」を使用し、資産ごとの浸水深及び浸水深に応じた被害額を算定しております。
<移行リスク>TCFD提言にて定義されるエネルギーセクターに、2024年度は運輸セクターを新たに加え、移行リスクの定量化をいたしました。具体的には、選定したセクターにおける当社グループの融資先について、炭素税やエネルギー価格及び製品構成の変化による融資先の営業費用への影響、および需要の増減に伴う売上への影響から、信用コストの増加額を試算しました。2050年までの信用コストの増加額は単年度最大で183億円程度という結果となりました。今後も、分析対象の拡大、シナリオ分析を通じて移行リスクの把握を図ってまいります。
※IEA(国際エネルギー機関)による2050年ネットゼロ排出シナリオ(NZE2050)を参照しております。
ただし、NZE2050シナリオにはない日本のシナリオデータについては、必要に応じて表明宣言シナリオ(APS)等により補完しております。
D.炭素関連資産
当社グループの貸出金に占める炭素関連セクターの割合は以下のとおりです。
※TCFD提言及び日本標準産業分類並びに肥後銀行・鹿児島銀行の業種コード等を用いて分類
[エネルギー]石油及びガス、石炭、電力ユーティリティ
(再生可能エネルギー発電者、独立系発電事業者、水道事業者を除く)
[運輸]航空貨物、旅客空輸、海上輸送、鉄道輸送、トラックサービス、自動車及び部品
[素材・建築物]金属・鉱業、化学、建設資材、資本財、不動産管理・開発
[農業・食料・林産物]飲料、農業、加工食品・加工肉、製紙・林業製品
E.物理的リスク・移行リスクを踏まえた当社グループの主なリスクと機会
短期(3年以内)、中期(3~10年)、長期(10年以上)の時間軸で気候変動に伴うリスクと機会の分析を行っております。
<気候変動に伴うリスクと機会>
②生物多様性に関する事項
当社グループは、中・南九州の自然豊かな地域に位置しています。気候変動とならび自然資本や生物多様性への対応は、私たちにとって重要な課題であると認識しております。2022年8月に「TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)フォーラム」に参画し、2024年1月に「TNFD Adopter」へ登録いたしました。また、2024年4月に、グループにおける自然資本・生物多様性への取り組み推進のため「生物多様性保全方針」を制定いたしました。
A.自社拠点の自然との接点
当社グループにおける自然との関わりを把握するため、主な事業基盤のうち熊本県と鹿児島県における物理的な水リスクや生物多様性における重要度などが高い地域への分布状況を分析いたしました。水リスクに関する分析の結果、同地域に立地している自社の営業拠点に水の物理的リスクが高い地域が存在しないことを確認しました(下図:分析のイメージ)。引き続き、TNFD提言に沿って「優先地域」の特定・評価に向けた取り組みを進めてまいります。
<熊本県・鹿児島県における営業拠点の分布状況から見る自然関連のリスク分析※>
※ World Resources InstituteのAqueductプラットフォームから取得した水ストレスデータを加工して利用(https://www.wri.org/applications/aqueduct)
B.ポートフォリオにおける依存と影響
当社グループの事業活動と自然資本の関係を依存とインパクトという観点で整理するため、ヒートマップの作成を行い、19セクターの分析を行いました。分析の結果、水関連に着目した場合、生態系サービスへの依存関係においては「洪水緩和」「水供給」などへの依存が、自然資本への影響関係においては「水質汚染物質」「水使用量」への影響が比較的高いことがわかりました。


※ENCOREとは多くの金融機関が開示に向けて生物多様性・自然資本の分析に用いるグローバルルールのこと。
C.当社グループ事業における重要業種の特定
気候・自然関連のリスクは業種ごとに影響度が大きく異なるため、業種別の分析を行いました。当社グループでは、取引先企業の気候・自然への依存とインパクト・当社グループの融資残高のエクスポージャーを業種ごとに数値化し、マッピングを実施しております。
<業種ごとの依存・インパクトとエクスポージャー(グループ全体)>
さらに業種ごとの依存・インパクトとエクスポージャー分析を実施した結果、地域の基幹産業である「農林漁業」、「観光業(宿泊・飲食業等)」の依存と影響度合いに着目しました。なお、ビジネスにおける土地利用の転換の加速・水需要の増大といった幅広い業種に影響を与える「水」に焦点を置いた分析も進めております。
D.自然・産業特性の分析
前述B.C.の結果を踏まえ、当社グループにおける地盤の自然・産業特性と要注意地域について主要エリアである「熊本県」「鹿児島県」を分析いたしました。
<熊本県の分析結果>熊本県の自然特性と産業特性について自治体の戦略や報告書等を基に調査した結果、熊本県は、特に地下水資源が非常に豊富であるという地域特性を有していること、水を多量に使用する産業の集積や急速な都市化が近年注目を集めていることから、「豊かな地下水資源と依存・インパクトの集中」という点に着目しました。
白川中流域は大半を農地や山林が占めており、エリアにおける地下水プールへの寄与が大きい地域です。農林業によりもたらされる豊富な地下水資源(淡水供給サービス)にあらゆるセクターや地域住民が依存しています。一方で、近年は離農や耕作放棄などに伴う里地・里山の荒廃が課題となっており、農林業の衰退に伴う管理放棄は地下水にとっても負のインパクトになることが懸念されます。また、大量の水を必要とする製造業においては地下水資源に対して甚大なインパクトをもたらす可能性があるほか、産業集積に伴う急速な都市化(土地利用の変化)によるインパクトも懸念されます。地下水資源の減少により、産業や地域社会にも波及し、地域地盤の安定性が損なわれる可能性があります。
<鹿児島県の分析結果>鹿児島県の自然特性と産業特性について自治体の戦略や報告書等を基に調査した結果、鹿児島県では多様な気候や世界自然遺産等の景観といった自然特性や、自然や飲食を目的とした観光業(宿泊・飲食業等)が盛んであるとの産業特性があります。中でも島しょ部では世界自然遺産である「屋久島」と「奄美大島及び徳之島」では、屋久杉やサンゴ、マングローブなど、地域の生態系による景観といった観光資源が文化的サービスやレクレーションを行う場を提供しており、それらの自然を目的として訪れた観光客の人数が増えることで、ゴミの廃棄等による汚染、踏圧や騒音による生態系のかく乱、意図しない侵略的外来種の持ち込みなどインパクトを与え、それが結果的に依存している生態系サービスの毀損につながる可能性があります。
E.自然資本・生物多様性に関する主なリスクと機会
短期(3年以内)、中期(3~10年)、長期(10年以上)の時間軸で生物多様性に伴うリスクと機会の分析を行っております。
F.当社グループにおける事業としての取り組み
現在、熊本県においては、ビジネスにおける土地利用の転換の加速や水需要の増大により、地下水涵養量の減少が懸念されています。そのような中、肥後銀行では2025年3月に産学金協働の「熊本ウォーターポジティブ・アクション」を始動しました。企業の自発的なグリーンインフラの設置を支援しながら、自然クレジット(※)の原則にもとづき、グリーンインフラがもつ地下水涵養量等の価値をクレジット化する革新的な金融手法の研究開発を進めております。
また、生物多様性に関しては、JBIBや30by30アライアンスなど各種イニシアティブへ参画し、業種の垣根を越えた情報交換に努めております。今後も、長年取り組んでいる水資源涵養事業などの環境保全活動等を通じた地域貢献を継続するとともに、引き続きTNFD提言で推奨されているLEAPアプローチを用い分析を進め、事業活動を通じた自然資本・生物多様性への依存と影響、リスクと機会を認識し、TNFDの開示推奨事項(ガバナンス・戦略・リスクとインパクトの管理・指標と目標)に沿った開示の準備とともに施策の検討を進め、透明性のある開示に努めてまいります。
※自然の保全、回復、適切な管理活動からもたらされる、生態系や生物多様性への測定可能なプラス成果のこと。
当社グループは、サステナビリティ優先課題の一つに「気候変動対策」を掲げています。これまでに、2019年6月にTCFD提言へ賛同、2020年9月にUNEP FI(国連環境計画・金融イニシアティブ)が提唱するPRB(責任銀行原則)に署名し、サステナブルファイナンスの推進に努め、2024年7月のPRB報告書ならびにESG投融資実行額(うち国際原則に準拠したサステナブルファイナンス商品)について監査法人による保証を得ております。また、2025年4月温室効果ガス排出量データにおける第三者認証を取得するなど、一連のサステナビリティの取り組みについて、透明性ある開示に努めております。
A.リスクと機会
当社グループは、気候変動に起因するリスクが、事業運営、戦略、財務計画に影響を与えることを認識しております。シナリオ分析などを活用した気候関連のリスク管理に取り組むと同時に、脱炭素社会の実現に向け、お客様の温室効果ガス排出量削減やエネルギー効率向上に向けた投融資(サステナブルファイナンス)を事業機会と捉え、環境負荷軽減を目的とした金融面ならびにコンサルティングなどの非金融面での取り組みを積極的に展開しております。
肥後銀行では、2024年10月に預金総額の一定割合を環境団体等に寄付する法人のお客様向けの「サステナビリティ定期預金」、2025年1月に個人のお客様向けの「サステナビリティ定期預金」、2025年4月にお預かりした預金を再生可能エネルギー等の融資に資金を充当する「肥後銀行グリーン預金」の取扱を開始いたしました。
また鹿児島銀行では、脱炭素先行地域である鹿児島県日置市において、2024年9月締結した「脱炭素先行地域づくり事業の円滑な実施に向けた日置市のサポートに関する契約」にもとづき、ファイナンスを通した一貫した支援を実施しております。
気候変動対応をビジネス機会と捉え、投融資をはじめとするソリューションを提供するとともに、資金の流れを気候変動対応へ転換することに取り組んでおります。
B.移行計画の策定
脱炭素社会の実現に関して重要な役割を担う地域価値共創グループとして、Scope1・2における2030年度までのカーボンニュートラル(算定範囲:当社及び当社100%出資子会社)の達成を目指すとともに、地域・お客様の脱炭素を促進するための移行戦略を策定しております。
当社グループでは、2023年度より、「Partnership for Carbon Accounting Financials(PCAF)」の基準に準じて全事業性融資先のCO2排出量を算定・開示しております。事業性融資先の排出量を分析するとともに、肥後銀行では、CO2排出量算定システム「炭削くん」を開発・提供し、お客様のCO2排出量の算定及び削減支援を実施しております。2025年3月現在で、累計4,000先を超えるお客様にご利用いただいています。
加えて、脱炭素社会の実現には、自治体と連携が不可欠であるとの考えのもと、肥後銀行では、2024年11月に産学官金の連携による「芦北地域におけるアマモ場等の再生に関する連携協定」を締結し、ブルーカーボンクレジットの創出に向けた活動を開始いたしました。
鹿児島銀行では、2024年4月に産学官金の連携による「鹿児島県畜産業におけるGX推進及び産業振興に向けた連携協定」を締結いたしました。鹿児島県の基幹産業である畜産業の脱炭素化を図るべく、牛から排出される温室効果ガスの削減及び生産コストの低減・生産性向上に向けた取り組みを進めております。
今後も、グループ全体での知見を深め、移行戦略の遂行を通して、地域・お客様とともに脱炭素社会の実現に取り組んでまいります。


C.シナリオ分析
当社グループでは、気候変動リスクとして「物理的リスク」「移行リスク」を認識し、事業における気候変動の影響を具体的に把握するため、肥後銀行、鹿児島銀行において2050年までのシナリオ分析を実施し、シナリオ分析の高度化、精緻化を行いました。
<物理的リスク>気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の4℃シナリオ(RCP8.5シナリオ)を前提とし、気候変動に起因する自然災害の大半を占め、九州で特に発生確率の高い水災による信用コストへの影響を試算しました。
具体的には、事業性融資先の水災などによる肥後銀行と鹿児島銀行が設定している担保不動産の損傷に起因する価値毀損の推計結果(直接影響)及び建物の損傷に起因するお客様の事業停滞日数の推計結果(間接影響)、ならびに2024年度は住宅ローン先の担保価値毀損の推計結果(直接影響)を加え、2050年までの信用コストの増加額は最大で67億円程度という結果になりました。
| 事業性融資先 | 住宅ローン先 | ||
| 直接影響 (担保価値毀損) | 間接影響 (お客様の事業停滞に伴う業績悪化) | 直接影響 (担保価値毀損) | |
| リスクイベント | 水災 | ||
| シナリオ | 4℃シナリオ(RCP8.5シナリオ) | ||
| 地域 | 熊本県・鹿児島県・宮崎県 | ||
| リスク指標 | 信用コスト | ||
| 信用コスト増加額(※) | 16億円 | 50億円 | 1億円 |
※国土交通省が公表するハザードマップ及び「治水経済調査マニュアル」を使用し、資産ごとの浸水深及び浸水深に応じた被害額を算定しております。
<移行リスク>TCFD提言にて定義されるエネルギーセクターに、2024年度は運輸セクターを新たに加え、移行リスクの定量化をいたしました。具体的には、選定したセクターにおける当社グループの融資先について、炭素税やエネルギー価格及び製品構成の変化による融資先の営業費用への影響、および需要の増減に伴う売上への影響から、信用コストの増加額を試算しました。2050年までの信用コストの増加額は単年度最大で183億円程度という結果となりました。今後も、分析対象の拡大、シナリオ分析を通じて移行リスクの把握を図ってまいります。
| 直接影響 | |
| シナリオ | 1.5℃シナリオ(※) |
| 分析対象 | エネルギーセクター(石油・ガス・電力)・運輸セクター |
| 地域 | 国内 |
| 分析期間 | 2050年まで |
| リスク指標 | 信用コスト |
| 分析結果 | 単年度最大で183億円程度 |
※IEA(国際エネルギー機関)による2050年ネットゼロ排出シナリオ(NZE2050)を参照しております。
ただし、NZE2050シナリオにはない日本のシナリオデータについては、必要に応じて表明宣言シナリオ(APS)等により補完しております。
D.炭素関連資産
当社グループの貸出金に占める炭素関連セクターの割合は以下のとおりです。
| エネルギー | 運輸 | 素材・建築物 | 農業・食料・林産物 |
| 1.91% | 2.11% | 10.76% | 2.95% |
※TCFD提言及び日本標準産業分類並びに肥後銀行・鹿児島銀行の業種コード等を用いて分類
[エネルギー]石油及びガス、石炭、電力ユーティリティ
(再生可能エネルギー発電者、独立系発電事業者、水道事業者を除く)
[運輸]航空貨物、旅客空輸、海上輸送、鉄道輸送、トラックサービス、自動車及び部品
[素材・建築物]金属・鉱業、化学、建設資材、資本財、不動産管理・開発
[農業・食料・林産物]飲料、農業、加工食品・加工肉、製紙・林業製品
E.物理的リスク・移行リスクを踏まえた当社グループの主なリスクと機会
短期(3年以内)、中期(3~10年)、長期(10年以上)の時間軸で気候変動に伴うリスクと機会の分析を行っております。
<気候変動に伴うリスクと機会>
| 種類 | 事業へのインパクト | 時間軸 | |
| 物理的リスク | 急性リスク | 異常気象の激甚化による自然災害により投融資先の事業活動の停滞、物損被害の発生によって、投融資先の事業や財務状況へ影響し、当社グループ貸出資産の価値が毀損する恐れがあります。 | 短期~長期 |
| 慢性リスク | 平均気温の上昇に伴う熱中症等による労働生産性の低下が、投融資先の業績に影響を与え、当社グループの貸出資産の価値が毀損する恐れがあります。 | 短期~長期 | |
| 移行リスク | 政策・規制 市場 | 炭素税導入、石油石炭税率引き上げ等の気候変動に関連する政策や温室効果ガス(GHG)排出規制や新築建築物のエネルギー効率規制の強化によって、投融資先の事業や財務状況へ影響し、当社グループの貸出資産の価値が毀損する恐れがあります。 | 中期~長期 |
| 評判 | 環境問題への対応が競合と比べ劣後することにより当社グループの企業評価が低下する恐れがあります。 | 短期~長期 | |
| 機会 | 政策・規制 | エネルギーセクターにおける再生可能エネルギーの普及、不動産セクターにおける高効率建築や低炭素建材の導入、自動車・運輸セクターにおける電気自動車や低炭素技術の拡大など、投融資先の脱炭素化に向けた設備投資等による資金需要の増加が見込まれます。 | 短期~長期 |
| 技術、製品 サービス | 自然災害の激甚化や環境配慮意識の向上による投融資先の行動変化により、自然災害に備えた保険商品や環境保全に関連した金融商品・サービスの提供機会の増加が見込まれます。 | 短期~長期 | |
| 評判 | 気候変動への対応による地域の脱炭素に向けた取り組みによって当社グループの企業価値が向上し、ビジネス機会の増加が見込まれます。 | 中期~長期 | |
②生物多様性に関する事項
当社グループは、中・南九州の自然豊かな地域に位置しています。気候変動とならび自然資本や生物多様性への対応は、私たちにとって重要な課題であると認識しております。2022年8月に「TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)フォーラム」に参画し、2024年1月に「TNFD Adopter」へ登録いたしました。また、2024年4月に、グループにおける自然資本・生物多様性への取り組み推進のため「生物多様性保全方針」を制定いたしました。
A.自社拠点の自然との接点
当社グループにおける自然との関わりを把握するため、主な事業基盤のうち熊本県と鹿児島県における物理的な水リスクや生物多様性における重要度などが高い地域への分布状況を分析いたしました。水リスクに関する分析の結果、同地域に立地している自社の営業拠点に水の物理的リスクが高い地域が存在しないことを確認しました(下図:分析のイメージ)。引き続き、TNFD提言に沿って「優先地域」の特定・評価に向けた取り組みを進めてまいります。
<熊本県・鹿児島県における営業拠点の分布状況から見る自然関連のリスク分析※>

※ World Resources InstituteのAqueductプラットフォームから取得した水ストレスデータを加工して利用(https://www.wri.org/applications/aqueduct)
B.ポートフォリオにおける依存と影響
当社グループの事業活動と自然資本の関係を依存とインパクトという観点で整理するため、ヒートマップの作成を行い、19セクターの分析を行いました。分析の結果、水関連に着目した場合、生態系サービスへの依存関係においては「洪水緩和」「水供給」などへの依存が、自然資本への影響関係においては「水質汚染物質」「水使用量」への影響が比較的高いことがわかりました。


※ENCOREとは多くの金融機関が開示に向けて生物多様性・自然資本の分析に用いるグローバルルールのこと。
C.当社グループ事業における重要業種の特定
気候・自然関連のリスクは業種ごとに影響度が大きく異なるため、業種別の分析を行いました。当社グループでは、取引先企業の気候・自然への依存とインパクト・当社グループの融資残高のエクスポージャーを業種ごとに数値化し、マッピングを実施しております。
<業種ごとの依存・インパクトとエクスポージャー(グループ全体)>

さらに業種ごとの依存・インパクトとエクスポージャー分析を実施した結果、地域の基幹産業である「農林漁業」、「観光業(宿泊・飲食業等)」の依存と影響度合いに着目しました。なお、ビジネスにおける土地利用の転換の加速・水需要の増大といった幅広い業種に影響を与える「水」に焦点を置いた分析も進めております。
D.自然・産業特性の分析
前述B.C.の結果を踏まえ、当社グループにおける地盤の自然・産業特性と要注意地域について主要エリアである「熊本県」「鹿児島県」を分析いたしました。
<熊本県の分析結果>熊本県の自然特性と産業特性について自治体の戦略や報告書等を基に調査した結果、熊本県は、特に地下水資源が非常に豊富であるという地域特性を有していること、水を多量に使用する産業の集積や急速な都市化が近年注目を集めていることから、「豊かな地下水資源と依存・インパクトの集中」という点に着目しました。
白川中流域は大半を農地や山林が占めており、エリアにおける地下水プールへの寄与が大きい地域です。農林業によりもたらされる豊富な地下水資源(淡水供給サービス)にあらゆるセクターや地域住民が依存しています。一方で、近年は離農や耕作放棄などに伴う里地・里山の荒廃が課題となっており、農林業の衰退に伴う管理放棄は地下水にとっても負のインパクトになることが懸念されます。また、大量の水を必要とする製造業においては地下水資源に対して甚大なインパクトをもたらす可能性があるほか、産業集積に伴う急速な都市化(土地利用の変化)によるインパクトも懸念されます。地下水資源の減少により、産業や地域社会にも波及し、地域地盤の安定性が損なわれる可能性があります。
<鹿児島県の分析結果>鹿児島県の自然特性と産業特性について自治体の戦略や報告書等を基に調査した結果、鹿児島県では多様な気候や世界自然遺産等の景観といった自然特性や、自然や飲食を目的とした観光業(宿泊・飲食業等)が盛んであるとの産業特性があります。中でも島しょ部では世界自然遺産である「屋久島」と「奄美大島及び徳之島」では、屋久杉やサンゴ、マングローブなど、地域の生態系による景観といった観光資源が文化的サービスやレクレーションを行う場を提供しており、それらの自然を目的として訪れた観光客の人数が増えることで、ゴミの廃棄等による汚染、踏圧や騒音による生態系のかく乱、意図しない侵略的外来種の持ち込みなどインパクトを与え、それが結果的に依存している生態系サービスの毀損につながる可能性があります。
E.自然資本・生物多様性に関する主なリスクと機会
短期(3年以内)、中期(3~10年)、長期(10年以上)の時間軸で生物多様性に伴うリスクと機会の分析を行っております。
| 種類 | 事業へのインパクト | 時間軸 |
| 物理的リスク | 自然資源の急性・慢性的な現象、弱体化した生態系サービスが投融資先の事業財務状況へ影響し、当社グループの貸出資産の価値が毀損する恐れがあります。 | 短期~長期 |
| 移行リスク | 自然に関与する企業の生産プロセスにおいて、直接あるいは間接的に不利になるような厳しい政策の導入や社会的規範の浸透によって、投融資先の事業や財務状況へ悪影響を及ぼし、当社グループの貸出資産の価値が毀損する恐れがあります。 | 長期 |
| 機会 | 消費者の行動変化による自然へのポジティブ・ネガティブな影響の緩和効果を持つ製品・サービスの開発など、お客様の生物多様性保全推進に向けた取り組み増加等による資金需要の増加が見込まれます。 生息地や生態系の保護、再生、修復を支援する活動を通じ、投融資先の持続可能性の高い事業継続に寄与します。 | 短期~長期 |
F.当社グループにおける事業としての取り組み
現在、熊本県においては、ビジネスにおける土地利用の転換の加速や水需要の増大により、地下水涵養量の減少が懸念されています。そのような中、肥後銀行では2025年3月に産学金協働の「熊本ウォーターポジティブ・アクション」を始動しました。企業の自発的なグリーンインフラの設置を支援しながら、自然クレジット(※)の原則にもとづき、グリーンインフラがもつ地下水涵養量等の価値をクレジット化する革新的な金融手法の研究開発を進めております。
また、生物多様性に関しては、JBIBや30by30アライアンスなど各種イニシアティブへ参画し、業種の垣根を越えた情報交換に努めております。今後も、長年取り組んでいる水資源涵養事業などの環境保全活動等を通じた地域貢献を継続するとともに、引き続きTNFD提言で推奨されているLEAPアプローチを用い分析を進め、事業活動を通じた自然資本・生物多様性への依存と影響、リスクと機会を認識し、TNFDの開示推奨事項(ガバナンス・戦略・リスクとインパクトの管理・指標と目標)に沿った開示の準備とともに施策の検討を進め、透明性のある開示に努めてまいります。
※自然の保全、回復、適切な管理活動からもたらされる、生態系や生物多様性への測定可能なプラス成果のこと。