有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2019/11/12 15:00
【資料】
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【項目】
82項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、『MAXIMIZE CORPORATE VALUE』をスローガンに、「上場企業と投資家を繋ぐことにより効率的な資本市場の実現と上場企業の企業価値最大化を支援すること」をミッションとして掲げております。
当社は、世界中の上場企業、機関投資家及び個人投資家がインターネットを経由してインタラクティブに情報の取得・交換を行うことで効率的な資本市場が形成されるものと考えており、当該ミッションを果たすべく、機関投資家マーケティングプラットフォーム「IR-navi」、個人投資家マーケティングプラットフォーム「プレミアム優待倶楽部」及び顧客企業毎に異なる株主優待ポイントの合算利用を可能とする株主優待共通コイン「WILLsCoin」の提供に注力しつつ、株主総会プロセスの電子化並びに電子議決権行使プラットフォーム事業「WILLsVote」を拡大させてまいりたいと考えております。
(2)経営戦略
当社は、経営資源を「プレミアム優待倶楽部」、「IR-navi」の拡販及び「プレミアム優待倶楽部PORTAL」の利用拡大へ集中させ、上場企業の顧客基盤を背景に、2019年以降の会社法改正に伴って電子化が可能になる電子招集通知を普及させるべく、システム開発の準備を行っております。また、上場企業へのネットワークを有する他社との販売提携を推進し、「プレミアム優待倶楽部」の導入企業を増やすとともにシェアの拡大を目指しています。
下記の経営環境及び業界動向を注視しつつ、「プレミアム優待倶楽部」、「IR-navi」の継続的な開発、優待商品の供給体制の強化、並びに営業体制の強化・構築を進めることにより、事業の拡大と高い成長を継続する方針であります。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、より高い成長性、収益性及び資本効率を確保するために、売上高成長率、営業利益率及びROIC(※)を重要な経営指標として重視して考えております。
売上高成長率は、現段階においては事業規模が大きくないことから、売上高の拡大も収益性の向上と同様に重視しております。
営業利益率は、業務効率化・適正化により売上原価率や販管比率の改善を行う指標として重視しております。
ROICは、資金調達コストを超過する収益に繋がる成長投資を継続的に行えているか、株主・債権者に対する収益期待に応え、単年度のみならず中長期的な企業価値向上に資する成長が出来ているか検証を行う指標として重視しております。
※:ROIC=税引き後営業利益 / 事業性投下資本
(4)経営環境
当社を取り巻く環境として、日本国内の株式市場においては、上場企業における外国人株主比率の上昇などを背景にコーポレートガバナンス・コードへの関心が高まり、企業のIR・SR(※1)活動が活発になっているものの、個人株主比率は相対的に下落しております。具体的には、2019年3月末時点で外国人株主比率は29.1%、個人株主比率17.2%となっており、2009年3月末時点と比較すると外国人株主比率は5.6ポイント増加、個人株主比率は3.3ポイント減少しております(東京証券取引所「2018年度株式分布状況調査」)。
こうした中、個人株主に対して自社株式への投資の魅力を高めることにつながると考えられている株主優待制度を導入する企業は1,521社となり、過去最高を記録しております(2019年9月30日現在。大和インベスター・リレーションズ株式会社調べ)。その中でも中長期保有優遇型株主優待制度を設ける企業は400社を超えており、株主還元施策の一つとしての株主優待制度に対する需要は、今後も継続して拡大していくものと考えております。
2014年に制定されたスチュワードシップ・コード、翌年に策定されたコーポレートガバナンス・コードにより、中長期的な企業価値向上と非財務情報の開示が進み、2018年1月から施行されたMiFID2(※2)によるコーポレートアクセス(※3)の縮小、金融商品取引法上のフェア・ディスクロージャー・ルールの実践的適用など機関投資家向けのIR活動の在り方自体も変化してきております。
一方、仮想通貨やIoTを始めとしたFintechの中核技術であるブロックチェーンの普及により、決済や資金調達等の金融分野の変革、ビッグデータ解析に伴う高付加価値の創造、深層学習を牽引するAIの利活用が一層推進されております。
※1:SR
Shareholder Relations(シェアホルダーリレーションズ)の略語で、上場企業が株主との対話を通じて、株主に正しく自社の企業価値を理解させ、信頼関係を醸成し、長期安定的な株主基盤を構築するために必要とされる活動で、既存株主を対象として行う情報配信その他コミュニケーション活動の全般をいいます。
※2:MiFID2
欧州連合(EU)の金融・資本市場に係る包括的な新規制をいい、投資顧問会社が株式ブローカーに支払う売買手数料とリサーチ手数料を分離・明確化することなどを定める規制。株式リサーチサービスの受領者は、従来以上に費用対効果を意識することとなり、ブローカーその他外部に支払うリサーチ費用の圧縮やセルサイドのカバレッジ縮小も予想されております。
※3:コーポレートアクセス
機関投資家と上場企業を含む事業会社とを結ぶコンサルティングとロジスティックスの一連のサービスであり、機関投資家と事業会社とのIRミーティングの設定、カンファレンスやロードショーのアレンジ業務を主たる内容とします。
(5)事業上及び財務上の対処すべき課題
① 優秀な人材の採用と育成
当社の事業拡大のためには、既存サービスの商品知識に加え、株式市場の理解を深め、新たな顧客ニーズを発掘できる人材の確保が重要となります。当社では、専門性の高い人材を採用するだけでなく、採用した人材に対しては、OJTによる人材の早期戦力化及び座学での教育(アナリスト・ファンドマネージャー、エコノミスト等、現役の資本市場参加者を招聘した講義や意見交換会等)を通した、金融市場への理解促進に取り組んでおります。また、従業員各人の役割と権限および社内ルールを明確にすることで従業員各人が積極的に挑戦ができる環境を整え、従業員にやりがいを提供するとともに、経営会議による厳正な人事評価によって人材の定着を図ってまいります。
② システムの安定性向上
当社は、顧客に対しインターネット上のサービスを提供しており、システムの安定稼働は必要不可欠となっております。従いまして、安定性の高いサービスを提供する上で、顧客動向及びアクセス数増加に伴いサーバー増強等を考慮したシステム構築や設備投資を行っていくことが重要であると考えており、引き続きシステムの安定性の確保及び効率化に取り組んでまいります。
③ 情報管理体制の整備
当社は、サービスの過程で、機密情報や個人情報を取り扱うため、情報管理の強化は重要事項の1つと認識しております。「個人情報保護規程」及び「情報セキュリティ規程」に基づき管理を徹底しておりますが、引き続き社内教育や研修の実施を継続して行うことでその質を強化してまいります。
④ コーポレート・ガバナンス体制及び内部管理体制の強化
当社は、成長段階にあり、コーポレート・ガバナンスの更なる強化と業務運営の効率化やリスク管理体制の強化が重要な課題となっております。営業管理体制やバックオフィス業務体制の整備を推進し、また同時に経営の公正性や透明性を確保するための内部統制の強化に取り組んでまいります。
⑤ 新規事業の立ち上げについて
急速な進化を遂げる経営環境や資本市場において当社が企業価値を向上させていくためには、事業規模の拡大と収益源の多様化を図っていくことが必要と考えており、そのためには積極的な新規事業の立ち上げが課題と認識しております。このような環境下、当社ではブロックチェーンを活用した株主優待共通コイン、電子議決権行使などの株主管理サービスの提供を開始しておりますが、今後も継続的に次の柱となるビジネス創出に積極的に挑戦してまいります。