有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2022/11/14 15:00
【資料】
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【項目】
126項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものです。
(1)経営方針
当社は、「さあ、自由に生きよう。働きがいをすべての人へ」というコーポレートスローガンのもと、「ひとりひとりが輝く、ジョブマーケットを創る。」ことをミッションとして掲げ、創業より、働く個人の声を蓄積、公開することで、ジョブマーケットの透明性向上を目指してまいりました。
社名・サービス名である「OpenWork」には、「より透明性(Open)の高い、仕事(Work)選びを提供する」という想いを込めています。働きがいがある「良い会社」の基準を社員クチコミや評価スコアなどのワーキングデータで提示し、良い会社に人が集まる健全なジョブマーケットの発展に貢献するため、ワーキングデータプラットフォームを展開していく方針です。
(2)経営戦略等
ワーキングデータプラットフォームの拡充を基軸とし、「OpenWork」の安定運用と「OpenWorkリクルーティング」の成長を加速させることを経営戦略の基本方針としています。具体的な当社の経営戦略の現状と見通しは以下のとおりです。
①ワーキングデータプラットフォームの拡充
当社では、投稿されたすべての社員クチコミに対して、AIを活用した機械審査と専任のスタッフによる目視審査を実施し、法令違反や誹謗中傷に該当する投稿をサービスに掲載しないための運用、審査体制を構築しており、データの「量」だけでなく、掲載する社員クチコミ等の「質」の向上にも努めています。
今後は社員クチコミの量と質の維持と、ワーキングデータを活かした求職者と求人企業のマッチングの最適化の推進、さらには新規サービス展開に向けて、年収、残業時間、企業業績、選考データ、求人、履歴書、個人の性格特性や価値観など、転職・就職に関わる様々な情報を網羅的に蓄積し、ワーキングデータプラットフォームとしてのデータ基盤を強化してまいります。
②採用市場のリストラクチャリング
従来の採用市場では、企業が投じる広告予算の規模に比例して企業の認知度や人気が変動し、大きな広告予算を投じた企業が採用に成功していましたが、企業の実態を知る方法が限られていたことから、入社後の求職者と企業のミスマッチが多く発生することに繋がっていたと考えています。
このような従来の採用市場のリストラクチャリングを実現するため、「OpenWorkリクルーティング」は「OpenWork」の強みの一つである情報の透明性を活かし、求職者には自身の働きがいにマッチした企業を見つけることができる場を、採用を考える求人企業には自社の働きがいにマッチした求職者との接点を提供することで、入社後の求職者と企業のミスマッチの発生を抑制し、求職者と企業双方の満足度向上を目指してまいります。
③ワーキングデータプラットフォームを基盤とした新規サービスの展開
当社は、ワーキングデータプラットフォームとして蓄積したデータを活用し、新規サービスの展開及び収益の多角化を目指しています。
「FIS(Financial Indicator Service)」サービスはその一例で、「OpenWork」の強みである社員クチコミを投資判断のためのオルタナティブデータとして、国内外のヘッジファンド等に販売しています。
「FIS」の利用企業が増えることで社員クチコミデータの信頼性を訴求でき、「OpenWork」「OpenWorkリクルーティング」サービスのブランディング向上にもつながると考えています。
(3)経営環境
当社の主力サービスである「OpenWork」「OpenWorkリクルーティング」が対象とする市場は、職業紹介事業などの人材ビジネス市場です。2020年度の職業紹介事業における手数料収入は約5,240億円となりました(注1)。
転職者数は、2020年に新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受けて減少に転じ、2021年にはさらに減少しましたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響が低下した2022年の4~6月期平均では、前年同期比111%に回復し(注2)、転職希望者は2019年の水準を超えています(注3)。また、個人のキャリア観の変化や終身雇用の構造的限界により、今後雇用の流動化は一層加速し、働き方改革やリモートワークの普及により、多様な働き方が広がる中で、求職者の会社選びの基準も多様化していくと考えています。
(注1)厚生労働省「令和2年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」
(注2)総務省「労働力調査 年齢階級別転職者数及び転職者比率」調査によると、4~6月期の転職者数は2019年 340万人、2020年325万人、2021年284万人、2022年314万人
(注3)総務省「労働力調査 詳細集計 全都道府県 全国 年次 雇用形態別転職等希望者数(非農林業雇用者) 2022年2月労働力調査詳細集計全都道府県全国四半期 月末1週間の就業時間・転職等希望の有無,仕事からの収入(年間)・年齢階級・世帯の種類・世帯主との続き柄・教育・従業上の地位・雇用形態・雇用契約期間・従業者規模・就業時間増減希望の有無・就業時間増加の可否別就業者数」調査によると、非農林業の正規の職員・従業員の4~6月期の転職希望者数は2019年801万人、2020年804万人、2021年881万人、2022年944万人
このような経営環境の中で、当社のワーキングデータプラットフォームを基盤としたサービス「OpenWork」は、会社に関する社員クチコミと評価スコアなどのデータを用いて社員の働きがいを視覚化し、企業と求職者との採用時における情報の非対称性の解消を進めています。2022年10月末には、累計登録ユーザー数が2021年12月末から約65万人増の約515万人、ワーキングデータである社員クチコミと評価スコアが2021年12月末から約160万件増の約1,380万件となり、コロナ禍で大きく変化した働き方や価値観が反映されたワーキングデータの蓄積が進んでいます。今後も当社の強みであるワーキングデータを充実させ、求職者が、多様化する働き方や自分の働きがいにあった会社を見つけられるようサービスを運営していくことで、一層のシェア拡大を実現できると考えています。
加えて企業が「OpenWork」上で採用活動を行える「OpenWorkリクルーティング」では、ユーザーの求職活動を促す仕組みと、企業の求人掲載を促す活動を通して、求職者と求人企業のマッチングの活性化を進めています。また「OpenWorkリクルーティング」では社員クチコミだけでなく、企業からの情報発信も支援しています。求職者が、社員クチコミと企業からの情報により、企業のことをよく理解したうえで求職活動を行うことができる環境を提供し、求職者と企業のミスマッチの少ない健全な労働市場を作ることを目指しています。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①安定したユーザー集客とワーキングデータプラットフォームの成長
当社は2007年の創業以来長い時間をかけて社員クチコミサイトを運営してきた優位性と、質の高い多くの社員クチコミデータがサービス上に掲載されている特徴があり、検索サイトからの自然検索経由で順調にユーザー数と社員クチコミと評価スコアの件数を増加させてきました。今後もさらにワーキングデータを蓄積し、事業を拡大させ、新規事業の早期展開を図るためには、基盤となるユーザー数と社員クチコミと評価スコアの件数の安定的な増加を推進する必要があると考えています。
自然検索に加え、Webマーケティング強化により安定的なユーザー流入を確保し、さらに転職・就職サービスとしての認知度向上のための広告宣伝等のプロモーション活動を強化することで、ワーキングデータプラットフォームの成長を図ってまいります。
②「OpenWorkリクルーティング」の価値向上
成長過程にある「OpenWorkリクルーティング」の拡大は、今後の当社の成長に不可欠です。そのためには、Web履歴書登録数、求人数、契約社数を増加させていく必要があると考えています。また、社員クチコミデータや企業情報などの蓄積データを解析し、求職者と求人企業のマッチングの最適化を推進させることも重要だと考えています。
サービス上での求職活動を活性化させること、マッチングの最適化を進めること、入社後の求職者と企業のミスマッチの発生を抑制し企業・求職者双方の満足度を向上させることで「OpenWorkリクルーティング」の価値を向上させてまいります。
③事業の多角化
長期的な企業成長を維持するには、複数のサービスを発展・拡大させると共に早期の収益化を実現し、特定サービスに依存しない事業基盤を構築することが重要だと考えています。
ワーキングデータプラットフォームをベースにした新規サービスを軌道に乗せ、事業の多角化を進めてまいります。
④情報管理体制の強化
当社の事業はユーザーが投稿した社員クチコミを基盤としており、多くのユーザーの個人情報を保持しています。
個人情報の保護と適正管理は当社における最も重要な課題の一つと認識しており、個人情報保護に関する社内規程の整備と運用、定期的な社内教育の実施やセキュリティシステムの構築を行っています。
個人情報の保護と適正管理を更に強化するため、2021年1月に一般財団法人日本情報経済社会推進協会が運営するプライバシーマークを取得しました。今後も個人情報の保護と適正管理を最も重要な課題として捉え、「JIS Q 15001:2017 個人情報保護マネジメントシステム-要求事項」に基づく個人情報保護マネジメントシステムの運用を徹底してまいります。
⑤財務上の課題
「OpenWork」については、安定的に営業収益を上げられており、財務基盤は安定していると考えています。また、「OpenWorkリクルーティング」については、これまで先行投資の段階で投資が営業収益を上回っていましたが、2022年12月期に営業収益が大きく伸長し、投資の回収段階に差し掛かっています。当社が今後も高い成長率を持続していくためには、「OpenWorkリクルーティング」の価値向上が必要であると考えています。今後も、「OpenWorkリクルーティング」などの新たな事業価値創出に必要な投資と財務基盤の安定性との適切なバランスを維持することが、財務上の課題として認識しています。このため、今後も事業計画と財務状況の継続的なモニタリングを徹底し、投資の意思決定を適切に行ってまいります。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク (2)当社事業内容及びサービスに係るリスク①サービス別営業収益構成比率の変化について」に記載のとおり、「OpenWorkリクルーティング」の収益拡大と、人件費や広告宣伝費等「OpenWorkリクルーティング」の拡大に必要な投資を行いながらも、経営を効率化することによる一定の利益率の保持を重視しています。
「OpenWorkリクルーティング」の収益拡大については、「OpenWorkリクルーティング」の営業収益を重要な経営指標と位置付けています。そして、「OpenWorkリクルーティング」において求職者が積極的に求職活動を行っている目安となるWeb履歴書登録数と、営業収益に直接関係する入社人数を重要な指標としています。