有価証券報告書-第17期(2022/04/01-2023/03/31)

【提出】
2023/06/22 13:10
【資料】
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【項目】
149項目

対処すべき課題

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
理念体系
MISSION -社会での役割-
人が動かす 「ヒューマンドライブ」な社会をつくる
VISION -目指す姿-
一人ひとりの心に点火する「人づくり」企業になる
VALUE -理念-
志をもって事を成す
目標にコミットし、プライドをかけて全力で共に成し遂げる。
そんな「志事」を通して、全社員で成長する。
パーパス(コプロ・グループの存在意義)
最高の「働き方」と最高の「働き手」を。
当社は、企業理念体系を踏まえ、2023年3月期から2027年3月期を最終年度とした中期経営計画「コプロ・グループ Build the Future 2027」の策定にあたり、当社グループのパーパス(存在意義)を『最高の「働き方」と最高の「働き手」を。』と定めました。
本中期経営計画期間においては、パーパスの示す方向性に沿って、エンジニア一人ひとりのキャリアアップと、それを応援する幅広いサービスや仕組みを具備した「エンジニア応援プラットフォーム」の構築を軸に、DXによる業務革新、機械設計開発技術者派遣・請負サービス及びSESの拡大、組織能力の強化、組織の活性化を図る各種施策や制度設計を計画的に進めることで、持続的な成長、並びに中長期的な企業価値の向上に努めてまいります。
(2)目標とする客観的な指標等
当社グループは、売上高、営業利益、Non-GAAP営業利益(注)の中期的な成長を重視しております。また、事業子会社の技術者派遣事業においては、売上高の構成要素である技術者の在籍人数、稼働率、定着率を客観的な非財務指標として重視しており、開示を継続しております。
なお、2022年5月に公表した中期経営計画「コプロ・グループ Build the Future 2027」(2023年3月期から2027年3月期)においては、最終年度である2027年3月期の財務目標として売上高400億円、Non-GAAP営業利益50億円を掲げております。
(注)Non-GAAP営業利益は、営業利益に減価償却費、のれん償却費、株式報酬費用を足し戻した金額を計算しています。
(3)中長期的な会社の経営戦略
①「エンジニア応援プラットフォーム」の構築
中期経営計画「コプロ・グループ Build the Future 2027」(2023年3月期から2027年3月期)における中期経営戦略の核として、派遣元である当社グループが技術者のキャリアパス形成を能動的に支援するプラットフォームの構築を推進し、業界経験者だけでなく、新卒や業界未経験者がエンジニアとしての将来を見据え安心して長く経験を積むことのできるビジネスモデルを構築します。
②事業ポートフォリオ方針
グループの屋台骨である建設・プラント技術者派遣・紹介サービスの更なる市場シェア拡大に向けた成長投資を行いながら、付加価値の高いエンジニアに特化した人材サービス領域において、第二の主力事業・収益源の育成に向けて、市場性の高い事業への投資を推進します。
③建設・プラント技術者派遣・紹介
エキスパート人材と新卒及び中途採用の業界未経験者のセット派遣の拡大や、案件に求められる要件と技術者のスキルや経験値のデータベース化によるマッチング精度の向上、顧客企業・技術者双方の状況の可視化とコミュニケーションの拡充によるフォローアップの強化を通じて、現場の品質向上や働く環境を改善し、顧客企業・技術者からの信頼を獲得してまいります。
④機械設計開発技術者派遣・請負
中期経営計画前半では、カーボンニュートラル関連設備・装置などの需要が見込まれる有望な新規領域への参入や、重点領域(輸送用機器・産業用機械・農業機械)の既存顧客への深耕開拓を推進します。計画後半では、重点領域の新規顧客(上位メーカー)に対し、エキスパート人材を活用して案件を開拓してまいります。また、セット派遣を促進し、配属数の拡大に取り組むほか、チームリーダー制により、業務品質を底上げし、顧客企業との信頼関係構築を目指します。
⑤SES
中期経営計画前半では、フリーランス・派遣双方の人材を拡充し、セット派遣を通じて大型案件に対応することにより配属数の拡大を目指します。計画後半では教育機関との提携による人材拡大や、需要が見込まれるエリアへの拠点網拡大により、顧客と案件の開拓を図ってまいります。
⑥グローバル展開
東南アジアの教育機関と提携し、日本で働く意欲のある高度人材に基礎教育を提供し、人材不足に悩む建設・機械設計・IT領域の日本企業へ派遣・紹介するスキームの構築を目指します。また、将来的には、日本で経験を積んだ高度人材の現地日系企業への派遣を検討してまいります。海外拠点として、2021年4月にCOPRO VIETNAM CO., LTD.をベトナムに設立しております。
⑦M&A方針・投資戦略
コア事業を中心とした既存事業のオーガニックな高い成長に加え、非連続な成長を実現するため、積極的にM&Aを推進し、中期経営計画で掲げた業績目標の前倒し達成を目指します。
成長余力が大きく、付加価値の高いエンジニアに特化した人材サービス領域において、優秀なエンジニアが在籍する企業、及びエンジニア応援プラットフォームの構築に際して必要となるリソースを有する企業をターゲットとし、WACC(加重平均資本コスト)8%~9%をハードルレートとして設定し、当該レートを上回るM&A投資についてのみ検討を行っていく方針です。
また、事業基盤強化・効率化を目的とした投資として、エンジニア応援プラットフォームの構築、DXによる業務革新等に対して、2023年3月期~2024年3月期において、年1.5億~2億円の投資金額を見込んでおります。
(4)経営環境
当社グループの主要顧客先である建設業界においては、2025年開催予定の大阪万博、2027年開業予定のリニア中央新幹線(品川・名古屋間)関連、都市開発プロジェクト関連工事や、既存インフラ老朽化に伴う再整備など、引き続き堅調な建設需要が見込まれております。また、他業界に比べて顕著な高齢化と若手不足の構造的な問題に加え、2024年4月より改正労働基準法が建設業にも適用され、残業時間の上限に罰則規定が設けられる予定であるため、今までは1名の人材で完結していた業務が細分化されるなど、人材不足が一層深刻となり、企業における派遣人材の活用は今後も加速していくと予測しております。
他方、国内における雇用情勢については、少子高齢化に伴う近年の労働人口の減少を背景に人材の採用マーケットは非常にタイトであるため、業界経験者のみならず業界未経験者を含めた人材確保のハードルが上昇しており、人材を確保するための採用力、また採用した人材の育成と定着がより一層求められております。
(5)対処すべき課題
当社グループは、以下の事項を主要な課題として認識し、事業展開を図る方針であります。
①人材確保及び育成
人材の確保は当社グループの成長の礎であり、いかに付加価値の高いエンジニアとなり得る人材を獲得していくか、また、いかに在籍する派遣技術社員のスキルを高めていくかが重要となります。高スキルエンジニアの採用については、売り手市場が継続する見通しであるため、主力のWeb媒体に加え、在籍する社員からの紹介等も活用してまいります。また、自社運営求人サイト「現キャリ」「ベスキャリIT」の更なる集客強化・機能性向上を図るとともに、中長期的な事業成長を担う人材を確保するため、引き続き新卒採用にも注力いたします。
人材の育成については、名古屋で運営する教育施設「監督のタネ」において、より実践的な研修プログラムの開発・導入を進めております。また、リモートによる研修体制を構築し、派遣技術社員の居住エリアに囚われることなく、より多くの人材のキャリアアップを促進いたします。
また、派遣技術社員に対するフォローを当社営業社員が一貫して行い、派遣技術社員の就業状況や健康状態を細やかにサポートするための各種施策を通じて、定着率の向上を図ってまいります。
②労働者派遣事業の適切な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下、労働者派遣法)の改正への対応
労働者派遣法は1986年の施行から2023年現在までに多くの改正を繰り返しており、2007年までは需要に応じた派遣業の規制緩和、2012年以降は派遣労働者保護のための規制強化が大きな流れとなっております。これは、日雇い派遣が問題となった2007年、リーマンショックが起こった2008年頃に突然の派遣切りや雇止めにより苦境に立たされる派遣労働者が増えたこと、違法派遣が社会問題化したことなどが影響していました。2012年の改正では、派遣労働者の保護を目的とした法律であることが、法律名に明示もされることとなりました。
近年の改正も、2012年以降に行われてきた派遣労働者の保護と支援をさらに具体的に推し進めることを目的になされており、2020年の改正は、同一企業で働く正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間にある不合理な格差の解消を目指す「同一労働同一賃金」の実現に向けた重要な改正となっております。2021年の改正においては、書面による作成が必要であった派遣契約書について電磁記録での作成が認められたほか、派遣労働者に対し、キャリア支援に関する説明や雇用安定措置に関わる希望聴取を行うことが派遣事業を行う上で義務付けられることとなりました。
当社グループは「労使協定方式」に基づき派遣労働者の待遇を決定することで、計画的な教育訓練や職務経験による人材育成を経て、段階的に賃金含む待遇の改善の実施等、派遣労働者の長期的なキャリア形成に配慮した雇用管理を行っております。
このような法改正への当社グループの適切な対応は、我が国が目指す「派遣労働者を適切に保護し、適切な管理の下で労働者派遣を行う」方針に基づいており、当社グループの持続的な成長にも繋がるものと認識しております。
労働者派遣法は、今後も社会状況や課題に対応する形で改正が行われることが想定されます。当社グループは、今後も法改正に伴う経営環境の変化に適切に対応しつつ、引き続き事業の安定・拡大に努めてまいります。
③営業力強化
継続的な成長のためには、既存取引の維持・新規顧客の開拓に加え、顧客企業の新たなニーズを引き出すことで取引件数を増加させる必要があります。
このために当社グループは、重点企業へのアプローチを集中して行い、多くの案件を獲得することを目指してまいります。また、営業プロセスの再構築、マッチングの強化、ツール導入による業務効率化を進め、顧客・案件情報の集約・分析することで、100%近い稼働率を維持し、中長期的に継続する就業先へのシフトが臨機応変に実施できるよう取り組んでまいります。
建設・プラント技術者派遣においては、重点企業への取引拡大に向けて取り組んでまいります。また、業務提携により付加価値の高い建設業界向けDX人材を育成する事で同業他社と差別化を図ります。
機械設計開発技術者派遣においては、電気電子設計及び生産技術領域への拡大に加えて、新規領域として組込み系を中心にしたソフトウェア開発や半導体業界へのリソース集中、及びチーム派遣の実行に向けて取り組んでまいります。
SESにおいては、新規顧客の開拓に注力し取引企業の増加を図ってまいります。現在、ITキャリア推進協会への加盟、新規アポイントの取得を行っております。更に拡大させるため外部業者からの紹介なども有効活用し浅い商流の契約を増やすことによる、エンジニアへの還元と業績の拡大を図ってまいります。
④長時間労働の抑制
昨今の労働行政においては、働き方改革関連法案の施行により長時間労働に対する指導・監督が強化されており、企業側に従業員へのきめ細かな労務管理と安全配慮を求めるものとなっております。派遣元である当社グループは、派遣先に対して当社グループ派遣技術社員が当社グループの36協定の範囲を超えて時間外労働を行うことがないよう、IT端末貸与によりリアルタイムに勤怠状況が把握できる体制を整備しており、派遣先に対して段階的な改善を要請する通知を提示する等、適宜適切な措置を講じております。
今後も引き続き労働環境の改善、適正な労働時間の管理や時間外労働の抑制等に継続的に取り組んでまいります。
⑤プライム市場上場維持基準の適合に向けて
当社は2022年4月の東京証券取引所の市場区分の再編においてプライム市場を選択しましたが、「流通株式時価総額」が上場維持基準を充たしておりません。
上場維持基準の充足に向けて、2022年5月公表の中期経営計画「コプロ・グループ Build the Future 2027」(2023年3月期から2027年3月期)に基づき、各事業戦略を推し進めることで業績拡大を図るとともに、コーポレートガバナンスの充実に係る取り組みや、株式流動性の向上に係る取り組みにより、企業価値の向上を通して時価総額の拡大を目指してまいります。