有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/01/15 15:01
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【項目】
146項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在における当社グループが判断したものであります。当社グループの将来に関する見通し及び計画に基づいた将来予測には、リスクや不確定な要素などの要因が含まれており、実際の成果や業績などは、記載の見通しとは異なる可能性があります。
(1)会社の経営の基本方針・中期的な会社の経営戦略
当社グループは、「女性の染色体XXを美の象徴と位置づけ、アジア(ASIA⇒AZIA)の美を日本から世界へ発信する総合ビューティーソリューションカンパニーを目指す」という信念のもと経営に取り組んでまいりました。当社グループは業界における位置づけを「ニッチャー」と認識しております。当社グループが強みを活かせるセグメントを発見し、そこに経営資源をつぎ込む「製品・市場特定化戦略」を基本戦略方針とし、局所的ナンバーワンとなることで競争優位を創出しております。
昨今、消費市場としてのアジアが注目される中、当社グループは、化粧品人口の拡大と消費の高度化で高成長が期待される中国市場に事業機会を見出し、中国本土での販売力強化に努めてまいりました。
当社グループは、今後もこれらの財産を有効に活用し、「中国市場で唯一無二の強みを持つ化粧品会社」を目指し事業運営を行ってまいります。
また、当社グループは、2022年における目標として、バックキャスティング型の中期計画「VISION2022」を策定、推進しております。
なお、中期的な見通しにつきましては、経営環境の変化に柔軟に対応し、より迅速な意思決定を行うために、毎年、直前事業年度の業績等を踏まえて次年度以降3ヵ年の中期事業計画の見直し策定を行っております。
当社グループは、現在、成長段階にあることや、株主の皆様の成長期待に応えるために、特に売上高成長と売上高営業利益率を意識した経営に取り組んでおります。
「VISION2022」では、高い収益性を維持しつつ長期的な成長・発展を実現するために、以下の基本戦略をロードマップとして掲げております。
① 当社グループの中枢・中核となる強みを活かした事業展開
当社グループの競争力の源泉は「日中各々の優位性を活かした事業展開」であると認識しております。
当社グループでは、日本市場向けに投入した製品を中国市場に展開するのではなく、中国現地での市場調査を基に、中国での消費者ニーズが高いと想定される製品を4P設計(注:4P=product、price、place、promotion)を用いて、企画、開発しております。また、NMPA認可成分・処方を重視した商品設計を行っており、スムーズにNMPA認可を進められる体制を構築しております。日系企業の化粧品は高品質と信頼感でアジアでの人気が高く、また、スキンケア、美白など東アジア人共通の美意識への対応力があることから、中国をはじめとする東アジア市場では優位性があると認識しております。当社グループでは中国市場において、現地エステサロンや各種EC等、多様なチャネルを通じて幅広い顧客層への販売を行っておりますが、それら既に構築している販売チャネルに対して、上市前の製品開発段階でテストマーケティングを行うこと等により、より中国市場で支持される製品の開発に取り組んでおります。
さらに、当社グループでは顧客ロイヤルティ向上のためにアフターサポート体制を重視しており、例えばTaobaoでは、Taobaoオーナーを対象として製品教育をはじめ、当社製品の詳細情報及び製品コンテンツの提供を実施しているほか、Tmall Global旗艦店では日系化粧品企業の中で上位ランクのTmall Global Partner(出店者の旗艦店の設計・運営・メンテナンス・カスタマーサービス等を請け負うTmall Global指定の運営業者。Tmall Globalを運営するAlibabaが出店者とTmall Global Partnerをそれぞれランク付けし、ランクに応じて両者が推薦される。)との連携によりアフターサポート体制の充実に取り組んでおります。
以上のような中国でのマーケティング力、中国でのブランド認知度、中国人の生活・習慣・嗜好を熟知した中国人向け製品開発力、充実したアフターサポート体制等の強みを活かし、積極的に中国需要を取り込み事業の成長に繋げてまいります。
② 組織の機動力を活かした製品開発スピードの速さ
当社グループでは2019年において20品目の新製品を上市しておりますが、当社グループの強みは、組織の機動力を活かした製品開発スピードの速さであります。
当社グループの事業領域であるアンチエイジング分野で、機動力を活かし毎年10品目を目標として新製品を創出し、特定市場内での局所的ナンバーワンを目指します。
また、製品上市後もユーザーの声を踏まえた製品改良に継続的に取り組んでおり、既存の主力製品のライフサイクルの長期化を図っております。
③ 「内外美容」をコンセプトした製品ラインアップの拡充
当社グループでは、化粧品と健康補助食品との相乗効果により美肌を引き出す「内外美容」を推奨しております。基幹ブランドには、各々のブランドコンセプトを一にする化粧品と健康補助食品を取り揃えることで、ブランドを差別化し、存在感を向上させております。
当社グループでは、引き続き、「内外美容」をコンセプトとして製品開発を進めブランドの存在感を向上してまいります。
④ 中国ネット流通大手との戦略的提携の強化
当社グループの中国国内の販売チャネルの一つに、中国ネット流通大手のモールに開設した旗艦店があります。Euromonitorによると、中国のECによる2019年時点における化粧品購入比率はスキンケアで29.7%(*)と、日本の11.9%(*)に比べて高くなっており、その傾向は今後も続くと当社では予想しております。(*出典:Euromonitor International Limited, Beauty and Personal Care 2020 edition, retail value RSP, fixed 2019 exchange rates, current prices, data extracted on 30 November 2020)
また、Tmall Global旗艦店は当社の主力品販売チャネルとしての位置づけであり、Tmall Globalサプリ・化粧品旗艦店の会員数(当社Tmall Global旗艦店の会員登録を行っている人数)は以下の通り順調に拡大しております。(出典:客道(Tmall Globalの顧客管理システム))
単位:人
0202010_001.png
単位:人
0202010_002.pngまた、商品券の配布等、サプリ旗艦店と化粧品旗艦店においてクロス誘導のための施策を行うことで、以下のとおりTmall Globalサプリ・化粧品旗艦店の共通会員数(注1)は増えております。
単位:人
0202010_003.png(注1)共通会員数は、当社のTmall Globalサプリ及び化粧品旗艦店の両方で会員である月末時点の人数です。
Tmall Globalサプリ旗艦店のARPU(注3)推移は次の通りであり、Tmall Globalサプリ旗艦店においては前年同月比対比で直近ARPUが上昇しております。(出典:生意参謀(Tmall Globalの店舗管理運営のデータ分析ツール))
⦅Tmall Globalサプリ旗艦店のARPU推移⦆ 単位:円 ※ 社内レート(前月末のみずほ銀行TTM)を使用
0202010_004.png(注3)売上金額/購入者数
Tmall Globalサプリ旗艦店の売上金額に占めるリピート金額(注4)は以下のとおりであり、リピート売上が一定の割合を占めております。なお、リピート金額は1回目の購入(新規購入)から180日以内に2回目及び2回目以上購入した購入者の売上金額であるため、Tmall Globalサプリ旗艦店出店から半年以上経っている2020年7月期2Q以降のデータを掲載しております。(出典:客道(Tmall Globalの顧客管理システム))
単位:千円 ※ 社内レート(前月末のみずほ銀行TTM)を使用
0202010_005.png(注4)1回目の購入(新規購入)から180日間以内に2回目及び2回目以上購入した購入者の売上金額
なお、当社グループでは、Tmall Global旗艦店の開設やTmall Globalとの戦略的提携を進めており、Tmall Globalとの連携によりTmall Globalのビッグデータを分析し、効果的なプロモーションや製品開発が可能となっております。また、2020年12月現在、当社旗艦店は5つ星(全6段階)が付与されており、質の高いTmall Global Partnerと連携が可能となっております。今後も中国ネット流通大手との関係強化に努め、Eコマースでの販売力をより一層強化してまいります。
⑤ 戦略的広告先行投資の強化
化粧品のブランド力形成と販売において、メディアを用いた広告宣伝、インターネット上でのイベント、これらのタイアップなどマーケティング活動は非常に大きな効果を持ちます。当社グループは、中国本土を中心に更にブランド認知度やブランドイメージを向上させるべく、Tmall Global旗艦店で有名人女優などを起用したマス広告を展開し、その他のチャネルへの波及を図るトップダウンアプローチと、ユーザーと直接の繋がりをもつTaobaoオーナーへのマーケティングや口コミサイトとしての特性を活かすためのREDでのマーケティング(ライブ配信やKOLマーケティング等)といったCRMでTaobaoオーナー等を囲い込むボトムアップアプローチの両面から、販売促進や広告宣伝活動に継続的な投資を行ってまいります。特にボトムアップアプローチについて、REDの費用は当社負担で売上に対する割合は相対的に小さく、またTaobaoはオーナーの費用負担であることから、全体的に当社の負担は少ないという特徴があります。
当社は中国現地での知見と多くの時間をかけてTaobaoオーナーと関係を構築してきたことから、Taobaoオーナー等を囲い込み、エンドユーザーの声を拾うボトムアップアプローチを可能としており、当社のブランド興味喚起やロイヤリティ向上に繋げております。
(2)経営環境
国内における景況感は、雇用・所得環境の改善を背景に個人消費に持ち直しの動きが見られるなど、緩やかな回復基調が続きました。国内化粧品市場は、2019年末までは全体として増加傾向が続く訪日外国人によるインバウンド需要もあり、堅調に推移しました。海外化粧品市場に関して、中国を含むアジアでは、香港などでの厳しい市場環境による影響があったものの、全体としては堅調に成長しました。
2020年に入り、新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の停滞が顕在化し、株式市場のみならず実体経済にも深刻な影響を及ぼしました。
このような市場環境のもと、当社グループでは、2019年からスタートした3ヵ年中期経営計画「VISION2022」に基づき、中国本土で広告投資を強化し、販売力の強化を図るとともに、次世代の成長製品を創出すべく取り組みを進めてまいりました。
Euromonitorによると、中国化粧品市場の多くを占めるスキンケア市場は、2010年から2019年の10年間に年率平均10.4%(*)で伸び、2019年の(中国スキンケア)市場規模は世界第1位の3兆8,567億円(*)に達しております。
更に今後5年、2019年から2024年の成長率は年率平均12.0%(*)の成長が続くと予想されております。
当社グループの主要製品であるプレミアムセグメント(注)につきましては更に伸び率が高く、2019年から2024年までの成長率は年率平均20.4%(*)と予想されており、当社グループが中長期的に事業を拡大する余地は大きいと考えております。(*出典:Euromonitor International Limited, Beauty and Personal Care 2020 edition, retail value RSP, fixed 2019 exchange rates, current prices, data extracted on 30 November 2020)
(注)プレミアムセグメントとは、高価格帯の化粧品やハイブランド商品のことです。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、連結売上高増加率、連結売上高営業利益率の向上を重要な経営指標としております。足元の推移は以下のとおりです。
2019年7月期2020年7月期2021年7月期
第1四半期連結累計期間
連結売上高増加率-24.4%-
連結売上高営業利益率41.2%25.1%24.9%

(注)連結売上高増加率=(当期連結売上高-前期連結売上高)/前期連結売上高×100
なお、2018年7月期及び2020年7月期第1四半期は連結財務諸表及び四半期連結財務諸表を作成していないため、2019年7月期及び2021年7月期第1四半期の連結売上高増加率は記載しておりません。また、広告宣伝費や支払手数料率の維持も重要な経営指標としており、広告宣伝費は対売上高比率15%以下を維持し、主にTmall Global売上高に応じて発生する支払手数料と合わせても30%以下にコントロールすることで、増収効果によりその他販管費の対売上比率低減を継続させ、利益率を改善させることを目指しております。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループの経営方針及び経営戦略を実行していくうえで、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりであります。
① ブランド認知度拡大
当社グループが事業領域とする化粧品業界ではブランドの知名度向上が重要な課題であると認識しております。ブランド差別化のため、当社では成分、容器・資材の全てを自社企画し、自社工場生産レベルでの高い品質管理基準を実践することで安心・安全なプレステージ化粧品を目指しております。ブランド力の維持のために、セキュリティ検証システムや社内担当者の目視による確認、トレーサビリティを実施し、滞留在庫や横流し、不当廉価販売対策に注力しております。加えて、包装・出荷・在庫管理についても全て内製化することで供給過多とならないよう配慮しております。また、Tmall Global、REDでのプロモーションに中国で著名な女優を起用することで波及効果の拡大を狙っており、ブランド知名度は一定程度高まってはいるものの、持続的な事業成長のためには、更なる知名度の向上が不可欠と考えております。なお、2019年8月以降のTmall Global国際美容サプリメントカテゴリーにおける当社の順位(カテゴリー内の商品消費金額を基にTmall Globalで順位付けしたもの)は下記のとおりです。(出典:生意参謀(Tmall Globalの店舗管理運営のデータ分析ツール))
2019年8月2019年9月2019年10月2019年11月2019年12月2020年1月2020年2月2020年3月2020年4月2020年5月2020年6月2020年7月
3位7位14位2位3位2位4位1位2位2位2位3位
2020年8月2020年9月2020年10月2020年11月2020年12月
5位4位2位2位2位

② 顧客ニーズを踏まえた独自性のある製品開発とニッチ市場開拓
経営方針として、中国の消費者ニーズを踏まえ、中国化粧品登録の法規制をクリアする成分構成を前提に製品開発を進めております。展示会出展やエステサロン開拓等、自社で中国市場を開拓してきたことで可能となる独自の中国での市場調査を基に、中国女性からのニーズが高いと想定される製品を企画、開発することで「オンリーワン製品」の開発を目指してまいります。
当社では継続的にヒット製品を生み出すことを目指すべく、常にTaobaoオーナーやサロンオーナーとコミュニケーションを取り、その時の市場に合ったコンセプトを抽出出来る体制を整えております。また、社内の製品開発会議では企画起案や市場性検討、試作品厳選を行い、試作フェーズでは品質チェック、モニターチェックを行っており、Taobaoオーナーやサロンオーナーも深く関与しております。今後も市場要求や顧客ニーズを的確に捉えたタイムリー且つ一層迅速な製品開発を推進してまいります。
また、当社グループは、「AGドリンク」を中心とした「エイジングケア」製品、ビューティーアイズ エッセンスシートを中心とした「目元ケア」製品など、特定のテーマ性を持ったニッチ市場の開拓に注力しております。特定のニッチ市場で主力製品が生まれることで、認知度が高まり、その特定のテーマでのシリーズ展開により収益基盤の拡大を図る戦略をとっております。
③ 製品開発サイクルの短縮化
現状は、市場・顧客ニーズ吸い上げ・企画・処方開発・法令確認・容器/デザイン検討・試作品検証処方決定・薬事申請・出荷/納品は当社で行い、試作品製造・量産化・製品試験は委託先にて行っており、数ヵ月先の生産ラインを抑える必要があります。他社よりも開発・生産を受託している外部委託製造先は、自身の開発・生産スケジュールにより、新規受注は数か月先というのが一般的であることから、当社依頼の開発・生産タイミングに応じられない場合があり、開発・生産全般の短縮化を目指す当社にとりボトルネックになっております。しかし、今後予定している自社工場設立により、研究開発と少量多品種は自社工場で、量産品は委託先で製造することで開発情報の外部流出を防ぎ、更には製品開発サイクルの短縮や自社工場での新製品のテストマーケティングが可能となります。
また、製造工程の自動化や時間短縮化、自社工場の稼働率を維持するために自社工場で量産品生産の一部を実施する等、原価低減のための活動を行う方針です。
④ 国内直営店舗の開設
当社グループは、ブランドや企業としての世界観を発信でき、かつ、直接お客様と触れ合うことでダイレクトにお客様の声を吸い上げ、製品に反映させていくためには、直営店の開設が不可欠であると考えております。これら直営店では、販売のみならず、当社グループの製品を実際にご体験いただくことで、将来のEコマースにつながる導線「オムニチャネル」として活用してまいります。
現在、当社グループは、羽田エアポートガーデン内に、第1号店となる直営店の開設準備をしており、新型コロナウイルスの収束とともにオープンする予定ですが、東京、大阪及び福岡に各1店舗を開設する予定です。
⑤ 優秀な人材の確保と組織体制の強化
当社グループは、今後の更なる事業拡大のために、優秀な人材の確保及び当社グループの成長フェーズに応じた組織体制の強化が不可欠であると認識しております。人材の確保においては、当社グループの企業風土にあった国内・海外の人材の採用・登用に努め、あわせて従業員の入社年数等の段階にあわせた教育プログラムを体系的に実施することによって、各人のスキル向上を図ってまいります。組織体制につきましては、国内及び海外にて事業拡大に応じた内部体制の更なる強化を図り、コーポレート・ガバナンスの充実に取り組んでまいります。