有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2022/06/06 15:00
【資料】
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【項目】
126項目

対処すべき課題

下記の文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は、「クライアントとビジネスパートナーのデジタルの課題をワンストップで解決する人材と情報の社会基盤となる」をビジョンに掲げ、「『専門知識や高いスキルを有するプロ人材』『パートナーとの協業で獲得したデジタルの知見』『事業会社としての経験を生かしたデリバリー実行』を組み合わせ、お客様にとって最適な課題解決とビジネスパートナーの成長を支援する」をミッションとしてプロフェッショナル人材ソリューション&コンサルティング事業を展開しています。
(2) 経営環境
① 市場規模について
IDC Japan株式会社は、2021年7月に、ビジネス及びITコンサルティングで構成される国内コンサルティングサービス市場の予測(注1)を発表しました。これによると、2020年の同市場規模は前年比1.1%増の8,623億円となり、2025年には1兆2,551億円(2020年~2025年の年間平均成長率(CAGR: Compound Annual Growth Rate)は7.8%)になる見通しとされています。また、同予測によると、コンサルティングサービス市場の内、ビジネスコンサルティング市場規模については、2020年半ばに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大により、新規案件の停滞や継続案件の凍結といった影響を強く受けましたが、その後は需要が急速に回復し、2020年もプラス成長を遂げ、2021年に入ると、デジタル関連の需要が既存顧客層からのプロジェクトスコープの拡大と、新たな顧客層によるDXへの取り組みの開始の両面で市場成長を牽引し、高成長軌道へと回帰しており、2025年には8,012億円(2020年~2025年の年間平均成長率は9.3%)になる見通しとされています。
また、同社は、2021年10月に、国内ITサービス市場予測(注2)を発表しました。これによると、2020年の同市場規模は、2019年の成長を牽引したWindows7のサポート終了や消費増税に伴うシステム刷新、元号改正対応、消費税率変更対応等の複数の特需の反動減に加えて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大による影響を受け、商談の停滞や新規プロジェクトの先送り、進行中のプロジェクトの中断や進捗の遅れ、顧客常駐型サービスや自社センター型サービスにおける稼働率の低下や作業の遅延、サプライチェーンの混乱による機器の納品遅延等が生じたことで、前年比2.8%減の5兆6,834億円となりました。一方で、2020年後半からは需要回復が進み、また、2022年以降は、徐々に成長率は鈍化するものの、レガシーシステムの刷新/更新需要、企業によるDX投資の本格化が同市場の成長を支えるとされ、2025年の同市場規模は6兆4,048億円(2020年~2025年のCAGRは2.4%)になる見通しとされています。
加えて、株式会社富士キメラ総研は、2022年3月に、デジタルトランスフォーメーション(DX)の国内市場の調査結果(注3)を発表しました。これによると、DXは企業の重要な課題として位置づけが高まっており、企業価値の向上につながる取り組みとして投資が行われており、現在は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響からリモート化や自動化等オペレーション改善を目的とする投資やWeb/スマートフォンを軸とする顧客接点改革への投資が積極的に進められているとされています。同調査によると、2030年度のDXの国内市場規模は5兆1,957億円(2020年度比3.8倍)になる見通しとされています。
(注) 1.IDC Japan株式会社、「国内コンサルティングサービス市場予測を発表」、2021年7月
2.IDC Japan株式会社、「国内ITサービス市場予測を発表」、2021年10月
3.株式会社富士キメラ総研、「デジタルトランスフォーメーションの国内市場(投資金額)を調査」、2022年3月


このように、当社が事業を展開するコンサルティングサービス及びITサービスの市場は、堅調に推移するものと思われます。
② 市場動向について
株式会社パーソル総合研究所が2018年10月に発表した推計(注4)によれば、2030年には国内において644万人の労働力が不足すると言われています。また、経済産業省が2018年9月に発表したレポート(注5)では、デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みの重要性に言及し、もしDXが進まなければ「2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性がある」と推計しており、「2025年の崖」と称して警鐘を鳴らしています。DXは企業のみならず、日本全体の経済における喫緊の課題となっています。
また、2019年4月には「働き方改革関連法案」が施行され、日本が直面している少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少や、働き方の多様化等の課題に対して、企業は対応を迫られてきました。
さらに、2020年4月に国内で初めて緊急事態宣言が発令されて以降、昨今のコロナ禍においては、リモートワークやクラウドサービスの利用によるニューノーマルな働き方が求められ、企業にとってはそれらへの対応及びますますの生産性向上が課題となります。人手不足の解消、DXの推進及びニューノーマルな環境での業務遂行は、すべての企業が共通して抱える課題と言えます。
(注) 4.株式会社パーソル総合研究所・中央大学、「労働市場の未来推計2030」、2018年10月発表(2020年12月改訂)
5.経済産業省デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会、「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」、2018年9月
当社は、プロフェッショナル人材には案件提供及び新たな働き方の普及を行うとともに、人手不足に悩む顧客企業への人材供給及び業務ノウハウの展開及びDXの支援等を行うことで、企業の生産性の向上ひいては日本経済の維持発展に寄与できるものと考えています。
③ 経営戦略について
前述のような経営環境を背景として、当社は、既存事業のさらなる拡大のために、300社以上ある既存顧客のアップセル(単価向上)を図ってまいります。具体的には、例えば、これまで当社からの人材派遣が少数名で期間も短い単発案件が中心であった取引先に対しては、当社が持つプロジェクトマネジメントのノウハウを活かし、プロジェクトの形に応じてまとまった単位や期間で発注してもらえるような提案をするなどして売上規模の拡大を図ってまいります。他にも、システム開発会社との共同提案を行うなど、既存顧客とのビジネスパートナーシップを強化していきます。また、従来の主要顧客の他に、様々な業種・業態の新規顧客を積極的に獲得することに加え、人材の積極的な採用と育成の体制を強化することで、コンサルタントの継続的な安定確保を進めてまいります。
一方で、サービスの多様化にも積極的な投資を行い、「事業の内容」に記載しましたWebサービスを軸にサービス領域を拡大させることで、営業利益及び営業利益率の向上を図ってまいります。また、これらのサービスを競業サービスよりも安価な価格帯もしくは無料で提供することで顧客を呼び込む入り口とし、コロナ禍の影響を受けて高まるリモートワークや副業等の働き方が多様化する労働市場において、ニーズが顕在化する前の顧客との接点を持つことにより、将来の見込み顧客をプール化してさらなる顧客の拡大を目指します。

今後、当社社員とフリーランスのハイブリッドでのチーム構成での提案の機会を増やすことで、プロジェクトの形に応じてまとまった単位や期間で発注してもらえるような取引形態にするなどして売上規模の拡大につなげるとともに、上流案件にシフトすることで、顧客企業の経営課題を解決するコンサルティング領域でのビジネスパートナーシップの強化による高単価案件の獲得を図ってまいります。
また、売上規模の拡大や高単価案件の獲得に伴う収益の一部をフリーランスへの還元を行うことで、新規フリーランスの増加と既存フリーランスの契約継続による人材のストックモデルを拡充し、結果として全社としての規模の拡大につなげる、成長循環モデルの実現を目指します。

さらに、IT市場のどの分野でも支援が可能なケイパビリティを持ち、WebマーケティングやWebサービスで開拓した顧客・人材を既存事業の拡大に連携することで、目指すべき姿の実現に努めます。

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、売上高の継続的かつ累積的な増加を実現することが重要と認識しており、事業の成長性を表す売上高成長率と売上総利益率を重要な経営指標と考えております。また、プロフェッショナル人材ソリューションサービス及びコンサルティングサービスにおいては、月間の稼働人員数と登録者数を重要な指標としております。なお、登録者数については当社の今後の成長性の継続を表す先行指標として考えております。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 登録プロフェッショナル人材の確保
当社の人材ソリューションサービスの事業拡大には、プロフェッショナル人材としてのフリーランスの確保が重要です。Webマーケティング等を強化し、これまでのコンサルタントのみならず、多種多様な領域のフリーランスの集客を行い、フリーランス向けの福利厚生サービス紹介等、ファンとなってもらう施策を継続的に実施します。
また、当社スタッフのキャリアカウンセリングの能力を高めることによって、転職支援も含めた多様性のあるキャリア支援を実施し、登録者と当社の信頼関係を深めます。
② 優秀な人材の採用と育成
当社のコンサルティングサービスは知識集約ビジネスであり、コンサルタント/ITエンジニアのサービスレベルが成長の鍵となります。当社は、業界やサービス領域に特化せず、顧客のニーズに応えた実現性のあるサービスの提供ができる点を特徴と考えております。一方で、コンサルティング業界においては優秀な人材の争奪が激化しております。当社は、既存のコンサルティングサービスのみならず、デジタルトランスフォーメーション(DX)の支援とともに、人材ソリューション、教育事業、メディア事業等の新規事業を積極的に行う事業会社としての魅力を伝えることにより、新卒採用も含めた積極的な採用を継続的に進めてまいります。
③ 新規事業の展開
「Pay it forward 恩送り」という経営理念の下、事業規模拡大と収益多様化を図るため、既存事業はもちろん、新規事業にも積極的な投資を行ってまいります。「事業の内容」に記載しましたWebサービスを軸に、事業領域を拡大させることで、新規顧客の獲得とともに新たな収益源の確保を図ります。
④ 情報管理体制の強化
当社は、当社に登録のあるプロフェッショナル人材の方々の氏名、生年月日、性別、住所、経歴等の個人情報を取り扱っています。当社はその個人情報保護の重要性について認識した上で、情報管理体制を継続的に強化していくことが重要だと考えております。現在も個人情報保護法を遵守するとともに、「プライバシーマーク」認証の取得、個人情報保護規程に則ったルールの整備等、情報の保護及び適切な管理に努めておりますが、今後も社内体制や管理方法の強化・整備を行ってまいります。
⑤ 認知度の向上
今後も高い成長性を維持していくために、当社では費用対効果を見極めながら、広告宣伝活動及び広報活動に積極的に取り組んでまいります。
⑥ 財務体質の強化
当社は、借入金にて資金調達していることから、当社の負債比率は一般的に適正とされる比率よりは高い水準となっております。今後も、収益力の向上を図るとともに、成長のための人材採用やサービス多様化等の投資資金の確保が必要であることから、有利子負債とのバランスを勘案し自己資本の拡充を図ってまいります。
⑦ 当社が保有するACP株式会社株式の売却
当社の関連会社であるACP株式会社は、アクセンチュア株式会社の取引先の集約化を目的として設立したACP有限責任事業組合の運営に特化した会社です。同社設立にあたり、当社の人材ビジネスに関する知見が求められ、当社は35.0%を出資いたしました。これまで、当社社員等を派遣し、業務支援を行っておりましたが、同社にノウハウが蓄積され、運営体制が整ったことから、当社は同社株式を売却する方針です。なお、同社株式売却により、同社が当社の関連会社から外れても、当社の事業運営及び業績への影響は軽微であります。