有価証券報告書-第8期(令和1年7月1日-令和2年6月30日)
有報資料
文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッションを掲げ、「アイデアやパッションやスキルがあればだれでも、ビジネスを強くスマートに育てられるプラットフォーム」をコンセプトとしたサービスを提供しております。
(2) 当社グループの強み
① 成長性の高いクラウド会計・人事労務ソフト市場におけるユニークで強固なポジション
国内企業の99.7%を占める中小企業(注1)は、大企業と比べて生産性が低く、テクノロジー活用には大きな成長ポテンシャルが存在しております。当社グループでは顧客ターゲットであるスモールビジネスを従業員規模別に区分した個人事業主、Small及びMidの3セグメントに対して、それぞれのニーズに即したソリューションを提供しております。(注2)
当社グループは、ビジネス向けの会計ソフトと人事労務ソフトのTAM(注3)について、合計で約1.2兆円と推計(注4)しております。また、従業員300人以下の中小企業等における会計ソフトの中でのクラウド会計ソフトの普及率は14.5%(注5)に留まり、そもそも会計業務にソフトウェアを活用している層が54.1%(注5)と少ないため、同市場における普及率の上昇余地は大きく残されていると認識しております。なお、現状の我が国における会計ソフト及び人事労務ソフトにおけるクラウド普及率は、下表のとおり、海外主要国と比較して低い水準にあり、我が国における普及余地が多分に存在するものと考えております。株式会社MM総研の調査では、設立1年未満の法人の53.1%が、既に会計ソフトとしてクラウドを選択するようになっており(注6)、今後の普及傾向の加速を示唆するものと考えております。
会計ソフト及び人事労務ソフトにおけるクラウド普及率の比較(注7)
前記「第1 企業の概況 3 事業の内容 (3)統合型クラウド会計ソフト・人事労務ソフトを提供する「freee」が選ばれる理由」にて記載のとおり、当社グループの提供するサービスは、単に従来型の会計ソフト・人事労務ソフトをクラウド化したものとは異なる統合型のクラウド会計ソフト・人事労務ソフトであり、経費精算や請求書発行といった記帳業務の上流工程まで含めた一体的な設計により、経理業務の枠を超えたバックオフィス全体の効率化、及び経営者の意思決定のナビゲーションにも寄与するものです。
こうしたユニークなサービス設計・顧客価値により、成長性の高いクラウド会計・人事労務ソフト市場において、当社グループのユーザー規模は創業以来順調に拡大しており、「クラウド会計ソフトfreee」及び「人事労務freee」はともに我が国における市場シェア1位を獲得(注8、9、10)するなど、マーケットリーダーとしてクラウド会計・クラウド人事労務業界を牽引しており、とりわけ「クラウド会計ソフトfreee」については新設法人、並びに「クラウド会計ソフトfreee」及び「人事労務freee」の両者についてはIPO準備企業群にて多く使われております。
(注) 1.中小企業庁「中小企業白書(2019年版)」
2.個人事業主、Small及びMidにおける潜在企業数と出所は下表のとおり
3.TAM:Total Addressable Marketの略称。当社グループが想定する最大の市場規模を意味する用語であり、当社グループが本書提出日現在で営む事業に係る客観的な市場規模を示す目的で算出されたものではありません。スモールビジネス向けの会計ソフトと人事労務ソフトのTAMは、一定の前提の下、外部の統計資料や公表資料を基礎として、下記4.に記載の計算方法により、当社グループが推計したものであり、その正確性にはかかる統計資料や推計に固有の限界があるため、実際の市場規模はかかる推計値と異なる可能性があります。
4.国内における当社グループの全潜在ユーザー企業において「クラウド会計ソフトfreee」及び「人事労務freee」が導入された場合の全潜在ユーザー企業による年間支出総金額。全潜在ユーザー企業は、個人事業主と従業員が1,000名未満の法人の合計。(「クラウド会計ソフトfreee」及び「人事労務freee」の全潜在ユーザー企業数の従業員規模別法人数(国税庁2017年調査、総務省2016年6月経済センサス活動調査) × 従業員規模別の「クラウド会計ソフトfreee」及び「人事労務freee」の年間課金額)+(従業員規模別の想定平均従業員数(総務省 2017年労働力調査)× 1ID当たりの年間課金額 )
5.株式会社MM総研「クラウド会計ソフトの法人導入実態調査(2017年8月実施)」
6.株式会社MM総研「クラウド会計ソフトの法人導入実態調査(2016年9月実施)」
7.International Data Corporation(IDC)「Semiannual Software Tracker Forecast 2014-2023 2018H2」 及び「Semiannual Cloud Services Tracker Forecast 2014-2023 2018H2」からクラウド化率の比較的高い国を抜粋。当該国には、ニュージーランドの同業プレーヤーであるXeroが進出しております。
8.クラウド会計ソフトの市場シェア:株式会社BCN「クラウド会計ソフトを導入している従業員数300名未満の企業又は個人事業主へのWeb調査(2017年9月実施)」
9.クラウド会計サービス主要3社におけるユニークユーザー数No.1(55%):株式会社ローカルフォリオ「クラウド会計主要3社のユーザ数推計」(2019年10月実施)。ユニークユーザー(UU)数とは、ログイン後トップページにアクセスしたユニークユーザー数をいう。UU数比較は、クラウド会計サービス各社におけるログイン後トップページのページビュー(PV)数とログイン後トップページのUU数の比率が一致するとの仮定に基づき、かつ各社のログイン後トップページのPV数を基礎とした推定(ローカルフォリオ(2019年10月)。調査期間は2018年6月-2019年5月)
10.クラウド給与計算ソフトの市場シェア:株式会社MM総研「日本におけるクラウド給与計算ソフトの利用状況調査に関するWeb調査(2016年3月実施)」
② スモールビジネス向けクラウドERP市場における更なるTAMの拡大
当社グループは、上記のとおり、従来の会計・人事労務ソフトの枠を超えて、バックオフィス全体の効率化に資するERP(統合型業務ソフト)を志向してサービスを提供しております。今後はさらに提供するサービスモジュールを広げ、スモールビジネス向けERPとして実現・提供可能なサービスの範囲拡大を目指してまいります。これは、上流工程から下流工程までを一貫してソフトウェア化するユニークな設計思想によって可能になるものです。
そのため、従来の会計・人事労務の枠を超えたバックオフィス全体の効率化に資するERP(統合型業務ソフト)のTAMとして捉えた場合には、当社グループが狙うTAMは、上記①のスモールビジネス向けの会計ソフトと人事労務ソフトのTAM(合計で約1.2兆円)よりも、更に拡大したものとなりうると当社グループは考えております。
③ スモールビジネスの情報が蓄積されたビジネスプラットフォーム
「クラウド会計ソフトfreee」は、統合型会計ソフトであるため、経理財務情報のみならず、上流工程である個々の取引情報までを広くカバーしており、各ユーザー企業のトランザクションデータを保有しております。ECサイトや決済サービス等も同様にトランザクションデータを保有しておりますが、一つのユーザーが複数のECサイトや決済サービスを利用するのに対し、「クラウド会計ソフトfreee」は他のソフトと併用する必要はなく、すべてのトランザクションデータが集約される点が強みです。
また、「人事労務freee」には、人事労務の定型業務に係る情報が一元的に蓄積されており、従業員向けの付加サービスを提供する上での有力なプラットフォームになると考えております。
④ 高い安定性を誇る財務モデル
当社グループは、サービスの多くをサブスクリプション(継続課金)方式で提供しており、売上高合計に占めるサブスクリプション売上高の比率は90%超(注1)と、安定的かつ継続的な収益構造にあります。
顧客生涯価値(LTV)(注2)の長期的な最大化を企図し、機能改善の開発やカスタマーサクセス等に投資しております。その結果、2020年6月期における月次平均解約率(注3)は約1.6%となっており、大企業と比して廃業率が高く他のソフトウェアへの乗り換えが多い傾向にあるスモールビジネスを対象としたサービスとしては、低い解約率を実現しております。
(注) 1.サブスクリプション売上高(顧客から解約意思を示されない限り継続する自動更新契約から毎月得られる収益)を全売上高で除した比率(2020年6月期)
2.LTV:Life Time Valueの略称。顧客から契約期間(Life Time)を通じてもたらされる価値であり、契約期間×MRR×売上総利益率によって算出
3.(当該月に有料課金ユーザーでなくなったユーザーに関連するARR÷前月末ARR)の過去12ヶ月平均。当社の全顧客セグメントを集計対象
⑤ 企業文化
「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッションの実現に向け、当社グループは「マジ価値を届けきる集団」であると自己定義し、「本質的な価値(マジ価値)をユーザーに届けきること」を世の中へのコミットメントとして位置づけております。「マジ価値」とは、「ユーザーにとって本質的な価値があると自信をもって言えることをする」という意味であり、当社グループが創業以来、大切にしている考え方です。同時に、これは届いてこそ意味があるという考えから、マジ価値を届ける共通基盤であり、全役員及び全従業員が持つべきマインドとして「マジ価値2原則」を、マジ価値をチームとして届けるために大切にしたい行動として「マジ価値指針」を全役員及び全従業員で議論し浸透させております。
当社グループは、ミッションやコミットメントに共感する社員が集まり、個々人が高い自律性を持ちながらも強い一体感・カルチャーを持つ組織を実現しています。
マジ価値2原則
・「社会の進化を担う責任感」:社会をよい方向へ進化させる責任を有するという自負をもって、あきらめずに挑戦する姿勢。また、世の中を変えうるよい事例は率先してつくるという姿勢
・「ムーブメント型チーム」:目指すべき世の中の方向性に共感し、自律的にアクションを起こす姿勢
マジ価値指針
・「理想ドリブン」:理想から考える。現在のリソースやスキルにとらわれず挑戦しつづける
・「アウトプット⇒思考」:まず、アウトプットする。そして考え、改善する
・「Hack Everything★」:取り組んでいることや持っているリソースの性質を深く理解する。その上で枠を超えて発想する
・「ジブンゴーストバスター」:新しいことに挑戦し続けるために、自分が今向き合いたいジブンゴースト(過去の経験から形成された思い込み・行動の癖)を言語化し、それに対するフィードバックを貪欲に求め、立ち向かっていく
・「あえて共有」:人とチームを知る。知られるよう共有する。オープンにフィードバックをしあうことで一緒に成長する
(3) 経営環境
我が国は、少子高齢化を背景に人口減少フェーズに入り、生産年齢人口は2018年から2040年にかけて20.5%の減少が見込まれております(注1)。また、2017年3月に政府が「働き方改革実行計画」を発表、労働環境の規制が強化されています。加えて、最低賃金も直近10年で28.6%上昇する(注2)など、労働生産性の向上が益々要求される局面を迎えております。生産年齢人口が減少する一方で、新設法人数や副業者数は増加傾向にあります(注3、4)。こうした独立を志向した生き方に対するニーズが時代に合わせて大きくなることで、スモールビジネスの裾野は広がりを見せております。
当社グループでは、このような環境下において、スモールビジネスは労働力への依存から脱却し、テクノロジーに代替可能な作業を積極的に置き換える必要があるほか、アイデアやパッションやスキルがあれば誰でもが挑戦できる社会をつくり、新しい生き方のニーズに対応することが重要であると認識しており、スモールビジネスが強くスマートになることに貢献するサービスの開発、提供を目指してまいります。
(注) 1.総務省「情報通信白書 平成30年版」
2.厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧 平成30年度」。東京における最低賃金
3.株式会社東京商工リサーチ「全国新設法人動向(2008年、2018年)」。新設法人数は2008年から2018年にかけて27.5%増加
4.総務省統計局「平成29年就業構造基本調査結果」。副業者及び追加就業希望者数は2012年から2017年にかけて14.9%増加
(4) 中長期的な経営戦略
① ユーザー基盤の更なる拡大
当社グループの2020年6月末における有料課金ユーザー企業数(注1)は224,106件であり、創業以来順調に拡大し続けております。創業当初はWebマーケティングやSNS(注2)を通じて流入したユーザー企業による自発的なユーザー登録が中心でしたが、インサイドセールス(注3)チームやフィールドセールス(注4)チームを立ち上げたほか、会計事務所向けセールス組織を強化するなど、スモールビジネスへのタッチポイントを拡充してきました。
さらに、ユーザー基盤の拡大が多様化する中で、既存ユーザー企業からの紹介も増えてまいりました。
今後もスモールビジネスへのタッチポイントの深化、多様化を進めることで、ユーザー基盤の更なる拡大を進めてまいります。
有料課金ユーザー企業数推移
(注)1.当社グループのサービスを利用する個人事業主と法人の双方を指す。なお、2020年6月期第4四半期決算において、試用期間中の事業所や月額料金の全額がディスカウントされている期間にある事業所等についてカウントから除外するように変更するとともに、従来はメインプロダクトである会計freee、人事労務freeeの課金事業所のみカウントしていたものを、有料サブスクリプションサービス全て(例:会社設立freee上から申し込める電子公告サービス等のサブプロダクトを含む)の課金事業所をカウントするように変更。当該変更は、開示済みの過去数値についても遡及適用
2.SNS:Social Networking Serviceの略称。登録された利用者同士が交流できるWebサイトの会員制サービス
3.インサイドセールス:メールや電話等を活用し、非対面で実施する営業活動
4.フィールドセールス:見込み顧客を直接訪問し、対面で実施する営業活動
② 顧客価値の最大化
当社グループは継続的に新規サービスをリリースしてきたほか、既存サービスの機能改善などにより、顧客価値の向上に努めてまいりました。また、中堅規模の企業においても活用可能なプランのリリース等を通じて高価格帯の顧客割合が増加し、結果としてユーザー企業のARPU(注1)の上昇を実現してまいりました。
今後は、従来注力してきたバックオフィス業務周辺のサービスに加えて、関連モジュールを強化し、スモールビジネスの業務の効率化と可視化をより多くの範囲で実現し、経営課題を解決するプラットフォームを構築する予定です。
真にスモールビジネスに必要とされる既存サービスの改善や新規サービスのリリース(注2)等を通じて、顧客価値の最大化を目指してまいります。
年間ARPU推移
(注)1.ARPU: Average Revenue Per Userの略称。1有料課金ユーザー企業当たりの平均単価。各期末時点における合計ARRを有料課金ユーザー企業数で除して算出
2.調達・在庫管理、CRM、プロジェクトマネジメント、法務、POS/Payment、タレントマネジメント、決済等の分野におけるサービスを想定しておりますが、これらは将来リリースする可能性のあるサービスの例示であり、本書提出日現在で具体的に決定しているものはありません。
③ オープンプラットフォームの充実
当社グループは、2013年10月に日本国内の会計ソフト業界では初めてパブリックAPIを公開して以来、クラウドとAPIを活用したオープン・エコシステムの構築を進めております。パブリックAPIの公開により、「誰でも、自由に」当社グループのサービスとデータ連携を行うためのソフトウェア開発を行うことができます。
また、2019年1月には「freeeアプリストア」をリリースしました。freeeユーザーは、必要な業務カテゴリーごとにfreeeと連携可能なソフトウェアを検索することができ、数回のクリックで簡単にfreeeと連携させ、利用開始できます。
今後も公開するfreeeAPIを拡張し、アプリストアに掲載されるソフトウェアのラインナップの充実化を図ることで、多様なニーズを有するスモールビジネスの業務効率化及び経営の可視化に貢献してまいります。
④ 金融サービスの拡大
当社グループは、金融サービスを展開する子会社として、2018年10月にフリーファイナンスラボを設立し、2019年6月に「資金繰り改善ナビ」としてオファー型融資サービス等をリリースしました。
今後もスモールビジネスにとって大きな課題である資金繰りに対して、これらの改善を進めるとともに、データとテクノロジーの力を活用することで、最終的に、あらゆる経営課題に対処する人工知能CFO(注)のようなサービス開発及び提供を目指してまいります。
(注)人工知能が個々のスモールビジネスのデータを分析することで、自動で経営アドバイスを行い、CFOとしての役割を果たすようなコンセプト
⑤ 取引プラットフォームの進展
「クラウド会計ソフトfreee」において提供している「スマート請求書」は、freeeユーザー同士がクラウド上でスマート請求書を送受信することにより、受領した請求書の情報をワンクリックで会計帳簿に反映することが可能です。本機能はユーザー単体の請求書管理に係る工数や時間の効率化に寄与するだけではなく、本機能を相互に活用するユーザー間のネットワークが拡大するほど、双方の取引の効率化が進み、複数ユーザーの業務最適化が加速する好循環を生み出します。今後は、請求書の送受信に加えて、freeeのユーザー企業間で、取引の受発注や、決済の実行を、簡単かつ安心して実行できるサービスの実現を目指します。
(5) 対処すべき課題
① スモールビジネス向けクラウドERP市場の拡大
当社グループは、スモールビジネス向けの会計ソフトと人事労務ソフトのTAMについて、合計で約1.2兆円と推定(注)しております。従業員300人以下の中小企業等における会計ソフトウェア利用率は54.1%、そのうちクラウド会計普及率は14.5%に留まり、今後の普及率上昇に伴う高い成長が見込まれます。
当社グループは、スモールビジネス向けクラウドERP市場におけるリーディングカンパニーとして、市場を引き続き牽引することが重要であると認識しております。
(注)前記「(2)当社グループの強み ① 成長性の高いクラウド会計・人事労務ソフト市場におけるユニークで強固なポジション」を参照
② 組織体制の整備
当社グループの継続的な事業成長の実現に向けて、多様なバックグラウンドをもった優秀な人材を採用し、強い組織体制を整備することが重要であると認識しております。積極的な採用活動を推進していく一方で、従業員が中長期にわたって活躍しやすい環境の整備、人事制度の構築やカルチャーの推進等を進めてまいります。
③ 情報管理体制の強化
当社グループは、提供するサービスに関連して多数のユーザー企業の機密情報や個人情報を取り扱っております。これらの情報資産を保護するため、専任の情報セキュリティチームを設置しております。また情報セキュリティ基本方針を定め、この方針に従って情報資産を適切に管理、保護しております。今後も社内教育・研修の実施のほか、システムの強化・整備を実施してまいります。
④ 新規事業の展開
現在、当社グループの収益の大半が「クラウド会計ソフトfreee」や「人事労務freee」等のSaaSサービスから成り立っております。今後も継続的な事業成長の実現に向けて、既存サービスの伸長に加えて、金融サービスや取引プラットフォームにおける新規事業の展開を積極的に検討してまいります。
⑤ 利益及びキャッシュ・フローの創出
当社グループは、事業拡大を目指し、開発投資や顧客獲得活動等に積極的に投資を進めており、2020年6月期は営業損失を計上しております。
当社グループの収益の中心であるSaaSビジネスは、サブスクリプション方式でユーザーに提供しており、継続して利用されることで収益が積み上がるストック型の収益モデルになります。一方で、開発費用やユーザーの獲得費用が先行して計上される特徴があり、短期的には赤字が先行することが一般的です。
当社グループでは、事業の拡大に伴い、ストック収益が順調に積み上がることで、先行投資として計上される開発費用やユーザーの獲得費用が売上高に占める割合は低下傾向にあり、営業損失率は改善しております。
一方で、SaaSビジネスにおいては、投資効率を計る指標として顧客生涯価値(LTV)と顧客獲得コスト(CAC)(注)のバランス(LTV/CAC)が重要な指標となるため、当社グループではこれを最重要の指標として顧客獲得活動における投資判断をしてまいりました。当該指標を満たす場合に積極的に投資していくことが、中長期的に利益及びキャッシュ・フローの最大化に寄与するものと考えております。
今後も、投資効率指標であるLTV/CAC等に配慮しながら、サービス強化のための開発活動や、認知度向上のためのマーケティング活動への投資を通じて、中長期的な利益及びキャッシュ・フローの最大化に努めてまいります。
(注)CAC:Customer Acquisition Costの略称。顧客の獲得に要するコストであり、セールス活動及びマーケティング活動に係る費用が該当
(1) 経営方針
当社グループは「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッションを掲げ、「アイデアやパッションやスキルがあればだれでも、ビジネスを強くスマートに育てられるプラットフォーム」をコンセプトとしたサービスを提供しております。
(2) 当社グループの強み
① 成長性の高いクラウド会計・人事労務ソフト市場におけるユニークで強固なポジション
国内企業の99.7%を占める中小企業(注1)は、大企業と比べて生産性が低く、テクノロジー活用には大きな成長ポテンシャルが存在しております。当社グループでは顧客ターゲットであるスモールビジネスを従業員規模別に区分した個人事業主、Small及びMidの3セグメントに対して、それぞれのニーズに即したソリューションを提供しております。(注2)
当社グループは、ビジネス向けの会計ソフトと人事労務ソフトのTAM(注3)について、合計で約1.2兆円と推計(注4)しております。また、従業員300人以下の中小企業等における会計ソフトの中でのクラウド会計ソフトの普及率は14.5%(注5)に留まり、そもそも会計業務にソフトウェアを活用している層が54.1%(注5)と少ないため、同市場における普及率の上昇余地は大きく残されていると認識しております。なお、現状の我が国における会計ソフト及び人事労務ソフトにおけるクラウド普及率は、下表のとおり、海外主要国と比較して低い水準にあり、我が国における普及余地が多分に存在するものと考えております。株式会社MM総研の調査では、設立1年未満の法人の53.1%が、既に会計ソフトとしてクラウドを選択するようになっており(注6)、今後の普及傾向の加速を示唆するものと考えております。
会計ソフト及び人事労務ソフトにおけるクラウド普及率の比較(注7)
| 日本 | アメリカ | イギリス | オーストラリア | ニュージー ランド | |
| 会計ソフト | 14.3% | 52.5% | 34.8% | 61.2% | 68.0% |
| 人事労務ソフト | 19.0% | 81.2% | 55.1% | 51.9% | 59.1% |
前記「第1 企業の概況 3 事業の内容 (3)統合型クラウド会計ソフト・人事労務ソフトを提供する「freee」が選ばれる理由」にて記載のとおり、当社グループの提供するサービスは、単に従来型の会計ソフト・人事労務ソフトをクラウド化したものとは異なる統合型のクラウド会計ソフト・人事労務ソフトであり、経費精算や請求書発行といった記帳業務の上流工程まで含めた一体的な設計により、経理業務の枠を超えたバックオフィス全体の効率化、及び経営者の意思決定のナビゲーションにも寄与するものです。
こうしたユニークなサービス設計・顧客価値により、成長性の高いクラウド会計・人事労務ソフト市場において、当社グループのユーザー規模は創業以来順調に拡大しており、「クラウド会計ソフトfreee」及び「人事労務freee」はともに我が国における市場シェア1位を獲得(注8、9、10)するなど、マーケットリーダーとしてクラウド会計・クラウド人事労務業界を牽引しており、とりわけ「クラウド会計ソフトfreee」については新設法人、並びに「クラウド会計ソフトfreee」及び「人事労務freee」の両者についてはIPO準備企業群にて多く使われております。
(注) 1.中小企業庁「中小企業白書(2019年版)」
2.個人事業主、Small及びMidにおける潜在企業数と出所は下表のとおり
| 潜在企業数 | 出所 | ||
| 個人事業主 | 4,522,381 | 国税庁2017年調査 | |
| Small(従業員が19名以下の法人) | 1,549,342 | 総務省2016年6月 経済センサス活動調査 | |
| Mid(従業員が20名以上1,000名未満の法人) | 319,800 | ||
3.TAM:Total Addressable Marketの略称。当社グループが想定する最大の市場規模を意味する用語であり、当社グループが本書提出日現在で営む事業に係る客観的な市場規模を示す目的で算出されたものではありません。スモールビジネス向けの会計ソフトと人事労務ソフトのTAMは、一定の前提の下、外部の統計資料や公表資料を基礎として、下記4.に記載の計算方法により、当社グループが推計したものであり、その正確性にはかかる統計資料や推計に固有の限界があるため、実際の市場規模はかかる推計値と異なる可能性があります。
4.国内における当社グループの全潜在ユーザー企業において「クラウド会計ソフトfreee」及び「人事労務freee」が導入された場合の全潜在ユーザー企業による年間支出総金額。全潜在ユーザー企業は、個人事業主と従業員が1,000名未満の法人の合計。(「クラウド会計ソフトfreee」及び「人事労務freee」の全潜在ユーザー企業数の従業員規模別法人数(国税庁2017年調査、総務省2016年6月経済センサス活動調査) × 従業員規模別の「クラウド会計ソフトfreee」及び「人事労務freee」の年間課金額)+(従業員規模別の想定平均従業員数(総務省 2017年労働力調査)× 1ID当たりの年間課金額 )
5.株式会社MM総研「クラウド会計ソフトの法人導入実態調査(2017年8月実施)」
6.株式会社MM総研「クラウド会計ソフトの法人導入実態調査(2016年9月実施)」
7.International Data Corporation(IDC)「Semiannual Software Tracker Forecast 2014-2023 2018H2」 及び「Semiannual Cloud Services Tracker Forecast 2014-2023 2018H2」からクラウド化率の比較的高い国を抜粋。当該国には、ニュージーランドの同業プレーヤーであるXeroが進出しております。
8.クラウド会計ソフトの市場シェア:株式会社BCN「クラウド会計ソフトを導入している従業員数300名未満の企業又は個人事業主へのWeb調査(2017年9月実施)」
9.クラウド会計サービス主要3社におけるユニークユーザー数No.1(55%):株式会社ローカルフォリオ「クラウド会計主要3社のユーザ数推計」(2019年10月実施)。ユニークユーザー(UU)数とは、ログイン後トップページにアクセスしたユニークユーザー数をいう。UU数比較は、クラウド会計サービス各社におけるログイン後トップページのページビュー(PV)数とログイン後トップページのUU数の比率が一致するとの仮定に基づき、かつ各社のログイン後トップページのPV数を基礎とした推定(ローカルフォリオ(2019年10月)。調査期間は2018年6月-2019年5月)
10.クラウド給与計算ソフトの市場シェア:株式会社MM総研「日本におけるクラウド給与計算ソフトの利用状況調査に関するWeb調査(2016年3月実施)」
② スモールビジネス向けクラウドERP市場における更なるTAMの拡大
当社グループは、上記のとおり、従来の会計・人事労務ソフトの枠を超えて、バックオフィス全体の効率化に資するERP(統合型業務ソフト)を志向してサービスを提供しております。今後はさらに提供するサービスモジュールを広げ、スモールビジネス向けERPとして実現・提供可能なサービスの範囲拡大を目指してまいります。これは、上流工程から下流工程までを一貫してソフトウェア化するユニークな設計思想によって可能になるものです。
そのため、従来の会計・人事労務の枠を超えたバックオフィス全体の効率化に資するERP(統合型業務ソフト)のTAMとして捉えた場合には、当社グループが狙うTAMは、上記①のスモールビジネス向けの会計ソフトと人事労務ソフトのTAM(合計で約1.2兆円)よりも、更に拡大したものとなりうると当社グループは考えております。
③ スモールビジネスの情報が蓄積されたビジネスプラットフォーム
「クラウド会計ソフトfreee」は、統合型会計ソフトであるため、経理財務情報のみならず、上流工程である個々の取引情報までを広くカバーしており、各ユーザー企業のトランザクションデータを保有しております。ECサイトや決済サービス等も同様にトランザクションデータを保有しておりますが、一つのユーザーが複数のECサイトや決済サービスを利用するのに対し、「クラウド会計ソフトfreee」は他のソフトと併用する必要はなく、すべてのトランザクションデータが集約される点が強みです。
また、「人事労務freee」には、人事労務の定型業務に係る情報が一元的に蓄積されており、従業員向けの付加サービスを提供する上での有力なプラットフォームになると考えております。
④ 高い安定性を誇る財務モデル
当社グループは、サービスの多くをサブスクリプション(継続課金)方式で提供しており、売上高合計に占めるサブスクリプション売上高の比率は90%超(注1)と、安定的かつ継続的な収益構造にあります。
顧客生涯価値(LTV)(注2)の長期的な最大化を企図し、機能改善の開発やカスタマーサクセス等に投資しております。その結果、2020年6月期における月次平均解約率(注3)は約1.6%となっており、大企業と比して廃業率が高く他のソフトウェアへの乗り換えが多い傾向にあるスモールビジネスを対象としたサービスとしては、低い解約率を実現しております。
(注) 1.サブスクリプション売上高(顧客から解約意思を示されない限り継続する自動更新契約から毎月得られる収益)を全売上高で除した比率(2020年6月期)
2.LTV:Life Time Valueの略称。顧客から契約期間(Life Time)を通じてもたらされる価値であり、契約期間×MRR×売上総利益率によって算出
3.(当該月に有料課金ユーザーでなくなったユーザーに関連するARR÷前月末ARR)の過去12ヶ月平均。当社の全顧客セグメントを集計対象
⑤ 企業文化
「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッションの実現に向け、当社グループは「マジ価値を届けきる集団」であると自己定義し、「本質的な価値(マジ価値)をユーザーに届けきること」を世の中へのコミットメントとして位置づけております。「マジ価値」とは、「ユーザーにとって本質的な価値があると自信をもって言えることをする」という意味であり、当社グループが創業以来、大切にしている考え方です。同時に、これは届いてこそ意味があるという考えから、マジ価値を届ける共通基盤であり、全役員及び全従業員が持つべきマインドとして「マジ価値2原則」を、マジ価値をチームとして届けるために大切にしたい行動として「マジ価値指針」を全役員及び全従業員で議論し浸透させております。
当社グループは、ミッションやコミットメントに共感する社員が集まり、個々人が高い自律性を持ちながらも強い一体感・カルチャーを持つ組織を実現しています。
マジ価値2原則
・「社会の進化を担う責任感」:社会をよい方向へ進化させる責任を有するという自負をもって、あきらめずに挑戦する姿勢。また、世の中を変えうるよい事例は率先してつくるという姿勢
・「ムーブメント型チーム」:目指すべき世の中の方向性に共感し、自律的にアクションを起こす姿勢
マジ価値指針
・「理想ドリブン」:理想から考える。現在のリソースやスキルにとらわれず挑戦しつづける
・「アウトプット⇒思考」:まず、アウトプットする。そして考え、改善する
・「Hack Everything★」:取り組んでいることや持っているリソースの性質を深く理解する。その上で枠を超えて発想する
・「ジブンゴーストバスター」:新しいことに挑戦し続けるために、自分が今向き合いたいジブンゴースト(過去の経験から形成された思い込み・行動の癖)を言語化し、それに対するフィードバックを貪欲に求め、立ち向かっていく
・「あえて共有」:人とチームを知る。知られるよう共有する。オープンにフィードバックをしあうことで一緒に成長する
(3) 経営環境
我が国は、少子高齢化を背景に人口減少フェーズに入り、生産年齢人口は2018年から2040年にかけて20.5%の減少が見込まれております(注1)。また、2017年3月に政府が「働き方改革実行計画」を発表、労働環境の規制が強化されています。加えて、最低賃金も直近10年で28.6%上昇する(注2)など、労働生産性の向上が益々要求される局面を迎えております。生産年齢人口が減少する一方で、新設法人数や副業者数は増加傾向にあります(注3、4)。こうした独立を志向した生き方に対するニーズが時代に合わせて大きくなることで、スモールビジネスの裾野は広がりを見せております。
当社グループでは、このような環境下において、スモールビジネスは労働力への依存から脱却し、テクノロジーに代替可能な作業を積極的に置き換える必要があるほか、アイデアやパッションやスキルがあれば誰でもが挑戦できる社会をつくり、新しい生き方のニーズに対応することが重要であると認識しており、スモールビジネスが強くスマートになることに貢献するサービスの開発、提供を目指してまいります。
(注) 1.総務省「情報通信白書 平成30年版」
2.厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧 平成30年度」。東京における最低賃金
3.株式会社東京商工リサーチ「全国新設法人動向(2008年、2018年)」。新設法人数は2008年から2018年にかけて27.5%増加
4.総務省統計局「平成29年就業構造基本調査結果」。副業者及び追加就業希望者数は2012年から2017年にかけて14.9%増加
(4) 中長期的な経営戦略
① ユーザー基盤の更なる拡大
当社グループの2020年6月末における有料課金ユーザー企業数(注1)は224,106件であり、創業以来順調に拡大し続けております。創業当初はWebマーケティングやSNS(注2)を通じて流入したユーザー企業による自発的なユーザー登録が中心でしたが、インサイドセールス(注3)チームやフィールドセールス(注4)チームを立ち上げたほか、会計事務所向けセールス組織を強化するなど、スモールビジネスへのタッチポイントを拡充してきました。
さらに、ユーザー基盤の拡大が多様化する中で、既存ユーザー企業からの紹介も増えてまいりました。
今後もスモールビジネスへのタッチポイントの深化、多様化を進めることで、ユーザー基盤の更なる拡大を進めてまいります。
有料課金ユーザー企業数推移
| 2016年6月期末 | 2017年6月期末 | 2018年6月期末 | 2019年6月期末 | 2020年6月期末 | |
| 有料課金ユーザー 企業数(件) | 54,749 | 84,517 | 115,808 | 160,132 | 224,106 |
(注)1.当社グループのサービスを利用する個人事業主と法人の双方を指す。なお、2020年6月期第4四半期決算において、試用期間中の事業所や月額料金の全額がディスカウントされている期間にある事業所等についてカウントから除外するように変更するとともに、従来はメインプロダクトである会計freee、人事労務freeeの課金事業所のみカウントしていたものを、有料サブスクリプションサービス全て(例:会社設立freee上から申し込める電子公告サービス等のサブプロダクトを含む)の課金事業所をカウントするように変更。当該変更は、開示済みの過去数値についても遡及適用
2.SNS:Social Networking Serviceの略称。登録された利用者同士が交流できるWebサイトの会員制サービス
3.インサイドセールス:メールや電話等を活用し、非対面で実施する営業活動
4.フィールドセールス:見込み顧客を直接訪問し、対面で実施する営業活動
② 顧客価値の最大化
当社グループは継続的に新規サービスをリリースしてきたほか、既存サービスの機能改善などにより、顧客価値の向上に努めてまいりました。また、中堅規模の企業においても活用可能なプランのリリース等を通じて高価格帯の顧客割合が増加し、結果としてユーザー企業のARPU(注1)の上昇を実現してまいりました。
今後は、従来注力してきたバックオフィス業務周辺のサービスに加えて、関連モジュールを強化し、スモールビジネスの業務の効率化と可視化をより多くの範囲で実現し、経営課題を解決するプラットフォームを構築する予定です。
真にスモールビジネスに必要とされる既存サービスの改善や新規サービスのリリース(注2)等を通じて、顧客価値の最大化を目指してまいります。
年間ARPU推移
| 2016年6月期末 | 2017年6月期末 | 2018年6月期末 | 2019年6月期末 | 2020年6月期末 | |
| 年間ARPU (円) | 14,821 | 20,351 | 25,786 | 32,930 | 35,246 |
(注)1.ARPU: Average Revenue Per Userの略称。1有料課金ユーザー企業当たりの平均単価。各期末時点における合計ARRを有料課金ユーザー企業数で除して算出
2.調達・在庫管理、CRM、プロジェクトマネジメント、法務、POS/Payment、タレントマネジメント、決済等の分野におけるサービスを想定しておりますが、これらは将来リリースする可能性のあるサービスの例示であり、本書提出日現在で具体的に決定しているものはありません。
③ オープンプラットフォームの充実
当社グループは、2013年10月に日本国内の会計ソフト業界では初めてパブリックAPIを公開して以来、クラウドとAPIを活用したオープン・エコシステムの構築を進めております。パブリックAPIの公開により、「誰でも、自由に」当社グループのサービスとデータ連携を行うためのソフトウェア開発を行うことができます。
また、2019年1月には「freeeアプリストア」をリリースしました。freeeユーザーは、必要な業務カテゴリーごとにfreeeと連携可能なソフトウェアを検索することができ、数回のクリックで簡単にfreeeと連携させ、利用開始できます。
今後も公開するfreeeAPIを拡張し、アプリストアに掲載されるソフトウェアのラインナップの充実化を図ることで、多様なニーズを有するスモールビジネスの業務効率化及び経営の可視化に貢献してまいります。
④ 金融サービスの拡大
当社グループは、金融サービスを展開する子会社として、2018年10月にフリーファイナンスラボを設立し、2019年6月に「資金繰り改善ナビ」としてオファー型融資サービス等をリリースしました。
今後もスモールビジネスにとって大きな課題である資金繰りに対して、これらの改善を進めるとともに、データとテクノロジーの力を活用することで、最終的に、あらゆる経営課題に対処する人工知能CFO(注)のようなサービス開発及び提供を目指してまいります。
(注)人工知能が個々のスモールビジネスのデータを分析することで、自動で経営アドバイスを行い、CFOとしての役割を果たすようなコンセプト
⑤ 取引プラットフォームの進展
「クラウド会計ソフトfreee」において提供している「スマート請求書」は、freeeユーザー同士がクラウド上でスマート請求書を送受信することにより、受領した請求書の情報をワンクリックで会計帳簿に反映することが可能です。本機能はユーザー単体の請求書管理に係る工数や時間の効率化に寄与するだけではなく、本機能を相互に活用するユーザー間のネットワークが拡大するほど、双方の取引の効率化が進み、複数ユーザーの業務最適化が加速する好循環を生み出します。今後は、請求書の送受信に加えて、freeeのユーザー企業間で、取引の受発注や、決済の実行を、簡単かつ安心して実行できるサービスの実現を目指します。
(5) 対処すべき課題
① スモールビジネス向けクラウドERP市場の拡大
当社グループは、スモールビジネス向けの会計ソフトと人事労務ソフトのTAMについて、合計で約1.2兆円と推定(注)しております。従業員300人以下の中小企業等における会計ソフトウェア利用率は54.1%、そのうちクラウド会計普及率は14.5%に留まり、今後の普及率上昇に伴う高い成長が見込まれます。
当社グループは、スモールビジネス向けクラウドERP市場におけるリーディングカンパニーとして、市場を引き続き牽引することが重要であると認識しております。
(注)前記「(2)当社グループの強み ① 成長性の高いクラウド会計・人事労務ソフト市場におけるユニークで強固なポジション」を参照
② 組織体制の整備
当社グループの継続的な事業成長の実現に向けて、多様なバックグラウンドをもった優秀な人材を採用し、強い組織体制を整備することが重要であると認識しております。積極的な採用活動を推進していく一方で、従業員が中長期にわたって活躍しやすい環境の整備、人事制度の構築やカルチャーの推進等を進めてまいります。
③ 情報管理体制の強化
当社グループは、提供するサービスに関連して多数のユーザー企業の機密情報や個人情報を取り扱っております。これらの情報資産を保護するため、専任の情報セキュリティチームを設置しております。また情報セキュリティ基本方針を定め、この方針に従って情報資産を適切に管理、保護しております。今後も社内教育・研修の実施のほか、システムの強化・整備を実施してまいります。
④ 新規事業の展開
現在、当社グループの収益の大半が「クラウド会計ソフトfreee」や「人事労務freee」等のSaaSサービスから成り立っております。今後も継続的な事業成長の実現に向けて、既存サービスの伸長に加えて、金融サービスや取引プラットフォームにおける新規事業の展開を積極的に検討してまいります。
⑤ 利益及びキャッシュ・フローの創出
当社グループは、事業拡大を目指し、開発投資や顧客獲得活動等に積極的に投資を進めており、2020年6月期は営業損失を計上しております。
当社グループの収益の中心であるSaaSビジネスは、サブスクリプション方式でユーザーに提供しており、継続して利用されることで収益が積み上がるストック型の収益モデルになります。一方で、開発費用やユーザーの獲得費用が先行して計上される特徴があり、短期的には赤字が先行することが一般的です。
当社グループでは、事業の拡大に伴い、ストック収益が順調に積み上がることで、先行投資として計上される開発費用やユーザーの獲得費用が売上高に占める割合は低下傾向にあり、営業損失率は改善しております。
一方で、SaaSビジネスにおいては、投資効率を計る指標として顧客生涯価値(LTV)と顧客獲得コスト(CAC)(注)のバランス(LTV/CAC)が重要な指標となるため、当社グループではこれを最重要の指標として顧客獲得活動における投資判断をしてまいりました。当該指標を満たす場合に積極的に投資していくことが、中長期的に利益及びキャッシュ・フローの最大化に寄与するものと考えております。
今後も、投資効率指標であるLTV/CAC等に配慮しながら、サービス強化のための開発活動や、認知度向上のためのマーケティング活動への投資を通じて、中長期的な利益及びキャッシュ・フローの最大化に努めてまいります。
(注)CAC:Customer Acquisition Costの略称。顧客の獲得に要するコストであり、セールス活動及びマーケティング活動に係る費用が該当