有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/07/15 15:00
【資料】
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【項目】
147項目

対処すべき課題


文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営の基本方針
当社グループは、「私たちは国際化社会の中で、社員ひとり一人の個性を尊重し、誠実を旨とし、情報技術の先進的活用により顧客企業と社会の発展に貢献する。」ということを企業理念として掲げており、経営方針は以下の通りです。
・顧客に信頼される会社となる。
・創造性あふれる専門家集団であり続ける。
・社会への貢献、個人への還元バランスをはかる。
(2)経営戦略等
IDC Japan株式会社(以下、「IDC Japan」)の「国内BDAテクノロジー/サービス市場予測、2020年~2024年」によると、2019年の国内BDA(Big Data and Analytics)テクノロジー/サービス市場は売上額ベースで前年比10.0%増の1兆799億5,100万円でありました。また、2019年~2024年においては、2020年および2021年においてCOVID-19の流行の影響により一時的に成長が鈍化するものの、以降回復し、年間平均成長率は11.7%、2024年の市場規模は1兆8,765億7,400万円になると予測されております。
また、IDC Japanの「国内プライベートクラウド市場予測、2019年~2023年」によると、2018年の国内プライベートクラウド市場の支出額は前年比38.6%増の5,764億円となりました。同市場の2018年~2023年の年間平均成長率は36.4%で推移し、2023年の市場規模は2018年比で4.7倍の2兆7,194億円になると予想されております。
一方、IDC Japanの「国内パブリッククラウドサービス市場予測、2020年~2024年」によると、2019年の国内パブリッククラウドサービス市場規模は、前年比22.9%増の8,778億円となりました。また、2019年~2024年の年間平均成長率は18.7%で推移し、2024年の市場規模は2019年比2.4倍の2兆644億円になると予測されております。
当社グループは、2018/5期よりデジタル革新の主要サービスであるServiceNowを初めとするシステム/サービス管理SaaS市場は高い成長を続けており、2019年は前年比44.2%増の158億8,500万円、2020年は前年比24.9%増の198億3,900万円を見込んでいます。「IDC国内システム/サービス管理ソフトウェア市場予測:2018年~2024年」によると2019年~2024年のCAGR(年平均成長率)は26.5%、2024年には513億7,700万円に達すると予測されております。
以上より、クラウド基盤事業、ビッグデータ分析事業、およびデジタル革新推進事業は、主要顧客との長期にわたる信頼関係も相まって需要が高い水準で成長すると予想しており、成長戦略の中核と位置付けております。
なお、当社グループは、上記の基本方針および市場の動向に基づき、安定的かつ継続的な企業価値の向上を目指し、次の展望を達成してまいります。
・お客様の業務を深く理解し、ニーズを汲み取った良質のエンジニアリングサービス、更に上流からのサービス(コンサルティングや各種提案)提供を行っていく
・デジタル革新技術を活用し、お客様の経営戦略実現のための業務統制の適正化と業務活動の効率化、そして経営リソースの有効活用を実現するエンドユーザ志向の新しいビジネスモデル(新事業)を構築し提供する
・社員がシイエヌエスで働くことを誇りに思える魅力を提供し、その魅力のもと高いサービス精神、チームワークを発揮し続け、顧客企業の発展、社会の発展にも貢献し、多くの感謝を頂ける企業になる
これらの展望の下、次の3つの基本戦略を推進してまいります。
①事業基盤の強化
・ビジネス拡大に必要な体制の強化
今後の成長領域であるデジタル技術の領域の技術変化に対応した優秀な人材の獲得、育成に向けて、コンサルティングの活用や広告等の人材確保や技術力獲得のための、研修等の教育施策の強化への積極的な投資を行います。
②新たな取引先拡大のための強化施策
・重点顧客(ビジネスパートナー含む)の連携強化による取引先(エンドユーザ)の拡充
当社の重点事業となる技術の展開を進めておりますが、重点顧客自身及び重点顧客各社が持つ顧客(エンドユーザ)には、当社技術の活用が期待できる潜在顧客が多数あり、各社の社内部署及び各社のエンドユーザへの展開の計画を共有頂き、提案等の推進の取り組みを支援することで売上の拡大を行います。
・新たなビジネスパートナーとの協業関係整備による新規顧客への拡大
成長戦略の中核となるデジタル変革技術のノウハウを活用し、現在連携を始めている次のアライアンスパートナーをターゲットに当社の中核ビジネスであるデジタル技術のソリューション化や販売活動の支援を行い、連携を強めることで、アライアンスパートナーの先にある新規顧客の獲得を行います。
③技術サービスの拡充による市場拡大
・デジタル変革ソリューションの取り組み・拡充
顧客へのデジタル変革の最適な提案をするために、ITにおけるデジタル変革の流れをキャッチアップし、当社のデジタル変革ソリューションを拡充いたします。また、将来の事業の中核となる新たな技術、ソリューションの整備を行います。
・デジタル変革ソリューションの活用整備
主力ソリューションであるクラウド、ビッグデータ、ServiceNowのソリューションをパートナー各社がエンドユーザへ展開する際や当社が新規顧客へアプローチする際に、エンドユーザに分かりやすく、効率的にご活用いただけるように当社のノウハウを標準化、体系化し、サービスメニューの整備や方法論のフレームワーク化を行います。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、企業価値の向上及び財務体質の強化を図るため、具体的な数値目標は設定しておりませんが、売上成長率及び営業利益率を重要な経営指標としております。
(4)経営環境
当社グループは、システムエンジニアリングサービス事業の単一セグメントでありますが、サービス事業としてシステム基盤事業(オンプレ基盤事業、クラウド基盤事業)、業務システムインテグレーション事業、ビッグデータ分析事業、デジタル革新推進事業を展開しております。
当社グループが属する情報サービス産業においては、DXを推進する動きが活発化しております。これまで情報システムはお客様ビジネスの構成要素の一部として扱われておりましたが、昨今の急激な環境変化に対応し、ビジネスの成長を拡大する上でデジタル技術を駆使した情報システムを経営の基本骨幹とされるように変化しております。
DXの市場動向については(2)経営戦略等に記載している通りであり、ビッグデータ分析事業、デジタル革新推進事業の需要は堅調であり、デジタル技術を活用する基盤としてクラウド基盤事業の成長も後押ししております。
新型コロナウイルス感染症(以下「COVID-19」という。)の影響は、2021年5月期の上半期において顕著に現れました。具体的には先行きの不透明感から一時的に案件を凍結する、時期を先延ばしにするといった影響です。2021年5月期の下期からはこれらの懸念が解消されつつあり(2020年6月調査の「全国企業短期経済観測調査(日本銀行より)」では全業種がマイナス予測でありますが、2021年3月調査では大半の業種が回復しており上記分析を裏付けております)、お客様へのヒアリング等を通じてもシステム投資意欲は回復傾向にあると分析しております。
(5)優先的に対処すべき事業上の課題
①新ビジネスモデルの構築
当社グループは受託型のエンジニアリングサービスやシステム開発に特化し、お客様との取引を拡大してまいりましたが、一方で受託型以外のビジネスモデルの構築が課題であると認識しています。ビッグデータ分析、クラウドサービス技術の強化を継続するとともに、デジタル革新技術の拡大に注力しお客様のビジネス戦略の実現に貢献できる新しいビジネスモデルの構築を進めてまいります。
②新規顧客の獲得
受託型のエンジニアリングサービスやシステム開発では、お客様のビジネスを深く理解したサービスを提供できる企業へ発注が集中する傾向にあります。既存のお客様に対するニーズの深掘りを強化するとともに、ITベンダやお客様とのパートナーシップの改善と増強を進めることで対応可能な技術や製品の幅を広げ、新しいお客様の開拓に注力いたします。
③人材の確保と育成・働き方改革の推進
企業成長には優秀な人材の確保・育成は不可欠であり、情報サービス産業は人材こそが全ての業界と言えます。とりわけ、資格の取得につきましては、従業員のトライを全面的にサポートし、最先端技術の習得と活用に力を入れてまいります。また、人材の確保については、当社グループの技術力やサービス力の向上や新しいビジネスモデル構築の加速のためにも、新卒採用だけでなく即戦力のキャリア採用にも重点を置いて取り組んでまいります。加えて、協力会社との関係強化を進め、当社グループと協力会社が一体となって人材強化を実現できる関係を構築してまいります。
社員の働き方については、ワークライフバランスに配慮しつつ、生産性及び品質の向上を実現することが重要な課題であると認識しております。社員の健康や意欲を損なわない環境を保ち続けることが、事業の健全な継続には不可欠であると考え、働き方改革を推進することで仕事へのやりがい、誇りを高めていきます。
④品質維持向上
情報サービス業界における受託型システム開発は、プロジェクトマネジメントや製造成果物の品質に関連した問題により業績に多大なる影響を与えるリスクを常に抱えております。当社グループにおいては、過年度に発生した課題の発生原因の追求と対策を行い継続的な再発防止に努めております。品質保証委員会によるプロジェクトの監視とマネジメント品質の向上、プロジェクト推進に必要な各種チェックツールの増強、管理職育成の改善・強化により、安定的な品質の確保をできる仕組みづくりと改善を進めてまいります。
⑤感染症対策
COVID-19の世界的な感染拡大により、経済、企業活動への深刻な影響が見込まれております。当社グループにおきましては、COVID-19の感染拡大期に、社員に対して発熱時の報告義務、手洗い実施・マスク着用など感染予防対策の指示、職場内の換気や遮蔽板による飛沫飛散防止策の導入、リモートワークの導入等、感染リスクの低減に取り組んでおります。そのため、現時点での業績への影響は軽微であると考
えております。しかし、今後、COVID-19感染拡大により、社員やビジネスパートナーに感染者が多数発生した場合は、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥内部管理体制の強化
業務運営の効率化やリスク管理、また安定的に事業を拡大するためには内部管理体制のさらなる強化が必要不可欠であると考えております。今後も引き続き、内部監査実施等によりコーポレート・ガバナンスを強化するとともに、情報セキュリティ、労務管理、事故防止をはじめとするコンプライアンスを含めた内部管理体制の強化に取り組んでまいります。