有価証券報告書-第23期(2025/07/01-2026/06/30)
有報資料
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)会社の経営方針
当社は、「個性をかき集めて、驚きの角度から世の中をアップデートしつづける。」というVision(あるべき姿)を実現すべく、常に変化する経営環境、市場動向に的確に対処し、企業価値の更なる向上に向けて事業展開を進めております。
当社の属するDX市場は、生成AIやAIエージェントの急速な進化・普及により社会的影響が拡大し、単なる業務効率化にとどまらないAIトランスフォーメーション(AX)への動きが一段と加速しております。こうした技術の進展は、AI活用を前提としたビジネスの広がりを促進すると同時に、クラウドインフラ需要の拡大など当社事業領域における成長機会を生み出しています。他方で、システムを「作る」工程は急速にコモディティ化が進んでおり、システム開発における価値の中心は、作る力から、顧客の課題をどのように解決するかを見極め、実際に動く仕組みとして成立させる力へと移りつつあると認識しております。その背景には、レガシーシステムが抱える技術負債や顧客側における人材の不足に加え、解くべき課題そのものの複雑化と、クラウドやAIをはじめとする技術選択肢の多様化があります。こうした変化のスピードは加速しており、社会・産業の構造変化を見越した柔軟かつ先見的な事業戦略の立案・実行が不可欠であると考えております。
当社はこうした認識のもと、持続的成長を支える経営基盤の強化に加え、「OSEKKAI×TECHNOLOGY」というブランドスローガンのもと、顧客に寄り添いながら課題そのものを解決し続けることが重要と認識しております。当社が提供しているのは顧客の課題解決そのものであり、幅広い技術領域とそれらを結合する技術結合力は、その価値を実現するための手段であると位置付けております。
(2)経営環境及び中長期的な会社の経営戦略
現在、生成AIやAIエージェントの進化・普及は、社会や産業の構造変革を促し、企業における業務の在り方を変化させようとしています。当社が事業を展開するIT分野では、生成AIやAIエージェントの急速な進化・普及により、技術のコモディティ化と民主化が加速しております。この結果、システム開発における価値の中心は、実装力そのものから、顧客の課題をどのように定義し、数ある技術選択肢の中からどれを組み合わせて解決策として成立させるかという、より上流の判断力へと移りつつあると当社は認識しております。
当社は、こうした環境変化を脅威ではなく、自らのポジショニングが強みとして生きる好機と捉えております。首都圏のように役割分担が明確な大企業中心のIT産業構造とは異なり、九州・福岡という土地柄の中で構想の整理から実装・運用までを一気通貫で担ってきた当社は、特定技術に依存せず顧客の課題設定そのものに深く関与する「コンサルティング会社とシステム開発会社の強みを併せ持つ第三の型」としての立ち位置を確立しております。技術の実装が急速にコモディティ化する局面においてこそ、この「作る力」にとどまらない上流からの関与力が、当社の競争優位の源泉として一段と重要性を増すものと考えております。
こうした認識のもと、システム開発分野においては、急速に進化する生成AIやAIエージェントへの対応が強く求められており、従来の「労働集約型システム開発」から「AI-Native(注1)なシステム開発」への抜本的な転換が急務となっております。当社にとってこの転換は、単なる開発効率化にとどまらず、実装工程に割いていた人的資本を、課題の定義や技術選定といった上流工程へ再配置し、コンサルティング機能を一段と強化するための基盤であると位置付けております。
これらのAI分野における急速な発展に加え、企業のDX推進の拡大を背景として、パブリッククラウド(注2)サービス市場は引き続き成長を続けています。国内市場規模は、2025年の4兆4,930億円から、2030年には約2.2倍となる10兆962億円へ拡大すると予測されており、年間平均成長率17.6%と国内IT市場全体を大幅に上回る成長が見込まれております。(出所:IDCJapan株式会社「国内パブリッククラウドサービス市場予測、2025年~2030年」)
また、当社が創業以来築いてきた学術分野での信頼関係は、政府の投資重点領域とも合致しております(図1)。第一に、国公立大学・国立研究機関においては、研究データの増大とAI活用の進展を背景に、研究基盤のクラウド移行が加速しております。第二に、大学発スタートアップ・ディープテック領域においては、事業化の局面で解析基盤やクラウド設計に関する判断が成否を左右する中、創業期からの関係性がそのまま入口となっております。そして第三に、宇宙領域においては、宇宙ベンチャーの多くが大学発であり、産業の重心がハードウェアからソフトウェアへと移りつつある中で、当社が主戦場と位置付ける市場が形成されつつあります。これら3つの領域は相互に独立したものではなく、大学・研究機関との関係性を起点として、当社の実績が次の領域への入口となって連なる構造にあると認識しております。

図1:市場機会
このような環境の下、当社は、テクノロジーを軸に多角的に成長する企業グループへの転換を図ると共に、中長期的な高成長を実現するための経営基盤を構築するため、次の4つのテーマに対して重点的に取り組んでまいります。
①AI-Native
「実装コストを下げ、課題解決に注力」という方針を掲げ、生成AIやAIエージェントの急速な進化・普及に対応したAI-Nativeな開発プロセスへの全面移行を進めるため、AIコーディングツール等への積極的な投資を実行してまいります。営業提案から実装、プロジェクト運営に至るまでの幅広い業務を対象にAI活用のためのスキルを整備するとともに、AI Coding Agentの全面導入や、AIによるレビュー・品質評価の仕組みを構築することで、個別ツールの導入にとどまらない開発プロセスそのものの再設計を進めてまいります。当社は、AI-Nativeな開発体制の本質はコスト削減ではなく人的資本の再配置にあると認識しており、実装に要していたエンジニアの時間を課題の定義や解決策の設計といった上流工程へ振り向けることで、採用ペースの引き上げによる人員体制の拡充とあわせて、課題解決の担い手としてのキャパシティ拡大を図ってまいります。
②リセール
「顧客接点を広げ、開発案件へ転換する」という方針を掲げ、パブリッククラウド(AWS)の提供を主力としつつ、IoTプラットフォーム(SORACOM)や生成AI(Anthropic)等、特定ベンダーに依存しない形で取扱商材を拡大してまいります。扱える商材が増えるほど支えられる顧客と領域は広がり、クラウドやAIの運用課題を継続的に解決する中で、顧客の事業・経営に関わるより上流の課題を捉える機会が生まれるものと考えております。この循環を通じて、リセールによる継続的な収益基盤の拡大と、課題解決の構想段階からの関与による付加価値の維持向上を図ってまいります。
③宇宙
今後、グローバル市場・国内市場ともに成長が期待される宇宙産業関連ソフトウェア市場へのアプローチをいち早く実施し、マーケットリーダーとしての地位確立を目指してまいります。宇宙ベンチャーの多くが大学発である中、当社が大学・研究機関との関係構築を通じて培ってきた実績と信頼関係を入口として、まずはJAXAやQPS研究所等との協業を通じた実績の積み上げとドメイン知識の獲得を進めてまいります。その上で、地上局システムの構築経験と獲得したドメイン知識を掛け合わせ、大型案件の獲得と宇宙戦略基金への参画を目指してまいります。なお、事業計画はシステム開発を中心とした保守的な前提に基づいておりますが、衛星データの利活用やリセールによる継続収益の創出も見込まれるものと考えており、将来的には宇宙領域においてもフローとストックの循環を成立させることを目指してまいります。
④M&A
「同業ロールアップを軸に、規律ある投資で非連続成長を取り込む」という方針を掲げ、M&Aや戦略的提携による競争力の強化、新たな技術の獲得、事業ポートフォリオの多様化等に取り組んでまいります。特に、同業事業者に対するロールアップ型M&Aを最優先とし、単なる人月・工数の量ではなく、顧客接点と課題解決を担える人材組織の取得を重視してまいります。対象会社に対しては、当社が培ってきたAWS・クラウド知見やAI-Native開発プロセス、顧客の前に立つエンジニアの育成手法、構想段階から関与するプライム案件のスタイル等を展開することで、当社・対象会社双方の付加価値向上を図ってまいります。なお、M&Aの実行にあたっては財務規律を重視し、高値掴みを避け、件数を追わない方針としております。あわせて、九州エリアの非テクノロジー企業に対するM&Aを通じた新市場への拡大や異業種への進出も図ってまいります。
(3)目標とする経営指標
当社は、企業価値の向上には持続的な成長が不可欠であると考えており、売上高及び営業利益の成長率を重要な経営指標として位置付けております。
2026年6月期から2028年6月期までの3年間を、テクノロジーを軸に多角的に成長する企業グループへの転換を図るとともに、中長期的な高成長を実現するための基盤を構築する期間と位置付けており、2025年6月期から2028年6月期までの3ヵ年における売上高及び営業利益のCAGR(年平均成長率)40%以上を目標としております(図2)。具体的には、2028年6月期において売上高50億円以上、営業利益7.5億円以上(注3)の達成を目指してまいります。

図2:目標とする経営指標
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
1.新技術への対応
生成AIやAIエージェントの急速な進化・普及は、産業構造の変革を促し、当社が属するIT業界でもシステム開発工程の効率化や自動化を加速させています。このような事業環境の下で当社が継続的に事業を拡大していくためには、これらの技術を基盤としたAI-Nativeなシステム開発プロセスへ全面的に移行することが重要であると認識しております。この移行の本質は、単なる開発コストの削減ではなく、実装に要する工数の縮減により、課題の定義や解決策の設計といった上流工程へ人的資源を再配置することにあると考えております。あわせて、生成AIやクラウドを含む先端技術の動向を継続的に把握し、検証と実践を繰り返すことで、今後も最新技術への適時対応と新サービスの開発に継続的に取り組んでまいります。
2.優秀人材の確保と育成
IT人材が不足していることに加えて、技術が急速に進化する中、新しい技術への高い関心と常に学び続ける姿勢を有する人材の確保が、当社の成長に欠かせない重要課題であると認識しております。当社が求める人材像は、実装のみを担う技術者ではなく、要件が固まる前の構想段階から顧客と直接向き合い、課題を定義し、技術を選定し、自ら形にすることができる人材であります。当社では、通常の採用活動に加え社員紹介制度によるリファラル採用の強化や、新卒・中途入社者向けのOJT教育や勉強会などを積極的に実施しています。また、クライアントのDX事業と自社運営のプロダクトを両輪で展開し、特定技術に偏らないことは、好奇心旺盛なエンジニア人材を獲得する上で当社の独自性を形成しています。
人材の確保と同時に、社員の能力開発・向上のための研修参加、資格取得費用の会社負担、認定資格取得時の報奨金制度など、人事評価制度の継続的改善運用を通じて、社員の能力を最大限に発揮させる仕組みと、能力向上を促進するカルチャーを確立してまいります。さらに、社内における知見の共有を組織文化として定着させることで、担当する社員の経験年数によらず一定の品質と価値を提供できる体制を維持し、個人の力量に依存しない再現性のある組織づくりを進めてまいります。また、奨学金返済を支援する制度を設け、経済的・心理的な不安を軽減することで、社員が安心して働ける環境づくりを進めております。
また、働き方の多様性に対応するため、リモートワーク、コアタイムなしのフルフレックス、時短勤務制度などを積極的に推進するとともに、一定の出社を推奨し、対面で効率的なコミュニケーションや仕事の垣根を越えた人材の交流も重視しております。さらに、女性活躍推進の取り組みが評価され、厚生労働大臣より「えるぼし認定」の3つ星を取得するなど、誰もが働きやすい職場環境を整えることで、次世代を担う優秀な人材の育成、定着に繋げてまいります。
3.サービスの高付加価値化、利益率の向上
当社は、成長戦略を着実に実行し、売上高の安定的な高成長を実現するとともに、営業利益率の向上を図ることが重要な課題だと認識しております。そのため、エンジニア人材の採用力を強化し増員を進めるとともに、AI-Nativeな開発プロセスへの移行による生産性の向上及び付加価値の拡大を進め、開発キャパシティの拡大と一人当たり売上高の向上を図ってまいります。また、構想段階から顧客の課題解決に関与する案件の比重を高めることにより、顧客単価及び売上総利益率の向上に取り組んでまいります。加えて、システムの保守運用やパブリッククラウドの提供等のストック型収益を積み上げ、収益基盤の安定性を高めてまいります。また、開発プロセスの継続的な改善、社内における技術の共有や教育訓練等を推進し、より強固な開発体制の構築に努め、IT技術を通じた社会課題の解決を実現してまいります。
4.競争優位性の確保
当社が今後も成長を持続していくためには、他社との差別化を実現し、サービスの優位性を高めるための機能強化・拡充が必要不可欠であると認識しております。九州・福岡という地域特性上、当社の周囲には顧客とベンダーを束ねる存在が乏しく、当社自らが構想の整理から技術の選定、実装、運用に至るまでのあらゆる役割を果たしてまいりました。当社の競争優位性の中核は、保有する技術の幅そのものではなく、要件が固まる前の構想段階から技術的な実現可能性を判断できる人材が顧客と直接向き合い、課題の定義から実装・運用までを少人数で一貫して担うこの体制にあると認識しております。AI、IoT、クラウド、量子コンピュータといった先端技術から、Web、ネイティブアプリ、ビッグデータ解析、UI/UX設計に至る幅広い技術領域を保有し、これらを結合できることは、特定の技術に依らず課題に対して最適な解決策を選択するための手段であり、この少数精鋭の体制を支える基盤であります。こうした体制は、創業以来、各工程を自ら一貫して担う中で長期にわたり形成されたものであり、資本や人員の投下だけで短期間に模倣できるものではないと考えております。
また、知見共有の文化により個人の力量に依存しない再現性を備えており、蓄積された組織的な知見がより大きな課題への対応を可能にする循環を通じて、当社の優位性は事業の継続とともに強化されるものと考えております。生成AIの普及により実装工程の効率化が進むほど、何を作るべきかを見極め、実際に動く仕組みとして成立させる能力の重要性は相対的に高まるものと想定しており、当社の体制はこうした環境変化と整合的であると考えております。
5.コーポレート・ガバナンス体制及び内部管理体制の強化
当社は、今後も事業の更なる拡大と持続的成長を見込んでおり、それに対応した内部管理体制の強化が重要な課題であると認識しております。経営の公正性・透明性を確保すべく、コーポレート・ガバナンスの充実を図るとともに、適切な内部統制システムの整備・運用を推進してまいります。また、M&Aを成長戦略の一つに位置付けていることから、投資の意思決定に係る規律の確保、買収後の経営管理体制の統合及びグループ全体を対象とした内部統制の整備・運用に取り組んでまいります。加えて、株主及び投資家との建設的な対話を継続的に行い、当社の事業内容及び成長戦略に対する適切な評価の獲得に努めてまいります。
6.健全な財務基盤の構築
財務基盤の健全性を維持しながら、優秀な人材の採用及び育成、事業開発及び研究開発活動、さらにはM&Aなど将来の事業拡大に向けた投資資金需要に対応するため、事業資金を安定的に確保することが必要不可欠であると考えております。M&Aについては、事業規模及び人材の獲得による成長の加速と、当社の開発プロセス及び知見の移植による収益性の向上の双方を狙いとしており、取得価格その他の投資判断に係る規律を確保しながら実行してまいります。今後の資金調達手段としては、主に金融機関からの借入、エクイティファイナンスを検討し、持続的な成長を支える健全な財務運営を図ってまいります。
(注1)AI-Native
既存の業務プロセスに「AIを後から導入する」のではなく、「最初からAI活用を前提に事業や組織を設計・運営する」状態を指します。これにより、業務効率性や新サービスの開発スピードで大きな優位性を持つ可能性が生まれます。
(注2)パブリッククラウド
広く一般のユーザーや企業向けにクラウドコンピューティング環境をインターネット経由で提供するサービスのことをいいます。
(注3)M&A等により連結営業利益となった場合は、のれん償却前営業利益を採用しております。
(1)会社の経営方針
当社は、「個性をかき集めて、驚きの角度から世の中をアップデートしつづける。」というVision(あるべき姿)を実現すべく、常に変化する経営環境、市場動向に的確に対処し、企業価値の更なる向上に向けて事業展開を進めております。
当社の属するDX市場は、生成AIやAIエージェントの急速な進化・普及により社会的影響が拡大し、単なる業務効率化にとどまらないAIトランスフォーメーション(AX)への動きが一段と加速しております。こうした技術の進展は、AI活用を前提としたビジネスの広がりを促進すると同時に、クラウドインフラ需要の拡大など当社事業領域における成長機会を生み出しています。他方で、システムを「作る」工程は急速にコモディティ化が進んでおり、システム開発における価値の中心は、作る力から、顧客の課題をどのように解決するかを見極め、実際に動く仕組みとして成立させる力へと移りつつあると認識しております。その背景には、レガシーシステムが抱える技術負債や顧客側における人材の不足に加え、解くべき課題そのものの複雑化と、クラウドやAIをはじめとする技術選択肢の多様化があります。こうした変化のスピードは加速しており、社会・産業の構造変化を見越した柔軟かつ先見的な事業戦略の立案・実行が不可欠であると考えております。
当社はこうした認識のもと、持続的成長を支える経営基盤の強化に加え、「OSEKKAI×TECHNOLOGY」というブランドスローガンのもと、顧客に寄り添いながら課題そのものを解決し続けることが重要と認識しております。当社が提供しているのは顧客の課題解決そのものであり、幅広い技術領域とそれらを結合する技術結合力は、その価値を実現するための手段であると位置付けております。
(2)経営環境及び中長期的な会社の経営戦略
現在、生成AIやAIエージェントの進化・普及は、社会や産業の構造変革を促し、企業における業務の在り方を変化させようとしています。当社が事業を展開するIT分野では、生成AIやAIエージェントの急速な進化・普及により、技術のコモディティ化と民主化が加速しております。この結果、システム開発における価値の中心は、実装力そのものから、顧客の課題をどのように定義し、数ある技術選択肢の中からどれを組み合わせて解決策として成立させるかという、より上流の判断力へと移りつつあると当社は認識しております。
当社は、こうした環境変化を脅威ではなく、自らのポジショニングが強みとして生きる好機と捉えております。首都圏のように役割分担が明確な大企業中心のIT産業構造とは異なり、九州・福岡という土地柄の中で構想の整理から実装・運用までを一気通貫で担ってきた当社は、特定技術に依存せず顧客の課題設定そのものに深く関与する「コンサルティング会社とシステム開発会社の強みを併せ持つ第三の型」としての立ち位置を確立しております。技術の実装が急速にコモディティ化する局面においてこそ、この「作る力」にとどまらない上流からの関与力が、当社の競争優位の源泉として一段と重要性を増すものと考えております。
こうした認識のもと、システム開発分野においては、急速に進化する生成AIやAIエージェントへの対応が強く求められており、従来の「労働集約型システム開発」から「AI-Native(注1)なシステム開発」への抜本的な転換が急務となっております。当社にとってこの転換は、単なる開発効率化にとどまらず、実装工程に割いていた人的資本を、課題の定義や技術選定といった上流工程へ再配置し、コンサルティング機能を一段と強化するための基盤であると位置付けております。
これらのAI分野における急速な発展に加え、企業のDX推進の拡大を背景として、パブリッククラウド(注2)サービス市場は引き続き成長を続けています。国内市場規模は、2025年の4兆4,930億円から、2030年には約2.2倍となる10兆962億円へ拡大すると予測されており、年間平均成長率17.6%と国内IT市場全体を大幅に上回る成長が見込まれております。(出所:IDCJapan株式会社「国内パブリッククラウドサービス市場予測、2025年~2030年」)
また、当社が創業以来築いてきた学術分野での信頼関係は、政府の投資重点領域とも合致しております(図1)。第一に、国公立大学・国立研究機関においては、研究データの増大とAI活用の進展を背景に、研究基盤のクラウド移行が加速しております。第二に、大学発スタートアップ・ディープテック領域においては、事業化の局面で解析基盤やクラウド設計に関する判断が成否を左右する中、創業期からの関係性がそのまま入口となっております。そして第三に、宇宙領域においては、宇宙ベンチャーの多くが大学発であり、産業の重心がハードウェアからソフトウェアへと移りつつある中で、当社が主戦場と位置付ける市場が形成されつつあります。これら3つの領域は相互に独立したものではなく、大学・研究機関との関係性を起点として、当社の実績が次の領域への入口となって連なる構造にあると認識しております。

図1:市場機会
このような環境の下、当社は、テクノロジーを軸に多角的に成長する企業グループへの転換を図ると共に、中長期的な高成長を実現するための経営基盤を構築するため、次の4つのテーマに対して重点的に取り組んでまいります。
①AI-Native
「実装コストを下げ、課題解決に注力」という方針を掲げ、生成AIやAIエージェントの急速な進化・普及に対応したAI-Nativeな開発プロセスへの全面移行を進めるため、AIコーディングツール等への積極的な投資を実行してまいります。営業提案から実装、プロジェクト運営に至るまでの幅広い業務を対象にAI活用のためのスキルを整備するとともに、AI Coding Agentの全面導入や、AIによるレビュー・品質評価の仕組みを構築することで、個別ツールの導入にとどまらない開発プロセスそのものの再設計を進めてまいります。当社は、AI-Nativeな開発体制の本質はコスト削減ではなく人的資本の再配置にあると認識しており、実装に要していたエンジニアの時間を課題の定義や解決策の設計といった上流工程へ振り向けることで、採用ペースの引き上げによる人員体制の拡充とあわせて、課題解決の担い手としてのキャパシティ拡大を図ってまいります。
②リセール
「顧客接点を広げ、開発案件へ転換する」という方針を掲げ、パブリッククラウド(AWS)の提供を主力としつつ、IoTプラットフォーム(SORACOM)や生成AI(Anthropic)等、特定ベンダーに依存しない形で取扱商材を拡大してまいります。扱える商材が増えるほど支えられる顧客と領域は広がり、クラウドやAIの運用課題を継続的に解決する中で、顧客の事業・経営に関わるより上流の課題を捉える機会が生まれるものと考えております。この循環を通じて、リセールによる継続的な収益基盤の拡大と、課題解決の構想段階からの関与による付加価値の維持向上を図ってまいります。
③宇宙
今後、グローバル市場・国内市場ともに成長が期待される宇宙産業関連ソフトウェア市場へのアプローチをいち早く実施し、マーケットリーダーとしての地位確立を目指してまいります。宇宙ベンチャーの多くが大学発である中、当社が大学・研究機関との関係構築を通じて培ってきた実績と信頼関係を入口として、まずはJAXAやQPS研究所等との協業を通じた実績の積み上げとドメイン知識の獲得を進めてまいります。その上で、地上局システムの構築経験と獲得したドメイン知識を掛け合わせ、大型案件の獲得と宇宙戦略基金への参画を目指してまいります。なお、事業計画はシステム開発を中心とした保守的な前提に基づいておりますが、衛星データの利活用やリセールによる継続収益の創出も見込まれるものと考えており、将来的には宇宙領域においてもフローとストックの循環を成立させることを目指してまいります。
④M&A
「同業ロールアップを軸に、規律ある投資で非連続成長を取り込む」という方針を掲げ、M&Aや戦略的提携による競争力の強化、新たな技術の獲得、事業ポートフォリオの多様化等に取り組んでまいります。特に、同業事業者に対するロールアップ型M&Aを最優先とし、単なる人月・工数の量ではなく、顧客接点と課題解決を担える人材組織の取得を重視してまいります。対象会社に対しては、当社が培ってきたAWS・クラウド知見やAI-Native開発プロセス、顧客の前に立つエンジニアの育成手法、構想段階から関与するプライム案件のスタイル等を展開することで、当社・対象会社双方の付加価値向上を図ってまいります。なお、M&Aの実行にあたっては財務規律を重視し、高値掴みを避け、件数を追わない方針としております。あわせて、九州エリアの非テクノロジー企業に対するM&Aを通じた新市場への拡大や異業種への進出も図ってまいります。
(3)目標とする経営指標
当社は、企業価値の向上には持続的な成長が不可欠であると考えており、売上高及び営業利益の成長率を重要な経営指標として位置付けております。
2026年6月期から2028年6月期までの3年間を、テクノロジーを軸に多角的に成長する企業グループへの転換を図るとともに、中長期的な高成長を実現するための基盤を構築する期間と位置付けており、2025年6月期から2028年6月期までの3ヵ年における売上高及び営業利益のCAGR(年平均成長率)40%以上を目標としております(図2)。具体的には、2028年6月期において売上高50億円以上、営業利益7.5億円以上(注3)の達成を目指してまいります。

図2:目標とする経営指標
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
1.新技術への対応
生成AIやAIエージェントの急速な進化・普及は、産業構造の変革を促し、当社が属するIT業界でもシステム開発工程の効率化や自動化を加速させています。このような事業環境の下で当社が継続的に事業を拡大していくためには、これらの技術を基盤としたAI-Nativeなシステム開発プロセスへ全面的に移行することが重要であると認識しております。この移行の本質は、単なる開発コストの削減ではなく、実装に要する工数の縮減により、課題の定義や解決策の設計といった上流工程へ人的資源を再配置することにあると考えております。あわせて、生成AIやクラウドを含む先端技術の動向を継続的に把握し、検証と実践を繰り返すことで、今後も最新技術への適時対応と新サービスの開発に継続的に取り組んでまいります。
2.優秀人材の確保と育成
IT人材が不足していることに加えて、技術が急速に進化する中、新しい技術への高い関心と常に学び続ける姿勢を有する人材の確保が、当社の成長に欠かせない重要課題であると認識しております。当社が求める人材像は、実装のみを担う技術者ではなく、要件が固まる前の構想段階から顧客と直接向き合い、課題を定義し、技術を選定し、自ら形にすることができる人材であります。当社では、通常の採用活動に加え社員紹介制度によるリファラル採用の強化や、新卒・中途入社者向けのOJT教育や勉強会などを積極的に実施しています。また、クライアントのDX事業と自社運営のプロダクトを両輪で展開し、特定技術に偏らないことは、好奇心旺盛なエンジニア人材を獲得する上で当社の独自性を形成しています。
人材の確保と同時に、社員の能力開発・向上のための研修参加、資格取得費用の会社負担、認定資格取得時の報奨金制度など、人事評価制度の継続的改善運用を通じて、社員の能力を最大限に発揮させる仕組みと、能力向上を促進するカルチャーを確立してまいります。さらに、社内における知見の共有を組織文化として定着させることで、担当する社員の経験年数によらず一定の品質と価値を提供できる体制を維持し、個人の力量に依存しない再現性のある組織づくりを進めてまいります。また、奨学金返済を支援する制度を設け、経済的・心理的な不安を軽減することで、社員が安心して働ける環境づくりを進めております。
また、働き方の多様性に対応するため、リモートワーク、コアタイムなしのフルフレックス、時短勤務制度などを積極的に推進するとともに、一定の出社を推奨し、対面で効率的なコミュニケーションや仕事の垣根を越えた人材の交流も重視しております。さらに、女性活躍推進の取り組みが評価され、厚生労働大臣より「えるぼし認定」の3つ星を取得するなど、誰もが働きやすい職場環境を整えることで、次世代を担う優秀な人材の育成、定着に繋げてまいります。
3.サービスの高付加価値化、利益率の向上
当社は、成長戦略を着実に実行し、売上高の安定的な高成長を実現するとともに、営業利益率の向上を図ることが重要な課題だと認識しております。そのため、エンジニア人材の採用力を強化し増員を進めるとともに、AI-Nativeな開発プロセスへの移行による生産性の向上及び付加価値の拡大を進め、開発キャパシティの拡大と一人当たり売上高の向上を図ってまいります。また、構想段階から顧客の課題解決に関与する案件の比重を高めることにより、顧客単価及び売上総利益率の向上に取り組んでまいります。加えて、システムの保守運用やパブリッククラウドの提供等のストック型収益を積み上げ、収益基盤の安定性を高めてまいります。また、開発プロセスの継続的な改善、社内における技術の共有や教育訓練等を推進し、より強固な開発体制の構築に努め、IT技術を通じた社会課題の解決を実現してまいります。
4.競争優位性の確保
当社が今後も成長を持続していくためには、他社との差別化を実現し、サービスの優位性を高めるための機能強化・拡充が必要不可欠であると認識しております。九州・福岡という地域特性上、当社の周囲には顧客とベンダーを束ねる存在が乏しく、当社自らが構想の整理から技術の選定、実装、運用に至るまでのあらゆる役割を果たしてまいりました。当社の競争優位性の中核は、保有する技術の幅そのものではなく、要件が固まる前の構想段階から技術的な実現可能性を判断できる人材が顧客と直接向き合い、課題の定義から実装・運用までを少人数で一貫して担うこの体制にあると認識しております。AI、IoT、クラウド、量子コンピュータといった先端技術から、Web、ネイティブアプリ、ビッグデータ解析、UI/UX設計に至る幅広い技術領域を保有し、これらを結合できることは、特定の技術に依らず課題に対して最適な解決策を選択するための手段であり、この少数精鋭の体制を支える基盤であります。こうした体制は、創業以来、各工程を自ら一貫して担う中で長期にわたり形成されたものであり、資本や人員の投下だけで短期間に模倣できるものではないと考えております。
また、知見共有の文化により個人の力量に依存しない再現性を備えており、蓄積された組織的な知見がより大きな課題への対応を可能にする循環を通じて、当社の優位性は事業の継続とともに強化されるものと考えております。生成AIの普及により実装工程の効率化が進むほど、何を作るべきかを見極め、実際に動く仕組みとして成立させる能力の重要性は相対的に高まるものと想定しており、当社の体制はこうした環境変化と整合的であると考えております。
5.コーポレート・ガバナンス体制及び内部管理体制の強化
当社は、今後も事業の更なる拡大と持続的成長を見込んでおり、それに対応した内部管理体制の強化が重要な課題であると認識しております。経営の公正性・透明性を確保すべく、コーポレート・ガバナンスの充実を図るとともに、適切な内部統制システムの整備・運用を推進してまいります。また、M&Aを成長戦略の一つに位置付けていることから、投資の意思決定に係る規律の確保、買収後の経営管理体制の統合及びグループ全体を対象とした内部統制の整備・運用に取り組んでまいります。加えて、株主及び投資家との建設的な対話を継続的に行い、当社の事業内容及び成長戦略に対する適切な評価の獲得に努めてまいります。
6.健全な財務基盤の構築
財務基盤の健全性を維持しながら、優秀な人材の採用及び育成、事業開発及び研究開発活動、さらにはM&Aなど将来の事業拡大に向けた投資資金需要に対応するため、事業資金を安定的に確保することが必要不可欠であると考えております。M&Aについては、事業規模及び人材の獲得による成長の加速と、当社の開発プロセス及び知見の移植による収益性の向上の双方を狙いとしており、取得価格その他の投資判断に係る規律を確保しながら実行してまいります。今後の資金調達手段としては、主に金融機関からの借入、エクイティファイナンスを検討し、持続的な成長を支える健全な財務運営を図ってまいります。
(注1)AI-Native
既存の業務プロセスに「AIを後から導入する」のではなく、「最初からAI活用を前提に事業や組織を設計・運営する」状態を指します。これにより、業務効率性や新サービスの開発スピードで大きな優位性を持つ可能性が生まれます。
(注2)パブリッククラウド
広く一般のユーザーや企業向けにクラウドコンピューティング環境をインターネット経由で提供するサービスのことをいいます。
(注3)M&A等により連結営業利益となった場合は、のれん償却前営業利益を採用しております。