有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/05/21 15:00
【資料】
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【項目】
120項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社は、コーポレートスローガンでもある、「あたらしい命に、あたらしい医療の選択肢を。」を実現するために、周産期の組織に由来する幹細胞を中心とした「細胞バンク事業」のノウハウの蓄積・技術開発・サービスの向上に努めて参ります。
そして、細胞バンクに保管されている細胞を用いて「新しい医療」を提供しようと日々努力を重ねられている医師や研究者の方々と協力し、これまで治療法のない病態に苦しむ患者さんに寄り添い、医療の発展に寄与する事を目標としております。また、当社事業にご協力頂いている医療機関やそのスタッフを含めた、社会全体に貢献することを経営の基本方針としております。

(2) 目標とする経営指標
当社は、「細胞バンク事業」の単一セグメントのため、事業の状況を的確かつ容易に把握する上で、年間保管(売上)検体数をベンチマークとしております。年間保管(売上)検体数増加を目指し、事業規模拡大に努めて参ります。また「細胞バンク事業」の安定した運営のため、内部留保を充実させ、自己資本比率を高めて参ります。年間保管(売上)検体数は予算検体数、自己資本利益率は30%以上の確保を目標としております。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
当社の中長期的な経営戦略は下記の3点であります。
・ 「さい帯(へその緒)」等を含めた、出産に由来する組織由来の細胞(周産期組織由来細胞)の採取、保管に向けて、医療機関・研究機関と協力しながら事業の拡大を図って参ります。
・ さい帯血を使用して、中枢神経系疾患(低酸素性虚血性脳症、脳性麻痺、自閉症スペクトラム障害等)に対する再生医療・細胞治療に取り組む医療機関に対して、臨床研究がスムーズに進展するようご支援することで、当社の「細胞バンク事業」の利用者拡大に繋げて参ります。
・ アジアを中心とした、まだ「細胞バンク事業」が発達していない国々への事業展開を企図して、市場調査や現地の医療機関等との提携などを進めて参ります。
(4) 経営環境及び対処すべき課題
① 経営環境について
近年の再生医療分野の発展は目覚しく、さい帯血についても米国を中心に臨床研究が進展しております。米国デューク大学においては、脳神経疾患に対するさい帯血投与の第Ⅱ相臨床研究が終了し、良好な結果が発表され現在ではFDA(米国食品医薬品局)承認のもと、「拡大アクセス制度」(注)がスタートし、より多くの患者さんが治療を受けられております。日本国内でも、2014年に再生医療等安全性確保法が施行され、当社のような事業会社が臨床研究に参加する仕組みが整えられた事から、さい帯血等を利用した臨床研究が開始され、さい帯血等の体性幹細胞の医療応用のニーズは高まってきていると当社は考えております。
② 事業上及び財務上の対処すべき課題について
当社は、コーポレートスローガンでもある、「あたらしい命に、あたらしい医療の選択肢を。」を実現するために、前項の経営戦略を推進するにあたり、下記の5点を課題と捉え対処して参ります。
・ 当社は、周産期の組織に由来する幹細胞を中心とした「細胞バンク事業」を主事業としております。この「細胞バンク事業」において、さい帯血の保管については、厚生労働省健康局より、「臍帯血取扱事業の届出」の提出を要請されており、当社は同届出を提出しております。当届出制度の設立にあたり、厚生労働省との協議の過程で、過去に、破綻した民間さい帯血バンクよりその保管細胞が流出し違法に使用された等の経緯から、当社においても、契約が終了した検体についての取扱について、破棄する事を要請されております。当社は、厚生労働省の要請に従い、契約者の同意が得られた場合は、当人の意思に基づき破棄を実施しております。一方、転居等で連絡が取れない等、契約者からの意思表示が得られない顧客に関しては、将来、万が一保管した検体を使用する事態に備え、無断で破棄することはせず、社内倫理委員会の検討結果も踏まえ、現状はその取扱を留保しております。当社の保管方針、破棄に関する取扱いに関しては、今後方針が固まり次第、厚生労働省とも協議しながら、お客様より、「さずかった希望を、託されている。」という想いに寄り添い、適切に対処して参ります。
・ 当社の主事業である「細胞バンク事業」においては、近年その需要が急激に高まって来ており、保管検体数の増加に伴い、細胞処理・細胞保管センターの増設が喫緊の課題であります。既存の細胞保管施設の保管容量を超える可能性があることから、2021年3月に細胞保管センターの拡充を図りました。更には、将来の大幅な検体増に、また、「さい帯(へその緒)」等を含めた、出産に由来する組織由来の細胞(周産期組織由来細胞)の採取、保管に向けた事業の拡大に備え、新たな細胞処理・細胞保管センターの確保により、細胞処理能力、細胞保管能力の増強を目指しております。
・ 当社の主事業である「細胞バンク事業」は、関東、東海、近畿、九州など比較的人口(お産数)が多い地区を中心に営業活動を行っており、認知度が低い地域や人口(お産数)が少ない地区での認知度向上や営業活動の強化が今後の課題であると認識しております。東京都を中心にさい帯血保管の認知度が徐々に高まっていると考えておりますが、地域社員の採用や、Web(デジタル)マーケティングの強化により、事業全体の拡大を図ってまいります。
・ 当社では、人員の増強、組織の強化を重要な経営課題の一つと捉えております。今後も、専門知識を持った優秀な人材を継続的に採用、また育成を行い、組織を強化して行くとともに、より効率的な運用を目的に業務の「デジタル化」を推進し、待遇や労働環境の向上、また、社員のモチベーションを上げるための研修制度、福利厚生も充実させて参ります。
・ 当社では、持続的な企業価値向上を図るためには、経営の健全性、透明性及び客観性を高めることが重要であると考えております。そのため、コーポレート・ガバナンス強化の取組みとして、社外取締役の充実等、意思決定プロセスの透明化を図って参ります。また、役職員に対して、コンプライアンス意識を高めるための啓蒙活動を継続して参ります。
(注)デューク大学で行われている「拡大アクセス制度」では、さい帯血を用いた臨床試験の選定基準に満たないお子さんに、所定の手続きを経て自家(お子さん自身)あるいは他家(ごきょうだい)のさい帯血投与の機会を提供しております。本書提出日現在、26歳未満の、脳性麻痺、低酸素性脳症、脳卒中、水頭症、言語失行症、自閉症スペクトラム、その他の脳障害を持つお子さんが対象となります。