有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/03/18 15:00
【資料】
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【項目】
142項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社の社名の「DIMAGE SHARE」は「DIGITAL」「IMAGE」「SHARE」を組み合わせた造語であり、「デジタルがもたらす豊かさのイメージを共有し、その実現を支援する」という想いから名付けられています。
社会が大きく変化する時、そこには技術の変化があります。デジタルの力は現在及び将来の社会の変革を支えるものであり、それを最大限活用し、社会的ニーズに応えること、社会的課題を解決していくことを当社グループは目指し続けています。
これまでも、インターネット時代の到来においてはインターネットサービスやモバイルサービスによる事業/サービスの創出、企業のIT化時代の到来においては経営/業務のシステム化による効率化、デジタル時代の到来においてはクラウド・AI・ITサービス・モバイル・データ活用への対応による収益化・効率化など、社会の変化を支えるものに当社グループは事業として取り組んで来ております。
(2)ビジョン
DX支援の領域において企業から常に最初に相談される信頼ある存在となることを目指し、「DXを通じて経営革新/事業創造を支援するファーストパートナー」をビジョンとして掲げております。
(3)顧客基盤
当社の累計顧客数は556社となっており、2020年3月期実績ではインテグレーションサービスで61社、クラウドサービスで76社となっております。顧客の業界としてはDXの進展により社会的ニーズが更に高まることが予想されるロジスティクス・情報/通信・医療/福祉等の社会インフラや、オンライン上で提供されるサービス/エンターテインメント/広告等が中心となっております。
当社グループは創業から顧客との直接取引にこだわり、当社グループで一貫して構想・設計・開発・運用を行うとともに、単にシステムを開発するだけにとどまらず、顧客の事業の成功・成長に徹底的にコミットした持続的な支援を提供しております。その結果、当社の顧客との直接取引は81.5%、既存顧客との取引継続率は73.9%となっております。
(注)1.取引継続率は2020年3月期時点で、2020年3月期に取引のあった取引先のうち2019年3期に取引が発生している取引先の割合です。
2.累計顧客数は2020年3月期時点で、創業以来当社と一度でも取引があった取引先を1社としてカウントしております。
(4)競合優位性
① インテグレーションサービス
・技術
システム支援会社においては特定の技術に特化した会社もあると認識しておりますが、当社グループはシステムの完成ではなく顧客の成功・成長にコミットし、顧客のニーズ・課題・ゴールに合わせて解決策の提案・実現を支援しているため、特定の技術に依存せず最適な技術を提案・活用することができます。そのうえでの当社グループが有している技術上の強みは「3 事業の内容」に記載しております。
・支援範囲/支援体制
一般的なシステム開発では、構想・設計・開発・運用の各段階において担当する企業や担当者が変わっていくと認識しておりますが、当社グループは構想〜運用まで担当エンジニアが一貫して対応しております。また顧客によってはIT部門やIT人材が不足・不在である場合にシステム支援会社によっては支援を行わないこともありますが、当社は顧客の不足を補完し、一体的に支援しております。
・変化への対応
顧客の経営環境や事業ニーズの変化に対して、多重下請け構造の体制となっている場合はシステム会社各社との調整負荷が大きく対応が容易ではありませんが、当社グループは支援を自社完結しているため柔軟に対応することが可能となっております。
② クラウドサービス
・『admage®』
『admage®』は広告代理店やメディア企業等で主要な広告ビジネスを行う際に必要となる機能がカバーされた総合広告配信システムです。一部の機能/広告ビジネスに特化した他社製品はありますが、『admage®』は顧客の広告ビジネスの拡張に応じて、利用機能を拡大していくことが可能です。また、運用サポートについては、他社は支援が無い、又は問合せ回数が限定されているか有償となっていることが一般的ですが、当社はシステムの通常利用の範囲においては制限なく無償でサポートを提供しております。加えて、クラウドサービスでありながら顧客各社の要望にあったカスタマイズ開発が可能であり、顧客ごとの付加価値を創出することができます。当社は日本のインターネット広告の黎明期から数多くの広告システムの開発に携わり、深い技術/知見を有しており、顧客の要望を実現することができております。
・『caravas』
『caravas』は企業のコンテンツマーケティングを支援するシステムであり、「レコメンド」と「分析」の機能を有しています。コンテンツマーケティングを実施する企業では自社のWebサイトまでの集客に注力するため、サイト流入後への対応に手が回らないことが見られますが、一方で流入したユーザーを購買等の成果に繋げることは顧客のビジネス上、非常に重要です。他社のレコメンドシステムはレコメンドのためのシナリオ設計(どのようなユーザーにどのようなコンテンツを提示するのかの設計)が顧客のリソースや専門性によっては煩雑で難しく利用が困難なこともありますが、『caravas』はAIによるレコメンドでユーザーの興味嗜好に沿ったコンテンツを提示することができ、手軽でありながらWebサイトに流入したユーザーに効果的な手を打つことができます。また、分析においては、Webサイト内の行動分析だけでなくコンテンツの閲覧状況分析を行うことができるレポートに加え、専門性がなくても視覚的に分析ができるヒートマップも備えております。これらは当社の広告システムで培った匿名ユーザー(アカウント情報などが無く属性が特定できていないユーザー)に対するWebサイト上の行動履歴分析やそれに基づいた広告の最適配信の技術等が活用されており、実現が可能となっています。
(5)中長期的な当社グループの経営戦略等
① ターゲット
当社グループはDXが社会に生み出す市場全体をターゲットとし、その中でも、業界としてはDXの進展により社会的ニーズが更に高まることが予想されるロジスティクス・情報/通信・金融・医療/福祉などの社会インフラや、オンライン上で提供されるITサービス及びそれらを支援するデジタルマーケティング/デジタル広告の領域を重要なターゲットとしています。
② 事業ポートフォリオ
安定性と成長性の両面を実現するため、クラウドサービスによる継続安定型の「ストックビジネス」と、各種コンサルテーションやシステムの設計・開発等による高付加価値型の「フロービジネス」を組み合わせております。また、事業にコミットすることを体現すべく、他社との共同事業によるレベニューシェア(収益配分)等にも取り組んでおります。
③ 組織体制
グループ会社のDIMAGE SHARE VIETNAM CO., LTD.によるオフショア開発の比重を高めることにより、利益率の向上と国内での開発リソース不足の補完の両面を実現していきます。また、国内での新卒・中途社員の採用強化はもとより、約10年間継続しているベトナムにおけるIT系大学の最高ランクである「ハノイ工科大学」からの新卒採用の強化にも取り組んでまいります。
また、組織成長や人材が流動化する中でも当社グループの提供価値を維持向上させるため、社内におけるノウハウの共有や教育の仕組みを構築していきます。
(6)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
売上高成長率、営業利益率、ROE(自己資本利益率)を重要指標と位置付け、企業価値の増大を目指してまいります。
① 売上高成長率
DX市場は今後も成長が持続していくものと想定しており、当社グループがその成長に追随していくために重要な指標であると考えております。売上成長率は前年度比較で算定を行っております。
② 営業利益率
DXは企業に高い価値をもたらすものと考えており、それを支援する当社グループも高い付加価値の創出を実現する必要があると考えております。また、持続的に利益を創出し成長に繋げていくため、DIMAGE SHARE VIETNAM Co.,Ltd.を活用したオフショア開発・研究開発・製品開発等を含めたコストの低減を目指しております。それらにより収益性を高めていくために重要な指標であると考えております。
③ ROE(自己資本利益率)
総合的な経営の効率性を高めていくために重要な指標であると考えております。
決算年月2020年3月期(実績)
売上高成長率(%)13.6
営業利益率(%)3.4
ROE(自己資本利益率)(%)20.1

(7)経営環境
① インテグレーションサービス
昨今のDXの潮流の中で、企業においてIT/デジタルは単に「便利なもの」ではなく「企業の価値の中核」となっており、フィンテック(FinTech)(※1)やアグリテック(AgriTech)(※2)、メドテック(MedTech)(※3)などに代表されるように、IT/デジタルの活用は企業の収益力・競争力にとって不可欠な存在になっております。今後多くの企業がIT企業化していくことが予想されるため、企業の生存戦略としてDXへの対応は不可避であると考えております。
富士キメラ総研の「2020 デジタルトランスフォーメーションの市場の将来展望」によると、国内DX市場の市場規模は、2019年時点で約7,912億円であり、2030年には約3兆425億円まで拡大すると予測されており、国内DX市場の成長余地は大きいと考えております。
また、経済産業省は、2018年9月に「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」、2018年12月に「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」を発表しました。当資料によると、経営者はDXを実現していくために、データとデジタル技術を活用してビジネスモデルをどのように変革するかについての事業戦略と、それを実行するための組織、プロセス、企業文化・風土をどのように変革するかについての組織戦略を立案、実行し、競争上の優位性を確立することが重要かつ喫緊の課題となっています。また、既存ITシステムが技術面の老朽化・複雑化・ブラックボックス化するレガシーシステムの存在が、DXを本格的に展開していく上で大きな障壁になっています。レガシーシステムにビジネスプロセスが密接に組み込まれているため、ビジネスモデルの変革は容易ではなく、DXへの対応が遅れることでレガシーシステムの運用・保守に多くの資金と人材が必要になります。また、レガシーシステムではデータを十分に活用しきれず、新しいデジタル技術を導入したとしても、データの利活用・連携が限定的であるため、その効果も限定的になってしまうという問題があり、企業のDXにあたってはレガシーシステムからの脱却・刷新が不可欠となっています。
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② クラウドサービス
株式会社電通が2020年3月11日に発表した「2019年(令和元年)日本の広告費」によると、2019年の日本の総広告費は6兆9,381億円(前年比106.2%)となり、8年連続のプラス成長となりました。媒体別では、マスコミ四媒体広告費(新聞広告費、雑誌広告費、ラジオ広告費、テレビメディア広告費)は前年比96.6%と連続して前年を下回った一方で、インターネット広告費は2兆1,048億円(前年比119.7%)と6年連続の二桁成長となり初めて2兆円を超えました。
インターネット広告の成長は二つの要因が考えられます。一つ目の要因は、パソコンやスマートフォン及びタブレットの普及がインターネット利用者数の増加(総人口の80.9%(総務省 平成30年版 情報通信白書))をもたらし、インターネットがメディアとしての存在価値を高めたことによるものと考えられます。二つ目の要因は、広告の投資対効果を具体的な数値で測定することができ、トラッキング(※4)やターゲティング(※5)、広告取引を自動化するプラットフォームなどのアドテクノロジーが存在価値を高めたことによるものと考えられます。
「広告」や隣り合う領域である「マーケティング」においても、DXは加速しており、新しいテクノロジーが登場し、ITを活用した「デジタル広告」や「デジタルマーケティング」は、今後更に企業の収益力向上を左右する存在になっていくと考えられます。
(用語解説)
※1 FinTech(フィンテック)
金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語で、金融サービスと情報技術を結びつけたさまざまな革新的な動きを指す。
※2 AgriTech(アグリテック)
ITの導入によって実現される革新的な農業。また、それに関連するビジネスやサービス。
※3 MedTech(メドテック)
Medical(医療)とTechnology(技術)を組み合わせた造語で、テクノロジーを医療に活用する取り組みを指す。
※4 トラッキング
インターネット上でのユーザーの行動を記録すること。主に特定のWebサイトで、あるユーザーがどのような経路でそのサイトに流入したか、そのサイト内でどのようなページをどれぐらいの時間閲覧していたか記録を取る。
※5 ターゲティング
広告の対象となる顧客の行動履歴を元に、顧客の興味関心を推測し、ターゲットを絞ってインターネット広告配信を行う手法。
(6)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループが優先的に対処すべき事業上の主な課題は以下のとおりであります。財務上の課題は現時点で特筆すべき事項はございません。
① 優秀なエンジニアの確保と育成
当社グループが、今後さらなる成長をしていくためには、優秀なエンジニアの確保及び育成は、最重要課題の一つであると認識しております。
情報サービス産業においては人材不足が深刻化しておりますが、今後も継続して、当社グループの企業理念や経営方針に共感したエンジニアを確保するため、国内はもとよりベトナムにおいても積極的にエンジニアの確保に取り組んでまいります。また、ベトナム子会社を持つ優位性を活かして、オフショア開発を推進し、エンジニアの確保と開発力の強化に取り組んでまいります。
② 内部管理体制の強化
当社グループの事業の継続的な発展には、業務運営の効率化、コーポレート・ガバナンス機能の強化は必須であり、そのための方策として、財務報告の信頼性を確保するための内部統制システムの適切な運用が重要であると考えております。そのため、内部統制システムの継続的な整備、改善を行い、経営の公正性・透明性を確保するための組織体制の強化に取り組んでまいります。
③ 認知度向上
当社グループの製品・サービスをより多くの企業に認識してもらうためには、認知度の向上が必要であると考えております。事業の規模拡大による当社自体の認知度の向上のほか、当社の製品・サービスを利用した企業の評価や訴求力のある導入事例の獲得、Webマーケティングによる認知機会の増加等に複合的に取り組んでまいります。
④ 情報セキュリティの強化
当社グループは、事業の運営上、顧客情報や個人情報等の重要な機密事項を扱うことがあります。これらの情報は、顧客との秘密保持契約や個人情報保護法等により、管理の徹底が要求されております。
現状においても、外部からの不正アクセス等に対するセキュリティ対策や社員の機密情報の取り扱いについて取り決めをしており、プライバシーマークの取得も行い積極的に対策を講じていると考えておりますが、より一層のセキュリティの強化に努めてまいります。
⑤ デジタルテクノロジーへの取り組み
DXの取り組みを進めている様々な業界の企業に価値ある製品・サービスを継続的に提供していくためには、デジタルテクノロジーの習得/研究は重要であると認識しております。そのため、クラウドやAI、Big Data(※)といった技術の習得/研究に積極的に取り組んでまいります。
(用語解説)
※ Big Data(ビッグデータ)
インターネットの普及や、コンピューターの処理速度の向上などに伴い生成される、大容量のデジタルデータを指す。
  • 有価証券届出書(新規公開時)