有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2022/11/17 15:00
【資料】
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【項目】
157項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「利用者に最も近いソフトウェアを提供し、より豊かな社会を実現する。」を企業理念として掲げております。
その中で今年度当社グループは、主要事業であるライブ配信事業「ふわっち」について、ユーザー数の増大と収益の拡大を目指してまいります。
(2)経営環境
当社グループが事業を展開するライブ配信市場は、新型コロナウイルス感染拡大以前より継続して、急速な市場拡大を続けており、今後も高い市場成長が見込まれております。
株式会社野村総合研究所のレポート(ITナビゲーター2021年版 2020年12月17日発刊)によりますと、日本国内における動画投稿・ライブ配信市場(注)の市場規模は、2021年度に8,164億円、2026年度には10,855億円に拡大すると予測されており、今後も利用者数は拡大していくと考えられます。
(注)「Youtube」や「ニコニコ動画」などの、消費者や企業が動画を投稿できる動画投稿サービス、および「SHOWROOM」「17LIVE」など、消費者や企業がライブ配信できるライブ配信サービスに関連する分野を「動画投稿・ライブ配信市場」と定義しております。当該市場には、動画投稿サービスおよびライブ配信サービスにおける「プレミアム会員費」「ファンクラブ会員費」「ギフティング」「アバター購入費」、動画投稿者・ライブ配信者の「関連イベントへの参加費」「関連グッズの購入費」、動画投稿者・ライブ配信者が宣伝する「商品の購入費」を含めるほか、動画投稿サービスおよびライブ配信サービス上で掲載される「インターネット広告料(広告制作費は除く)」を含みます。
ライブ配信市場の成長要因について、当社グループでは次の4つが寄与していると考えており、今後も成長が継続するものと当社グループでは考えております。
・テクノロジーの進展による余暇時間の拡大
モバイル技術を含むテクノロジーの進展により、生活における余暇時間が年々拡大するなか、その余暇時間の過ごし方の1つとして「ライブ配信」が人々の生活に定着
・「ライブ配信」の認知度拡大による裾野の広がり
「ライブ配信」というコミュニケーションプラットフォームの存在が、プレイヤーの増加や各社成長を通じた市場の拡大により、大衆へ広く浸透しつつあり、ライブ配信に慣れているコアなユーザー層を基盤としつつも、初めてライブ配信を行う、または視聴する新しいユーザー層へ裾野が更に広がっていく
・コロナ禍を通じて多様化したコミュニケーション手段の新文化として定着
コロナ禍において、在宅時間が増加し、おうち時間の過ごし方の1つとして「ライブ配信」は新しい文化として定着。アフターコロナにおいても、ライブ配信は新しいコミュニケーション手段として定着し、利用者の増加が見込まれることから、持続的成長の見込めるステージへ移行するものと見込まれる
・推し活、推し文化との高い親和性
お気に入りのアイドルやYouTuber等を応援する推し活が広がる中で、「推し」対象と気軽にダイレクトコミュニケーションが取れ、アイテムを送ることも可能なライブ配信が使用されるケースが多くなるとものと見込まれる
また、総務省「令和2年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によりますと、当社グループサービスの属する「ライブ配信型の動画共有サービス」は、全年代で利用率が9.4%であり、隣接するオンデマンド型の動画共有サービスやオンデマンド型の動画配信サービスの全年代利用率85.4%と比較して、余白が大きいことから伸び代、市場拡大の余地は大きいと考えております。特に30代以降の利用率は30代8.0%、40代7.4%と現状は依然低い状況であり、10代の20.4%、20代の20.2%と比較して大きな成長ポテンシャルがあるものと考えております。また、当社グループのライブ配信サービス「ふわっち」の主力世代は30~40代であることから、利用率の向上余地が大きいだけでなく、人口構造においては、生産年齢の中心である世代がメインユーザー層を形成しており、売上拡大余地についても非常に大きいと考えております。
【2020年度 動画共有・配信サービス等の利用率(全年代・年代別)】

出所:総務省「令和2年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」
(注)「ライブ配信型の動画共有サービス」は当社、ニコニコ生放送、ツイキャスなど、「オンデマンド型の動画共有サービス」はYouTube(ユーチューブ)、ニコニコ動画など、NHK、民放キー局が提供する「オンデマンド型の放送番組配信サービス」はNHK オンデマンド、フジテレビオンデマンド、TVer(ティーバー)など、「オンデマンド型の動画配信サービス」はGYAO!、アクトビラ、Hulu(フールー)、Netflix(ネットフリックス)、ひかりTVなど、「有料多チャンネル放送サービス」はWOWOW、スカパー、ケーブルテレビなど、「リニア型の動画配信サービス」はABEMAなど、及び「インターネットを利用したラジオ放送サービス」はradiko(ラジコ)などを指しております。
(3)経営戦略
当社グループは、企業理念である「利用者に最も近いソフトウェアを提供し、より豊かな社会を実現する。」に基づき、一般消費者向けのサービスの更なる改善と収益拡大を図るとともに、エンジニア採用力を強化することとなります。
特にライブ配信サービスにおいては、売上高の拡大と収益性の向上に向けて以下の取組を進めております。
①売上高の拡大
これまで継続してサービスの機能やアイテム、仕組み等の製品面の改良を続けてきましたが、当社グループは、今後も既存路線の更なる強化を図る方針です。一つ目は、ユーザー継続率の維持・向上のためのアイテム、機能、仕組みの更なる拡張を図る方針であり、以下の施策を検討しております。
・アイテムの拡充
・配信ユーザー同士の対決機能の提供
・魅力的な特典のあるイベントの継続実施
二つ目は、配信ユーザーの多様化による新たな視聴ユーザー層の拡大に注力し、売上高の更なる拡大を図ってまいります。特に、アマチュア配信ユーザー拡大のため、競合他社で実証済であるプロ/セミプロの配信ユーザー(注)の拡充を行い、クオリティの高い配信ユーザーの拡充により、アマチュア配信ユーザー更なる拡大の呼び水とし、また配信ラインナップの充実を図ることで、異なる嗜好性の視聴ユーザー層、課金ユーザー層を獲得してまいります。
(注)プロは大手芸能事務所に所属する配信ユーザー、セミプロは大手芸能事務所以外のライバー事務所等に所属する配信ユーザーを指しております。
②収益性の向上
広告宣伝費はコロナ禍において強弱をつけた積極的な投資を行ってきましたが、今後は効率性を踏まえた規律ある投資を行う方針です。具体的には、デジタル広告のROAS(Return on Advertising Spend:使用した広告費に対する売上高の割合)、ROI(Return on Investment:使用した広告費に対する限界利益の割合)を重視した適正規模の成長投資を継続するとともに、黒字を確保しながら継続的な成長を図ってまいります。
また、決済手数料は決済チャネルの多様化による分散を進めることでブラウザ課金比率を向上させ、決済プラットフォーマーへの手数料を圧縮することにより、収益性の向上を図ってまいります。具体的には、課金チャネルの新規導入やブラウザ決済時の割引施策等によりブラウザ決済に誘導する為の取り組みを実施いたします。
当社グループのライブ配信サービスは、30~40代をメインユーザー層としており、かつアマチュアの配信ユーザー層がマジョリティを占めることで他社と差別化を図っており、具体的には以下3点がふわっちの強みであると当社グループでは考えております。
・アマチュアがメインの多様な配信ユーザー層を形成した結果、配信の敷居が低くなり、ライブ配信に慣れていない人も配信しやすい環境(配信ユーザー数の増加に寄与)
・配信ユーザーとの距離が近いことから、応援が配信ユーザーに届きやすく、小さなコミュニティが生み出す継続的な熱量のもと、配信ユーザーへの応援や、アイテム使用が身近な風土(課金ユーザー数の増加に寄与)
・生産年齢の中心世代で10~20代に比べて賃金の多い(厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」に基づく)メインユーザー層(30~40代)(ARPPU(課金ユーザー1人当たりの月次平均課金額)の堅調な推移に寄与)
さらに、今後は収益の多角化を企図して、以下のライブ配信市場に隣接する領域への展開を視野に事業の多様化を推進していきます(現時点においては、計画段階であり、今後変更となる可能性があります)。
(ⅰ)バーチャル配信
バーチャル配信機能の提供により、任意のキャラクター等になりきった配信が可能となり、新しい配信スタイルの拡充となることから新たな配信ユーザー層の獲得、それに伴う課金ユーザーの獲得による収益拡大を図ります。(一部のユーザーを対象にテスト実施済み)
(ⅱ)デジタルコンテンツ販売
配信ユーザーのボイスやオリジナルグッズ等のデジタルコンテンツの販売の仕組みの提供を通じて、利益率の向上を図ります。(テスト準備中)
(ⅲ)ライブコマース(注1)
他社との協業による配信ユーザー向けのコマースソリューション(注2)開発等による、ライブコマース領域への展開を図り、収益の多角化・複層化(商品購入の手数料等を想定)、EC需要や買い物需要の一部の取り込み、ライブ配信でない入り口による新規ユーザー層の取り込みを想定しています。
(注)1.ライブコマースとは、デジタルプラットフォーム上でライブ配信サービスを利用し、ライブ配信で商品を紹介する配信ユーザーと視聴ユーザーで双方向に連絡を取り合い商品を確認して販売する手法を企図しております。
2.コマースソリューションとは、配信ユーザーがより多くの視聴ユーザーを惹きつけ、配信ユーザーが販売するグッズ等の売上向上を図る為のツールや手法の提供を企図しております。なお、現時点において配信ユーザーが当社グループのサービスにおいてグッズ等を販売する機能は提供しておりません。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでの主力サービスは、一般消費者向けのライブ配信事業「ふわっち」です。当該サービスは、配信ユーザー、課金ユーザーのそれぞれが多数かつバランスよく存在することで成立するサービスであることから、当社グループは、配信ユニークユーザー数(注)、課金ユニークユーザー数、及びARPPUを重要な経営指標と位置付けております。
(注)ユニークユーザー数(以下、UU数)は「重複込みなしの合計ユーザー数」を意味しております。
「ふわっち」の収益構造は以下の算式の通りです。
「ふわっち売上高」=「課金UU数」×「ARPPU」
さらに課金UU数は、MAU(月間アクティブユーザー)と課金比率(=課金UU数÷MAU)で構成されております。従って、課金UU数の増加の為、MAUの増加施策、課金比率の向上施策が重要であると考えております。
以下では各指標の四半期ごとの推移(UU数)を掲載しており、今後も配信UU数、課金UU数の継続的な増大、ARPPUの持続可能な水準での成長に注力し、企業価値の向上を図っていく方針です。
2020年3月期
第1四半期第2四半期第3四半期第4四半期
配信UU数(人)20,90620,38320,01521,247
課金UU数(人)31,46730,91330,45430,354
課金総額(千円)955,8141,027,8881,050,5851,046,492
ARPPU(円)30,37533,25134,49734,476

2021年3月期
第1四半期第2四半期第3四半期第4四半期
配信UU数(人)23,67627,60726,63634,318
課金UU数(人)35,04837,18437,31740,554
課金総額(千円)1,405,4691,653,7761,690,0511,801,161
ARPPU(円)40,10144,47545,28944,414

2022年3月期
第1四半期第2四半期第3四半期第4四半期
配信UU数(人)37,95539,71739,02641,376
課金UU数(人)44,97745,71247,76652,669
課金総額(千円)2,090,5102,281,3932,262,1882,314,816
ARPPU(円)46,48049,90847,36043,950

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループの優先的に対処すべき主な課題は以下のとおりであります。なお、優先的に対処すべき財務上の課題はございません。
① ユーザー獲得の強化
当社グループが持続的に成長するためには、当社グループ及び当社グループのサービスの知名度を向上させ新規ユーザーを継続的に獲得し、ユーザー数を拡大していくことが必要不可欠であると認識しております。そのためには、効果的な広告宣伝活動等により当社グループ及び当社グループサービスの知名度を向上させるよう努めてまいります。
② サービスの健全性の確保
当社グループが提供するサービスは、サービス内でユーザー同士がコミュニケーションをとることが可能であるため、ユーザーが安心して当社グループのサービスを利用できるようにサービスの健全性を確保する必要があります。当社グループは、サービスの健全性を確保するため、ユーザーに対し、利用規約やガイドラインにおいて、誹謗中傷行為や、出会いを目的とする行為、他人の権利侵害に該当する行為、公序良俗に反する行為等の社会的問題へと発展する可能性のある不適切な行為や違法な行為等の禁止を明示しているほか、ユーザー間のコミュニケーションのモニタリングを随時行い、規約やガイドラインに違反したユーザーに対しては、改善の要請や退会等の措置を講じ、サービス内における注意喚起を行うなどの対応を行っております。
その他、当社グループは、以下のような取組を行うことで、健全なプラットフォームの構築に努めております。
(a)配信時のルールを定めたガイドライン及び視聴時のルールを定めたガイドラインを含む各種ガイドラインの設置と運用
(b)利用規約や各種ガイドラインの違反事例の例示を用いたユーザーへの啓蒙活動
(c)外部リソースも活用した人員配置による365日24時間リアルタイムでの監視体制の構築及び監視基準に基づいた配信停止措置の随時実施
(d)利用規約や各種ガイドラインへの違反が確認されたユーザーの確実な抽出と当該ユーザーへの改善要請及び違反内容や累積違反状況に応じた一時的な利用制限や強制退会措置の実施
(e)毎週実施の定例会議を通じて監視体制や監視基準に関する課題の抽出と改善を推進
当社グループは、サービス等を利用する上でのマナーや注意事項等を明確に表示し、モニタリング・システムの強化やサービス内パトロール等のための人員体制の増強等、システム面、人員面双方において監視体制を、サービスの拡大に即して継続的に強化し、健全性の更なる確保に努めてまいります。
③ 組織の機動性の確保
当社グループの属するIT業界は、他の業界に比べて環境変化のスピードが速く、その変化への迅速な対応が不可欠であります。組織の規模拡大による機動性の低下等の弊害を排除するため、適切な人員配置、事業展開に応じた組織体制の整備により、意思決定の機動性の確保を図ってまいります。
④ 優秀な人材確保及び育成
当社グループは、今後、より一層の事業拡大のため、人材の確保及び育成を重要な課題と認識しております。当社グループの事業内容に共鳴する優秀な人材を確保し、持続的な成長を支える人材を育成すべく採用活動を強化してまいります。
⑤ 内部管理体制の強化
当社グループは今後も更なる業容拡大を図るため、当社グループの成長段階に沿った内部管理体制の強化が必要と認識しております。そこで当社グループは内部統制に基づき業務プロセスの整備を行い、業務を有効的かつ効率的に行ってまいります。また、内部管理体制を充実するために、コンプライアンス・リスク管理委員会で適時にリスク管理を行い、研修や社内勉強会等を開催し内部統制及びコンプライアンスの強化に努めてまいります。