有価証券報告書-第16期(2025/04/01-2026/03/31)
① 戦略
当社グループは、「人を幸せにする評価と教育で、幸せを作る人、をつくる」をビジョンに掲げ、独自のアセスメント技術「GROW」を基盤に、HR事業、教育事業及びグローバルプラットフォーム事業(旧 グローバル/Web3事業)の3事業を展開しています。「人的資本のスタンダードを、日本から世界へ」をコンセプトとし、評価・教育・ブロックチェーン技術を掛け合わせ、3事業の連携により持続可能な次世代の人材育成基盤の構築を推進してまいります。
当社グループは、2026年3月期までに構造改革を完了し、以降は「利益ある成長」のフェーズへ移行します。中期経営計画(2027年3月期〜2029年3月期)では、a.HR事業の上流シフト(測定サービスから人的資本IRパートナーへ)、b.教育事業のチャネル転換(個別校営業から自治体・パートナー連携による教育エコシステムへ)、c.グローバルプラットフォーム事業の日印GCCコリドーと集合知プラットフォームの展開、という3つの構造転換を成長戦略の柱とし、2029年3月期に売上収益2,200百万円・営業利益率約16%を目指します。この持続的な成長の実現には多様かつ優秀な人材が不可欠であり、人的資本の最大化を最優先課題として、従業員一人ひとりの成長を支援し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
<経営戦略と人材戦略の連関>当社グループは、上記の連結ベースの経営方針及び経営戦略を実現する原動力は人的資本であると位置づけ、経営戦略と人材戦略を一体のものとして策定・運用しています。中期経営計画における三つの構造転換と、その実現に不可欠な人材要件、及びこれに対応する人材戦略上の重点施策の関係は、次のとおりです。
a.HR事業の上流シフト(測定サービスから人的資本IRパートナーへ)
人的資本IR・人的資本デューデリジェンス及び組織コンサルティングを担うコンサルタント人材の確保・育成を重点とします。売上に直結するセールス/コンサルタント職を「重点強化職種」と位置づけ、スキルレベルの底上げ(レベル4以上比率の引き上げ)により顧客深耕力と提案力を高めます。
b.教育事業のチャネル転換(個別校営業から教育エコシステムへ)
自治体・教育委員会及びパートナーとの連携を推進する渉外・事業開発人材の確保・育成を重点とします。
c.グローバルプラットフォーム事業の日印GCCコリドー・集合知プラットフォーム
海外展開を牽引するグローバル人材及びブロックチェーン・予測市場等の先端技術人材の確保・強化に加え、全社的なAI活用スキルへのリスキリングを推進し、生産性の向上と独自のサービス開発力を確保します。
これらの人材要件を充足するため、当社グループは、人材の育成に関する方針として「人的資本(能力)の最大化」を、社内環境整備に関する方針として「人的資本の発揮度(環境)の向上」を定め、両者を一体の人材戦略として推進しています。各方針の具体的な取り組み並びに指標及び目標は、後記a.b.及び「② 指標及び目標」に記載のとおりです。
<人的資本戦略>当社グループは、優秀な人材の採用と育成を戦略的な投資と位置づけています。当社グループの事業は、社会全体の人的資本の成長に貢献するシステム構築を目指しており、全社一丸となって取り組んでいます。特に、2027年3月期はAI活用による業務再設計を本格化させ、定型業務のAI代替によって創出される経営資源を、人が担うコア業務のスキル高度化(AIを活用するスキルを含む)へ重点的に再配分してまいります。
具体的には、企業価値への貢献を「人的資本(能力)」と「人的資本の発揮度(環境)」の掛け合わせと捉え、効果的な人材戦略を推進しています。これはベッカー教授の人的資本理論に基づき、一橋大学大学院の研究会が提唱するモデルです。企業戦略に基づき、スキルの習得と活用を含む人的資本(能力)を定義し、ROIを意識した投資を行うことで企業価値の最大化を図っています。また、人的資本を効果的に発揮するための環境整備とリスク管理にも力を入れています。
■ 人的資本と企業価値のフレームワーク

[人的資本(能力)への投資]
既存の従業員には、下記に示す通り中長期的な事業戦略実施を行う最適人的資本を目指し、継続的なスキルアップとキャリア開発のため積極的な投資をしています。営業・事業開発・カスタマーサクセス・開発・マネジメントの各領域で、それぞれの業務特性に合わせた専門研修を実施し、スキル水準の底上げを図っています。とりわけ営業力強化やBtoBマーケティング、アジャイル開発、ロジカルシンキング、経営基礎といった研修は、スキルアップに着実な改善傾向をもたらしました。なお、費用面では厚生労働省の「人材開発支援助成金」をはじめとする公的補助制度を積極的に活用し、研修費用の一部を補填することでコスト効率にも配慮しています。
また、中期的な事業戦略と照合しスキルマップの点検を行いました。各職種やレベルで求められる要件を精緻化した新版スキルマップは、今期以降の評価制度や配置検討の指針として運用を始めています。人的資本に対する投資効果は中長期で顕在化すると見込んでおり、半期ごとにモニタリングを行っています。
採用に関しては、足元の事業環境を踏まえ、新規採用を限定し、既存組織の育成と最適配置を優先することで、事業環境の変化に対応できる体制を構築しています。
生産性向上に直結するスキル領域への重点的な投資を行い、個々の成長と組織成果の連動性を一層高め、中長期的な企業価値向上につなげてまいります。
[人的資本の発揮度(環境)への投資]
ダイバーシティの推進も重視しています。現在、女性管理職の比率は50%と高水準を維持しています。持続的な成長のため、従業員の成長意識の向上や幸福度、目標に向けたコミットメントの向上にも積極的に取り組んでいます。
[人材投資のROIについて]
当社は、人材投資のROIを、短期的な財務インパクトのみならず、中長期的な企業価値向上に繋がる非財務指標(先行指標)の変化も含めて多角的に測定しています。
2026年3月期は、人材の確保・育成のため、採用費及び研修費を合わせて3百万円の人的資本投資を実施しました。当期の売上高は603百万円→659百万円(前年同期比9.3%増)、従業員一人当たり売上高は11百万円→17百万円(同 46.0%増)となり、人的資本の生産性が向上しました。当社は個人のスキルレベルと売上との間に正の相関を確認しており、これらを人的資本投資の投資対効果の目安として位置づけています。なお、投資額の大部分を占める採用費の効果は、新たに加わった人材の戦力化を通じて中長期にわたり本格的に発現するものと位置づけています。
(ⅰ)スキルレベルの向上: 重点強化職種であるセールス/コンサルタント職において、研修によりジュニアレベル(レベル2以下)の割合が減少し、レベル3の層が厚くなるなど、スキル水準の着実な底上げが確認できました。個人のスキルレベルと売上額には強い正の相関があるため、このスキル底上げは将来の業績向上の基盤となります。
(ⅱ)エンゲージメントの向上:従業員エンゲージメントスコアは、前期の66.8ポイントから65.6ポイントへと1.2ポイント低下しました。
a.人的資本(能力)の最大化に向けた取り組み
当社グループでは、人的資本理論の実証化研究会のフレームワークに基づき、従業員のスキルを定量化して管理し、能力の最大化を目指しています。スキルマップを活用して、各従業員のスキルレベルを明確にし、必要なトレーニングやキャリア開発プランを提供しています。さらに、スキルと業績の関連性を分析し、人的資本のROIを最大化するための施策を講じています。このような体系的なアプローチにより、従業員の持つ能力を引き出し、企業の成長と持続可能な発展を支えています。
イ スキルマップに基づいた人的資本(能力)の測定
事業戦略をもとにグローバル基準(ESCO*)に従い、事業戦略達成に特に重要とされる11のコア職種(セールス/コンサルタント、データアナリスト、プロダクトマネージャー、エンジニアなど)について、8段階のスキルマップを作成し、社員のスキルレベルを評価しています。
*ESCO(European Skills, Competences, Qualifications and Occupations)とは、ヨーロッパ連合(EU)が推進する分類システム。スキル、能力、資格、職業を標準化し、EU加盟国内での労働市場の透明性を高めることを目的としています。ESCOは、教育、訓練、職業案内の分野での相互理解を促進し、労働市場と教育・訓練システム間の連携を強化するための共通言語を提供しています。
・社員のスキルレベルの測定: 定期的な評価を行い、社員の現在のスキルレベルを把握しています。これにより、各社員の強みと改善点を明確にし、個別のキャリアプランを策定します。
・業績とスキルレベルの関係性分析:スキルレベルと業績データを分析し、各スキルレベルが企業の成果にどのように寄与しているかを把握しています。
・必要なレベルの人材の確保: 分析結果を基に、企業戦略達成に必要なスキルレベルの人材を確保するためのトレーニングプログラムや採用戦略を策定しています。
ロ スキルレベルと業績の関係性分析
コア職種の現状の充足状況を可視化するために、コア職種に必要なハードスキルとソフトスキルをESCO基準に基づいて選定しています。次に、当社独自のアセスメント「GROW」によって各従業員が持つハードスキルのレベルを定量化し、それぞれのコア職種におけるスキルレベルを明確にしています。スキルレベルは以下のように設定されています。
この方法により、スキルレベルと業績の関係性を定量的に評価し、社員一人ひとりのパフォーマンスを正確に把握しています。
重点強化職種:セールス/コンサルタントの分析結果~ROIの把握
当社グループでは、売上に直結するセールス/コンサルタント職を「重点強化職種」と位置づけています。今年度の分析でも、スキルレベルと売上との間に正の相関が確認され、スキル向上が業績に寄与する傾向が改めて裏付けられました。こうした分析から、人材投資のROIを把握することができます。
特に、スキルレベル3から4への移行は大きな売上増加に繋がり、スキルレベル4以上になると、売上が顕著に増加するため、特にレベル4以上を目指したトレーニングや教育プログラムが重要です。
現状のスキルレベル4以上の割合は58.6%であり、これを2028年3月末までに80%に引き上げることを目標としています。
前期(2025年3月期)の同割合は48.6%であり、当期は10.0ポイント上昇しました(前期・前々期と同一の基準によります)。この上昇は、当社独自のアセスメント「GROW」で測定する個々の従業員のスキル・コンピテンシーが着実に向上していることを示すものであり、人的資本投資の成果が表れています。引き続き、育成・採用・リテンション(定着)を通じて、上記目標の達成を図ってまいります。
なお、2026年3月期における増収及び営業損失の縮小は、主としてコスト構造改革並びに営業体制の強化及び経営資源の重点的な配分によって実現したものであり、全社的なスキル・コンピテンシー水準の向上に向けた人的資本投資の効果は、中長期にわたって発現するものと位置づけています。
この目標達成に向け、当社は以下の3つの施策を柱として、計画的に取り組んでまいります。
(ⅰ)重点的な育成(ボトムアップ)
最も重要な施策として、層が厚くなったレベル3の従業員をレベル4へ引き上げるための実践的なOJTプログラムや、ハイパフォーマーによる個別のメンタリング制度を導入し、育成を加速させます。
(ⅱ)ハイパフォーマーのリテンション(流出防止)
レベル4以上の従業員に対しては、新たな役割や挑戦的なプロジェクトへのアサイン機会を増やすとともに、成果に報いる報酬制度の改定も視野に入れ、定着率の向上を図ります。
(ⅲ)戦略的な外部採用(トップアップ)
新規採用は限定的ですが、事業計画上、特に必要とされる場合には、即戦力となるレベル4以上のスキルを持つ人材をターゲットとした採用を機動的に行います。
これら「育成」「リテンション」「採用」の三位一体の取り組みを通じて、目標達成の蓋然性を高め、持続的な業績向上に繋げてまいります。
ハ 具体的な取り組みと投資額
職種レベルの引き上げを目標に、全社的に多岐にわたる研修・教育プログラムを実施するとともに、特定のスキルを持つ人材の採用を強化していきます。2027年3月期においては、これらの全社的な取り組みに24百万円を投資する計画です。
この投資の効果(ROI)は、部門の特性に応じて、以下の二つの側面から評価します。
(ⅰ)業績へ直結するROI(セールス部門等)
一つは、セールス/コンサルタント職のような、業績に直接的に貢献する部門への投資効果です。これについては、既に分析したとおり、スキル向上が個人の売上を大幅に向上させることがデータで確認されており、極めて高いリターンが見込めるものと判断しています。
(ⅱ)将来の事業基盤を強化するROI(開発部門等)
もう一つは、開発部門のような、将来の事業基盤を強化する部門への投資効果です。ここでの投資目的は短期的な売上増ではなく、生成AIやブロックチェーンといった先端技術の獲得を通じて、他社にない独自のサービス開発力を維持・強化し、中長期的な競争優位性を確立することです。このリターンは、将来の新製品による収益や、開発サイクルの短縮によるコスト削減といった形で現れる、極めて重要な戦略的投資と位置づけています。
このように、短期的なリターンと中長期的なリターンの両輪で投資効果を最大化し、企業価値向上を目指します。
■ 人的資本(能力)の最大化に向けた取り組みと投資額
ニ AI活用による業務再設計と人的資本の高度化
当社グループは、企業価値の最大化に向け、業務のタスク分解とAIによる代替可能性評価を通じて、AIに任せる業務領域と人が担うべきコア業務領域を再定義する取り組みを進めています。これにより、生産性の向上と、人的資本のコア業務への集中・高度化を同時に実現してまいります。
(ⅰ)AIによるタスク代替の推進
各職種の業務をタスク単位に分解し、AIによる代替可能性を評価したうえで、定型業務・反復業務についてはAI及び自動化ツールによる代替を全社横断的に推進します。これにより創出される経営資源を、人的資本投資及び成長投資に重点的に再配分してまいります。
(ⅱ)人が担うコア業務に必要なスキルの再定義とAI活用スキルの強化
AIによる代替が困難な創造性・対人スキル・戦略思考等を、人が担うべきコア領域と位置づけて再定義します。加えて、AIを使いこなすスキル(プロンプト設計、データ解釈、AIワークフロー設計等)を当社のスキルマップに組み込み、当該領域へのリスキリング投資を集中させることで、従業員一人ひとりの生産性と付加価値創出力を高めてまいります。
2026年3月期は、生成AIの全社導入により活用基盤の整備を完了しました。2027年3月期は、本格的な活用フェーズへと移行し、上記の業務再設計とAI活用スキルの習得を全社横断的に推進してまいります。
b.人的資本を発揮しやすい環境作りに向けた取り組み
当社グループでは、従業員が能力を最大限に発揮できる環境作りを重視しています。その一環として、多様性とインクルージョンを推進し、すべての従業員が安心して働ける職場環境を整えています。また、ハイブリッドワークモデルを導入し、柔軟な働き方を支援することで、ワークライフバランスの向上を図っています。マネージャーとの定期的な1on1やフィードバックセッションを通じて、従業員の意見を取り入れ、職場環境の改善に努めています。これにより、従業員のエンゲージメントと生産性を高め、企業の持続可能な成長を実現しています。
イ DEI(Diversity Equity & Inclusion)の推進
イノベーションにおいてDEIの推進は必須条件であり、特に男女のダイバーシティに関しては積極的に取り組んでいます。「第1 企業の状況 5 従業員の状況等 (4) 管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の額の差異」において開示のとおり、ダイバーシティに関する指標において、当社は既に一定の基準に達しています。今後も高い水準(管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合は40%以上、労働者の男女の賃金の額の差異は90%以上)を目指します。
・正規雇用労働者の男女の賃金の額の差異:2026年3月期実績は86.2%。90%以上の高水準を目指します。
・女性管理職比率: :2026年3月期実績は50%。今後も40%以上の高水準の維持を目指します。
ロ 働き方の柔軟性、企業文化の醸成
オフィスとリモートのハイブリッドワークモデルを採用し、必要に応じて柔軟に働ける環境を提供することで、生産性とワークライフバランスの向上を図ります。
また、全従業員が会社のビジョンとバリューを理解し共感するため全社イベントを定期的に開催することで企業文化の醸成・エンゲージメントの向上、縦横ナナメの関係構築強化、帰属意識の醸成、セクションをまたいだ交流によるナレッジの共有を行います。
ハ エンゲージメントの向上
従業員のエンゲージメントは、人的資本(能力)の発揮度を表す重要な指標と位置付けており、様々な取り組みを通じて従業員エンゲージメントスコアの向上を推進しています。その結果、エンゲージメントスコアは前期の66.8ポイントから65.6ポイントへと1.2ポイント低下いたしました。構造改革から成長フェーズへの移行期の負荷も一因と認識し、下記施策で改善を図ってまいります。
・上司によるコーチングの強化:部長職の重点開発コンピテンシーに「ビジョン」と「影響力の行使」を設定し、組織全体のリーダーシップとコーチング能力の向上を図ります。これにより、上司がメンバーの成長をより効果的に支援し、エンゲージメントを高める好循環を創出します。
・キャリア開発機会の充実: 従業員一人ひとりのキャリア開発の機会をさらに拡充するため、上司とメンバー間の1on1を強化します。これにより、個人の目標設定と成長支援をきめ細かく行い、自律的なキャリア形成を促進することで、エンゲージメントの向上に繋げてまいります。
当社グループは、「人を幸せにする評価と教育で、幸せを作る人、をつくる」をビジョンに掲げ、独自のアセスメント技術「GROW」を基盤に、HR事業、教育事業及びグローバルプラットフォーム事業(旧 グローバル/Web3事業)の3事業を展開しています。「人的資本のスタンダードを、日本から世界へ」をコンセプトとし、評価・教育・ブロックチェーン技術を掛け合わせ、3事業の連携により持続可能な次世代の人材育成基盤の構築を推進してまいります。
当社グループは、2026年3月期までに構造改革を完了し、以降は「利益ある成長」のフェーズへ移行します。中期経営計画(2027年3月期〜2029年3月期)では、a.HR事業の上流シフト(測定サービスから人的資本IRパートナーへ)、b.教育事業のチャネル転換(個別校営業から自治体・パートナー連携による教育エコシステムへ)、c.グローバルプラットフォーム事業の日印GCCコリドーと集合知プラットフォームの展開、という3つの構造転換を成長戦略の柱とし、2029年3月期に売上収益2,200百万円・営業利益率約16%を目指します。この持続的な成長の実現には多様かつ優秀な人材が不可欠であり、人的資本の最大化を最優先課題として、従業員一人ひとりの成長を支援し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
<経営戦略と人材戦略の連関>当社グループは、上記の連結ベースの経営方針及び経営戦略を実現する原動力は人的資本であると位置づけ、経営戦略と人材戦略を一体のものとして策定・運用しています。中期経営計画における三つの構造転換と、その実現に不可欠な人材要件、及びこれに対応する人材戦略上の重点施策の関係は、次のとおりです。
a.HR事業の上流シフト(測定サービスから人的資本IRパートナーへ)
人的資本IR・人的資本デューデリジェンス及び組織コンサルティングを担うコンサルタント人材の確保・育成を重点とします。売上に直結するセールス/コンサルタント職を「重点強化職種」と位置づけ、スキルレベルの底上げ(レベル4以上比率の引き上げ)により顧客深耕力と提案力を高めます。
b.教育事業のチャネル転換(個別校営業から教育エコシステムへ)
自治体・教育委員会及びパートナーとの連携を推進する渉外・事業開発人材の確保・育成を重点とします。
c.グローバルプラットフォーム事業の日印GCCコリドー・集合知プラットフォーム
海外展開を牽引するグローバル人材及びブロックチェーン・予測市場等の先端技術人材の確保・強化に加え、全社的なAI活用スキルへのリスキリングを推進し、生産性の向上と独自のサービス開発力を確保します。
これらの人材要件を充足するため、当社グループは、人材の育成に関する方針として「人的資本(能力)の最大化」を、社内環境整備に関する方針として「人的資本の発揮度(環境)の向上」を定め、両者を一体の人材戦略として推進しています。各方針の具体的な取り組み並びに指標及び目標は、後記a.b.及び「② 指標及び目標」に記載のとおりです。
<人的資本戦略>当社グループは、優秀な人材の採用と育成を戦略的な投資と位置づけています。当社グループの事業は、社会全体の人的資本の成長に貢献するシステム構築を目指しており、全社一丸となって取り組んでいます。特に、2027年3月期はAI活用による業務再設計を本格化させ、定型業務のAI代替によって創出される経営資源を、人が担うコア業務のスキル高度化(AIを活用するスキルを含む)へ重点的に再配分してまいります。
具体的には、企業価値への貢献を「人的資本(能力)」と「人的資本の発揮度(環境)」の掛け合わせと捉え、効果的な人材戦略を推進しています。これはベッカー教授の人的資本理論に基づき、一橋大学大学院の研究会が提唱するモデルです。企業戦略に基づき、スキルの習得と活用を含む人的資本(能力)を定義し、ROIを意識した投資を行うことで企業価値の最大化を図っています。また、人的資本を効果的に発揮するための環境整備とリスク管理にも力を入れています。
■ 人的資本と企業価値のフレームワーク

[人的資本(能力)への投資]
既存の従業員には、下記に示す通り中長期的な事業戦略実施を行う最適人的資本を目指し、継続的なスキルアップとキャリア開発のため積極的な投資をしています。営業・事業開発・カスタマーサクセス・開発・マネジメントの各領域で、それぞれの業務特性に合わせた専門研修を実施し、スキル水準の底上げを図っています。とりわけ営業力強化やBtoBマーケティング、アジャイル開発、ロジカルシンキング、経営基礎といった研修は、スキルアップに着実な改善傾向をもたらしました。なお、費用面では厚生労働省の「人材開発支援助成金」をはじめとする公的補助制度を積極的に活用し、研修費用の一部を補填することでコスト効率にも配慮しています。
また、中期的な事業戦略と照合しスキルマップの点検を行いました。各職種やレベルで求められる要件を精緻化した新版スキルマップは、今期以降の評価制度や配置検討の指針として運用を始めています。人的資本に対する投資効果は中長期で顕在化すると見込んでおり、半期ごとにモニタリングを行っています。
採用に関しては、足元の事業環境を踏まえ、新規採用を限定し、既存組織の育成と最適配置を優先することで、事業環境の変化に対応できる体制を構築しています。
生産性向上に直結するスキル領域への重点的な投資を行い、個々の成長と組織成果の連動性を一層高め、中長期的な企業価値向上につなげてまいります。
[人的資本の発揮度(環境)への投資]
ダイバーシティの推進も重視しています。現在、女性管理職の比率は50%と高水準を維持しています。持続的な成長のため、従業員の成長意識の向上や幸福度、目標に向けたコミットメントの向上にも積極的に取り組んでいます。
[人材投資のROIについて]
当社は、人材投資のROIを、短期的な財務インパクトのみならず、中長期的な企業価値向上に繋がる非財務指標(先行指標)の変化も含めて多角的に測定しています。
2026年3月期は、人材の確保・育成のため、採用費及び研修費を合わせて3百万円の人的資本投資を実施しました。当期の売上高は603百万円→659百万円(前年同期比9.3%増)、従業員一人当たり売上高は11百万円→17百万円(同 46.0%増)となり、人的資本の生産性が向上しました。当社は個人のスキルレベルと売上との間に正の相関を確認しており、これらを人的資本投資の投資対効果の目安として位置づけています。なお、投資額の大部分を占める採用費の効果は、新たに加わった人材の戦力化を通じて中長期にわたり本格的に発現するものと位置づけています。
(ⅰ)スキルレベルの向上: 重点強化職種であるセールス/コンサルタント職において、研修によりジュニアレベル(レベル2以下)の割合が減少し、レベル3の層が厚くなるなど、スキル水準の着実な底上げが確認できました。個人のスキルレベルと売上額には強い正の相関があるため、このスキル底上げは将来の業績向上の基盤となります。
(ⅱ)エンゲージメントの向上:従業員エンゲージメントスコアは、前期の66.8ポイントから65.6ポイントへと1.2ポイント低下しました。
a.人的資本(能力)の最大化に向けた取り組み
当社グループでは、人的資本理論の実証化研究会のフレームワークに基づき、従業員のスキルを定量化して管理し、能力の最大化を目指しています。スキルマップを活用して、各従業員のスキルレベルを明確にし、必要なトレーニングやキャリア開発プランを提供しています。さらに、スキルと業績の関連性を分析し、人的資本のROIを最大化するための施策を講じています。このような体系的なアプローチにより、従業員の持つ能力を引き出し、企業の成長と持続可能な発展を支えています。
イ スキルマップに基づいた人的資本(能力)の測定
事業戦略をもとにグローバル基準(ESCO*)に従い、事業戦略達成に特に重要とされる11のコア職種(セールス/コンサルタント、データアナリスト、プロダクトマネージャー、エンジニアなど)について、8段階のスキルマップを作成し、社員のスキルレベルを評価しています。
*ESCO(European Skills, Competences, Qualifications and Occupations)とは、ヨーロッパ連合(EU)が推進する分類システム。スキル、能力、資格、職業を標準化し、EU加盟国内での労働市場の透明性を高めることを目的としています。ESCOは、教育、訓練、職業案内の分野での相互理解を促進し、労働市場と教育・訓練システム間の連携を強化するための共通言語を提供しています。
・社員のスキルレベルの測定: 定期的な評価を行い、社員の現在のスキルレベルを把握しています。これにより、各社員の強みと改善点を明確にし、個別のキャリアプランを策定します。
・業績とスキルレベルの関係性分析:スキルレベルと業績データを分析し、各スキルレベルが企業の成果にどのように寄与しているかを把握しています。
・必要なレベルの人材の確保: 分析結果を基に、企業戦略達成に必要なスキルレベルの人材を確保するためのトレーニングプログラムや採用戦略を策定しています。
ロ スキルレベルと業績の関係性分析コア職種の現状の充足状況を可視化するために、コア職種に必要なハードスキルとソフトスキルをESCO基準に基づいて選定しています。次に、当社独自のアセスメント「GROW」によって各従業員が持つハードスキルのレベルを定量化し、それぞれのコア職種におけるスキルレベルを明確にしています。スキルレベルは以下のように設定されています。
| スキル レベル | 説 明 |
| 1 | 上席者の指示や指導に従って、作業ができる |
| 2 | 上席者の指示に従い、計画的に業務遂行できる |
| 3 | 業務の基礎知識があり、一般的な業務の一部を担当できる |
| 4 | 業務の基礎知識があり、一般的な業務全体を担当できる。他者の一般的な業務をチェックできる |
| 5 | 広範な業務知識があり、イレギュラーな業務にも対応できる。他者の一般的な業務を指導できる |
| 6 | イレギュラーな業務を監督・指導しながら、案件をハンドリングできる |
| 7 | 複雑な案件であっても、今後を見据え、戦略的に対応しつつ、成果に結びつけられる |
| 8 | 複数の複雑な案件について成果を生み出しつつ、長期視点でビジネスの発展や作業プロセス改善に貢献できる |
この方法により、スキルレベルと業績の関係性を定量的に評価し、社員一人ひとりのパフォーマンスを正確に把握しています。
重点強化職種:セールス/コンサルタントの分析結果~ROIの把握
当社グループでは、売上に直結するセールス/コンサルタント職を「重点強化職種」と位置づけています。今年度の分析でも、スキルレベルと売上との間に正の相関が確認され、スキル向上が業績に寄与する傾向が改めて裏付けられました。こうした分析から、人材投資のROIを把握することができます。
特に、スキルレベル3から4への移行は大きな売上増加に繋がり、スキルレベル4以上になると、売上が顕著に増加するため、特にレベル4以上を目指したトレーニングや教育プログラムが重要です。
現状のスキルレベル4以上の割合は58.6%であり、これを2028年3月末までに80%に引き上げることを目標としています。
前期(2025年3月期)の同割合は48.6%であり、当期は10.0ポイント上昇しました(前期・前々期と同一の基準によります)。この上昇は、当社独自のアセスメント「GROW」で測定する個々の従業員のスキル・コンピテンシーが着実に向上していることを示すものであり、人的資本投資の成果が表れています。引き続き、育成・採用・リテンション(定着)を通じて、上記目標の達成を図ってまいります。
なお、2026年3月期における増収及び営業損失の縮小は、主としてコスト構造改革並びに営業体制の強化及び経営資源の重点的な配分によって実現したものであり、全社的なスキル・コンピテンシー水準の向上に向けた人的資本投資の効果は、中長期にわたって発現するものと位置づけています。
この目標達成に向け、当社は以下の3つの施策を柱として、計画的に取り組んでまいります。
(ⅰ)重点的な育成(ボトムアップ)
最も重要な施策として、層が厚くなったレベル3の従業員をレベル4へ引き上げるための実践的なOJTプログラムや、ハイパフォーマーによる個別のメンタリング制度を導入し、育成を加速させます。
(ⅱ)ハイパフォーマーのリテンション(流出防止)
レベル4以上の従業員に対しては、新たな役割や挑戦的なプロジェクトへのアサイン機会を増やすとともに、成果に報いる報酬制度の改定も視野に入れ、定着率の向上を図ります。
(ⅲ)戦略的な外部採用(トップアップ)
新規採用は限定的ですが、事業計画上、特に必要とされる場合には、即戦力となるレベル4以上のスキルを持つ人材をターゲットとした採用を機動的に行います。
これら「育成」「リテンション」「採用」の三位一体の取り組みを通じて、目標達成の蓋然性を高め、持続的な業績向上に繋げてまいります。
ハ 具体的な取り組みと投資額
職種レベルの引き上げを目標に、全社的に多岐にわたる研修・教育プログラムを実施するとともに、特定のスキルを持つ人材の採用を強化していきます。2027年3月期においては、これらの全社的な取り組みに24百万円を投資する計画です。
この投資の効果(ROI)は、部門の特性に応じて、以下の二つの側面から評価します。
(ⅰ)業績へ直結するROI(セールス部門等)
一つは、セールス/コンサルタント職のような、業績に直接的に貢献する部門への投資効果です。これについては、既に分析したとおり、スキル向上が個人の売上を大幅に向上させることがデータで確認されており、極めて高いリターンが見込めるものと判断しています。
(ⅱ)将来の事業基盤を強化するROI(開発部門等)
もう一つは、開発部門のような、将来の事業基盤を強化する部門への投資効果です。ここでの投資目的は短期的な売上増ではなく、生成AIやブロックチェーンといった先端技術の獲得を通じて、他社にない独自のサービス開発力を維持・強化し、中長期的な競争優位性を確立することです。このリターンは、将来の新製品による収益や、開発サイクルの短縮によるコスト削減といった形で現れる、極めて重要な戦略的投資と位置づけています。
このように、短期的なリターンと中長期的なリターンの両輪で投資効果を最大化し、企業価値向上を目指します。
■ 人的資本(能力)の最大化に向けた取り組みと投資額
| 戦略 | 実施内容 | 詳細 | 人材戦略投資額 |
| 人的資本(能力)の向上 | 研修・教育プログラム | 各職種のハードスキルとコンピテンシーのレベルアップのために、内部研修を導入。例えばセールス/コンサルタントについては、コミュニケーション、タイムマネジメント、ビジネス分析、プロジェクト管理、リーダーシップ、問題解決、交渉、戦略思考の研修を予定。 | 24百万円 |
| 採用戦略 | 足元の事業環境を踏まえ、新規採用を限定。特定のスキルや高いスキルレベルを持つ人材をターゲットにした採用活動を強化。 | ||
| キャリアパスの構築 | 全社員が半期ごとに成果目標・行動目標及び学び支援制度活用の方向性・及びそれに紐づくキャリアプランを設定、半期末に目標に対する達成度等を確認するサイクルを通じて継続的なキャリアパス構築を支援。 |
ニ AI活用による業務再設計と人的資本の高度化
当社グループは、企業価値の最大化に向け、業務のタスク分解とAIによる代替可能性評価を通じて、AIに任せる業務領域と人が担うべきコア業務領域を再定義する取り組みを進めています。これにより、生産性の向上と、人的資本のコア業務への集中・高度化を同時に実現してまいります。
(ⅰ)AIによるタスク代替の推進
各職種の業務をタスク単位に分解し、AIによる代替可能性を評価したうえで、定型業務・反復業務についてはAI及び自動化ツールによる代替を全社横断的に推進します。これにより創出される経営資源を、人的資本投資及び成長投資に重点的に再配分してまいります。
(ⅱ)人が担うコア業務に必要なスキルの再定義とAI活用スキルの強化
AIによる代替が困難な創造性・対人スキル・戦略思考等を、人が担うべきコア領域と位置づけて再定義します。加えて、AIを使いこなすスキル(プロンプト設計、データ解釈、AIワークフロー設計等)を当社のスキルマップに組み込み、当該領域へのリスキリング投資を集中させることで、従業員一人ひとりの生産性と付加価値創出力を高めてまいります。
2026年3月期は、生成AIの全社導入により活用基盤の整備を完了しました。2027年3月期は、本格的な活用フェーズへと移行し、上記の業務再設計とAI活用スキルの習得を全社横断的に推進してまいります。
b.人的資本を発揮しやすい環境作りに向けた取り組み
当社グループでは、従業員が能力を最大限に発揮できる環境作りを重視しています。その一環として、多様性とインクルージョンを推進し、すべての従業員が安心して働ける職場環境を整えています。また、ハイブリッドワークモデルを導入し、柔軟な働き方を支援することで、ワークライフバランスの向上を図っています。マネージャーとの定期的な1on1やフィードバックセッションを通じて、従業員の意見を取り入れ、職場環境の改善に努めています。これにより、従業員のエンゲージメントと生産性を高め、企業の持続可能な成長を実現しています。
イ DEI(Diversity Equity & Inclusion)の推進
イノベーションにおいてDEIの推進は必須条件であり、特に男女のダイバーシティに関しては積極的に取り組んでいます。「第1 企業の状況 5 従業員の状況等 (4) 管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の額の差異」において開示のとおり、ダイバーシティに関する指標において、当社は既に一定の基準に達しています。今後も高い水準(管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合は40%以上、労働者の男女の賃金の額の差異は90%以上)を目指します。
・正規雇用労働者の男女の賃金の額の差異:2026年3月期実績は86.2%。90%以上の高水準を目指します。
・女性管理職比率: :2026年3月期実績は50%。今後も40%以上の高水準の維持を目指します。
ロ 働き方の柔軟性、企業文化の醸成
オフィスとリモートのハイブリッドワークモデルを採用し、必要に応じて柔軟に働ける環境を提供することで、生産性とワークライフバランスの向上を図ります。
また、全従業員が会社のビジョンとバリューを理解し共感するため全社イベントを定期的に開催することで企業文化の醸成・エンゲージメントの向上、縦横ナナメの関係構築強化、帰属意識の醸成、セクションをまたいだ交流によるナレッジの共有を行います。
ハ エンゲージメントの向上
従業員のエンゲージメントは、人的資本(能力)の発揮度を表す重要な指標と位置付けており、様々な取り組みを通じて従業員エンゲージメントスコアの向上を推進しています。その結果、エンゲージメントスコアは前期の66.8ポイントから65.6ポイントへと1.2ポイント低下いたしました。構造改革から成長フェーズへの移行期の負荷も一因と認識し、下記施策で改善を図ってまいります。
・上司によるコーチングの強化:部長職の重点開発コンピテンシーに「ビジョン」と「影響力の行使」を設定し、組織全体のリーダーシップとコーチング能力の向上を図ります。これにより、上司がメンバーの成長をより効果的に支援し、エンゲージメントを高める好循環を創出します。
・キャリア開発機会の充実: 従業員一人ひとりのキャリア開発の機会をさらに拡充するため、上司とメンバー間の1on1を強化します。これにより、個人の目標設定と成長支援をきめ細かく行い、自律的なキャリア形成を促進することで、エンゲージメントの向上に繋げてまいります。