訂正有価証券届出書(新規公開時)

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2024/01/23 15:00
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124項目

有報資料

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。
(1) 経営の基本方針
当社は、メッセンジャーRNA(mRNA)を標的とした低分子創薬(以下「mRNA標的低分子創薬」という)のプラットフォーム型ビジネス(独自の基盤技術を、共同創薬研究等を通じて複数の製薬会社へ提供)により、「どんな疾患の患者様も治療法がないと諦めたり、最適な治療が受けられないと嘆いたりすることのない、そんな希望に満ちたあたたかい社会を実現する」ことを経営理念(ミッション)としています(図21)。当社は、製薬業界で新たな領域を切り拓く先駆者、すなわち「パスファインダー(Pathfinder)」として、どんな疾患の患者様も最適な治療が受けられるように、より多くのmRNAを標的とする低分子医薬品(以下「mRNA標的低分子医薬品」という)を迅速に社会に届けていく方針です。
図21. Veritas In Silicoの経営理念(ミッション)

(2) 経営戦略
当社は、mRNA標的低分子医薬品の将来市場の見通しを踏まえ、その時期に応じてビジネスモデルを変えることで長期持続的な成長を達成することを目指しています(図22)。
短期的には、現在の「プラットフォーム戦略」により、現在進行中の共同創薬研究をさらに加速・拡大させて事業収益の獲得等による業績の安定化を図るとともに、より多くの国内外製薬会社とのパートナーシップを展開していく方針です(図22、図23 共同創薬プロジェクト)。2023年6月の武田薬品との提携を皮切りに、大手製薬会社や海外製薬会社をパートナー提携先として獲得し、さらなる事業拡大を目指します。中期的には、当社プラットフォームのさらなる技術開発と専門人材の獲得・社内育成により、現在は製薬会社が担当している創薬研究プロセスも自社で実施する体制を構築する方針です。海外大手製薬会社は、共同創薬研究よりもパイプラインをそのまま導入する取引を重視する傾向があるため、共同創薬プロジェクトを推進するプラットフォーム事業にくわえ、自社でパイプラインを創出するパイプライン事業を並行して進める「ハイブリッド型」のビジネスを展開することを計画しております。これにより、継続的な業績の安定化とパイプラインのライセンス等による企業価値の最大化を目指します(図22、図23 自社プロジェクト)。さらに長期的には、創薬研究に特化したバイオテク企業から、研究開発・販売機能等を備えた製薬会社(スペシャリティファーマ)に業態を転換することで、持続的な事業の成長を目指します(図22)。当社は、こうした短中長期の各成長ステージに合わせて適切な経営を行っていくことを経営戦略としています。
2024年度からの中期経営計画期間は、プラットフォーム事業を遂行する態勢を財政面や人材面でより頑強なものとし、加えて「ハイブリッド型」のビジネスに切り替える準備と実行の時期と位置付けております。
図22. プラットフォーム型ビジネスからスペシャリティファーマに至るまでの成長曲線のイメージ図

(注) あくまで当社が目標とする成長のイメージであり、実際の時価総額の推移を示唆するものではありません。
当社は、プラットフォーム型からハイブリッド型ビジネスへ移行する際には、mRNA標的低分子医薬品又は核酸医薬品のプロジェクトの中から自社パイプライン候補を選定のうえ研究を進め、自社パイプラインの創出につなげる方針です(図23、自社プロジェクト)。mRNA標的低分子創薬の場合には、様々な疾患に適用できるという特性を活かし、マーケット志向にもとづいて医薬品1品目あたり年間200億円以上の売上が見込める自社プロジェクトを選定する方針です。
図23. Veritas In Silicoの短中期成長戦略

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社は、当社のibVISⓇプラットフォームから創出された低分子医薬品の実用化により社会に貢献するとともに、製薬会社から医薬品候補化合物の開発の進捗に応じて受領する開発マイルストーン、上市後の製品販売に伴う売上マイルストーン及びロイヤリティ収入によって事業収益を拡大することを経営目標としています。
しかしながら、現時点において、製薬会社とのプロジェクトは全て研究段階であり、当社が開発・売上マイルストーン及びロイヤリティ収入を獲得可能となるのは早くても数年後となるため、短期的には、ROAやROEといった経営指標ではなく、製薬会社と締結する新規共同創薬研究契約の獲得数、並びに契約一時金、研究支援金及び製薬会社とのプロジェクト進捗に応じて得られる研究マイルストーンに基づく事業収益全体を、目標達成の判断基準(KPI)として掲げています(図23)。これらKPIは取締役会等に報告されており、目標達成に向けた組織のパフォーマンスの動向を把握できるようにしております。
新規共同創薬研究契約数の目標を達成するための施策として、当社はこれまでに、製薬会社と秘密保持契約書(CDA)の締結からはじまる事業開発活動の実績を統計的に解析しています(図24)。その結果、全CDA締結数のうち本契約まで至った確率はおおよそ50%、CDA締結から本契約に至るまでの期間(中央値)は約14か月となっています(2023年11月末現在)。現時点において製薬会社4社とCDA下で契約交渉を進めているため、これらの解析にもとづき、2024年にはそのうちの2社と契約締結することを目標達成の指標としています。また、2025年以降も毎年2社と契約を締結するという目標のもと、その数に見合うCDA締結数を獲得するべく事業開発活動を実施しています。
図24. 契約締結の実績にもとづく事業開発の展開

(注) 契約締結数と契約交渉中のCDA数は2023年11月末現在の実績
(4) 経営環境
内閣官房の健康・医療戦略室委託事業が2021年3月に発表した『令和二年度 医薬品・再生医療・細胞治療・遺伝子治療関連の産業化に向けた課題及び課題解決に必要な取組みに関する調査報告書』によると、世界の医療用医薬品市場は、2020年の約75兆円から、2030年には約103兆円に成長すると予測されています(図25)。
近年、抗体医薬品やペプチド医薬品などの中分子・高分子医薬品が一定規模の市場を形成しており、今後も成長期市場として存在感を示すと考えられます。低分子医薬品は、既に成熟期に差し掛かっている市場であり、市場成長率は微増であるものの、2030年においても医薬品市場の約半分を占めると予測されています。低分子医薬品は、グローバル市場において、日本企業が占有率を高く保っている領域です。今後日本では、占有率の維持に向けて、低分子医薬品の創薬標的やターゲット構造の拡大、適応疾患の拡大、及び研究開発の効率化による低コスト化が重要視されると考えられます。
図25. 世界の医療用医薬品の市場予測

出典:内閣官房 健康・医療戦略室委託事業「令和二年度 医薬品・再生医療・細胞治療・遺伝子治療関連の産業化に
向けた課題及び課題解決に必要な取組みに関する調査報告書」をもとに当社にて作成
当社の属するmRNA標的低分子創薬の領域は、現在世界的に見ても研究段階であるため、2030年時点で市場が大きく形成されている可能性は低いと考えられます。しかしながら、従来のタンパク質標的低分子医薬品と競合することなく、全く新規の創薬標的に対して低分子医薬品の創出に取り組めるうえに、低分子医薬品は経口投与が可能で、製造コストが低く、規制体制及び商材としてのバリューチェーンも確立されているため、将来的には、mRNA標的低分子医薬品単独で新たな市場が形成されると考えられます。その市場規模は、将来のある時点において、既存のタンパク質標的低分子医薬品の市場と同等規模になると、当社は推定しています(図26)。
図26. mRNA標的低分子医薬品の将来市場の見通し(当社推定)

(注1) 初期採用者とも呼ばれ、イノベーター(革新者)の次に商品やサービスを購入する人々
(注2) 前期追随者とも呼ばれ、アーリーアダプターからの影響を受ける人々
2010年代後半、米国を中心としてmRNAを標的とした低分子医薬品の創出を目指すバイオテク企業が相次いで立ち上がり、2017年11月には、科学系学術団体としては世界最大のアメリカ化学会の学会誌であるChemical & Engineering Newsに「The RNA hunters」として取り上げられました。さらに、近年の科学技術の発展に伴って低分子医薬品でアプロ―チ可能な創薬標的が拡大したことにより、2023年10月の同学会誌には「Is this a golden age of small-molecule drug discovery?」と特集されるなど、再度低分子医薬品の創出に対する注目が高まっています。その中で、RNA標的低分子創薬についても同学会誌に取り上げられており、創薬の専門家のコメントとして「個人的な見解ではあるものの次の大本命はRNA標的であり創薬の主流になりつつある」という記載がされております。このような流れを受けて、低分子医薬品の研究開発能力を持つ製薬会社はmRNA標的低分子創薬を検討しはじめ、mRNA標的低分子創薬に取り組むバイオテク企業間の競争は今後より一層激しくなると予想されます。その一方で、各社独自のビジネス展開により棲み分けが進んでいくものと考えられます。当社は、mRNA標的低分子医薬品の潜在的な市場のシェアをいち早く獲得するため、現時点において、製薬会社との提携数やプロジェクト数を増やすことを優先したプラットフォーム型ビジネスに集中しています。加えて、ibVISⓇプラットフォームの優位性を維持するため、短期的に更なる技術力の強化を図るとともに(図27)、中期的にハイブリッド型ビジネスに転換する際には、自社パイプラインの創出に必要なインフラを整備します(図27中の※印)。
図27. ibVISⓇプラットフォームの基盤技術の改良と新技術の増強

(注1) FMOによるCADDとは、量子化学計算の一種であるフラグメント分子軌道法(FMO)による計算を用いて医薬品を設計する手法
(computer-aided drug design:CADD)のこと。タンパク質標的低分子創薬でも用いられる最新の化合物設計手法です。
(注2) 第一原理MDとは、非常に高いレベルの量子化学計算(第一原理計算)を用いた分子動力学法(Molecular Dynamics:MD)のこと。
RNA構造と低分子化合物がどのように動くかシミュレーションすることができ、医薬品を設計する手法(CADD)の精度が飛躍的に
上がることが期待されます。
(注3) RIBOTAC(ribonuclease-targeting chimeras)とは、リボヌクレアーゼ(RNA分解酵素)と結合する化合物と、mRNAに結合する
化合物をつないだ融合化合物のこと。当社にて取得したmRNA結合化合物の活性が十分でない場合でも、RIBOTACによりRNA分解
酵素を誘導することでmRNAの分解を促進することで、活性の飛躍的な向上が期待できます。
当社の知る限り、国内外の大手製薬会社20社以上がmRNA標的低分子創薬関連のバイオテク企業と提携済みであり(2023年11月末現在)、本創薬への流れは既に始まっていると考えております。当社では、mRNA標的低分子創薬関連に取り組むバイオテク企業の中で、以下に示す当社基準にもとづき、Arrakis Therapeutics、Ribometrix、及びAnima Biotechの3社を当社の主要な競合他社と考えております(図28)。
[競合他社の選定基準]
・当社同様の作用機序に基づくmRNA標的低分子創薬を目指している企業
・全てのmRNA標的低分子創薬に関する技術を保有していると考えられる企業
・大型提携の実績をもつ企業
そのうえで、当社がもっとも注目している点は、公開情報等から競合他社が主に既知のターゲット構造を創薬対象としていると考えられるのに対して、当社は多種多様なターゲット構造を同定し、創薬対象とできることです(当社のターゲット構造を同定する技術の詳細は、「第1 企業の概況 3 事業の内容 (2) 当社の事業領域 ② ibVISⓇプラットフォーム c mRNA標的低分子創薬を可能にするインシリコRNA構造解析技術」を参照)。当社の「ターゲット探索」は、各製薬会社の新薬開発ニーズに対して、多種多様なターゲット構造を創薬対象とすることで応えらえるため、創薬標的の枯渇という製薬業界の課題に対する抜本的な解決につながると考えております。したがって、当社のプラットフォーム技術は、競合他社に比べて「ターゲット探索」において優位性があると考えます。
以上の点に加えて、当社は「ターゲット探索」の段階から多くの製薬会社と共同創薬プロジェクトを実施し、mRNA標的低分子創薬に関するノウハウを豊富に蓄積できている点でも、競合他社と比べて優位性があると考えます。
mRNA標的低分子創薬の適用範囲は非常に広いため、少なくとも今後数年間は、当社とこれら競合他社は互いに競合する一方で、本分野のビジネスを相乗的に拡大させていくものと当社は考えております。
図28. Veritas In Silicoと競合他社のビジネスモデル等の比較(2023年11月末現在)

(注) 1USD= 140円として換算
出典:Crunchbase及び各社ウェブサイト情報をもとに当社で作成
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
経営方針及び経営戦略を実行していくうえで、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりです。
① 持続的・安定的な事業収益の獲得
当社は、mRNA標的低分子創薬で事業提携している製薬会社のニーズを適宜把握し対応することで、滞りなく共同創薬研究を前進させるとともに、その成果を新規の製薬会社との事業提携につなげることで、持続的・安定的な事業収益の獲得を目指します。
② 優秀な人材の確保・育成
当社の事業を大きく発展させるためには、RNA研究に関する高い専門性や豊富な創薬研究経験を有する人材、及び事業開発の拡大に資する人材が必要となります。当社は、当社ウェブサイトの充実や人材紹介サービス会社の積極的な活用により、優秀な人材の確保に努めます。さらに、従業員が働きやすく、業務を通じて成長できるような環境を整備することで、当社の将来を担う人材の育成に努めます。
③ 技術競争力の強化
当社が取り組むmRNA標的低分子創薬の領域は、今後、国内外のバイオテク企業や製薬会社との競争の激化が予想されます。このような状況の中、当社は、製薬会社との共同創薬研究及び自社研究を通じて蓄積した知見を当社のプラットフォーム技術にフィードバックするとともに、大学との共同研究や他社との業務提携等により新技術を積極的に取り込むことで、プラットフォームの機能拡充による技術競争力の強化を図ります。
④ 事業領域の拡大
当社は、製薬会社との共同創薬研究及び自社研究を通じて、mRNA解析技術を飛躍的に向上させました。mRNA標的低分子創薬にとどまらず、核酸医薬品の創出やmRNA医薬品の設計など、新たな事業領域の拡大の可能性について検討します。
⑤ 財務基盤の拡充
当社は、急速な事業拡大に応じ、人材確保と合わせて研究設備の拡充を図ります。そのために強固な財務基盤を確立する必要があることから、今後、財務基盤を強化するため、必要に応じて株式発行を含めた資本市場からの資金調達の実施を検討します。
⑥ 知的財産の保護
当社は、競争力の確保や将来の事業展開のため、当社独自の創薬技術の特許権利化及び自社開発した各種ソフトウェアの秘匿化を進めています。引き続き、専門分野の弁理士・弁護士と連携しながら、新規技術の権利化や新規ソフトウェアの秘匿化に努めます。
⑦ コーポレート・ガバナンスの強化
当社は、急速に事業を拡大しており、上場後はさらなるコーポレート・ガバナンスの強化が課題となります。当社は、役員による業務執行に係る適正な意思決定を行い、法令や社内規程を遵守し、健全性と透明性の高い経営体制の構築に努めます。

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