有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2019/11/13 15:03
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【項目】
143項目

事業等のリスク

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項をリスク要因として以下に記載しております。
また、必ずしもリスク要因に該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資者に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。
なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
1.事業環境に由来するリスク
①景気動向の影響
当社グループが事業を展開しているプラットフォーム市場はオンライン上での仕事の受発注が中心にあります。当社グループは、今後もオンライン上での仕事の受発注の成長傾向は継続するものと見込んでおり、クライアントのニーズに応じて機能の追加等により事業展開をより一層進める計画であります。
しかしながら、今後、国内外の経済情勢や景気動向等の理由によりオンライン上での仕事の受発注の成長が鈍化、もしくは市場環境が変化するような場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
②労働関連法規制及び労働人口の動向
当社グループはプラットフォーム事業を主たるサービスとしておりますが、当社グループ事業の発展のためには、主にインターネットを利用して働くフリーランス(副業・複業含む)の労働人口の増加や関連市場の拡大が必要であると考えております。国内の労働人口は2030年には現在の6,600万人から5,900万人と約10%の減少が見込まれる中、広義のフリーランス人口は2015年の913万人から2019年には1,087万人へと増加するという調査結果が出ており(「フリーランス実態調査2019年度版」)、更には、国策として推進されている「働き方改革」の外部環境変化を受けて、会社員の約4割以上が副業に意欲的であるという結果が出ております(「フリーランス白書2018」)。
しかしながら、今後、国内の労働に係る法規制や人口動向等の理由によりフリーランス人口の増加が鈍化、副業が浸透しない、もしくは市場環境が変化する場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
③関連法規制
当社グループは「テクノロジーで誰もが自分らしく働ける社会をつくる」というビジョンのもと、事業主として働くフリーランスを支援するサービスを各種展開しておりますが、雇用の斡旋による収入はわずかであり、労働者派遣法の適用を受けるような事業も行っておりません。また、オンラインスタッフィングサービスにおいては、ユーザー間の商取引の円滑な決済のため、エスクロー方式により当社グループが報酬を受け取るべきフリーランスの代理として仕事の依頼者から一時的に報酬を受領する等、決済の領域でもユーザーへの価値を提供しておりますが、出資法及び資金決済法の適用を受けてはおりません。当社グループでは事業運営に当たり、これら法令に抵触することが無いよう、顧問弁護士等の外部専門家と協議し、法改正等の情報収集を行い、従業員教育等を徹底するとともに法令順守体制の構築と強化を図っております。
しかしながら、これらの法令の改正や新たな法令の制定、監督官庁の見解の変更、社会構造の変化等想定外の事態の発生等により当社グループの展開する事業が法令に抵触した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
④技術革新への対応
当社グループが事業展開しているインターネット関連市場では、技術革新や顧客ニーズの変化のスピードが非常に早く、インターネット関連事業の運営者はその変化に柔軟に対応する必要があります。当社グループにおいては、急速な技術革新に対応すべく優秀な技術者の採用・育成等に積極的に取り組む他、最新の技術動向や環境変化を常に把握できる体制を構築することにより、ユーザーニーズの変化に迅速に対応できるよう努めております。
しかしながら、当社グループにおいて技術革新やユーザーニーズの変化に対応できない場合、または変化への対応のためにシステム投資や人件費等多くの費用を要する場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
2.事業内容に由来するリスク
①競争環境の変化
当社グループはプラットフォーム事業を主たる事業領域とし、インターネットを活用した新しい働き方の創出を目指していますが、労働の分野においては昨今のクラウドソーシング領域のサービスを含め多くの企業が事業展開をしております。当社グループは適切なユーザビリティーを追及したサービスの構築、サイト利用時の安全性の確保やカスタマーサポート機能の充実、またフリーランスの活躍を第一に考えた行動規範に基づいた事業展開等に取り組み、競争力の向上を図っております。
しかしながら、当社グループと同様のサービスを展開する企業等との競合激化や、十分な差別化が図られなかった場合、あるいは事業領域の構造自体に革新的な変化が発生した場合に、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
②新規事業の不確実性
当社グループの今後の事業展開として、「個のエンパワーメント」というミッションを達成するため事業規模の拡大と高収益化を目指して、既存事業に留まらず新規事業開発に積極的に取り組んでいく方針ですが、とりわけ新規事業の立ち上げについては、既存事業よりリスクが高いことを認識しております。当期において立ち上げた「Lancers Enterprise」の事業等において、入念な市場分析や事業計画の構築にも関わらず、予測とは異なる状況が発生し、計画通りに進まない場合には、投資資金を回収できず当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
③サービスの収益性
当社グループにおいては、IT技術の進展に伴う新たな機能の追加を継続して行い、サービスの活性化及びユーザビリティーの強化等に積極的に取り組むとともに、常にユーザーにとって価値ある新しいサービスが提供できるよう努めております。新規サービスの開発を行う際には、当該新サービスの収益性について十分検討した上で進める体制を構築しております。
しかしながら、予期せぬ事象の発生等により、想定していた収益が見込まれなくなった場合、あるいは当該開発におけるシステム投資費用及びそれに付随する人件費等のコストが想定以上に必要となった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
④サイトの安全性・健全性
当社グループが運営するサイトでは、ユーザー間の取引が円滑に行われるために仕事の依頼や提案を行う際、及び取引が実際に行われたユーザー間で評価を行う際に、自由に情報を発信できる機能を提供しておりますが、事実でない情報、誹謗中傷にあたるような情報等が記載されるリスクがあります。これに対し当社グループでは、利用規約やガイドラインを制定するとともに、仕事依頼及び投稿内容の監視を行い、事実でない情報、誹謗中傷等、当社グループが不適当と判断した場合にはその内容を、事前あるいは事後に削除し、サイトの健全性の維持を図っております。
しかしながら、不適当な書き込みを当社グループが発見できなかった、あるいは発見が遅れたことにより、当社グループが責任を問われる可能性があるほか、インターネット上の悪意のある口コミ投稿などにより、当社グループの運営するサイトまたはサイト運営者としての当社グループについて、信用低下・イメージが悪化した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
⑤情報セキュリティ
当社グループは、運営するプラットフォーム事業において個人情報及び機密情報を保有しております。当社グループでは、個人情報及び機密情報の外部漏洩の防止はもちろん、不適切な利用、改ざん等の防止のため、情報の管理を事業運営上の重要事項と捉えております。そのため、情報セキュリティポリシーを制定し、個人情報及び機密情報を厳格に管理するとともに、役員及び従業員を対象とした社内教育を実施する等、情報管理を徹底する体制を構築しています。
しかしながら、外部からの不正アクセスや社内管理体制の瑕疵等により個人情報または機密情報が外部に流出し、当社グループへの損害賠償請求があった場合、社会的信用が失墜した場合等には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
⑥システム障害
当社グループが運営するプラットフォーム事業は、主にインターネットを通してサービスを提供しており、システム及びインターネット接続環境の安定的稼働は事業を行っていく上での大前提となっております。当社グループは、サーバーの不測の事態による停止や蓄積されたデータの消失による事業への影響を防ぐため、データをクラウド上に保存しリスク回避を行っております。また、外部からの不正なアクセスを防ぐため、必要なセキュリティ体制を確保しております。
しかしながら、自然災害や事故、ユーザー数やトラフィックの急増、ソフトウエアの不具合、ネットワーク経由の不正アクセスやコンピュータウイルスの感染等の予期せぬ事態が発生した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
⑦知的財産権の侵害
当社グループによる第三者の知的財産権侵害の可能性については、専門家と連携を取り調査可能な範囲で対応を行っておりますが、当社グループの事業領域に関する第三者の知的財産権の完全な把握は困難であり、当社グループが認識せずに他社の知的財産権を侵害してしまう可能性は否定できません。この場合、損害賠償請求や使用差止請求等により、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
3.その他のリスク
①継続的な投資と赤字計上
当社グループは、継続的な成長のため、認知度の向上、ユーザー数の拡大、及び新規サービスの拡充に努めてまいりました。具体的には、当社グループの知名度を高めるためのマーケティングや新規ユーザー獲得のための広告宣伝費の投資、及び新規サービス開発に向けた人件費の増加や外注費の発生があります。これらの取り組みを積極的に進めた結果、「第二部 企業情報 第1 企業の概況 1主要な経営指標等の推移」に記載の通り、2015年3月期(第7期)から最近事業年度である2019年3月期(第11期)において、継続的な投資により、損失が発生しております。
2018年3月期連結会計年度における広告宣伝費は157,848千円、人件費(注)は575,081千円、外注費は154,553千円、営業損失は350,844千円であり、2019年3月期連結会計年度における広告宣伝費は236,004千円、人件費は561,889千円、外注費は193,022千円、営業損失は202,441千円であります。
今後も積極的な広告宣伝費の投資や新規サービス拡充に向けた投資を行っていく予定ですが、想定通りに投資効果が得られず費用負担が拡大した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当期においては、ブランドイメージの確立及びユーザー獲得を目的とした大規模プロモーションを2020年3月期第1四半期連結会計期間(2019年4月~6月)に実施しているほか、2020年3月期第4四半期連結会計期間(2020年1月~3月)にも実施を予定しており、当該先行投資に伴い、赤字幅が拡大する見込みであります。
なお、2020年3月期第2四半期連結会計期間(2019年7月~9月)における広告宣伝費は49,721千円、人件費は156,680千円、外注費は26,096千円、営業利益は55,254千円であり、黒字化を達成しております。
(注)人件費は、当社グループの給料及び手当並びに賞与引当金繰入額の合計額であります。
②特定人物への依存
当社の代表取締役社長である秋好陽介は、当社の創業者であり、創業以来の最高経営責任者であります。同氏は、当社グループの経営方針や事業戦略の決定のみならず、営業、技術、財務の各方面の事業推進において極めて重要な役割を果たしております。当社グループでは、取締役会等における役員及び幹部社員の情報共有や経営組織の強化を図り、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めております。
しかしながら、何らかの理由により同氏が当社グループの業務を継続することが困難になった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
③少人数編成の組織
当社グループは業務執行上必要最低限の人数での組織編成となっております。また、今後は事業の拡大に応じて人材の確保及び育成を行うとともに業務執行体制の充実を図っていく方針であります。
しかしながら、施策が適時適切に遂行されなかった場合、又は従業員の予期せぬ退職があった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
④人材の獲得と育成
当社グループは、今後の事業規模拡大に伴い、当社グループのミッション及びビジョンに共感し、高い意欲を持った優秀な人材を継続的に採用し、強固な組織を構築していくことが必要であると考えております。
しかしながら、当社グループの求める人材が十分に確保・育成できない場合や人材流出が進んだ場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
⑤内部管理体制の強化
当社グループの継続的な成長のためには、内部管理体制について一層の充実を図る必要があると認識しており、業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、各社内規程及び法令順守を徹底してまいります。
しかしながら、事業が急拡大することにより、事業規模に合った内部管理体制の構築に遅れが生じた場合には、適切な業務運営が困難になり、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
⑥ストック・オプション行使による株式価値の希薄化
当社グループでは、役員及び従業員並びに事業支援者に対するインセンティブを目的としたストック・オプション制度を採用しております。本書提出日現在における新株予約権による潜在株式数は1,391,000株であり、発行済株式総数13,905,100株の10.00%に相当します。また、今後においてもストック・オプション制度を活用していくことを検討しており、現在付与している新株予約権に加え、今後付与される新株予約権について行使が行われた場合には、保有株式の価値が希薄化する可能性があります。
⑦税務上の繰越欠損金
当社グループは、税務上の繰越欠損金を有しており、当社グループの業績が順調に推移することにより期限内にこれら繰越欠損金の繰越控除を受ける予定であります。
しかしながら、当社グループの業績の下振れ等により繰越期限の失効する繰越欠損金が発生した場合には、課税所得からの控除が受けられなくなり、課税所得に対して通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が課されることとなり、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
⑧減損会計適用に関するリスク
当社グループは、事業の成長加速のためM&Aを必要に応じて実施しております。買収前の段階において、対象会社の財務内容や契約関係等について詳細なデューデリジェンスを行い、リスクを吟味した上で買収を実行しております。
しかしながら、買収後に偶発債務や未認識債務の判明等、事前の調査において認識できていなかったリスクが生じた場合や、買収後の事業の統合が計画通り進まない場合は、のれんの減損処理を行う必要が生じる等、当社グループの財政状況及び業績に大きな影響を与える可能性があります。
⑨調達資金の使途
当社グループが予定している公募増資による資金調達については、運転資金の増加、借入金の返済、広告宣伝費及び人件費等に充当する予定であります。
しかしながら、当初の計画に沿って調達資金を使用した場合でも、想定した投資効果が得られない可能性があります。