有価証券報告書-第13期(2025/01/01-2025/12/31)
有報資料
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、「エネルギーデータの力で、暮らしの未来を変えていく。」ことをミッションとして、[エネルギー×AI]をコア技術に、エネルギー最適化ソリューションを提供することで、日本で、世界で、カーボンニュートラルの社会実装に挑み続けております。
(2) 目標とする経営指標
当社グループのエナジー・インフォマティクス事業は、エネルギーデータから多様な価値を創出し、各種サービスをSaaS型で提供するものであります。
従来の売り切り型の収益モデルにおいては、売上高がそのまま成長指標として扱われるのが一般的でありますが、SaaS型収益モデルにおいては、期間ごとの売上・収益を累計していくことにより、事業を成長させるため、売上高だけでは、正しく成長率を捉えることができません。
そこで、当社グループでは、事業の成長率を正しく評価するための基準として、ARR(注1)を経営指標として位置付けております。

注1 ARR(Annual Recurring Revenue):日本語で「年次経常収益」と呼ばれ、毎年繰り返し得られる収益・売上のことをいい、各期末の直前の6か月間のMRR(注2)の平均値を12倍して算出しております。
注2 MRR(Monthly Recurring Revenue):日本語で「月次経常収益」と呼ばれ、毎月繰り返し得られる収益・売上のことをいい、当社グループでは、「プラットフォーム・アプリ提供」に区分される収益・売上に加え、「その他」に区分される収益・売上のうち、繰り返し得られる収益・売上も含んでおります。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
経営方針に沿った経営を行うためには、急速な変化を遂げるエネルギー関連業界の中で、(ⅰ)AI(機械学習)を活用したNILM技術や電力利用を管理・最適化する技術、(ⅱ)電力データを利活用するための技術について、進化・革新の積み重ね、及び(ⅲ)社会の課題を解決する新しいサービスを提供することが必要となります。
そこで、当社グループは、以下の3つの経営戦略を推進し、エナジー・インフォマティクス事業のトップブランドとして認知される企業を目指してまいります。
① 次世代(第2世代)スマートメーターによるパラダイムシフトへの取組み
2014年から本格導入が開始された現行スマートメーターについて、2026年から順次新たなメーターへの交換が始まっております。
2026年からの導入に向けて仕様の策定が進められていた国内の次世代(第2世代)スマートメーターにおいては、その計量部の仕様として、当社の電力データ分析方式と互換性のある計測方式が採用されたことは先述のとおりであります。
これにより、次世代(第2世代)スマートメーターにおける電力データから取得し得る情報量は、現行スマートメーターにおける情報量から飛躍的に向上し、その分析から得られる情報価値も非連続に大きく、また幅広くなり、電力利用効率の最適化のみならず、電力消費者向けに、より安価にIoTのある暮らしを実現するといったような、新たな価値を創造することも可能になります。
これに向けて、当社グループでは、設立以来10年以上に渡り独自に蓄積してきた当該技術方式によるデータの分析ノウハウをさらに高めるとともに、次世代(第2世代)スマートメーターから得られる電力データを活用した電力消費者向けのサービスを拡充することで、電力消費者との接点を拡大し、そこで得られた新たなデータ・ノウハウを活用して、さらに電力消費者向けのサービスを拡充し続けるという好循環を創り出すとともに、このサービスで拡大した電力消費者との接点を活用して、電力事業者向けのサービスを拡充するための技術・サービスの開発に着手しております。
具体的には、高齢化社会に向けた見守り、ヘルスケアサービスの拡充によって、電力領域以外での価値から電力消費者との接点を拡大させ、それと現在の電力消費者向けサービスを融合させた、行動変容型の電力利用効率の最適化へ向けた技術・サービスの開発にも着手しております。加えて堅牢な電力系統設備を支えるための焼損予兆検知技術・サービスや、広域における需要内訳分析の精度を追求する技術・サービス、また、電力事業者向けデマンドレスポンス(DR)支援サービスから発展したリソースアグリゲーション(RA)向けの技術・サービスの開発にも着手をしております。
さらに、次世代(第2世代)スマートメーターの仕様策定に際して、当社グループ独自の電力波形センサリング技術が日本国のみならず海外でも採用されるための一助として、当社グループでは、経済産業省からの6年にまたがる受託事業を通じて、NILMの国際規格案の国際標準規格化を国際的に推進することに貢献し、2025年6月25日に国際電気標準会議(IEC)にて、正式に国際標準規格として発行されました。
② アライアンス体制・強化
電力データは、電力データ以外の技術との組み合わせによる新たなサービスの創出が期待されております。
当社グループにおいても、新規事業の創出を目指しておりますが、そのためには、国内外のエネルギー関連企業や、各業界を代表する企業から秘匿性の高いデータを取得することが必要になります。
当社グループでは、東京電力グループや関西電力グループなどを中心としたエネルギー関連企業、株式会社日立製作所、ダイキン工業株式会社、株式会社博報堂DYホールディングス、伊藤忠エネクス株式会社や株式会社フォーバルなどとアライアンス体制を構築し、秘匿性の高いデータを継続的に取得できる体制を整えておりますが、引き続き、電力データを活用した付加価値創造を成長に結びつけられていない業界・業種を中心に、アライアンス体制の構築・強化に努めてまいります。
③ 海外展開
特に欧州圏においてエネルギー問題への意識が高まっていることから、当社グループは、欧州圏の事業及び技術開発拠点として英国に子会社を設立し、現地企業や日本企業の現地法人との実証実験を行う等、活動領域を拡大させております。
今後は、英国における活動をさらに深化させつつ、欧州各国への展開を加速し、欧州全体での事業実績と技術的優位性の確立を図ってまいります。さらに、欧州で得られた知見やネットワークを活用し、アジアをはじめとする他地域への展開も視野に、グローバルな成長戦略を推進してまいります。
(4) 経営環境
当社グループが関連するエネルギー業界では、2015年の国連サミットでの持続可能な開発目標(SDGs)の採択や2015年の第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)でのパリ協定の採択以降、世界的な脱炭素化の流れの中で、米国のバイデン大統領は就任した2021年1月20日にトランプ前政権が離脱したパリ協定への復帰を指示し、二酸化炭素などの温室効果ガス排出量を実質的にゼロにする「ゼロエミッション」の目標を改めて掲げました。また、2021年10月31日から2週間に渡って開催された第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)で、2030年までに気温上昇を1.5度に抑制する対策を進めるために必要不可欠な国際ルールが決定し、さらに地球温暖化の最大要因として石炭火力削減方針が初めてCOP決定に明記されるなど、脱炭素化の流れが強まったことを受けて、温室効果ガスの排出を削減するため、太陽光、風力や地熱などの再エネの活用拡大が期待されております。
我が国においても、2020年10月26日に、当時の菅内閣総理大臣が「2050年カーボンニュートラル」の実現という国際公約を掲げ、気候変動問題に対して国家として取り組む強い決意を表明しました。
さらに2021年4月には、同総理大臣が地球温暖化対策推進本部および米国主催の気候サミットにおいて、「2050年目標と整合的で、野心的な目標として、2030年度に温室効果ガスを2013年度比で46%削減することを目指し、50%の高みに向けて挑戦を続ける」と表明し、中長期的な削減目標が明確化されました。
その後、我が国では、これらの目標達成に向けてグリーン成長戦略や第6次エネルギー基本計画などの各種戦略が策定されるとともに、その実行に向けた施策を検討するため、GX実行会議等が開催されました。2022年12月22日の第5回GX実行会議では、「GX実現に向けた基本方針~今後10年を見据えたロードマップ~」が取りまとめられ、その後、2023年2月10日に閣議決定が行われ、GX基本方針として正式に公表されました。GX基本方針は、2050年カーボンニュートラルおよび2030年度の温室効果ガス排出削減目標の達成に向けた取組を経済成長の機会として位置付け、温室効果ガス排出削減と経済成長・産業競争力向上の同時実現に向けて、経済社会システム全体を変革することを目指すものであり、脱炭素社会に向けた技術革新や再生可能エネルギーの導入拡大の重要性が強調されています。
さらに、最新のエネルギー政策としては、第7次エネルギー基本計画のもと、再生可能エネルギーの導入拡大や電力系統の増強、蓄電システム・分散電源などGXに資するインフラ整備が進められているほか、エネルギー安定供給と脱炭素を両立させる観点から、電力需給の柔軟性確保に向けたデマンドレスポンス(DR)支援サービスの活用など、需給調整力の強化に向けた取り組みが拡大しております。
こうした政策・市場環境の進展を背景に、電力利用効率の最適化という観点から、当社グループが一次ターゲットとしているエネルギーデジタルビジネス/DX関連市場は、2025年度には5,003億円に、2035年には9,092億円に及ぶと見込まれております(出所:株式会社富士経済、エネルギーデジタルビジネス/DX市場の現状と将来展望 2022)。
海外においては、特に当社グループが注力する欧州圏で顕著な動きが見られます。EU域内ではエネルギー自給率が低く、ロシアからの天然ガス依存からの脱却を図るため、REPowerEU計画のもと再生可能エネルギーの急速な導入拡大が進められており、2030年までに再エネ比率を45%まで引き上げる目標が設定されています。地理的特性を活かした洋上風力発電が飛躍的に拡大しているほか、太陽光発電(PV)も補助金制度の強化により普及が進み、2024年時点でEU全体の電力に占める再エネ比率は約44%に達するなど、世界最高水準となっています。
一方、再エネの天候依存性による出力変動が大きいこと、また電力市場自由化の進展に伴う価格高騰リスクが顕在化していることから、需給バランスの崩れによるブラックアウト懸念が高まっており、電力供給の安定化・最適化を実現するスマートグリッドの構築がEUグリーンディールの中核政策として急務となっています。
スマートグリッドを構成する基幹技術は、送配電網の高度化だけでなく、需要家側の電力需給管理技術も不可欠ですが、特に重要性を増しているのが、需要家ごとの詳細な電力消費データをリアルタイム取得・分析するスマートメーターや、機器分離推定技術(NILM)を活用した次世代センサリングシステムです。
当社グループは、こうした脱炭素化・デジタル化のグローバル潮流を追い風に、国内外のエネルギーデジタルビジネス/DX市場での成長基盤を強化した上で、電力データ活用による新たな価値創造を通じて、ヘルスケア業領域、社会インフラ業領域、公共/教育業領域、インターネット広告市場をはじめとする様々な分野・新市場へ進出してまいります。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 業績の回復
当社グループは第12期において、継続していた赤字を解消することを目指し、事業基盤の強化及び経営効率の向上に向けた取り組みを進めてまいりました。これらの施策が実を結び、同期には黒字を計上することができました。
一方、第13期は、主要取引先(大口顧客)である大手賃貸事業者との取引が当社グループの想定に反して急遽終了するなど、外部要因の影響を受け、業績が悪化し、最終的に大幅な赤字となりました。
このような状況を受け、当社グループは「業績の回復」を最優先課題として取り組んでおります。
特に、電力需給の逼迫リスクが高まる中で注目されるデマンドレスポンス(DR)支援サービス分野では、「BridgeLAB DR」に成果報酬型メニューを新設し、法人顧客が導入しやすい仕組みを整備いたしました。さらに、「BridgeLAB DR」を導入いただいた法人顧客を中心に、DR運用で得られるデータを活用できるアップセルサービスとして、「エネルギーマネジメント診断サービス」や、電力利用の可視化・分析を簡易に行える「NILM Lite」の開発・提供を進めております。
また、売上回復を急ぐ一方で、固定費の抑制、人員配置の最適化、外注費の見直し、業務プロセスの効率化など、コスト管理にも継続的に取り組み、損益分岐点の引き下げに努めております。
今後もこれらの取り組みを通じて、足元の課題に正面から向き合いながら、持続的な成長を実現するための基盤づくりを着実に進めてまいります。
② 財政基盤の改善
当社グループは第12期において、東京証券取引所グロース市場への上場を達成し、公募増資により自己資本の充実を図ることで、財務基盤の強化を実現いたしました。
一方、第13期は、主要取引先(大口顧客)である大手賃貸事業者との取引が当社グループの想定に反して急遽終了するなど、外部要因の影響を受け、業績が悪化し、損益面では大幅な赤字を計上する結果となりました。
これらの業績の推移を踏まえ、当社グループは引き続き慎重な資金管理が求められる状況にあると認識しております。
今後は、前述の施策により業績の回復に努め、営業キャッシュ・フローの改善を図るとともに、取引金融機関からの継続的な支援に加え、第三者割当による新株予約権(MSワラント)の発行等を通じて、事業運営に必要な資金を確保し、財務基盤の一層の強化に努めてまいります。
③ 優秀な人材の確保・育成
当社グループの事業は、「エネルギー」と「テクノロジー」を融合させ、最先端のAI技術などを活用してエネルギーデータの価値を引き出し、脱炭素化などの社会課題に貢献するものであります。その実現には、特にエネルギー領域とAI技術をはじめとするテクノロジー領域の両方に精通した人材を継続的に確保することが重要であると考えております。
こうした課題に対応するため、当社グループは、エネルギーとテクノロジーの両領域に精通した優秀な人材の採用を強化するとともに、従業員に対して当社の経験とノウハウを活かした多様で有益な研修を計画的に実施し、人材の育成に取り組んでまいります。
④ 分析技術の強化と特許対策
当社グループは、NILM(機器分離推定技術)をはじめとするAI関連技術を中核とした分析技術こそが、当社の競争力の源泉であると認識しております。そのため、継続的な分析技術の強化に加え、他社のサービスとの差別化を図るべく、分析技術に関する特許権などの知的財産権を積極的に取得し、自社の権利を保護することが重要であると考えております。
こうした課題に対応するため、当社グループは、知的財産権に精通した人材の確保に加え、顧問弁理士などの専門家と連携し、権利化可能な技術について迅速に権利化を進めてまいります。
⑤ アライアンスパートナー戦略
脱炭素化を実現するためには、まずエネルギーデータを活用し、生活の質を向上させながらエネルギーの効率的な利用を促進することが重要であります。特に、エネルギー関連企業とのアライアンスを構築することが、脱炭素化の推進において重要な役割を果たすと考えております。
さらに、脱炭素化の実現には、エネルギーの効率的利用に貢献するサービスの提供だけでなく、「エネルギー+α」の付加価値を生み出すサービスを提供することも必要であります。これにより、当社グループのサービスの普及を促進し、社会インフラとしての定着を目指してまいります。
こうした課題に対応するため、当社グループは、エネルギー関連企業とのアライアンスに加え、エネルギーデータを活用した付加価値の創出に寄与する、異業種企業とのアライアンスにも積極的に取り組んでまいります。
⑥ コーポレート・ガバナンス体制及び内部管理体制の強化
当社グループは現在、成長過程にあり、業務運営の効率化やリスク管理のために内部管理体制の強化が重要な課題であると考えております。事業の効率的な拡大を実現するため、コンプライアンスの徹底と内部統制の強化を最優先事項として認識しております。
これまでも体制整備を進めてまいりましたが、事業規模の拡大に伴い、今後は人的補充を行いながら、定期的な内部監査を実施し、コンプライアンス体制をさらに強化してまいります。また、監査役による監査を通じて、コーポレート・ガバナンスの一層の向上を図ってまいります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、「エネルギーデータの力で、暮らしの未来を変えていく。」ことをミッションとして、[エネルギー×AI]をコア技術に、エネルギー最適化ソリューションを提供することで、日本で、世界で、カーボンニュートラルの社会実装に挑み続けております。
(2) 目標とする経営指標
当社グループのエナジー・インフォマティクス事業は、エネルギーデータから多様な価値を創出し、各種サービスをSaaS型で提供するものであります。
従来の売り切り型の収益モデルにおいては、売上高がそのまま成長指標として扱われるのが一般的でありますが、SaaS型収益モデルにおいては、期間ごとの売上・収益を累計していくことにより、事業を成長させるため、売上高だけでは、正しく成長率を捉えることができません。
そこで、当社グループでは、事業の成長率を正しく評価するための基準として、ARR(注1)を経営指標として位置付けております。

注1 ARR(Annual Recurring Revenue):日本語で「年次経常収益」と呼ばれ、毎年繰り返し得られる収益・売上のことをいい、各期末の直前の6か月間のMRR(注2)の平均値を12倍して算出しております。
注2 MRR(Monthly Recurring Revenue):日本語で「月次経常収益」と呼ばれ、毎月繰り返し得られる収益・売上のことをいい、当社グループでは、「プラットフォーム・アプリ提供」に区分される収益・売上に加え、「その他」に区分される収益・売上のうち、繰り返し得られる収益・売上も含んでおります。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
経営方針に沿った経営を行うためには、急速な変化を遂げるエネルギー関連業界の中で、(ⅰ)AI(機械学習)を活用したNILM技術や電力利用を管理・最適化する技術、(ⅱ)電力データを利活用するための技術について、進化・革新の積み重ね、及び(ⅲ)社会の課題を解決する新しいサービスを提供することが必要となります。
そこで、当社グループは、以下の3つの経営戦略を推進し、エナジー・インフォマティクス事業のトップブランドとして認知される企業を目指してまいります。
① 次世代(第2世代)スマートメーターによるパラダイムシフトへの取組み
2014年から本格導入が開始された現行スマートメーターについて、2026年から順次新たなメーターへの交換が始まっております。
2026年からの導入に向けて仕様の策定が進められていた国内の次世代(第2世代)スマートメーターにおいては、その計量部の仕様として、当社の電力データ分析方式と互換性のある計測方式が採用されたことは先述のとおりであります。
これにより、次世代(第2世代)スマートメーターにおける電力データから取得し得る情報量は、現行スマートメーターにおける情報量から飛躍的に向上し、その分析から得られる情報価値も非連続に大きく、また幅広くなり、電力利用効率の最適化のみならず、電力消費者向けに、より安価にIoTのある暮らしを実現するといったような、新たな価値を創造することも可能になります。
これに向けて、当社グループでは、設立以来10年以上に渡り独自に蓄積してきた当該技術方式によるデータの分析ノウハウをさらに高めるとともに、次世代(第2世代)スマートメーターから得られる電力データを活用した電力消費者向けのサービスを拡充することで、電力消費者との接点を拡大し、そこで得られた新たなデータ・ノウハウを活用して、さらに電力消費者向けのサービスを拡充し続けるという好循環を創り出すとともに、このサービスで拡大した電力消費者との接点を活用して、電力事業者向けのサービスを拡充するための技術・サービスの開発に着手しております。
具体的には、高齢化社会に向けた見守り、ヘルスケアサービスの拡充によって、電力領域以外での価値から電力消費者との接点を拡大させ、それと現在の電力消費者向けサービスを融合させた、行動変容型の電力利用効率の最適化へ向けた技術・サービスの開発にも着手しております。加えて堅牢な電力系統設備を支えるための焼損予兆検知技術・サービスや、広域における需要内訳分析の精度を追求する技術・サービス、また、電力事業者向けデマンドレスポンス(DR)支援サービスから発展したリソースアグリゲーション(RA)向けの技術・サービスの開発にも着手をしております。
さらに、次世代(第2世代)スマートメーターの仕様策定に際して、当社グループ独自の電力波形センサリング技術が日本国のみならず海外でも採用されるための一助として、当社グループでは、経済産業省からの6年にまたがる受託事業を通じて、NILMの国際規格案の国際標準規格化を国際的に推進することに貢献し、2025年6月25日に国際電気標準会議(IEC)にて、正式に国際標準規格として発行されました。
② アライアンス体制・強化
電力データは、電力データ以外の技術との組み合わせによる新たなサービスの創出が期待されております。
当社グループにおいても、新規事業の創出を目指しておりますが、そのためには、国内外のエネルギー関連企業や、各業界を代表する企業から秘匿性の高いデータを取得することが必要になります。
当社グループでは、東京電力グループや関西電力グループなどを中心としたエネルギー関連企業、株式会社日立製作所、ダイキン工業株式会社、株式会社博報堂DYホールディングス、伊藤忠エネクス株式会社や株式会社フォーバルなどとアライアンス体制を構築し、秘匿性の高いデータを継続的に取得できる体制を整えておりますが、引き続き、電力データを活用した付加価値創造を成長に結びつけられていない業界・業種を中心に、アライアンス体制の構築・強化に努めてまいります。
③ 海外展開
特に欧州圏においてエネルギー問題への意識が高まっていることから、当社グループは、欧州圏の事業及び技術開発拠点として英国に子会社を設立し、現地企業や日本企業の現地法人との実証実験を行う等、活動領域を拡大させております。
今後は、英国における活動をさらに深化させつつ、欧州各国への展開を加速し、欧州全体での事業実績と技術的優位性の確立を図ってまいります。さらに、欧州で得られた知見やネットワークを活用し、アジアをはじめとする他地域への展開も視野に、グローバルな成長戦略を推進してまいります。
(4) 経営環境
当社グループが関連するエネルギー業界では、2015年の国連サミットでの持続可能な開発目標(SDGs)の採択や2015年の第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)でのパリ協定の採択以降、世界的な脱炭素化の流れの中で、米国のバイデン大統領は就任した2021年1月20日にトランプ前政権が離脱したパリ協定への復帰を指示し、二酸化炭素などの温室効果ガス排出量を実質的にゼロにする「ゼロエミッション」の目標を改めて掲げました。また、2021年10月31日から2週間に渡って開催された第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)で、2030年までに気温上昇を1.5度に抑制する対策を進めるために必要不可欠な国際ルールが決定し、さらに地球温暖化の最大要因として石炭火力削減方針が初めてCOP決定に明記されるなど、脱炭素化の流れが強まったことを受けて、温室効果ガスの排出を削減するため、太陽光、風力や地熱などの再エネの活用拡大が期待されております。
我が国においても、2020年10月26日に、当時の菅内閣総理大臣が「2050年カーボンニュートラル」の実現という国際公約を掲げ、気候変動問題に対して国家として取り組む強い決意を表明しました。
さらに2021年4月には、同総理大臣が地球温暖化対策推進本部および米国主催の気候サミットにおいて、「2050年目標と整合的で、野心的な目標として、2030年度に温室効果ガスを2013年度比で46%削減することを目指し、50%の高みに向けて挑戦を続ける」と表明し、中長期的な削減目標が明確化されました。
その後、我が国では、これらの目標達成に向けてグリーン成長戦略や第6次エネルギー基本計画などの各種戦略が策定されるとともに、その実行に向けた施策を検討するため、GX実行会議等が開催されました。2022年12月22日の第5回GX実行会議では、「GX実現に向けた基本方針~今後10年を見据えたロードマップ~」が取りまとめられ、その後、2023年2月10日に閣議決定が行われ、GX基本方針として正式に公表されました。GX基本方針は、2050年カーボンニュートラルおよび2030年度の温室効果ガス排出削減目標の達成に向けた取組を経済成長の機会として位置付け、温室効果ガス排出削減と経済成長・産業競争力向上の同時実現に向けて、経済社会システム全体を変革することを目指すものであり、脱炭素社会に向けた技術革新や再生可能エネルギーの導入拡大の重要性が強調されています。
さらに、最新のエネルギー政策としては、第7次エネルギー基本計画のもと、再生可能エネルギーの導入拡大や電力系統の増強、蓄電システム・分散電源などGXに資するインフラ整備が進められているほか、エネルギー安定供給と脱炭素を両立させる観点から、電力需給の柔軟性確保に向けたデマンドレスポンス(DR)支援サービスの活用など、需給調整力の強化に向けた取り組みが拡大しております。
こうした政策・市場環境の進展を背景に、電力利用効率の最適化という観点から、当社グループが一次ターゲットとしているエネルギーデジタルビジネス/DX関連市場は、2025年度には5,003億円に、2035年には9,092億円に及ぶと見込まれております(出所:株式会社富士経済、エネルギーデジタルビジネス/DX市場の現状と将来展望 2022)。
海外においては、特に当社グループが注力する欧州圏で顕著な動きが見られます。EU域内ではエネルギー自給率が低く、ロシアからの天然ガス依存からの脱却を図るため、REPowerEU計画のもと再生可能エネルギーの急速な導入拡大が進められており、2030年までに再エネ比率を45%まで引き上げる目標が設定されています。地理的特性を活かした洋上風力発電が飛躍的に拡大しているほか、太陽光発電(PV)も補助金制度の強化により普及が進み、2024年時点でEU全体の電力に占める再エネ比率は約44%に達するなど、世界最高水準となっています。
一方、再エネの天候依存性による出力変動が大きいこと、また電力市場自由化の進展に伴う価格高騰リスクが顕在化していることから、需給バランスの崩れによるブラックアウト懸念が高まっており、電力供給の安定化・最適化を実現するスマートグリッドの構築がEUグリーンディールの中核政策として急務となっています。
スマートグリッドを構成する基幹技術は、送配電網の高度化だけでなく、需要家側の電力需給管理技術も不可欠ですが、特に重要性を増しているのが、需要家ごとの詳細な電力消費データをリアルタイム取得・分析するスマートメーターや、機器分離推定技術(NILM)を活用した次世代センサリングシステムです。
当社グループは、こうした脱炭素化・デジタル化のグローバル潮流を追い風に、国内外のエネルギーデジタルビジネス/DX市場での成長基盤を強化した上で、電力データ活用による新たな価値創造を通じて、ヘルスケア業領域、社会インフラ業領域、公共/教育業領域、インターネット広告市場をはじめとする様々な分野・新市場へ進出してまいります。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 業績の回復
当社グループは第12期において、継続していた赤字を解消することを目指し、事業基盤の強化及び経営効率の向上に向けた取り組みを進めてまいりました。これらの施策が実を結び、同期には黒字を計上することができました。
一方、第13期は、主要取引先(大口顧客)である大手賃貸事業者との取引が当社グループの想定に反して急遽終了するなど、外部要因の影響を受け、業績が悪化し、最終的に大幅な赤字となりました。
このような状況を受け、当社グループは「業績の回復」を最優先課題として取り組んでおります。
特に、電力需給の逼迫リスクが高まる中で注目されるデマンドレスポンス(DR)支援サービス分野では、「BridgeLAB DR」に成果報酬型メニューを新設し、法人顧客が導入しやすい仕組みを整備いたしました。さらに、「BridgeLAB DR」を導入いただいた法人顧客を中心に、DR運用で得られるデータを活用できるアップセルサービスとして、「エネルギーマネジメント診断サービス」や、電力利用の可視化・分析を簡易に行える「NILM Lite」の開発・提供を進めております。
また、売上回復を急ぐ一方で、固定費の抑制、人員配置の最適化、外注費の見直し、業務プロセスの効率化など、コスト管理にも継続的に取り組み、損益分岐点の引き下げに努めております。
今後もこれらの取り組みを通じて、足元の課題に正面から向き合いながら、持続的な成長を実現するための基盤づくりを着実に進めてまいります。
② 財政基盤の改善
当社グループは第12期において、東京証券取引所グロース市場への上場を達成し、公募増資により自己資本の充実を図ることで、財務基盤の強化を実現いたしました。
一方、第13期は、主要取引先(大口顧客)である大手賃貸事業者との取引が当社グループの想定に反して急遽終了するなど、外部要因の影響を受け、業績が悪化し、損益面では大幅な赤字を計上する結果となりました。
これらの業績の推移を踏まえ、当社グループは引き続き慎重な資金管理が求められる状況にあると認識しております。
今後は、前述の施策により業績の回復に努め、営業キャッシュ・フローの改善を図るとともに、取引金融機関からの継続的な支援に加え、第三者割当による新株予約権(MSワラント)の発行等を通じて、事業運営に必要な資金を確保し、財務基盤の一層の強化に努めてまいります。
③ 優秀な人材の確保・育成
当社グループの事業は、「エネルギー」と「テクノロジー」を融合させ、最先端のAI技術などを活用してエネルギーデータの価値を引き出し、脱炭素化などの社会課題に貢献するものであります。その実現には、特にエネルギー領域とAI技術をはじめとするテクノロジー領域の両方に精通した人材を継続的に確保することが重要であると考えております。
こうした課題に対応するため、当社グループは、エネルギーとテクノロジーの両領域に精通した優秀な人材の採用を強化するとともに、従業員に対して当社の経験とノウハウを活かした多様で有益な研修を計画的に実施し、人材の育成に取り組んでまいります。
④ 分析技術の強化と特許対策
当社グループは、NILM(機器分離推定技術)をはじめとするAI関連技術を中核とした分析技術こそが、当社の競争力の源泉であると認識しております。そのため、継続的な分析技術の強化に加え、他社のサービスとの差別化を図るべく、分析技術に関する特許権などの知的財産権を積極的に取得し、自社の権利を保護することが重要であると考えております。
こうした課題に対応するため、当社グループは、知的財産権に精通した人材の確保に加え、顧問弁理士などの専門家と連携し、権利化可能な技術について迅速に権利化を進めてまいります。
⑤ アライアンスパートナー戦略
脱炭素化を実現するためには、まずエネルギーデータを活用し、生活の質を向上させながらエネルギーの効率的な利用を促進することが重要であります。特に、エネルギー関連企業とのアライアンスを構築することが、脱炭素化の推進において重要な役割を果たすと考えております。
さらに、脱炭素化の実現には、エネルギーの効率的利用に貢献するサービスの提供だけでなく、「エネルギー+α」の付加価値を生み出すサービスを提供することも必要であります。これにより、当社グループのサービスの普及を促進し、社会インフラとしての定着を目指してまいります。
こうした課題に対応するため、当社グループは、エネルギー関連企業とのアライアンスに加え、エネルギーデータを活用した付加価値の創出に寄与する、異業種企業とのアライアンスにも積極的に取り組んでまいります。
⑥ コーポレート・ガバナンス体制及び内部管理体制の強化
当社グループは現在、成長過程にあり、業務運営の効率化やリスク管理のために内部管理体制の強化が重要な課題であると考えております。事業の効率的な拡大を実現するため、コンプライアンスの徹底と内部統制の強化を最優先事項として認識しております。
これまでも体制整備を進めてまいりましたが、事業規模の拡大に伴い、今後は人的補充を行いながら、定期的な内部監査を実施し、コンプライアンス体制をさらに強化してまいります。また、監査役による監査を通じて、コーポレート・ガバナンスの一層の向上を図ってまいります。