有価証券報告書-第9期(2022/04/01-2023/03/31)

【提出】
2023/06/23 16:21
【資料】
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【項目】
138項目

対処すべき課題

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の項目と認識しております。文中の将来に関する事項は、提出日現在において、当社グループが判断したものです。
(1) 経営の基本方針
当社グループは、「Eyes to the all machines」(全ての機械に眼を与える)をコーポレートビジョンとして掲げる、AP(人工知覚)に関する研究開発と先端技術企業への研究成果の提供を生業とする技術集団であり、継続的な研究開発を通じて産業界に新たなイノベーションを起こすことを目標としております。
この目標のために、当社グループは、「独樹一幟、標新立異」(樹独り幟一つ、新しきを標し異なりを立てる)を経営理念に掲げております。
当社グループにとっての「独樹一幟、標新立異」は、他社と同じことをしないこと、一般に正しいと信じられていることを敢えて否定することであります。研究開発や事業展開において、常に当社グループを他社と比較できない存在ならしめるような方針を定め、市場において唯一の存在となり、以って、事業と研究開発の発展と、株主利益の拡大を目指します。
(2) 経営環境
近年、あらゆる産業におけるオペレーション自動化のニーズの高まりと、アルゴリズムを補完するセンサー・半導体等のハードウェア技術の進化が、AP(人工知覚)アルゴリズムの実用化と普及を大きく後押ししてきました。これに加えて、新型コロナウイルス感染の拡大の影響により、人と人の交流や共同作業を要しないオペレーションの省人化やリモート化の需要が全ての産業で急増しており、特に、物流・製造・建設・小売等の領域では、すでにロボティクス・自動運転・ドローン等の自動化技術のニーズは増大してきております。この不可逆的な傾向は、中長期に渡って益々加速していくことが予測されており、従来予想されていたよりも、相当に早いスピードでAP(人工知覚)技術の社会実装が進んでいくことが見込まれています。
(3) 経営戦略
当社グループは各産業におけるソリューション・プロダクト・応用技術のさらに下の最も深い技術レイヤーに位置する基盤技術に相当するDeep Tech(深層技術)のSLAM等のAP(人工知覚)アルゴリズムの研究開発及び提供に注力し、特定の会社に事業開発・財務面で依拠することなく独立した立場を維持しながらも、グローバルでソリューション・プロダクト・応用技術の全階層のあらゆるプレーヤーと提携を進め、彼らを顧客とすることにより、AP(人工知覚)市場における専業独立企業としてのシェアの維持・更なる拡大を目指すことを経営戦略として進めてまいりました。
このような経営戦略の下、当連結会計年度は欧州・米国を含むグローバルで技術商社・ソリューション企業、センサ・半導体企業等各階層における多くのプレーヤーとの共同研究開発の開始及び製品・販路の拡大を達成しました。
当社グループの提供するKudanSLAMは、SLAMにおける最も著名なオープンソースに比べて10倍以上の速度での処理をより少ない処理能力で可能とし、5cm等cm単位の精度が一般的である他のソリューションに比べて最大mm単位の精度を実現可能であり、また、センサ間の時間同期によるシステム統合(タイトカップリング)によるカメラ、lidar、GNSS、IMU等複数センサーの併用により高速かつ屋内・屋外問わない高い精度を実現しております。
当社グループのビジネスモデルは、KudanSLAMのアルゴリズムライセンス提供と共に、共同研究開発によるアルゴリズムのカスタマイズ・新機能追加、技術コンサル等により収益を上げるモデルとなっております。
アルゴリズムライセンスは評価ライセンス・開発ライセンス・製品ライセンスに区分され、顧客の開発案件の製品化に向けた進捗と共に評価ライセンスから製品ライセンスへとライセンス区分が進捗し、これに合わせて製品ライセンスでは「製品単価×製品数」等の算定になる等ライセンス金額が拡大し、当社グループの収益は拡大してまいります。
また、当社グループのAP(人工知覚)市場における専業独立企業としてのシェアの維持・拡大を今後も継続するため、2020年1月には、当社の直接競合でありつつも、当社技術と相互補完的な次世代のAP(人工知覚)技術を有するArtisense Corporation(以下「アーティセンス社」といいます。)の子会社化に向けた段階的な株式取得契約を締結し、2020年7月の追加株式取得により同社は持分法適用会社として当社グループ会社となり、2021年12月には全株式を取得し当社子会社となっております。
アーティセンス社との共同研究開発・共同事業開発を含む事業統合により、研究開発においては、当社が持つ間接法SLAMとアーティセンス社が次世代技術として独自に持つ直接法SLAMとの統合、当社のlidar SLAM技術との統合及びアーティセンス社のDeep Featureと呼ばれる深層学習に基づくAI技術であるGN-netを統合することによるブレークスルーを達成し、理論的に考えられる最も高性能なアルゴリズムとなる独自のGrandSLAMの開発・実用化を目指し、事業開発においては日本・中国を含むアジア、欧州、北米におけるグローバルでの販売体制のさらなる強化を推進してまいります。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 開発体制の強化
当社グループにとっては、基盤技術及びソフトウェアの開発が不可欠であり、卓越した能力と専門分野を超えた応用力をもつ人材の確保、育成が必要と考えております。当社グループは、開発パートナーとの共同研究開発、新規採用を含む施策によりこのような人材の育成及び確保に努めてまいります。
② 全世界へのKudanSLAMの認知度向上
当社グループが従来より築いてきたAP(人工知覚)における専業独立企業としてのシェアとポジションを維持・強化するとともに、今後も高い成長率を持続していくためには、全世界において「KudanSLAM」の認知度を向上させ、新規顧客を獲得することが必要不可欠であると考えております。当社グループの技術がインフラストラクチャーになるべく、先端技術企業が集積する北米におけるlidar等のセンサーメーカー・半導体メーカー・各種先端技術企業等とのパートナーシップの拡大、中国・日本における通信企業・自動車メーカー・ロボットメーカー等とのパートナーシップの拡大等、引き続きグローバルでの事業開発体制の構築を推進してまいります。
③ 内部管理体制の強化
当社は、2014年11月設立の成長段階にある会社であり、また日本法人において海外子会社の管理を遠隔で行っているため、更なる内部管理体制の強化が重要な課題であると考えております。また、企業価値の向上を図るため、コーポレート・ガバナンスが有効に機能することが不可欠であると認識し、業務の適正性、財務報告の信頼性確保、及び法令遵守の徹底を進め、その整備を実施いたしました。更なる業容の拡大を図るためには、内部管理体制の拡充を進める必要があり、事業の急速な拡大等に、充分な内部管理体制の構築が追い付かないという事象が生じることのなきよう、拡充と機能向上に努めてまいります。