有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/07/21 15:00
【資料】
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【項目】
137項目

対処すべき課題

文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において入手可能な情報に基づいて当社が判断したものであり、当該将来に関する事項については、その達成を保証するものではありません。
(1) 会社経営の基本方針
当社は、「人と社会を健康に美しく」を企業理念に掲げ、新型コロナウイルス感染症の影響で、「非対面」、「リモート」が常態化するというパラダイムシフトがおきた我が国において、特に医療・ヘルスケアの領域に着眼し、それらの分野でのパラダイムシフトを起こし、より良い生活文化の創造と発信を通じて、社会すべての人々の健康で幸福な生活の実現に貢献するという使命を基に、事業展開を行っております。
上記使命の要約は以下のとおりとなります。
① デジタル技術の活用により、人々の幸福な生活に欠かせない医療・ヘルスケア領域を革新します。
② 調剤薬局のEC化を推進し、医療サービスの向上と社会保障制度の負担減に貢献します。
③ ヘルスケア領域において、特に「ケンビキョウイイ」(注)の分野のプロダクトに注力します。
(注)「ケンビキョウイイ」とは、「健康・美容・教育・癒し・医薬・医療」を指します。
(2) 経営戦略及び経営上の目標達成状況を判断するための経営指標等
当社では、事業を継続的に発展させていくためには、収益力を高め、適正な利益確保を図ることが重要と認識し、客観的な指標として、売上高、営業利益を重視しており、その向上を図る経営に努めてまいります。また、当社事業モデルを勘案したうえでの重要な経営指標は、ヘルスケアセールス事業及びメディカルケアセールス事業の医薬品通販事業では、今後の収益の源泉となる「一年間で新規獲得した定期顧客数(注)」を、ヘルスケアマーケティング事業では「取引先社数」及び「取引単価」を、メディカルケアセールス事業のSOKUYAKU事業では、SOKUYAKUプラットフォームの拡大を重視し「会員数」、「提携医療機関数」及び「提携薬局数」の3点を、それぞれ重要な指標としております。
(注)「定期顧客数」とは、「当社全商品の定期コース会員の延べ人数」となります。
(3) 経営環境及び市場戦略
当社の事業が対象とする市場は、健康食品や機能性表示食品、一般医薬品等のEC・通信販売市場及び調剤薬局市場であります。日本国内における消費者向け電子商取引(BtoC-EC)の市場は、インターネットやスマートフォンの普及の拡大の影響で、今後も引き続き堅調に推移していくと予想されております。2019年における日本国内のEC市場規模は19兆3,609億円で、前年比7.7%の伸び率となっております(注1)。その要因には、ネット上での販売商品の多様化、市場参加者(売り手)の増加、 物流事業者による宅配時間の大幅な短縮化、スマートフォンの普及、SNSによる情報流通量の増大化等が挙げられます。なお、2019年の物販系分野のEC化率は6.7%と、2015年の4.7%から毎年着実に上昇しております(注1)。しかしながら、米国のEC化率は約11%であり、近年ECの市場規模拡大が著しい中国のEC化率は既に30%を超えている(注1)ことと比較すると、我が国におけるBtoC-EC市場はまだ飽和しておらず、今後も伸びる可能性が十分にあると考えられます。
さらに、新型コロナウイルス感染症の影響から、外出を控える消費者が増加したことから、「巣ごもり消費」という言葉に表現されるように、自宅にいながら買い物を楽しむという新たな消費行動がより顕著となり、市場の成長をより加速させると同時に、健康食品市場にも追い風となっております。
このような背景のもと、健康食品市場の市場規模は、2019年で8,675億円、2020年で8,810億円(前年対比1.6%増)で、うち通販チャネルによる販売の構成割合は、2019年で48.6%、2020年で49.0%と、市場の拡大とともに通販チャネル自体も堅調に増加しております(注2)。また、一般用医薬品における通販市場の市場規模は2020年で417億円、2021年で456億円(前年対比9.4%増)と推計されており(注3)、こちらも増加トレンドにあります。このような経営環境を踏まえ、当社は新商品の投入、定期会員へのサービス拡充などを通じて、引き続き健康食品等の通信販売事業を行うヘルスケアセールス事業及び医薬品の通信販売事業を行うメディカルケアセールス事業において、安定的な収益基盤を構築してまいります。
一方、調剤薬局を取り巻く市場環境につきまして、調剤医療費(調剤報酬)はここ数年ほぼ横ばいで推移しており、2018年では約7.5兆円の市場規模となっております(注4)。また、処方箋枚数は2016年830万枚、2017年838万枚、2018年では843万枚と年々増加しており(注4)、65歳以上が我が国の人口の3分の1を占めると言われる2025年に向けて、今後も増加していくことが予想され、調剤薬局の果たすべき役割期待と業務負担は今後も重くなるものと考えられます。さらに、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、調剤薬局を含む医療機関においては、病院内・薬局店舗内での感染を恐れた患者の通院・来店差し控え、医療情報の不透明性や手続きの煩雑性等、現在の医療制度の脆弱性が露呈し、医療サービスを受けたくても受けられないという状態に陥りました。他方、受け入れ側の医療機関に関しては、2018年の時点で39兆円である医療費は、65歳人口が我が国人口の全体の3分の1を占めるとされる2025年には26%増の49兆円に膨らむとされているにもかかわらず、医療従事者数は2018年とほぼ横ばいの水準に留まると予想されており(注5)、医療現場の人手不足から効率化・生産性向上が今後ますます必要になるといえます。
このような経営環境を踏まえ、医療業界の課題をITで解決し、誰もが自分自身にあった適切な医療サービスをタイムリーに受けられる社会の実現を目指して、当社は電話による服薬指導と処方箋医薬品の宅配を2020年4月よりスタートしておりますが、更にオンライン診療・オンライン服薬指導、そして処方箋医薬品の宅配までをワンストップで提供可能な医療プラットフォームサービス「SOKUYAKU」の提供を2021年2月に開始いたしました。
(注)1.令和元年度電子商取引に関する市場調査 2020年7月 経済産業省
2.2020年版 健康食品の市場実態と展望~市場分析編~ 株式会社矢野経済研究所
3.2021年版 一般医薬品データブックNo.2 株式会社富士経済
4.平成30年度 調剤医療費の動向 厚生労働省
5.2040年を見据えた社会保障の将来見通し 2018年5月21日 内閣官房・内閣府・財務省・厚生労働省
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社は、健康・美容・医療医薬の分野で事業展開を行っており、健康食品の通信販売事業を行うヘルスケアセールス事業、処方薬医薬品を含む医薬品及び医薬部外品の通信販売事業を行うメディカルケアセールス事業、及び他社商品のマーケティング支援を行うヘルスケアマーケティング事業を運営しております。今後もこれらの事業の持続的成長を実現させていくため、以下の項目を対処すべき課題として、引き続き取組んでまいります。
① コーポレートブランドの価値の向上
当社の経営理念・ビジョン実現のためには、お客様から支持される商品・サービスを提供し続けることに加え、多くの方々に愛着を持っていただける会社になることが不可欠であると考えております。テレビのインフォマーシャル広告や著名人等を使用したキャスティングで自社ブランド商品の知名度は徐々に浸透してまいりましたが、更なる事業拡大及び競合企業との差別化を図るにあたり、引き続きインフォマーシャル広告やSNSを使った広告に加え、適切な情報開示と、積極的な広報活動及びCSR活動を行ってまいります。その一環として、当社は2020年12月1日に国連の「持続可能な開発目標 (Sustainable Development Goals:SDGs)」に即した企業活動を行うことを宣言しました。具体的には、①オンライン医療サービスアプリの開発や低糖質米の開発プロジェクトなどの社会における健康的な生活の確保、健康増進に貢献する②女性や外国人労働者の活躍を推進するなどの性別、障がい、人種、民族様々な状況に関わりなく、健康で働きがいのある職場環境を創り、社員が幸せに生きる明るい未来を創造する③バイオマスプラスチック配合のレジ袋の導入などの環境に配慮した取り組みで、CO₂の削減と廃棄ロスゼロを目指す、以上3点になります。このような活動を推進し、引き続き当社のコーポレートブランド価値の向上を図ってまいります。
② お客様との継続的な関係構築
当社の売上高の約90%は自社ブランド商品(酵水素328選シリーズ、ホワイピュア、トンデケア、JFD)の通信販売事業によるもので、一定の間隔で同一商品を継続的にお届けする定期購入サービスを利用するお客様に支えられております。当社の売上高に占める定期購入売上の比率は76.4%(2020年5月期)となっております。そのため、お客様との継続的な関係を構築することが、今後の持続可能な安定収益を確保するために極めて重要となるものと考えております。更なるお客様満足度の向上に向けて、新たな商品ラインナップの展開や販促品・同梱販促物等のクオリティアップ、徹底した商品の品質の追求、お客様に寄り添ったアフターサポートサービスの拡充、デジタル化による各種手続き等の利便性向上などに取組んでまいります。
③ 広告投資における課題
ヘルスケアセールス事業における当社商品ブランドはダイエット訴求の商材が中心となっております。中でも主力商品である「酵水素328選もぎたて生スムージー」では、ダイエットの結果が出るおよそ3か月から6か月を経過したタイミングで定期コースを休止する顧客が比較的多い傾向にあります。そのため、当事業で安定した収益を確保するためには、既に定期コースに申し込み済みの会員顧客の満足度を向上させる取組みと共に、新規の顧客を継続的に獲得することが重要と考えております。新規顧客を獲得するためには広告投資が必要不可欠でありますので、媒体ごとの広告市況や顧客の反応、CPO(定期顧客一人あたりの獲得単価)等を随時モニタリングしながら、継続的に効果的かつ効率的な広告投資が実施できるよう取組んでまいります。
④ 情報管理体制の強化
当社が事業活動を行う中で、お客様の個人情報を取扱うことが多いことから、一般財団法人日本情報経済社会推進協会運営のプライバシーマーク制度や情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS(ISO27001))の認証取得や社内規程の整備及び業務フローの厳格な運用等を行っております。
今後、当社が業容を拡大するにおいて、お客様の信頼性の更なる向上のため、セキュリティに関するシステムの整備や社員の教育を行い、個人情報管理体制の強化を図ってまいります。
⑤ 内部管理体制の強化
当社は、2018年1月に消費者庁から問い合わせがあり、2019年3月に当社商品「酵水素328選生サプリメント」の広告表現について、消費者庁より措置命令及びその結果として2020年3月に同庁より課徴金納付命令を受けるに至りました。当社としてはこのような事態に至ったことは、取引先・お客様をはじめ関係各位に多大なご迷惑をおかけしたと認識しております。当該命令を受け、景品表示法についての社内周知の徹底や景品表示法の遵守のため広告審査体制を含む内部管理体制の更なる強化などの再発防止策を2018年3月より既に策定・実行しておりましたが、この度の事態を厳粛かつ真摯に受け止め、当社役職員一同、今後とも法令遵守をあらためて徹底し、皆様からの早期の信頼回復に努めていく所存であります。
また、当社は、今後もより一層の成長を見込んでおり、企業規模拡大に応じた内部管理体制の構築を図るために、コーポレート・ガバナンスを重視し、リスクマネジメントの強化、並びに金融商品取引法に基づく財務報告に係る内部統制制度の適用等も踏まえた内部統制の継続的な改善及び強化を推進し、強固な経営基盤の構築を図ってまいります。
⑥ 優秀な人材の確保及び育成
今後の一層の事業拡大及び収益基盤の確立にあたり、優秀な人材の確保及び育成が重要と考えております。当社の経営理念やビジョンに共鳴し、当社の持続的な成長を支える優秀な人材を確保・育成するため、採用活動及び研修活動を強化すると同時に、適材適所のアサインメントと適切な人事評価の徹底に努めてまいります。
⑦ オンライン診療、オンライン服薬指導及び処方箋医薬品の宅配事業を含む医療プラットフォームサービス事業
の立ち上げ
当社は、これまで健康食品・医薬品等の通信販売事業で培った、インターネットを活用したEC及び通販事業等の知見・ノウハウを活用し、今後は医療・医薬の分野へ事業領域を拡大してまいります。具体的には、医療制度の規制緩和を受けて、オンライン診療及びオンライン服薬指導に加えて、処方箋医薬品の宅配事業を開始いたしました。医療業界には、多種の法令や規制があり、これらの法令遵守を徹底することはもちろんのこと、今後の法令等の改正に合わせて、適時かつ臨機応変な事業展開を推進してまいります。
⑧ 中長期的な成長に向けたM&A・アライアンスの推進
当社は、ヘルスケアセールス事業等における新商品開発や、メディカルケアセールス事業における新規事業の 立ち上げ等を通じて、これまで安定的な成長を実現してまいりました。 今後は更なる事業成長及び中長期的な企業価値の向上に向けて、M&Aや他の企業とのアライアンス等にも取り組んでまいります。特に、当社事業のバリューチェーン(商品企画、製造、物流、EC販売、プロモーション)の中で、現在アウトソースしている製造機能については、新規性・機能性高いヘルスケア商品の開発スピードを上げる観点から、同機能のインハウス化は重要な要素と考えております。
これらの活動を通じて、当社の経営理念「人と社会を健康に美しく」に即した事業の拡大や新たな事業機会の創出、人材の獲得、取引先の 開拓等に取り組んでまいります。