有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2022/06/28 15:00
【資料】
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【項目】
140項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、Mission(企業理念)として「優れたテクノロジーを、親しみやすく」を掲げ、またVision(目指す姿)として「社会のデジタル変革をリードするNo.1クラウドインテグレーター」を掲げているほか、5つのValue(行動指針)を定めております。
Mission(企業理念)
「優れたテクノロジーを、親しみやすく」
世の中は技術革新によって目まぐるしい進歩を続けます。
企業・社会が持続的な成長を為すには、先進技術をいち早く取り入れる必要がある一方、正しい使い方を見極めて徹底活用しなければ望んだ成果は得られません。
私たちJBS(当社、「日本ビジネスシステムズ㈱」を指します)は、お客さまに寄り添い、お客さまにとって必要な技術を最適な形で届け続けることで、技術革新がもたらす企業・社会の持続的成長に貢献してまいります。
Vision(目指す姿)
「社会のデジタル変革をリードするNo.1クラウドインテグレーター」
働き方の変化やダイバーシティ等の加速により、世界中の社会・経済の在り方が大きく変わろうとしています。
すべてのプレイヤーが社会課題の解決に必要なビジネスモデルの確立や構造改革に取り組むべき時代です。
このチャレンジをスピーディに遂行するためには、お客さま自身がテクノロジーを理解し、自らデジタル変革
を起こしていく必要があります。
私たちJBSはクラウド活用のプロフェッショナル集団です。
お客さま自身のクラウド活用力を高めデジタル変革を起こす体制・仕組み作りに貢献できる存在として、一番にお声がけいただけるパートナーを目指してまいります。
Value(行動指針)
Customer First「お客さまの期待を超える」
お客さまの視点に立ち、主体性を持ってスピーディに行動することで、お客さまの成功につながる最良の解決策を提供します。
Diversity & Inclusion「一人ひとりの個性を大切に」
お客さま、ビジネスパートナー、社員・家族など、関わるすべての人々の個性を尊重します。
Integrity「誠実かつ、ひたむきに」
信頼関係を築くことを大切にし、あらゆる活動に真摯に向き合います。
Passion for Technology「情熱を持ってテクノロジーを追求」
テクノロジーに触れたときの感動を忘れずに、 無限の可能性を追い続けます。
Commitment to Growth「挑戦と成長」
常に挑戦し、学び、成長し続けます。
(2)経営環境
2021年度の国内経済は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が収束せず、緊急事態宣言の再発令やまん延防止等重点措置の適用により、引き続き経済活動が制約を受けるなど厳しい環境が続きました。ワクチン接種の促進や海外経済の持ち直しを背景に、企業の設備投資や個人消費等の持ち直しが期待されますが、感染拡大の波は断続的に続いており、依然として先行き不透明な状態が続いております。
国内IT市場においては、引き続き「働き方改革」や「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を軸としたニューノーマルへの対応ニーズが拡大し、生産性向上や業務効率化のみならず、ビジネスモデルの変革を目的としたシステム投資需要が高まっております。また、各企業においてクラウドシフトが加速する中、クラウドサービスへのノウハウ獲得やITベンダーに依存したシステム設計・開発の見直しといったニーズが増加しています。
このような環境のもと、当社は継続的な先進デジタルサービス提供が評価されマイクロソフト ジャパン パートナー・オブ・ザ・イヤーを2021年も受賞し、9年連続の受賞となりました。マイクロソフト社の有力パートナーとしてM365(Teams、Outlookなど)を中心としたクラウドサービスの導入と利活用支援によって、顧客の「働き方改革」を推進してまいりました。また、クラウド環境への移行を加速する顧客のニーズに応えるべく、システム環境構築だけでなく顧客の「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の成果に繋がるよう、価値のデザインから構築、利活用促進までを一気通貫で担えるソリューション提供力が重要となっており、ソリューション提案専任部隊の新設や事業横断での案件推進の仕組み構築に取り組んで参りました。
(3)優先的に対処すべき事業上および財務上の課題
当社は、オンプレミスからクラウドへの事業転換を加速し、クラウド市場成長に合わせて事業成長を実現していくための優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題として、以下の事項を認識しております。
① 顧客戦略
特に、売上高5,000億円以上又は従業員5,000人以上規模のエンタープライズ企業に対するアカウント体制を強化し、インダストリーソリューションの提供とインダストリー横断でのテンプレート展開を狙っております。
業界及び顧客のエキスパートとして、従来の強みである情報システム部門だけでなくユーザー部門や経営トップ層とのリレーション強化を行うことで、より付加価値の高いソリューション案件獲得を目指していきます。特に重要な顧客については注力を図る一方で、上記以外のアカウント(売上高5,000億円未満かつ従業員5,000人未満のSMB企業を含む)については見積等の営業関連業務の集約・自動化を行うことで営業効率を高める取組みを推進していきます。
② パートナー戦略
マイクロソフト社のAzure/M365/D365の3クラウド活用を実現するパートナーとして、Azure市場におけるシェア拡大を図ります。2022年4月にはマイクロソフト社のAzureパートナーの最上位資格であるAzure Expert MSP認定を取得し、自社クラウドマネジメントサービスであるJBS Cloud Suiteの提供と継続的な開発を行なっております。また、Azureを核としたソリューション提供に必要なソフトウエア及びハードウエアメーカーに集中することで、パートナーシップを活かした条件での取引を行うとともに協業を図っていきます。加えて、ビジネス課題解決に資する能力の補強に向け、上流設計を担うコンサルティング企業やアプリケーション開発企業との戦略的協業を推進していきます。
③ 組織・人材戦略
提案力強化と事業成長基盤整備に向けて、組織変革と人材強化に取り組んでいきます。
組織変革に関して、営業機能は、業界動向と顧客ニーズを掴むアカウント営業組織であるインダストリー部門、及びソリューション専任部隊であるソリューションスペシャリスト部門で構成し、ソリューション提案力を強化するとともに、営業活動の効率化・高度化に向け、セールスイノベーション本部を2021年10月に新設し、見積等の営業支援業務の定型化・自動化とデジタルセールス機能の強化に取り組んでおります。事業機能は、アプリケーション領域とインフラ領域を担うアプリケーション&プラットフォーム事業グループ、働き方改革の設計からモダンワークプレイスとセキュリティの設計・導入を行うモダンワークプレイス&セキュリティ事業グループ、リモートやデジタル活用を駆使しながら自社マネージドサービスも組み合わせて保守運用サポートを行うクラウドサービス事業グループとして、2021年10月に再編し、顧客のニーズの高まりに合わせた本部横断でのソリューション提供に取り組んでおります。加えて、今後の成長の軸足となるCAF準拠の新事業・サービスやAI、IoTといった先端技術を用いた新事業の加速に向け、クラウド事業推進本部を新設し、現行事業と一体となった事業開発に取り組んでいきます。
人材強化に関しては、当社では人材の採用・育成・定着の好循環により、専門性の高い人材の確保に努めております。
採用においては、特に新卒採用に力を入れており、毎年170名程度(2019年9月期から2021年9月期の3年平均)が入社しており、今後は上場による知名度・信用力の向上などにより、さらに多くの優秀な人材の確保につなげてまいります。
育成においては、豊富なプロジェクトによる業務経験を通じたOJT(On the Job Training)を中心に、当社独自の研修プログラム及びEラーニング等によるさまざまな自己学習の機会を有機的に統合した育成プログラムを確立しております。また、マイクロソフト社をはじめとした各社のトレーニングプログラム等も有効活用しながら、各社員のキャリアプランや育成計画を継続して改善を図ってまいります。
定着においては、充実した育成プログラムに加え、各社員のワークスタイルに合わせた多様な労働環境の提供、及び社内コミュニケーションの活性化に取り組んでおり、流動性の高いIT業界において当社の離職率は、2021年9月期の実績で7.0%にとどまっており、引き続き社員が最大限に力を発揮できる働き甲斐のある企業として、改善を図ってまいります。また、ダイバーシティの推進に積極的に取り組んでおり、女性の活躍推進に関する取組の実施状況が優良な企業として「えるぼし」の3つ星認定を受けております。また、障がい者雇用や男性の育児休業取得を積極的に推進しているほか、仕事と介護を両立できる職場環境の整備促進に取り組んでおり「トモニン」マークを活用しております。
④ 仕組み・プロセス戦略
事業目標・戦略に基づく計画的な組織運営を実現するため、部門横断の共通言語としてのKPIやプロセス・ルールの整備・運用に取り組んでいきます。
具体的には、各顧客企業に対するアカウントプランの策定及び営業パイプラインの可視化によって、各案件の状況を正確に把握することで、業績予想の精度向上を図るとともに、案件獲得の確度向上に向けた対応を進めております。CRM及び営業管理プロセスの改善や新規案件開拓のためのマーケティング機能の強化、新規事業開発におけるROI(注)可視化に向けた事業投資計画とPDCAの仕組み強化等に取り組んでいきます。
(注)ROIとは、投下した資本に対しての収益性を測る指標で、企業の収益力や事業における投下資本の運用効率の事です。
⑤ 当社の流通株式比率及び企業価値の向上について
当社は上場に伴い実施する公募による自己株式の処分によって、新規上場時において㈱東京証券取引所が定める流通株式比率は㈱三菱総合研究所へ予定している親引け株数364,600株も加味して、25.5%となり形式要件(25.0%)を充足する見込みであります。当社の持続的な成長と中長期的な企業価値の観点から、経営戦略の着実な遂行やIR活動の促進・強化を図るとともに、必要に応じて当社株式を保有している取引先や主要株主へ一部売出しに向けて協議を進めるなど流動性の確保に努めてまいります。なお、上記の株主の当社株式所有割合等については、「第四部 株式公開情報 第3 株主の状況」に記載しております。
⑥ 財務上の課題
財務基盤の安定性を維持しながら、様々な事業上の課題を解決するための事業資金を確保し、また、新たな事業価値創造のために機動的な資金調達を実行できるよう、内部留保の確保と株主還元の適切なバランスを模索していくことが、財務上の課題として認識しております。
(4)経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、クラウドシフトが進む市場環境において、マイクロソフト社のクラウド製品を中心に、オンプレミスからクラウドへの事業転換を加速することで事業規模の拡大を図る方針のもと、当社の売上における「マイクロソフト社の製品関連が占める割合」「ハイブリッドを含めたクラウドサービスが占める割合」「継続利用を前提とした顧客からの売上が占める割合」をそれぞれ70%とすることを指標としています。
「マイクロソフト社の製品関連が占める割合」とは、当社売上高のうち、一部又は全部において、マイクロソフト社の製品・ソリューションが含まれるサービス提供の売上高の割合を示します。2021年9月期の実績で、当社売上の70%が、マイクロソフト社の製品関連となっております。
「ハイブリッドを含めたクラウドサービスが占める割合」とは、当社売上高のうち、提供するサービスの一部又は全部において、クラウドサービスを提供する売上高の割合を示します。過去の実績等を踏まえて部門ごとのクラウド比率を算出し、各部門の売上高に乗じることで、クラウドサービスを提供する売上高を算出しております。多くのエンタープライズ企業におけるクラウド化では、全面的なクラウドへの移行ではなく、オンプレミスとクラウドを組み合わせたハイブリッド型でのサービス提供が期待され、当社は顧客企業の状況に応じた最適なソリューションサービスを提供しております。2021年9月期の実績で、当社売上高の76%がハイブリッドを含めたクラウドサービスとなっております。
「継続利用を前提とした顧客からの売上が占める割合」とは、当社売上高のうち、継続的な売上となるストック収益の割合を示します。2021年9月期の実績で、当社売上高の56%がストック収益となっております。