有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2020/06/04 15:00
【資料】
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【項目】
139項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、提出日現在において、当社が判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は「Break The Common Sense」を経営ビジョンとして掲げております。
「Break The Common Sense」には、「非合理的な常識を疑い、新しい合理的な常識を作り出す」という意味合いが込められております。当社は、合理的な変化がスピード感をもって行われることで、人々の生活や業界の効率化を図ることができると考えております。当社はそういった合理的な変化を創り出し、価値提供の最大化を図りたいと考えております。
上記の経営ビジョンを実現するために、当社では以下の経営方針を定めております。
「ITエンジニアの価値向上」
ITエンジニアとして働く個人がより良い環境、条件で働くことができること、ライフスタイルに合わせた多様な働き方を提供することに当社の価値を見出す。
「ITエンジニア人材ビジネス領域でNo.1を目指す」
ITエンジニアの教育、フリーランスや社員としてのキャリアサポートや就業支援を行うことで、ITエンジニアのライフサイクルを総合的に支援し、その結果、中長期的に、当社が属しているITエンジニア人材ビジネス領域で、当社の各種サービスへの登録エンジニア数No.1を目指す。
「当社で働くことの意義を感じることができる組織作り」
事業運営に係る業務フローの改善や運用、社内での意思決定、新規事業の立ち上げ及び福利厚生制度の立案等をトップダウンで行うのではなく、従業員が自ら動いて進めることに対して積極的にフォローする。
(2) 経営環境
当社の経営環境は総じて良好であると考えております。当社のMidworks事業、FCS事業及びtech boost事業の属するIT市場については、2018年度の市場規模が前年度比2.8%増の12兆4,930億円と推計され、2019年度には前年比3.4%増の12兆9,180億円と予測されております。また、製造業等の企業でグローバル競争力を強化する機運が高まっており、デジタルを活用して企業やビジネスに新しい価値を持たせるデジタルトランスフォーメーションへの取り組みが進められていることを背景に、2021年度には13兆3,200億円の市場規模になると予想されており、継続した成長が見込まれております。(「国内企業のIT投資実態と予測2019(株式会社矢野経済研究所)」)
またTechStars事業の属する人材ビジネス市場においては、IT市場の成長に伴い、ITエンジニアの属するIT・通信の技術者の転職有効求人倍率が2020年3月末において9.41倍と、2019年8月末の10.8倍と比較して、依然として高い状況が続いております。(「転職求人倍率レポート2020年3月(パーソルキャリア株式会社)」)
メディア事業の属するインターネット広告市場については、2018年度が1兆6,950億円と推計され、2019年度は1兆8,960億円と予測されております。今後もソーシャルメディア広告や動画広告などの運用型広告のさらなる拡大に加え、アプリ広告や屋外デジタル広告などが拡大するとみられることから、インターネット広告市場は拡大基調が続き、2023年度には2兆8,400億円の市場規模になると見込まれております。(「インターネット広告市場に関する調査 2019(株式会社矢野経済研究所)」)
(3) 経営戦略等
当社は「Break The Common Sense」という経営ビジョンの実現に向けて、今後もITエンジニア人材ビジネス領域で既存事業が着実に成長を描くように経営資源を投入してまいります。具体的には、Midworks事業においては、社員エンジニアやフリーランスエンジニアの獲得に注力することで、より多くの企業の開発ニーズに対して最適なITリソースを提供できるよう、活動してまいります。またtech boost事業やTechStars事業との連携を強め、ITエンジニアの間口を広め、潜在的求職者に対してもアプローチを行うことでITエンジニアサービスの拡充を行います。
メディア事業においてはセッション数(注1)の増加を重要指標と位置づけ、自社メディアにおけるユーザーのニーズにあった質の高い記事の作成や、Google等の検索順位を上位に表示させるためのSEO(注2)対策を継続して行う等のインターネット広告収入を増やす施策を行っていくとともに、メディア運営のノウハウを活かした受託・コンサルティングサービスを行ってまいります。
また、ITエンジニア事業における多角的サービスの拡充及び展開を図ることで、エンジニアプラットフォームを形成していきたいと考えております。具体的には事業エリアを拡張することでの事業規模の拡大と、オンラインサービスやエンジニアデータベースを活用した新規事業の創出を行うことで、教育、キャリアサポート、SES事業といった現在の事業領域の拡大を図ります。
(注1)セッション数:ユーザーがサイトを訪問した回数を指す。
(注2)SEO:Search Engine Optimizationの略称。
検索エンジンで検索された際の検索順位を上位にするためにサイトの内容の最適化を図ることを指す。
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、IT市場の拡大に伴う企業のIT投資ニーズの増加を背景として既存事業を着実に成長させることを中期経営計画における基本方針として位置付けていることから、事業の成長を表す売上高と営業利益それぞれの前事業年度からの成長率である売上高成長率及び営業利益成長率を、重要な経営指標と考えております。
(5) 対処すべき課題
① 安定した収益獲得体制の構築
Midworks事業においては、ITエンジニアを確保するとともに、企業のITエンジニアニーズの吸い上げに必要な営業人材を投入しており、企業からの案件獲得は良好であり、稼働エンジニア数も2020年2月末時点において前年同期比で7.1%増となるなど、持続的に成長しております。しかし、当社における他事業と比較した場合、Midworks事業の営業利益率は低いため、利益率の向上の施策が必要であると認識しております。
現在、Midworks事業の人的リソースであるITエンジニアの獲得には、社員エンジニアとしての雇用、外部協力企業との提携及びフリーランスエンジニアとの準委任契約の3つの方法がありますが、その中で、相対的に利益率の高い「社員エンジニアとしての雇用」及び「フリーランスエンジニアとの準委任契約」の比率を高めることが営業利益率の向上に繋がるため、「Midworks」へ登録するエンジニア数を増加させること及び社員エンジニアに対する福利厚生を手厚くし、「Midworks」の知見を元にしたキャリア形成支援を行う「MugenWorks」を提供し、社員エンジニアを確保することに注力してまいります。併せて営業担当者を企業からの案件獲得に注力するチームと、ITエンジニアのサポートチームとの分業体制を実施し、企業からの案件獲得の効率化及び社内の管理業務効率化を図り、事業としての生産性を高めていく方針です。具体的には、ITエンジニアのスキルを可視化することで、企業の求めるニーズとITエンジニアのスキルとのマッチング精度をさらに向上させるとともに、営業管理システムの改良を行い、業務の効率化を図ってまいります。
メディア事業においては、自社メディアが運営するサイト数の増加及びサイトに掲載する記事数の増加等を通じた事業の成長に伴い、当社全体の営業利益に占めるメディア事業の営業利益の比率が高まってきております。
メディア事業の主な収入源は、インターネット広告収入であり、その金額は、概ね当社のサイトへの訪問数に連動しております。一般的に、メディアサイトへの訪問数はGoogle等での検索の結果、順位が高まることによって、訪問数が増加する傾向にあるため、Google等の検索サイトが検索エンジンの検索アルゴリズムを変更した場合は、当社のメディアサイトの検索順位が上下し、業績に影響を与えることがあります。当社の営業利益に占めるメディア事業の比率が高まっているため、サイト検索順位の変動が、当社全体の業績に与える影響も大きくなってきております。
その影響を低減するため、当社はSEOチームの増員を図ることや、複数のメディアを運営し多面的な分析を行うことで検索エンジンの検索アルゴリズムの変更にいち早く対応できる体制を構築しておりますが、継続した個々人のスキル向上及び人員増加等の組織運営が必要であると考えております。また、インターネット広告収入のみへ依存せず、当社のノウハウを活かしてメディア運営のコンサルティング業務及び記事作成業務の受託といった検索エンジンの検索アルゴリズム変更の影響を直接受けない売上高の比率を高めていくことで安定的な収益獲得を図るよう努めてまいります。
その他事業においては、人材紹介を行っているTechStars事業では、営業利益率は高水準で推移しているものの、市場競争は激化しており、転職を希望しているITエンジニアの安定的な確保は難しい環境にあるため、売上の変動可能性が高くなっております。
売上高の安定のためには、当社の転職支援サービスへの応募者を増やすことが重要であると認識しております。応募者の獲得には自社で運営しているサイトである「TechStars」の登録者からの応募、又は人材紹介サービス事業者向けに提供されている有料の人材データベースへ登録している求職者に対して、当社からアプローチを行い、求職者からの応募を獲得することが必要となります。そのために、正社員の採用を強化し、自社のサービスサイト「TechStars」の改修を行うことで、自社サービスの登録者を増やすとともに、求職者に対して適切なアプローチを行える環境を作ることで当社の転職支援サービスへの応募者を増加させ、売上高の安定を図ってまいります。
またプログラミングスクールを運営しているtech boost事業では、2017年10月の事業開始以来、受講者数は順調に伸びており、2019年9月から2020年2月末までの新規受講者数は、前年同期間と比較し36.4%増となっております。しかしながら、受講を検討している方、全員に対して、より丁寧なカウンセリングを提供することで、受講を検討している方の理解度を向上させ、さらに受講者数を増加させる余地があると考えております。そのため、まずは、カウンセラーの増員を図るべく、正社員を採用し、受講を検討している方に対して十分な対応ができる体制を構築することで受講者数の増加を図ってまいります。併せてメンター(注1)となる他企業で活躍する現役のITエンジニアを業務委託契約により獲得し、受講者を対象とした各種イベントへの参加を促し、コミュニケーションの機会を設ける等、受講者の満足度を更に高める施策も継続的に行ってまいります。
(注1)メンター:プログラミングスクールの受講者に対して、プログラミングを教える講師のことを指す。
② 人材の確保と育成
当社は既存事業の拡大により、全体の従業員の増加が見込まれるため、組織力・現場力を強化し、業績拡大につなげることが不可欠と考えます。そのためには、組織の拡大に合わせたマネジメント層の拡充及び能力開発が必要であると考えており、マネジメント層となりうる人材の育成及び採用を行ってまいります。また、各事業の業務に適した研修を行っていく等、継続的に人材の育成に努めてまいります。
③ 管理部門の体制強化
当社は、安定的な収益の獲得と継続的な成長には事業規模に応じて十分な内部管理体制が整備されている必要があると考えております。そのため、今後の事業規模拡大に応じてコーポレート・ガバナンス体制、内部統制体制を継続的に強化していく方針であります。