有価証券届出書(新規公開時)

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2020/08/27 15:00
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98項目

事業等のリスク


当社グループの事業領域であるメモリ事業においては、高度で先進的な技術が事業遂行上必要である上に、グローバルな激しい競争があります。当社グループでは、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ④リスク管理体制の整備の状況」に記載の通り、代表取締役社長をリスク・コンプライアンス責任者とし、また、リスク・コンプライアンス委員会での審議等を通じて、経済活動を遂行する上で生じるリスクをビジネスリスク、財務・会計リスク、その他のリスクに大別し、内部監査部による内部監査の結果等を活用しながら詳細な分析を行い、リスクの特性に応じた管理を実施しております。かかるリスク・コンプライアンスマネジメントを通じて、当社の経営者が認識している当社グループの事業等のリスクのうち主要なものは以下のとおりですが、これらは当社グループの全てのリスクを網羅したものではなく、記載された事項以外の予見できないリスクも存在します。このようなリスクが現実化した場合には、当社グループの事業、経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において入手し得る情報に基づいて当社グループが判断したものであり、不確実性が内在しているため、実際の結果とは異なる可能性があります。
(1)事業環境及び経済情勢に係るリスク
①需要変動
当社グループの製品に対する需要は、経済情勢、個人消費、技術革新、規制環境のほか、当社グループの製品が使用される最終製品の消費者市場や顧客の動向などにより左右され、とりわけ現時点における主要な供給先であるスマートフォン市場や当社グループが今後も注力するデータセンター向けSSDの市場の動向の影響を強く受ける傾向にあります。しかしながら、かかる需要を事前に正確に予測することは困難であり、当社グループが、かかる需要の変化を予測できず、またはかかる変化に適時・適切に対応できない場合には当社グループの製品が顧客あるいは最終製品市場の消費者の要求水準に見合う製品を供給できず、顧客からの受注を失う、想定した販売規模や収益性を下回る、あるいは供給過剰による製品単価の下落等が生じるなど、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、スマートフォン、サーバー、ストレージ等、当社グループの製品の顧客における新製品の売れ行きや大容量化の進展遅れ(特にストレージ、PC等で期待されるHDDからSSDへの切替え進展の遅れ)等様々な要因により、需要が急減し又は当社グループの想定する時期若しくは規模での需要拡大が生じない可能性があります。また、それにより価格の下落、生産能力の過剰が発生し、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②フラッシュメモリ市場の循環的・短期的変動
フラッシュメモリ市場は、一般に、急速な技術革新と生産性の向上、顧客からの需要の変動と継続的な価格下落圧力、競合他社との市場シェア獲得競争等により、需給の循環的変動傾向が顕著であり、周期的に市況の改善と悪化が繰り返されています。また、2019年前半に経験したように、当社グループ及び競合他社による生産能力の拡大や在庫水準の上昇等により市場への供給量が短期間に増加する一方、顧客の需要が想定通りに伸びないことにより、需給バランスに不均衡が生じる場合、フラッシュメモリ製品の販売価格が急速かつ大幅に下落する可能性があります。需給のバランスが崩れ、顧客需要又はフラッシュメモリ製品の販売価格が継続的に低迷する場合、当社グループの売上の減少や、工場稼働率の低下に伴う売上総利益率の悪化により当社グループの経営成績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
フラッシュメモリ市場においては、次世代通信規格「5G」の導入や自動運転技術の開発加速など、デジタル社会の進展によりメモリ需要が継続的かつ安定的に拡大することが見込まれていますが、実際にメモリ需要が拡大し、またはかかるメモリ需要の拡大が当社グループの業績にそのまま貢献するとの保証はありません。また、フラッシュメモリ市場においては、中期的には販売単価は記憶容量ベースでは過去数年と同一のペースで下落することが予想され、また、今後経済情勢又はフラッシュメモリ業界の動向により当社グループの想定を上回る販売価格の下落又はフラッシュメモリ需要の減少が発生した場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
③競合他社との競争、買収や合弁会社設立等による業界再編
当社グループは海外を中心としたグローバルな大企業である競合他社との厳しい競争下にあり、また、フラッシュメモリは主要な競合他社が限定されていることから、主要な競合他社の技術や設備への投資、販売量、戦略等による影響を強く受ける傾向があります。競合他社の中には、フラッシュメモリに加えてDRAMやHDDを提供し又は当社グループの有しない技術や資金力を提供している企業もあり、当社グループよりも競争力において優位に立つ可能性があります。また、中国においては、政府の支援による半導体の国産化に向けた動きの加速も見受けられる一方、米中貿易摩擦の影響により今後中国における海外企業の参入や事業活動に制約が生じる可能性もあります。今後、当社グループが、市場シェアの維持、拡大を図るためには、主要製品の市場の動向や供給先のニーズを適時・適切に把握し、競合他社に対して、特に価格、性能の優位性を維持することが不可欠です。当社グループは、Double-Etching技術などの高い技術力を背景に競合他社に先駆けて新製品をリリースすることにより利益率の向上を図る取り組みを続けておりますが、技術革新、生産能力の拡充や生産性の改善、高集積化の実現が他社に遅れ、販売価格の前提となるコスト、性能、生産量が競合他社に劣る場合、利益率の圧迫や、供給先からの製品の受注を失い、または当社グループのシェアを維持することができないことにより、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、メモリ・半導体市場は、市況の変化も大きく、当社グループを含めグローバルに事業を展開する事業者が多数います。このような事業環境下で、有力な競合他社が、積極的な事業拡大や当社グループも関係する会社や事業の買収、事業提携等を行う可能性があり、それにより競合他社の市場競争力強化、生産力の拡充、生産性の向上等が図られることにより、当社グループの競争環境が大きく変化する可能性があります。
④マクロ経済の変動
当社グループはグローバルに事業を展開しており、当社グループの業績も、世界、主要国の経済動向の影響を受けます。そのため、米中貿易摩擦とこれに伴う中国企業への規制の強化、米国大統領選挙後に生じうる経済政策の変更、原油価格の低迷、中国その他の新興国の成長の減速、日本における消費税の増税、新型コロナウイルス感染症の拡大等による国内外における経済活動や消費の停滞とこれに伴う市場環境の悪化等様々な要因により、製品需要、販売価格に影響が生じた場合には、当社グループの売上の減少や、工場稼働率の低下に伴う売上総利益率の悪化に繋がる可能性があり、これにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤新型コロナウイルス感染症の影響
当社グループは、新型コロナウイルス感染症に対応して、国内・海外出張の制限などの移動抑制、在宅勤務の積極的な採用、対面会議の制限、生産拠点におけるオートメーション化の推進等各種の感染防止策を行っており、またサプライチェーンにおいても、状況監視、複数社購買の推進を行い、現時点において新型コロナウイルス感染症が当社グループの事業運営に重大な影響を及ぼすには至っておりませんが、社内、サプライチェーンや販売先拠点、若しくはその拠点のある国、地域での感染症の発症、それに伴う操業、移動に制限が発生した場合には、自社工場の稼働低下や停止、サプライチェーンからの供給の停滞、また受注の低下等により生産、販売に多大な悪影響を受ける可能性があります。また、新しい生活様式によるサーバー需要やゲーム需要が増えつつある一方、スマートフォン等の買い替え需要の低下によるコンシューマー向け製品の販売減など、メモリ製品の需要に重大な影響を受ける可能性があります。これにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥規制環境の変動
当社グループは、全世界において事業を展開していますが、国内外の各地域の政治、社会情勢や政策の変化、投資規制、収益の本国への送金規制、輸出入規制、外国為替規制、税金、贈収賄規制、競争法関連規制等を含む各種規制の動向が各地の需要、当社グループの事業体制に悪影響を与える可能性があり、これにより当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。特に近時の米中貿易摩擦や韓国向け輸出管理強化に伴う関税、税金その他の輸出入関連規制や運用見直しにより、中国又は韓国に所在する当社グループの主要顧客への販売が制限される又はかかる規制により当該顧客の生産量が減少する場合には、かかる主要顧客からの当社グループの売上収益が大幅に減少する可能性があり、また、当社グループが規制の対象となり米国に所在する当社グループの主要顧客との取引が制約される可能性や、米国に所在する当社グループの主要顧客が中国市場へのアクセスを失い生産量が減少し、当該顧客に対する当社グループの売上収益が減少する可能性があるなど当社グループの事業展開及び経営成績に重大な影響を及ぼすおそれがあります。なお、米国商務省が、2020年5月に発表した対中国制限措置に追加して、2020年8月17日(現地時間)に発表し、即日施行されたHuawei Technologies, Co., Ltd.(以下「Huawei」という。)に対する禁輸措置を強化する法令により、米国輸出管理規則(EAR)で特定された技術を使用している米国原産の技術又はソフトウェアを使用して製造された半導体及びその関連技術等、並びに米国原産の技術又はソフトウェアが用いられた製造装置などを使用して製造された半導体及びその関連技術等について、エンティティリストに掲載されているHuawei及びその関連会社に直接又は間接的に販売することは、禁止対象とされました。当社グループの製品がかかる規制の対象となるか、対象となる場合の具体的な範囲等については、現在当社において精査中ですが、当社グループの製品のHuawei及びその関連会社への販売取引の全部又は大部分が規制対象に該当する場合、当該取引(2021年3月期第1四半期におけるHuawei及びその関連会社への売上収益は当社グループの連結売上収益全体の相当程度を占めます。)が行われなくなるなど、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(2)経営方針・経営判断に係るリスク
①経営戦略・中長期の事業目標に関するリスク
当社グループは、当社グループの掲げるミッション及びビジョンを実現するため、当社グループの経営環境を踏まえた経営方針・経営戦略を実施していくとともに、将来に亘って「メモリ技術」で新しい時代を切り拓き、世界を変えていくことを目指すべく、中長期の事業目標を策定しております。しかしながら、当該目標で設定された数値は、将来の市場動向(想定されるフラッシュメモリ市場の需要成長に見合う出荷量成長率(記憶容量ベース)を維持すること、2020年3月期以降のフラッシュメモリ製品の平均売買価格の推移が中長期的に見て2015年3月期から2019年3月期において見られた傾向と同程度の下落傾向となること、及び当社グループが過去と同程度のギガバイト当たりのコストの削減を実現すること、並びに新型コロナウイルスの世界的蔓延のような予見困難な異常事象が発生しないことを含みます。)に関する一定の前提に基づき設定されたものであり、これらの前提が実際の経営環境と異なることとなった場合や、本「2 事業等のリスク」記載の他のリスクが顕在化した場合には、当該目標数値を達成することができない可能性があるとともに、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
②フラッシュメモリ市場の予測と設備投資
当社グループは、将来の需要予測に基づき、継続的に設備投資を行っています。しかしながら、フラッシュメモリ市場における需要の正確な予測は困難であり、また、製造設備、インフラの発注納期が長いため、生産開始時点で、需要予測に対して市場が大きく変動した場合、生産設備過剰若しくは不足により、利益率の悪化、過剰在庫の発生、販売量又は販売価格の下落、固定資産の減損、あるいは販売機会の喪失やシェアダウンに繋がる可能性があり、これにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループはかかる多額の設備投資に加え、研究開発投資も継続的に行っており、固定費の割合が高い状況にあります。当社は、市場の変動に応じて設備投資計画を変更することは可能ですが、固定費の削減には限界があります。そのため、比較的軽微な売上収益の低下であっても営業利益やキャッシュ・フローに与える影響は相対的に大きくなり、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③投資の計画と効果の乖離
当社グループが行う四日市工場、北上工場の新棟立ち上げ等の設備投資、次世代フラッシュメモリ等技術開発投資等については、設備納期、量産立ち上げ、歩留まりの改善、開発の進捗、必要な人材や設備・資材の確保等にかかる遅延、また当初予定された歩留まり、製造工期、製品特性が実現されないこと等により、投資開始時点の計画と生産開始時期に乖離が生じる可能性(なお、2020年3月期においてはメモリ市場における急激な需給の悪化を受け、予定していた設備投資を一部延期いたしました。そのため、2021年3月期以降においては一時的に設備投資が増加する可能性がございます。)や、当初想定した生産能力、歩留まり、生産効率が得られず、又はこれらが得られたとしてもこれに見合う需要が得られない等により、想定された投資効果が生じない可能性があります。資金回収時期の遅延、新製品の開発・販売において競合他社に劣後することによる競争優位性の低下やシェアダウンにより、当社グループが想定した利益を確保できず、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④戦略的提携、合弁、買収、出資等の成否
メモリを始めとする半導体業界では、提携、合弁、買収、出資等による再編が行われており、当社グループにおいても技術の獲得や、事業領域の拡大、競争力の強化や収益力向上を行うため、提携、合弁、買収、出資等を実施することがあり、例えば、Western Digitalグループとの間で製造合弁契約を締結し、合弁事業を行っています。また、2020年7月には、台湾・LITE-ONテクノロジー社の子会社であるSolid State Storage Technology Corporationとその関係会社の全株式を取得しました。しかしながら、提携、合弁、買収、出資等を行った対象事業の業績が悪化した場合には、当社の連結利益の悪化、保有株式やのれんの減損が起きる可能性があり、これにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また提携、買収、出資等が当社グループ、若しくはその一部事業についてなされたものの、想定どおりに統合が進まず、また、当社グループが期待するシナジー、スケールメリット等の効果を得られなかった場合には、経営方針の大幅な変更、事業規模の縮小、スケールメリットの喪失等による収益悪化が起きる可能性があり、これにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、提携、合弁、買収、出資等の形態や内容等によっては、相手方である第三者の行為を当社グループが有効にコントロールすることができず、また、特定の第三者との提携、合弁等を実施した結果、他の者との提携、協業又は取引等が制約される等、当社グループの経営上の選択肢又は事業運営が制約される可能性があります。
⑤Western Digitalグループとの合弁事業
当社グループは、Western Digitalグループとの間で製造合弁契約を締結し、製造合弁会社3社を設立しています。かかる合弁事業を通じることで、当社が単独で投資を行う場合に比して大規模な投資が可能となり、設備投資額やコスト面でのスケールメリットを享受することが可能となります。合弁契約の概要は、製造合弁会社3社が当社グループ及びWestern Digitalグループからの資金借り入れ又は製造合弁会社3社によるリース契約により生産設備を調達し、当社グループの四日市工場及び北上工場に設置、当社グループは製造合弁会社3社から無償貸与された生産設備にて生産を行い製造合弁会社3社に加工済みのウエハーを販売し、更に製造合弁会社3社から当社グループ及びWestern Digitalグループに50%ずつの割合で販売するというものです。当社グループは、合弁契約に従って、Western Digitalグループによる契約違反など合弁契約上の解約事由が発生した場合、製造合弁会社3社の保有する生産設備の残存簿価を反映したWestern Digitalグループの持分を買い取る可能性があり、この場合多額の資金が必要となることにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当該製造合弁会社3社が保有する生産設備のリース契約に関して、現在キオクシア株式会社とWestern Digital Corporationが個別に50%の債務保証をしていますが、Western Digital Corporationの業績又は財政状況の悪化により、同社が自身の債務保証を履行できない場合、キオクシア株式会社がWestern Digital Corporation分の保証債務を承継し又は当該保証債務不履行により合弁契約が解約され、製造合弁会社3社の保有する生産設備の残存簿価を反映したWestern Digitalグループの持分を買い取る可能性があります。これにより当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。更に、合弁契約上、合弁会社の運営に関しては、Western Digitalグループと対等な権利義務を有しており、かつ、Western Digitalグループは当社グループと競合関係にあるため、両社の経営及び戦略的方向性に乖離が生じた場合には、意思決定に想定以上の時間を要するなど、合弁会社の運営に支障が生じる可能性があり、これにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、キオクシア株式会社がWestern Digitalグループの持分を買い取った場合、当該製造合弁会社3社が当社の連結子会社として扱われる可能性があり、その場合、製造合弁会社3社の業績が当社の連結財務諸表に反映されることにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥技術革新
フラッシュメモリは高度な技術を要し、複雑な生産工程を経て生産されておりますが、世代交代や大容量化、特性改善等の技術革新が非常に早い製品です。また将来的にはフラッシュメモリに代わる新技術が生まれる可能性もあります。このため、最新の技術を利用した製品を迅速に提供するためには、長期的かつ継続的な多額の研究開発投資が必要となります。当社は、BiCS FLASH™の大容量化・積層化、新世代の3次元フラッシュメモリや4ビット/セル(QLC)への移行、その他の新しい製造開発への取り組みに向けた努力を日々行っておりますが、かかる取り組みが奏功する保証はなく、世代交代や、技術革新、コスト効率の向上等において競合他社や新規参入者に遅れを取り、製品特性や、ギガバイト当たりのコストにおける競争力が低下した場合や、スマートフォン等の新製品について顧客が要求する技術性能を実現できない場合には、当社グループの技術上の優位性ひいては競争力の低下、供給先の喪失やシェアダウン、または投資に見合う収益を得られないことにより、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3)当社グループのオペレーションに伴うリスク
①特定の販売先への依存
当社グループはフラッシュメモリ専業メーカーであり、その売上高の多くはスマートフォン等のデジタル・デバイスやSSDを必要とする大規模なIT企業のような限定された顧客や業界に依存しています。これらの主要顧客や業界の販売動向、経営環境や当社グループへの需要量、複数社購買における主要購買先の見直し等の主要顧客の取引に係る方針や取引条件等が変化したこと等により、これらの主要顧客が当社グループの製品の採用を中止し、又はその発注数量が減少し若しくはその他の取引条件が当社グループに不利に変更された場合には、売上規模の減少、過剰在庫、顧客への転売に伴う価格の見直し等、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、2020年3月期において、Appleグループへの販売高が、当社の連結売上高の10%以上を占めており、また2019年3月期においてはDellグループへの販売高も10%以上占めており、これらの販売先との関係性は米中貿易摩擦をはじめとする国際情勢に起因するものを含め、特に当社グループの事業、経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。
②資材等調達
当社グループの事業活動には、部品、材料、製造設備等が適時、適切に納入されることが必要ですが、部品、材料、製造設備等の一部については、その特殊性から調達先が限定されているものや調達先の切替えが困難なものがあります。調達先による部品、材料等の供給不足、供給遅延、又は、事故、自然災害や新型コロナウイルス感染症をはじめとする感染症の流行による供給の中断等が生じた場合には、必要な部品、材料等が不足することにより当社グループの製品の製造に支障又は遅延が生じる可能性又は他の調達先から購入するための費用が増加する可能性があり、これにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。かかるリスクを可能な限り低減するため、当社グループではシリコンウエハーといった当社グループの製品製造に不可欠な一部資材等について、調達先との間で長期購買契約を締結していますが、契約条件とは異なって資材等の価格が推移するなどした場合には、必ずしも長期購買契約が当社グループにとって優位な作用をもたらさない、あるいは不利に作用する可能性があります。
また、当社グループが競争力のある製品を市場に供給するためには、競争力のある価格で部品、材料を購入するとともに、調達先を含めたサプライチェーンの最適化が必要です。例えば、当社グループの生産活動をはじめとする事業活動には、電力が安定して供給されることが必要ですが、停電の発生や電力の供給不足により当社グループの工場をはじめとする施設の稼働が停止又は制限された場合や、国内の原子力発電所の稼働停止に伴う電力供給不足と為替変動を受けた燃料費上昇により、電気料金の更なる値上げ等があった場合には、当社グループの競争力や生産・販売活動に悪影響を与えることがあり、これにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、調達した部品、材料等に欠陥が存在し、仕様が満たされていない場合は、当該部品、材料等を使用した当社グループの製品の信頼性及び評価にも悪影響を及ぼす可能性があり、損害賠償等の請求を受ける可能性もあります。これにより当社グループの製品やブランドに対する評価や社会的信用が低下すること又は賠償金の支払い等が生じること等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、2020年3月期においては、キオクシア株式会社四日市工場での停電による製造停止により345億円の損失(保険収入11億円を考慮すると停電影響としては△334億円)が発生した他、中国等における新型コロナウイルスの蔓延による生産・物流機能の停止に伴う部品不足による生産遅延も発生しており、今後も調達先を含むサプライチェーンにおいて発生する様々な事象等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③外部への生産委託
当社グループでは製品製造に関する工程の一部、特に当社グループのメモリ製品及びSSD製品の組立工程については、その殆どを外部協力会社へ生産委託しております。外部協力会社へは当社グループの仕様に基づく生産を要請するとともに、品質管理について様々な工夫を講じております。
しかしながら、第三者である外部委託先の生産工程や品質管理を当社グループが完全に把握し、コントロールすることは不可能であり、外部協力会社での当社グループからの生産委託工程に不測の事態が生じた場合や何らかの事態により生産に遅滞が生じた場合には当社グループの製品の顧客への期限内での納品に支障をきたす可能性があります。例えば、2020年には、新型コロナウイルスの影響により、当社グループのSSD製品の組立工程を委託しているフィリピンの工場の生産ラインの一部が一時的に閉鎖されるという事態が生じました。また、既存の外部委託先が、何らかの事態により当社グループからの生産委託を履行できなくなった場合には、適時に他の適切な外部委託先を確保できる保証はありません。また、生産委託工程に起因する製品の欠陥等が発生した場合には、当社グループと当社グループの顧客との間の関係性や当社グループ又はその製品に対するレピュテーションが悪化し、又は、顧客から損害賠償を請求されるなど、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、特定の外部協力会社への依存が進むと、委託先の切替えが困難になり、価格上昇等により当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④経営者への依存
当社は、監査役、取締役の統制のもとに執行役員主体による経営活動を行っておりますが、必ずしも特定の経営者への権限や経営判断の集中が起きる可能性が無いわけではありません。その場合には当該経営者の判断が事業に大きな影響を及ぼし、コーポレート・ガバナンスが適切に機能しないおそれがあること、また当該経営者の不在や退任等により、当社グループの事業活動が停滞し、又は後継者への円滑な承継が進まないことにより、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤人的資源の確保
当社グループの事業の成否は、開発、生産、販売、経営管理等のすべてのプロセス、分野における優秀な人材の確保に大きく依存しています。特に事業のグローバル展開及び先端的な開発・研究の推進には、優秀な人材の確保が必要不可欠です。しかし、各プロセス、分野における有能な人材は限られており、特に技術職の人材に対する需要が高まっているため、人材確保における競争が激しくなっています。このため、当社グループが、必要な人材を必要なタイミングで獲得できず、在籍している従業員の流出を防止できない場合、又は、新たな人材の獲得や維持のために給与やリテンションプランに従来以上のコストが必要となる可能性があり、これにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また新型コロナウイルスの影響によるリモートワーク等の新たな勤務形態へ対応した労働環境や制度の不備、整備遅延により、業務効率性の維持が困難になることや、整備コスト増により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥大規模災害等による生産の遅延、障害等
当社グループのフラッシュメモリの生産拠点は日本国内に集中しています。当社グループの生産拠点やその他当社グループのサプライチェーンにおいて、地震、津波、台風、洪水、火災、噴火その他の大規模災害、ストライキ、テロ、新型コロナウイルス感染症を含む重大な感染症の流行、停電、事故、システムトラブル、インフラの不全等が発生した場合、自社工場の稼働低下や停止、サプライチェーンからの供給の停滞、また需要の低下等により生産、販売に多大な悪影響を受ける可能性があり、これにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループの生産拠点である四日市工場については、気象庁の指定する地震や洪水の危険性が高い地域に位置しており、また、北上工場については、東日本大震災で大きな被害を受けた地域に位置しています。当社グループの生産、販売拠点において地震、洪水、台風等の大規模災害や停電等が発生した場合には、生産設備の破損や操業の停止、原材料部品の調達停止、物流販売機能の麻痺等により、生産販売活動が阻害され、資産価値や生産販売能力に重大な悪影響を与える可能性があり、これにより当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
災害のみならず、当社グループ製造拠点での、製造装置の故障、生産システムの不具合、火災等により生産販売活動が阻害され、生産販売能力に重大な悪影響を与える可能性があり、これにより当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ITシステムの障害等
当社グループは、生産、販売、管理等多岐の業務にITシステムを使用しています。これらのシステムの不具合や外部からのコンピュータウイルスによる攻撃、不正アクセス等により、当社グループのITシステムに重大な障害が発生した場合には、障害対策に多額の費用と労力を要するほか、復旧期間における工場の生産、受発注、出荷の停止等により、当社グループの事業活動に重大な悪影響を与える可能性があり、これにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑧個人情報やその他の機密情報の漏えい
当社グループは、当社グループ及び取引先・調達先等の技術、研究開発、製造、販売及び営業活動等により入手した個人情報やその他機密情報を様々な形態で保持及び管理しています。当社グループにおいてはこれら情報を保護するために細心の注意を払い適切な管理を行っていますが、かかる管理が常に有効である保証はありません。予期せぬ事態により当社グループが保持又は管理する情報が漏えいし、第三者がこれを不正に取得又は使用するような事態が生じた場合、営業秘密の流出による競争力の低下や顧客の信用や社会的信用の低下を招くほか、個人情報の流出やシステム改修等の対応に係るコストの発生や当社グループに対して損害賠償を求める訴訟が提起されるなどにより、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4)財務リスク
①多額の借入金及び社債型優先株式
当社グループは、金融機関を貸付人とする融資契約(シンジケートローン)を締結し、多額の借入を行っております。短期借入金と長期借入金の合計は2019年3月期において721,751百万円、2020年3月期において1,125,829百万円となっており、かかる有利子負債に係る金利が上昇した場合には、金利負担が増加する可能性があります。また、当社グループは、2019年3月期においてA種優先株式、B種優先株式、C種優先株式、D種優先株式、E種優先株式、F種優先株式及びG種優先株式の発行による資金調達を実施し、2020年3月期において甲種優先株式及び乙種優先株式(以下これらの優先株式を総称して「社債型優先株式」という。)の発行による資金調達を実施しており、それら社債型優先株式は期限満了をもって償還を行う設計としているため、当社が連結決算において採用する国際会計基準では負債として扱われます。社債型優先株式の残高は2019年3月期において546,044百万円、2020年3月期において308,304百万円となっております。連結総資産に対する借入金残高及び社債型優先株式残高の合計額は各々45.0%、52.8%を占めております。当社グループは、かかる融資契約及び社債型優先株式の引受契約/投資契約に基づき財務制限条項等一定の条件の遵守が課されており、融資契約については、当社グループ資産の担保提供を課されておりますが、当社グループが融資契約や引受契約/投資契約における財務制限条項等の条件への抵触等により期限前弁済事由や償還(金銭を対価とする取得)事由に該当する状況となった場合には、貸付人又は引受人からの請求により直ちに返済ないし償還のための資金確保が必要となりますが、適時に、また当社にとって望ましい条件で、借換え等による資金確保ができる保証はなく、また、融資契約に基づき返済ができない場合には、担保権を実行される可能性があります。なお、財務制限条項等の内容については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 15.借入金及びその他の金融負債」をご参照ください。当社グループは競争力の強化や収益力向上を通じた財務体質の強化に努めますが、これらの事由により当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、社債型優先株式の株主は、剰余金の配当及び残余財産の分配に際し、普通株主に先立って、あらかじめ定められた方法で算出される一定額の優先配当金又は残余財産分配金の支払いを受けることができるとされているため、当社の普通株主は、優先株主に対する上記の優先配当金又は残余財産分配金の支払いがなされない場合には、剰余金の配当又は残余財産の分配を受けることができません(なお、社債型優先株式に係る剰余金の配当及び残余財産の分配に係る規定の詳細については、「第4 提出会社の状況 1 株式等の状況」をご参照ください。)。
②のれん及びその他の無形資産の減損
2018年6月に旧東芝メモリ株式会社の全株式を取得した際に発生したのれん及びその他の無形資産は、2020年3月期においてそれぞれ384,646百万円、145,770百万円であり、合わせて連結資産合計の19.5%を占めております。当社が連結決算において採用する国際会計基準では、当該のれん及び一部の耐用年数を確定できない無形資産については、償却を行わず、事業年度毎又は減損の兆候が確認される場合において、減損テストを実施し、当社グループの事業の収益やキャッシュ・フロー創出力が低下したと認められる場合に減損損失を計上することが必要となり、これにより当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社が連結決算において採用する国際会計基準では、日本において一般に公正妥当と認められる企業会計と異なり、前述のとおり、のれん及び耐用年数の確定ができない無形資産の償却を行いません。そのため当該のれん及びその他の無形資産について減損損失の計上が必要となる場合、日本において一般に公正妥当と認められる企業会計での減損損失の計上に比して計上額が多額となる可能性があります。
③繰延税金資産
当社グループは、現行の会計基準に基づき、税務上の繰越欠損金等及び将来減算一時差異に対して将来の課税所得を合理的に見積り回収可能性の検討をした上で繰延税金資産(2020年3月期末において純額は256,902百万円)を計上しております。当社及び当社グループ各社の業績や経営環境の著しい変化により、繰延税金資産の全部または一部に回収可能性がないと判断した場合や、税率変更を含む税制改正、会計基準の改正等が行われた場合、当該繰延税金資産は減額され、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5)金融市場リスク
①為替変動
当社グループの事業活動は、世界各地域において様々な通貨により行われているため、当社グループの事業、経営成績及び財政状態は、為替相場の変動による影響を受けます。特に、当社グループの売上収益は基本的に外貨建てとなり、他方で前工程の製造拠点は日本国内にあるため、営業費用の相当部分は円建てとなることから、円高が進行した場合には当社グループの事業、経営成績及び財政状態への悪影響を及ぼします。
当社グループは、売上外貨と購入外貨のバランス化を図ることや定期的にヘッジ取引を行うことで、為替相場の変動の影響を極小化する対応に努めていますが、営業損益については為替変動の影響を受ける可能性があります。また、急激な為替変動により、外貨建ての債権債務の計上時期と決済時期の為替レートの差異から生じる為替換算差損が発生する可能性があります。
また、当社グループの保有する外貨建ての資産、負債等を連結財務諸表の表示通貨である円に換算することによって発生する外貨換算調整額は、資本の部の「その他の包括損益累計額」に含めて報告されます。このため、当社グループの株主資本は為替相場の変動により悪影響を受ける可能性があり、これにより当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②資金調達環境の変化
当社グループは、金融機関からの借入れや社債型優先株式の発行等による資金調達を行っており、上場後は資本市場での資本性資金の調達も選択肢となりますが、資金調達の可否及び条件は、金融・証券市場の環境、金利等の動向、資金需給の状況、貸し手又は出資者側の融資・投資方針の変更等の影響を強く受けるため、これらの環境の変化が、当社グループの資金調達に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、金融機関からの借入れについては、財政状態の悪化による当社の信用力の低下、金融市場の混乱、金融機関に対する自己資本規制強化等に伴い、金融機関が貸出しを圧縮するなど当社グループに対する融資方針を変更した場合には、以後新たに同様の条件により借換え又は新規の借入れを行えるとの保証はなく、当社グループが適時に必要とする金額の借入れを行うことができず、または資金調達コストが増加する場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
フラッシュメモリは、量産効果が大きく、新製品の開発競争も激しいため、価格、品質等の競争力を維持、強化するためには、多額の設備投資と研究開発投資が必要ですが、当社グループが前述の理由により適時に必要とする資金を調達できない場合には、必要な時期に必要な設備投資や研究開発を実施できない可能性があり、これにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6)法的リスク
①重要な訴訟事件等の発生に係るもの
当社グループは全世界において事業活動を展開しており、訴訟やその他の法的手続に関与し、当局による調査を受ける可能性があります。地域ごとに裁判制度の違いがあり、またこれらの手続は本来見通しがつきにくいものであり、当社グループの想定を超えた金額の支払いや販売差し止め等業務や取引の制限や停止が命じられる可能性も皆無ではありません。このため、訴訟やその他の法的手続、当局による調査の結果、当社グループに不利益な決定がなされた場合、その決定の内容によっては当社グループの事業、経営成績、財政状態、社会的評価・信用に影響を及ぼす可能性があります。また、様々な事情により、訴額の大きな訴訟等が提起された場合には、仮に損害賠償等の金銭の支払いが命じられる可能性が低いとしても、社会的な注目を集める結果、当社グループの社会的評価が低下する可能性があり、これにより当社グループの事業展開、経営成績、評判、及び信用に影響を及ぼす可能性があります。
②知的財産権保護
当社グループは、当社グループの技術やノウハウを保護するため、知的財産権の確保に努めていますが、地域によっては知的財産権に対する十分な保護が得られない可能性があり、これらの地域での第三者による当社の知的財産権を侵害する製品の販売等により当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、当社グループの製品の製造や研究開発の一部を第三者に委託し、また、当社グループの知的財産権を第三者に使用させておりますが、かかる第三者により当社グループの技術やノウハウを不適切に利用される可能性も皆無ではありません。
当社グループは、第三者からの使用許諾を受けて第三者の知的財産権を使用していることがありますが、今後、必要な使用許諾を第三者から受け入れられない可能性や、不利な条件での使用許諾しか受けられなくなる可能性があり、これらの事態が生じた場合には、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、メモリ業界においては、主要なプレイヤーそれぞれが多数の重要な特許を保有しており、それらを相互にクロスライセンスすることが一般的に行われています。他社が当社グループに比して有効かつ多数の特許を保有するに至った場合やクロスライセンスに関する経営方針を変更する場合には、当社グループの製品の製造や販売に制約が生じ、またはライセンス料の支払いが高額となる可能性があります。
また、当社グループが知的財産権に関する訴訟等を提起される、又は自らの知的財産権を保全するために訴訟等を提起する可能性があります。このような訴訟等には、時間、費用その他の経営資源が費やされ、また、訴訟等の結果によっては、当社グループが重要な技術を利用できなくなる可能性や損害賠償責任を負う可能性があり、これにより当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。なお、2017年9月28日付の株式会社東芝との株式譲渡契約上の補償条項に基づき、当社グループは、一定の特許ライセンス契約等に起因した損失について、一定額を上限に、株式会社東芝に対して補償請求をすることができ、過去複数回にわたり当該補償請求を行うことにより当社が損害賠償金として相手方に支払った金額と同額の支払いを株式会社東芝から受けております。例えば、当社が2019年3月期に台湾に所在する事業会社から米国及び台湾において特許侵害に基づく損害賠償等を請求され和解に至った事案では、株式会社東芝から合計約82百万米ドルの補償をうけたため、当該事業会社に対する支払額は当社の連結財務諸表において認識されておりません。しかしながら、当該補償条項に基づく請求が可能な期間は、2021年6月1日をもって終了する予定であるため、当社グループは、特許ライセンス契約等に起因した損失が生じる場合には、それ以降株式会社東芝に補償請求を行うことはできず、自ら負担することとなります。
③品質問題
当社グループは、製品の特性に応じて最適な品質を確保できるよう、全力を挙げて品質管理に取り組んでおりますが、今後当社グループや、当社グループの委託先、調達先に起因するものを含む品質問題が発生する可能性は皆無ではありません。また、重大な品質問題が発生し、顧客への納入の大幅な遅延や再作業が必要となった場合、多額の費用負担や損害賠償責任が生じる可能性があり、またSSD、USBメモリ、SDメモリカード等については一般ユーザーに対する製造物責任も生じる可能性があり、その場合の対応費用や損害賠償の額は甚大となり、また当社グループ又は当社グループの製品に対する社会的信頼が著しく低下する可能性があります。これにより当社グループの事業展開、経営成績、社会的評価、及び社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
④環境関係
当社グループは、大気汚染、水質汚濁、有害物質、廃棄物処理、製品リサイクル、地球温暖化防止、エネルギー等に関し、世界各国において様々な環境関連法令の適用を受けています。かかる環境関連法令の下、当社グループは、過失の有無にかかわらず、製造等の拠点における土地の浄化責任を負うことがあるなど、過去分を含む事業活動に関し、環境に関する法的、社会的責任を負う可能性があります。また将来環境に関する規制や社会的な要求がより厳しくなり、有害物質の除去や温室効果ガス排出削減等の責任が更に追加される可能性があり、これにより当社グループの事業活動に制約が生じ、又はかかる規制に対応するためのコストが増加する可能性があるほか、かかる環境関連の規制又は社会的要請に適切に対応しないことにより当社グループに対する社会的評価・信用が低下するなど、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤コンプライアンス
当社グループは、事業を展開する各国の法令、規則の適用を受けます。かかる法令等のコンプライアンス体制の整備、業務の適正化の為に必要な内部統制システムの導入を図っておりますが、内部統制システムに内在する限界、法規制、法解釈の変更等により法規制等の遵守が困難になる可能性があります。そのためコンプライアンス違反が発生し、業務停止等の行政処分を受けた場合には、業務への障害、罰則や課徴金の適用、法令違反に係る損害賠償請求、当社グループに対する社会的評価・信用の低下等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(7)株主等の関係に関するリスク
①ベインキャピタルグループとの関係
当社はグローバルなプライベート・エクイティファームであるベインキャピタルグループが投資助言を行うファンドから、BCPE Pangea Cayman, L.P.、BCPE Pangea Cayman 1A, L.P.、BCPE Pangea Cayman 1B, L.P.及びBCPE Pangea Cayman2, Ltd.を通じて出資を受けており、これらのファンドは本書提出日現在では当社発行済普通株式の56.2%を間接的に保有する株主となっております。また、当社の取締役である杉本勇次、デイビッド・グロスロー、当社の監査役である末包昌司の3名がベインキャピタルグループから派遣されております。
当社は、Bain Capital Private Equity, L.P.とのマネジメント契約に基づき、同社より戦略立案、資金調達、オペレーション等に関する経営指導を受けており契約に基づくフィーを年間10億円(諸経費を除く)支払っております。なお、当社の新規株式公開等の場合は、35億円をそのクロージング時に支払う義務を負っていますが、それ以降は当該契約に基づく対価の支払いは発生しません。
ベインキャピタルグループが投資助言を行うファンドは、当社の上場時において所有する当社株式の一部を売却する予定であり、またBain Capital Private Equity, L.P.とのマネジメント契約は当社の上場時に終了いたしますが、上場後においても相当数の当社株式を保有する予定であるため、当社について他の一般株主と異なる利害関係を有しており、一般株主が期待する議決権の行使その他の行為を行わない可能性があります。
②東芝グループとの関係
a 株式会社東芝との資本関係
株式会社東芝は、本書提出日現在、当社の発行済普通株式の40.64%を保有しております。株式会社東芝によれば、2017年9月29日及び2019年11月11日付で同社の保有する当社普通株式に係る議決権の行使に当たり、株式会社INCJに対し、当該普通株式に係る議決権の一部について指図権を付与する旨合意したとのことですが、当社普通株式の上場日をもって当該指図権を消滅させる旨株式会社INCJと合意していると伺っています。株式会社東芝は、当社の上場時において所有する当社株式の一部を売却する予定であり、上場後においても相当数の当社株式を保有する予定であること、また知的財産のクロスライセンスなど当社の普通株主一般と異なる利害関係を有していることから、株式会社東芝が保有する普通株式に係る議決権については、一般株主の利害と異なる議決権の行使が行われる可能性があります。
b 東芝グループとの人的関係
当社グループは、東芝グループから出向者を受け入れております。同社グループからの受入出向者数は、2020年7月31日現在で115名であり、将来的には転籍若しくは出向解除による出向元への帰任を基本方針としておりますが、当社が必要又は有益と考える人材が当社グループへの転籍を拒絶する場合などには当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。
c 東芝グループとの取引関係・契約関係
当社は、後記「4 経営上の重要な契約等」に記載のとおり、株式会社東芝との間で、メモリ事業に必要な特許権及び技術情報に係るクロスライセンス契約を締結しております。また、東芝グループからの事業売却に伴い、2018年5月28日付で当社グループによる東芝グループのシステムの利用許諾等について規定する業務委託及びシステムの利用許諾に関する契約書(その後の修正覚書を含みます。)(以下「TSA」という。)を締結しておりますが、当該契約は2021年6月1日に終了する予定です。今後、当該クロスライセンス契約が終了した場合やこれらの契約の条件が当社に不利益に変更される場合、また、TSAの終了に際して、東芝グループのシステムから当社グループ独自のシステムへの移行等が適時・適切に完了しない場合には、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
更に当社と東芝グループとの取引は、対等な立場で行われているものではありますが、当社と特定の関係を有する者との取引であるため、東芝グループとの取引の条件その他に何らかの影響が生じた場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③SK hynix Inc.との関係
当社グループの競合他社であるSK hynix Inc.は、当社の普通株式77,400,000株(本書提出日現在の発行済普通株式数の14.96%に相当します。)を保有するBCPE Pangea Cayman2, Ltd.に対して、同エンティティのほぼ全ての議決権に係る株式に転換可能な社債を保有しております。他方、SK hynix Inc.は、当社との間で、当社の合意がない限り、2028年まで同社が当社の総議決権数の15%超を保有することはできない旨合意しております。SK hynix Inc.は、すでに各国の独占禁止法並びに外国為替及び外国貿易法に基づく必要な手続を開始している可能性があり、その完了をもって、いつでも当該社債を同エンティティの株式に転換することが可能であり、そのような転換を早期に行うことも合理的に予測されます。SK hynix Inc.は、かかる転換により、当該エンティティを通じて当社の株主総会における議決権行使が可能となりますが、SK hynix Inc.は当社グループと競合関係にあるため、その議決権行使は当社の一般株主の利害とは異なる可能性があります。
④関連当事者取引
当社グループは、当社のグループ会社間の取引のほか、株式会社東芝及びその子会社との間で取引があります。このような関連当事者取引等は対等な立場で行われているものではありますが、当社グループと特定の関係を有する者との取引であるため、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤当社株主による当社株式の処分に係るもの
べインキャピタルグループが投資助言を行うファンドが保有するエンティティ(BCPE Pangea Cayman, L.P.、BCPE Pangea Cayman 1A, L.P.、BCPE Pangea Cayman 1B, L.P.及びBCPE Pangea Cayman2, Ltd.)、株式会社東芝及びHOYA株式会社は、本書提出日現在、当社の総株主の議決権数のそれぞれ56.23%、40.64%及び3.13%に相当する当社普通株式をそれぞれ保有しております。当社普通株式の上場後において、これらの株主による当社普通株式の売却が行われ、又はかかる売却により当社普通株式の需給状況が悪化するとの観測が市場で広まった場合には、当社普通株式の市場での取引や市場価格に影響を及ぼす可能性があります。
また、今後ストックオプションや譲渡制限付き株式を多数発行する場合には、これらの行使や売却により、株式価値に、希薄化等の影響を及ぼす可能性があります。