有価証券届出書(新規公開時)

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2020/08/27 15:00
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98項目

研究開発活動

2020年3月期連結会計年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)
(1)研究開発活動の体制と方針
当社グループでは、キオクシア株式会社のメモリ事業部、SSD事業部にて製品の開発を行い、将来市場を見据えた研究開発は同社メモリ技術研究所が行います。研究開発戦略は同社メモリ開発戦略部とメモリ技術研究所がそれぞれ協力しながら取り組んでいます。
拡大するストレージ市場におけるお客様の新たな要求に応えることで、安定した事業の成長を目指し、大容量・低コスト、高性能化による市場競争力のあるメモリ及びSSD製品の開発を行います。特にビジネスの中核となる3次元フラッシュメモリチップで世界トップグループの地位を確立するために、新規デバイス、プロセス及びコントローラの技術開発を加速してまいります。そのための将来のビジネスに必要な研究開発投資を積極的に行います。
2020年3月期における当社グループの研究開発費は119,752百万円であり、研究開発の主要な成果は次のとおりです。
また、当社グループはメモリ事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載は省略しています。
(2)研究開発の主要な成果
主要製品・サービス発表時期概要
大容量データへの高速アクセスに対応した2TB(注1)クライアントSSDプレミアムモデルの発売2019年5月大容量データに対し高速アクセスが求められる、映像・コンピューターグラフィックコンテンツの作成やAI・機械学習等のアプリケーションを扱うワークステーションやハイエンドPCに適した2,048GB(注2)のNVMe™(注3)クライアントSSDのプレミアムモデル「XG6-Pシリーズ」を開発
2019年6月から一部のOEM顧客向けに評価用のサンプルを出荷
アプリケーション起因のライトアンプリフィケーションによるデータ更新回数を低減するTRocksDBプラットフォームを開発2019年8月オープンソースのRocksDB(注4)をSSDの特性に合わせて最適化し、アプリケーション起因のライトアンプリフィケーション(WA)(注5)によるデータ更新回数を低減。SSDの利用範囲を広げ、寿命の大幅な延長を可能とした製品
業界最速クラス(注6)のPCIe®(注7) 4.0対応エンタープライズSSDを開発2019年8月PCIe® 4.0に対応し、業界最速クラスの6.4GB/sを超えるシーケンシャルリード性能を実現するエンタープライズ向けNVMe™ SSD「CM6シリーズ」の試作品を開発
新しいストレージクラスメモリ(SCM)であるXL-FLASH™を開発2019年8月XL-FLASH™は96層積層プロセスを用いた3次元フラッシュメモリBiCS FLASH™を1ビット/セルのSLC技術を用いて、高速読み出し、書き込みを可能にした製品
DRAMとNAND型フラッシュメモリの性能差を埋める新しいメモリ階層として立ち上がりつつあるSCMに位置づけられる製品であり、従来のDRAMよりもビットあたりのコストを低減でき、NAND型フラッシュメモリのように大容量に対応した不揮発性メモリ
一部OEM顧客向けに128 ギガビット (Gb) チップを用いた製品(注8)のサンプルを出荷。

主要製品・サービス発表時期概要
性能や容量を改善した「Serial Interface NAND」の第二世代製品をラインアップに追加2019年9月民生機器、産業機器、通信機器など幅広いアプリケーションの組込み用途向けの、シリアル・ペリフェラル・インターフェース(SPI)と互換性を持ったNAND型フラッシュメモリ「Serial Interface NAND」のラインアップに、データ転送の高速化に対応し、当社既存製品に比べて動作周波数などの性能や記憶容量の改善を行った第二世代製品
2019年からサンプルを出荷。
車載機器向けとして業界最大容量(注9)となる512GBの、JEDEC UFS(注10) Version 2.1インターフェースに準拠した組み込み式フラッシュメモリ(UFS製品)を開発2019年11月3次元フラッシュメモリ「BiCS FLASH™」とコントローラチップを一体化した制御機能付きの組み込み式メモリ製品
AEC-Q100 Grade2(注11)に適合し、-40℃から105℃の広い動作温度範囲を実現するなど、幅広い車載機器の信頼性要求に対応します。また、リフレッシュ機能(注12)、サーマルスロットリング機能(注13)、拡張診断機能(注14)等、車載機器用に開発された機能も搭載
2019年11月からサンプルを出荷
3次元フラッシュメモリの大容量化を実現する半円型構造セル
「Twin BiCS FLASH」の開発
2019年12月3次元フラッシュメモリにおける円型メモリセルのゲート電極を分断して半円型にすることでセルサイズを縮小し、高集積化を実現するセル構造「Twin BiCS FLASH」を開発
第5世代3次元フラッシュメモリ「BiCS FLASH™」を開発2020年1月3次元フラッシュメモリ「BiCS FLASHTM」の第5世代となる112層積層プロセスを適用した製品を試作し基本動作を確認しました。本試作品は512ギガビット(64ギガバイト)の3ビット/セル(TLC)
本試作品は、回路技術やプロセスを最適化することでチップサイズを小型化し、96層積層プロセスを用いたBiCS FLASHTMのメモリセルと比べて単位面積あたりのメモリ容量を約20%向上。これにより1枚のシリコンウエハーから生産されるメモリ容量を増やし、ビットあたりのコスト削減を実現しています。更にインターフェース性能は50%向上し、プログラム性能やリード性能の高速化も実現
SSD業界最速クラスのPCIe® 4.0対応エンタープライズSSDのサンプル出荷2020年2月従来のPCIe® 3.0対応の製品と比べ2倍以上のシーケンシャルリード性能及び3倍以上のランダムリード性能を備えPCIe® 4.0に対応したエンタープライズ向けSSD 「CM6シリーズ」とデータセンター向け SSD「CD6シリーズ」
「CM6シリーズ」は、PCIe Gen4 4lane 及び Dual-port 2laneに対応し、業界最速クラス(注16)の最大6.9 GB/sのシーケンシャルリード性能、1.4M IOPS (Input/Output Per Second) の性能を実現。「CM6シリーズ」は、可用性、冗長性に優れているデュアルポートをサポートし、エンタープライズ用途に適した製品
「CD6シリーズ」は、PCIe Gen4 4laneに対応し、クラウドデータセンターやウェブサーバー用途に適したシングルポート仕様で、最大6.2GB/sのシーケンシャルリード性能、1.0M IOPSの性能を実現した製品

主要製品・サービス発表時期概要
UFS Ver. 3.1に準拠した組み込み式フラッシュメモリのサンプル出荷2020年2月2020年1月に発表された最新のJEDEC UFS Version 3.1インターフェースに準拠した組込み式フラッシュメモリ(UFS製品)を開発。
新製品は、11.5mm x 13.0mmのパッケージに当社の3次元フラッシュメモリ「BiCS FLASH™」とコントローラチップを一体化した制御機能付きの組み込み式メモリ製品。
5G対応の次世代モバイル機器など、低消費電力で高性能な機能が求められる応用機器に適応するためのさまざまな新技術を備え、128GB、256GB、512GB、1TB(注15)の4種類の容量ラインアップをそろえます。
また、新製品はコントローラでエラー訂正、ウェアレベリング、論理-物理アドレス変換、不良ブロックの管理などの制御機能を行うため、ユーザーの開発負荷を軽減することが可能です。

(注)1.実際の記憶容量は2,048GBです。記憶容量の表記について、(注2)をご参照ください。
2.記憶容量:1TB(1テラバイト)=1,000,000,000,000(10の12乗)バイトによる算出値です。1TB=1,099,511,627,776(2の40乗)バイトによる算出値をドライブ容量として用いるコンピューターオペレーティングシステムでは、記載よりも少ない容量がドライブ容量として表示されます。ドライブ容量は、ファイルサイズ、フォーマット、セッティング、ソフトウェア、オペレーティングシステム及びその他の要因で変わります。
3.NVMe™はNVM Express, Inc.の商標です。
4.分散ファイルシステム(Ceph)やデータベースマネージメントシステム(MySQLなど)の下位層として多く利用されているキーバリューを格納する高性能データベース。
5.フラッシュメモリに記録するデータ量より、書き込み動作の際に、書き込むデータ量が増加すること。
6.2019年8月7日現在、エンタープライズSSDとして。キオクシア株式会社調べ。
7.PCIeは、PCI-SIG®の登録商標です。
8.2段、4段、8段の積層が可能です。
9.業界最大容量512GBの車載機器向け組み込み式フラッシュメモリ(UFS製品)を初めて開発。2019年11月14日現在。キオクシア株式会社調べ。
10.UFS (Universal Flash Storage)JEDECが規定する組み込み式フラッシュストレージの標準規格の一つ。シリアルインターフェースを採用し、全二重通信を用いているため、ホスト機器との間でのリード・ライトの同時動作が可能。
11.AEC (Automotive Electronics Council)が策定する集積回路の信頼性認定試験基準。
12.製品に記録されたデータをリフレッシュし、データの寿命を延ばす機能。
13.高温条件において、性能を抑制し、製品のオーバーヒートを防ぐ機能。
14.製品の内部状態を詳細に把握する機能。
15.本製品の表示は搭載されているフラッシュメモリに基づいており、実際に使用できるメモリ容量ではありません。メモリ容量の一部を管理領域等として使用しているため、使用可能なメモリ容量(ユーザー領域)はそれぞれの製品仕様をご確認ください。
2021年3月期第1四半期連結累計期間(自 2020年4月1日 至 2020年6月30日)
当第1四半期連結累計期間において研究開発体制及び研究開発方針について変更はありません。
当第1四半期連結累計期間における研究開発費は290億円であります。
なお、当第1四半期連結累計期間における主要な研究開発の成果は以下のとおりです。
また、当社グループはメモリ事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載は省略しています。
(研究開発の主要な成果)
主要製品・サービス発表時期概要
24G SAS対応エンタープライズSSD2020年6月SAS対応のエンタープライズSSDとして、業界最速クラス(注1)の最大4,300MB/sのシーケンシャルリード性能と、業界最大容量(注1)の30.72TB
(注2)(注3)を実現。書き換え性能や寿命の向上に寄与するマルチ・ストリーム・ライト機能に新たに対応するほか、従来モデル同様、万が一同時に二つのメモリチップが故障した事態でもデータを守るために起動する誤り訂正機能も搭載。
NVMe-oF™対応ストレージ用ソフトウェア「KumoScale™バージョン3.14」2020年6月クラウド・プロバイダー向けにストレージの効率・管理・信頼性を拡張する各種機能を新たに搭載。クラウドデータセンター向けのストレージソリューションとして、サーバーとストレージの分離(ディスアグリゲーション)を実現。
NVMe-oF™に準拠した「KumoScale™」を使うことにより、NVMe™に対応した複数のSSDを多数のサーバー間でストレージとして共有して効率化を図ると共に、ローカル接続に近い低遅延性の実現を可能とした製品。
次世代のデータセンター&エンタープライズSSDフォームファクター(EDSFF(注4))E3.S(イー・スリー・ドット・エス)の評価モデルを開発2020年6月PCIe® 4.0とNVMe 1.4に対応した当社のエンタープライズ向けSSD 「KIOXIA CM6シリーズ」をベースとし、コントローラーと同じ3次元TLCフラッシュメモリ「BiCS FLASH™」を使いながら、2.5インチのフォームファクターをEDSFF E3.Sフォームファクター、x4レーン、約40%高い消費電力約28 Wに変更し、約35%の性能改善を実現。

(注)1.2020年6月16日現在、SAS対応エンタープライズSSDとして。キオクシア株式会社調べ。
2.記憶容量:1ギガバイト(1GB)=1,000,000,000(10の9乗)バイト、1テラバイト(1TB)=1,000ギガバイト(GB)による算出値です。しかし、1GB=1,073,741,824(2の30乗)バイトによる算出値をドライブ容量として用いるコンピューターオペレーティングシステムでは、記載よりも少ない容量がドライブ容量として表示されます。ドライブ容量は、ファイルサイズ、フォーマット、セッティング、ソフトウェア、オペレーティングシステム及びその他の要因で変わります。
3.30.72TBの製品のサンプル出荷は2020年8月以降
4.EDSFF:Enterprise and Datacenter SSD Form Factor。EDSFF ワーキンググループには、Dell EMC、Facebook、HPE、 Lenovoなどのエンタープライズやクラウド・サービスプロバイダーの企業がプロモーターとして参加しており、当社はコントリビューターとして参加。