半期報告書-第15期(2025/10/01-2026/09/30)
当中間会計期間における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当中間会計期間の末日現在において当社が判断したものであります。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
① 経営成績の状況
当社は、独自のペプチド模倣技術を駆使してタンパク質-タンパク質相互作用(Protein-Protein Interaction, PPI)を阻害する低分子を用いて新薬を開発することを目指し、20年にわたる研究開発の結果、臨床開発化合物を見出し、数多くのシード化合物を生み出しています。この独自の創薬基盤をPepMetics®技術として発展させ、これまで創薬が困難とされてきた標的に対して有望な化合物を見出す技術を確立してきました。PepMetics技術によって、細胞内のシグナル伝達を制御することで、ガンなどの難病を根治するための治療薬の創出を目指しており、当社が創薬標的を選択して開発化合物を見出す自社開発事業と、製薬会社の持つ創薬標的に対してヒット化合物、リード化合物、又は臨床候補化合物を見出して導出する共同開発事業を行っています。
当中間会計期間におきましては、導出した2つのプログラムがそれぞれ第Ⅱ相臨床試験を実施しており、自社開発事業では7つのプログラムの開発を進めつつ、共同開発事業では引き続き5社の提携先との創薬プログラムを進めています。
現段階においては、早期の製品の上市を目指し、研究開発及び臨床試験の進捗状況、並びに研究開発資金と費用のバランス等を注視しながら、事業を推進しております。当社では、事業の進捗を測る指標として研究開発の各段階でのプログラムの数を管理しています。
研究開発では下記の4段階で進捗します。
これらのプログラムは全てが上位に進階する訳ではなく、一定の確率で目的の化合物が得られず中止となります。プログラムを進めるためには研究者及び資金等の多くの資源を必要とするため、一時期に並行して進められるプログラムの数には限界があります。当社では成功及び導出の可能性が高いプログラムに資源を優先的に配分することを重視しており、プログラムを始める際に明確な目標と期限を定め、進める中で想定外の状況が発生した場合にはプログラムを中止することがあります。その資源を新たなプログラムに配分することで、常時適切な数の有望なプログラムを揃える最適なパイプラインの状態を維持しています。
ⅰ) 自社開発事業
(a) CBP/β-カテニン相互作用阻害剤(E7386、PRI-724)
Wntシグナル伝達経路は、ガン、線維化などを制御するタンパク質のネットワークであり、創薬標的として広く研究されています。Wntシグナルは、細胞が「ガン化」「線維化」する際のみならず、細胞が「分化」して正常に機能する際にも重要な機能を果たすため、Wntシグナルを止めることは副作用にもつながります。従来の技術で開発されてきたWnt阻害剤は、Wntシグナルを上流から全て止めてしまうため、強い毒性を示して開発が中止されてきました。
E7386及びPRI-724は、そのような毒性を示すことなく、治療薬として必要な安全性を可能とするコンセプトのもとで創出された化合物です。Wntシグナルは、細胞核内でβ-カテニンがCBPという転写因子タンパク質に結合することでスイッチが入りますが、PepMetics化合物は、このCBPに結合し、CBPとβ-カテニンの結合を阻害します。一方で、PepMetics化合物はCBPと似た別のタンパク質であるP300とは結合しないため、β-カテニンとP300によるWntシグナル経路は機能します。その結果、PepMetics化合物はWntシグナル全体の機能を止めることなく、「ガン化」「線維化」を止めることが可能となります。
(ア) E7386
エーザイ株式会社(以下、「エーザイ」という。)と共同創出した経口投与可能なCBP/β-カテニン相互作用阻害剤であるE7386は、ガン細胞の悪性化に関与するCBP/β-カテニンシグナルをターゲットとし、2021年11月にはPOC(Proof of Concept)を達成しています。
エーザイ創製の経口チロシンキナーゼ阻害剤「レンビマ®」との併用による固形ガンを対象とした後期第Ⅰb相/第Ⅱ相臨床試験では、2025年10月の欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で発表されたデータ(データカットオフ:2025年6月4日)では、全奏効率(腫瘍の大きさが30%以上縮小)は36.7%であり、11名の患者で確認されました。更には「レンビマ®」投与歴が無い患者における全奏効率は57.1%を示しました。また、エーザイは本年4月開催の米国がん学会(AACR)において、非臨床研究における「レンビマ®」との併用結果に関する新しいデータを発表しました。この結果から、子宮内膜ガン治療においてE7386が「レンビマ®」の抗腫瘍効果を増強する可能性が示唆されました。エーザイでは、患者の用量最適化パート(第Ⅱ相)への組み入れを進めており、2026年度中(~2027年3月)にトップラインデータを取得し、「レンビマ®」との併用による子宮内膜ガンに係る適応に関して、2031年3月までの承認取得をめざすと発表しています。
また、「レンビマ®」との併用による臨床試験と並行して進められていたMerck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAの抗PD-1抗体「キイトルーダ®」との併用による固形ガンを対象とした後期第Ⅰb相/第Ⅱ相臨床試験を終了しました。
(イ)PRI-724
当社が見出したCBP/β-カテニン相互作用阻害剤であるPRI-724(一般名:ホスセンビビント)は、大原薬品工業株式会社(以下、「大原薬品」という。)にガン以外の分野における権利を導出しました。C型肝炎(HCV)及びB型肝炎(HBV)による肝硬変患者を対象に臨床試験が進められ、肝硬度、肝機能の改善が認められたことから、2022年4月にPOCを達成しています。
2023年4月より、HCV・HBVに加えてMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎、旧名:非アルコール性脂肪肝炎(NASH))に起因する非代償性肝硬変患者を対象とした第Ⅱ相臨床試験を国内38施設で実施し、MASHを対象とするコホートでは患者の登録を完了しました。2027年12月に臨床試験終了を予定しています。
また、血友病合併HIVとHCVの重複感染に起因する肝硬変患者を対象に東京都立駒込病院を中心に実施されていた第Ⅱ相臨床試験につきましては、2025年12月に臨床試験を終了しました。
(b) FEP
ガンで活性化されているシグナル経路が強く依存する“CAP依存的翻訳”に働くeIF4E/eIF4GのPPI阻害を目的とした4EBP1模倣化合物のプログラムで、「リード最適化」ステージにて創薬研究が実施されております。eIF4E/eIF4GのPPIは、現在の治療では予後の悪いトリプルネガティブ乳ガンなどのガン細胞において、関連遺伝子の変異や過剰発現により活性化されていることが知られています。本プログラムから創出される新薬は、有効な治療薬が存在しない患者に貢献できると考えています。
(c) その他の自社開発事業
当社では、上記のFEPを含めた7つの自社開発プログラムを、それぞれ「リード最適化」、「リード化合物探索」、及び「リード化合物探索」のステージにて実施しております。当事業年度におきましては、当社の強みであるPepMetics技術を軸として、拡充した創薬手法や各種リソースを「ヒット化合物探索」ステージに集中させることで年間10本のライブラリースクリーニングの実施を計画し、ハイスループットスクリーニング(HTS)を用いてヒット化合物の探索を進めております。その成果として、当中間会計期間におきましては既に4つの新規プログラムを開始し、2026年1月に1つのプログラムにおいて特定の創薬標的に対するヒット化合物の創出に成功しました。更に当社では、後続の複数のプログラムにおいてもヒット化合物を得るべく活発な研究開発活動を進めております。当社が創出するヒット化合物を拡充することにより、新規提携の機会創出に取り組んで参ります。
また新規プログラムでは、従来当社で取り組んできた細胞内PPI標的に加え、リン酸化酵素(キナーゼ)をPPIで阻害することで従来の低分子より優位性のあるメカニズムや、従来困難とされてきた種類の膜タンパク質など、多様な標的を加えることでPepMetics技術の可能性を広げることに取り組んでいます。
ⅱ) 共同開発事業
小野薬品工業株式会社(以下、「小野薬品」という。)との契約を含め、現在国内外製薬企業5社と契約を締結しています。共同開発事業の5つのプログラムでは、当社とパートナー企業が一体となってプロジェクトチームを編成して創薬研究を進めており、1つは「リード化合物探索」ステージ、1つは「ヒット化合物探索」ステージ、残りの3つは「標的探索」ステージにて検討が進められております。
当中間会計期間におきましては、2025年11月に、小野薬品との創薬提携において予め契約で定められた創薬研究段階での初回マイルストンを達成し、当社は小野薬品よりマイルストン達成一時金を受領しました。さらに、次段階の共同研究を進めるための共同研究費の受領が確定しました。共同研究費につきましては、当社と小野薬品で進める共同研究期間に応じて按分して当社収益として計上します。当社が受領する一時金及び共同研究費の具体的な金額につきましては契約上非開示とさせていただきますが、一時金及び共同研究費の総額は、当社直前会計年度(2025年9月期)における売上高の80%に相当する規模となります。
また、2026年1月には、パートナー企業(非開示)が1つの創薬標的についてプログラムの開始を決定したことから、「ヒット化合物探索」ステージに進階し、パートナー企業による評価が進められております。
なお、LES LABORATOIRES SERVIER (以下、「SERVIER」という。) との共同研究につきましては、双方の合意により2025年10月に当該プロジェクトを発展的に解消することを決定しました。SERVIERとの共同研究で得られた成果は、学術論文にて対外発表がなされる可能性があります。
当社は、共同開発事業を拡大するため、引き続き他の国内外製薬企業との共同研究契約等の交渉を進めて参ります。
ⅲ) 創薬基盤開発
前事業年度におきましては、自社内における創薬探索規模の拡大と高度化を進めて参りましたが、当事業年度におきましては、これまでの活動に加えて、当社のPepMetics技術とシナジーのある技術を有する複数の国内外のバイオテック企業と共同で、新たな標的探索に対して新規ヒット化合物を創出する事業を展開する計画を立案し、複数の有望な企業と共同開発の交渉を進めております。
当中間会計期間におきましては、2025年12月に、Talus Bioscience, Inc.(以下、「Talus Bio」という。)との間で、転写因子(Transcription Factors, TF)及びPPIに対する新規阻害剤の探索を目的とした共同研究契約を締結しました。当社のPepMetics技術と、Talus Bioのレギュロームプロファイリング技術を組み合わせることで、これまで”創薬不可能”とされてきた標的に起因する疾患に対する治療への道を開き、難易度の高い創薬領域に対して独自の地位を確立して参ります。
更に、2026年3月には、Receptor.AI Inc.(以下、「Receptor.AI」という。)との間で、PPI及び膜タンパク質を標的とした新規低分子医薬品の探索並びにAIナビゲート型・物理学ベースの統合創薬プラットフォームを構築する創薬提携契約を締結しました。当社のPepMeticsの化合物空間に、Receptor.Aiの物理学的知見を取り込んだ多目的AIナビゲーションエンジンを適用することで、従来の低分子創薬では困難とされてきたターゲットに対する革新的な化合物の創出を目指します。
このように当社は、PPI創薬に新たな可能性をもたらす革新的な技術を当社がハブとなって集約することで、当社を中心とした新規バイオテック企業間連携システム「PPI創薬コンソーシアム」構想の実現に向けた活動を進めて参ります。
以上の結果、当中間会計期間における売上高は253,211千円(前年同期比15.8%増)となりました。
費用につきましては、販売費及び一般管理費については666,565千円(前年同期比30.2%増)となりました。その内訳は、研究開発費が456,744千円(前年同期比55.0%増)、その他販売費及び一般管理費が209,821千円(前年同期比3.5%減)であります。
この結果、営業損失は584,864千円(前中間会計期間は460,605千円の営業損失)、経常損失は560,195千円(前中間会計期間は432,376千円の経常損失)、中間純損失は603,309千円(前中間会計期間は474,387千円の中間純損失)となりました。
なお、当社は、創薬事業の単一セグメントであるため、セグメント別の業績の記載を省略しております。
② 財政状態の状況
(資産)
当中間会計期間末における資産合計は2,586,325千円となり、前事業年度末と比較して499,367千円減少しました。これは主として、現金及び預金が461,085千円、未収消費税等が37,822千円減少したこと等によるものであります。
(負債)
当中間会計期間末における負債合計は456,555千円となり、前事業年度末と比較して79,693千円増加しました。これは主として、小野薬品とのライセンス契約等に基づく契約負債が63,633千円増加したこと等によるものであります。
(純資産)
当中間会計期間末における純資産合計は2,129,769千円となり、前事業年度末に比べ579,061千円減少しました。これは主として、ストックオプションの権利行使に伴い資本金及び資本準備金がそれぞれ8,844千円増加した一方、中間純損失の計上により利益剰余金が603,309千円減少したこと等によるものであります。
(2) キャッシュ・フローの状況
当中間会計期間における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、954,487千円となり、前事業年度末に比べ1,961,085千円減少しました。当中間会計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当中間会計期間において営業活動により支出した資金は、462,510千円(前中間会計期間は696,518千円の支出)となりました。これは主に、減損損失41,804千円の計上及び、契約負債が63,633千円増加した一方、税引前中間純損失602,099千円を計上したこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当中間会計期間において投資活動により支出した資金は、1,535,462千円(前中間会計期間は18,343千円の支出)となりました。これは主に、定期預金の預入による支出1,500,000千円及び、固定資産の取得による支出36,683千円があったこと等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当中間会計期間において財務活動により獲得した資金は、17,303千円(前中間会計期間は29,079千円の収入)となりました。これは、ストックオプションの行使による収入があったことによるものであります。
(3) 経営方針・経営戦略等
当中間会計期間において、当社が定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当中間会計期間において、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(5) 研究開発活動
当中間会計期間における研究開発活動の金額は、456,744千円であります。
なお、当中間会計期間において、当社の研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
文中の将来に関する事項は、当中間会計期間の末日現在において当社が判断したものであります。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
① 経営成績の状況
当社は、独自のペプチド模倣技術を駆使してタンパク質-タンパク質相互作用(Protein-Protein Interaction, PPI)を阻害する低分子を用いて新薬を開発することを目指し、20年にわたる研究開発の結果、臨床開発化合物を見出し、数多くのシード化合物を生み出しています。この独自の創薬基盤をPepMetics®技術として発展させ、これまで創薬が困難とされてきた標的に対して有望な化合物を見出す技術を確立してきました。PepMetics技術によって、細胞内のシグナル伝達を制御することで、ガンなどの難病を根治するための治療薬の創出を目指しており、当社が創薬標的を選択して開発化合物を見出す自社開発事業と、製薬会社の持つ創薬標的に対してヒット化合物、リード化合物、又は臨床候補化合物を見出して導出する共同開発事業を行っています。
当中間会計期間におきましては、導出した2つのプログラムがそれぞれ第Ⅱ相臨床試験を実施しており、自社開発事業では7つのプログラムの開発を進めつつ、共同開発事業では引き続き5社の提携先との創薬プログラムを進めています。
現段階においては、早期の製品の上市を目指し、研究開発及び臨床試験の進捗状況、並びに研究開発資金と費用のバランス等を注視しながら、事業を推進しております。当社では、事業の進捗を測る指標として研究開発の各段階でのプログラムの数を管理しています。
研究開発では下記の4段階で進捗します。
| 標的探索 | 疾病に影響する可能性のある生体分子や生理的機序(メカニズム)を研究し、制御すべきタンパク質等の分子の候補を選び、疾患と標的の関係、評価系の構築難易度、結合様式とPepMeticsの適格性などを評価して創薬標的を選びます。 |
| ヒット化合物探索 | 創薬標的に対して作用していることを測定する評価系を構築し、候補化合物をスクリーニングして活性のある初期ヒット化合物を見出します。初期ヒット化合物の周辺化合物を合成し、活性を高めると同時に標的に結合しているかを複数の評価系で確認し、ヒット化合物を特定します。 |
| リード化合物探索 | ヒット化合物をもとに、薬理活性を高め、動物モデルにおいて一定の治療効果が認められるリード化合物を特定します。 |
| リード最適化 | リード化合物をもとに、更に活性を高めると共に薬に適した物性及び安全性を得られるように最適化を進め、医薬品の原料となる臨床候補化合物を見出します。 |
これらのプログラムは全てが上位に進階する訳ではなく、一定の確率で目的の化合物が得られず中止となります。プログラムを進めるためには研究者及び資金等の多くの資源を必要とするため、一時期に並行して進められるプログラムの数には限界があります。当社では成功及び導出の可能性が高いプログラムに資源を優先的に配分することを重視しており、プログラムを始める際に明確な目標と期限を定め、進める中で想定外の状況が発生した場合にはプログラムを中止することがあります。その資源を新たなプログラムに配分することで、常時適切な数の有望なプログラムを揃える最適なパイプラインの状態を維持しています。
ⅰ) 自社開発事業
(a) CBP/β-カテニン相互作用阻害剤(E7386、PRI-724)
Wntシグナル伝達経路は、ガン、線維化などを制御するタンパク質のネットワークであり、創薬標的として広く研究されています。Wntシグナルは、細胞が「ガン化」「線維化」する際のみならず、細胞が「分化」して正常に機能する際にも重要な機能を果たすため、Wntシグナルを止めることは副作用にもつながります。従来の技術で開発されてきたWnt阻害剤は、Wntシグナルを上流から全て止めてしまうため、強い毒性を示して開発が中止されてきました。
E7386及びPRI-724は、そのような毒性を示すことなく、治療薬として必要な安全性を可能とするコンセプトのもとで創出された化合物です。Wntシグナルは、細胞核内でβ-カテニンがCBPという転写因子タンパク質に結合することでスイッチが入りますが、PepMetics化合物は、このCBPに結合し、CBPとβ-カテニンの結合を阻害します。一方で、PepMetics化合物はCBPと似た別のタンパク質であるP300とは結合しないため、β-カテニンとP300によるWntシグナル経路は機能します。その結果、PepMetics化合物はWntシグナル全体の機能を止めることなく、「ガン化」「線維化」を止めることが可能となります。
(ア) E7386
エーザイ株式会社(以下、「エーザイ」という。)と共同創出した経口投与可能なCBP/β-カテニン相互作用阻害剤であるE7386は、ガン細胞の悪性化に関与するCBP/β-カテニンシグナルをターゲットとし、2021年11月にはPOC(Proof of Concept)を達成しています。
エーザイ創製の経口チロシンキナーゼ阻害剤「レンビマ®」との併用による固形ガンを対象とした後期第Ⅰb相/第Ⅱ相臨床試験では、2025年10月の欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で発表されたデータ(データカットオフ:2025年6月4日)では、全奏効率(腫瘍の大きさが30%以上縮小)は36.7%であり、11名の患者で確認されました。更には「レンビマ®」投与歴が無い患者における全奏効率は57.1%を示しました。また、エーザイは本年4月開催の米国がん学会(AACR)において、非臨床研究における「レンビマ®」との併用結果に関する新しいデータを発表しました。この結果から、子宮内膜ガン治療においてE7386が「レンビマ®」の抗腫瘍効果を増強する可能性が示唆されました。エーザイでは、患者の用量最適化パート(第Ⅱ相)への組み入れを進めており、2026年度中(~2027年3月)にトップラインデータを取得し、「レンビマ®」との併用による子宮内膜ガンに係る適応に関して、2031年3月までの承認取得をめざすと発表しています。
また、「レンビマ®」との併用による臨床試験と並行して進められていたMerck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAの抗PD-1抗体「キイトルーダ®」との併用による固形ガンを対象とした後期第Ⅰb相/第Ⅱ相臨床試験を終了しました。
(イ)PRI-724
当社が見出したCBP/β-カテニン相互作用阻害剤であるPRI-724(一般名:ホスセンビビント)は、大原薬品工業株式会社(以下、「大原薬品」という。)にガン以外の分野における権利を導出しました。C型肝炎(HCV)及びB型肝炎(HBV)による肝硬変患者を対象に臨床試験が進められ、肝硬度、肝機能の改善が認められたことから、2022年4月にPOCを達成しています。
2023年4月より、HCV・HBVに加えてMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎、旧名:非アルコール性脂肪肝炎(NASH))に起因する非代償性肝硬変患者を対象とした第Ⅱ相臨床試験を国内38施設で実施し、MASHを対象とするコホートでは患者の登録を完了しました。2027年12月に臨床試験終了を予定しています。
また、血友病合併HIVとHCVの重複感染に起因する肝硬変患者を対象に東京都立駒込病院を中心に実施されていた第Ⅱ相臨床試験につきましては、2025年12月に臨床試験を終了しました。
(b) FEP
ガンで活性化されているシグナル経路が強く依存する“CAP依存的翻訳”に働くeIF4E/eIF4GのPPI阻害を目的とした4EBP1模倣化合物のプログラムで、「リード最適化」ステージにて創薬研究が実施されております。eIF4E/eIF4GのPPIは、現在の治療では予後の悪いトリプルネガティブ乳ガンなどのガン細胞において、関連遺伝子の変異や過剰発現により活性化されていることが知られています。本プログラムから創出される新薬は、有効な治療薬が存在しない患者に貢献できると考えています。
(c) その他の自社開発事業
当社では、上記のFEPを含めた7つの自社開発プログラムを、それぞれ「リード最適化」、「リード化合物探索」、及び「リード化合物探索」のステージにて実施しております。当事業年度におきましては、当社の強みであるPepMetics技術を軸として、拡充した創薬手法や各種リソースを「ヒット化合物探索」ステージに集中させることで年間10本のライブラリースクリーニングの実施を計画し、ハイスループットスクリーニング(HTS)を用いてヒット化合物の探索を進めております。その成果として、当中間会計期間におきましては既に4つの新規プログラムを開始し、2026年1月に1つのプログラムにおいて特定の創薬標的に対するヒット化合物の創出に成功しました。更に当社では、後続の複数のプログラムにおいてもヒット化合物を得るべく活発な研究開発活動を進めております。当社が創出するヒット化合物を拡充することにより、新規提携の機会創出に取り組んで参ります。
また新規プログラムでは、従来当社で取り組んできた細胞内PPI標的に加え、リン酸化酵素(キナーゼ)をPPIで阻害することで従来の低分子より優位性のあるメカニズムや、従来困難とされてきた種類の膜タンパク質など、多様な標的を加えることでPepMetics技術の可能性を広げることに取り組んでいます。
ⅱ) 共同開発事業
小野薬品工業株式会社(以下、「小野薬品」という。)との契約を含め、現在国内外製薬企業5社と契約を締結しています。共同開発事業の5つのプログラムでは、当社とパートナー企業が一体となってプロジェクトチームを編成して創薬研究を進めており、1つは「リード化合物探索」ステージ、1つは「ヒット化合物探索」ステージ、残りの3つは「標的探索」ステージにて検討が進められております。
当中間会計期間におきましては、2025年11月に、小野薬品との創薬提携において予め契約で定められた創薬研究段階での初回マイルストンを達成し、当社は小野薬品よりマイルストン達成一時金を受領しました。さらに、次段階の共同研究を進めるための共同研究費の受領が確定しました。共同研究費につきましては、当社と小野薬品で進める共同研究期間に応じて按分して当社収益として計上します。当社が受領する一時金及び共同研究費の具体的な金額につきましては契約上非開示とさせていただきますが、一時金及び共同研究費の総額は、当社直前会計年度(2025年9月期)における売上高の80%に相当する規模となります。
また、2026年1月には、パートナー企業(非開示)が1つの創薬標的についてプログラムの開始を決定したことから、「ヒット化合物探索」ステージに進階し、パートナー企業による評価が進められております。
なお、LES LABORATOIRES SERVIER (以下、「SERVIER」という。) との共同研究につきましては、双方の合意により2025年10月に当該プロジェクトを発展的に解消することを決定しました。SERVIERとの共同研究で得られた成果は、学術論文にて対外発表がなされる可能性があります。
当社は、共同開発事業を拡大するため、引き続き他の国内外製薬企業との共同研究契約等の交渉を進めて参ります。
ⅲ) 創薬基盤開発
前事業年度におきましては、自社内における創薬探索規模の拡大と高度化を進めて参りましたが、当事業年度におきましては、これまでの活動に加えて、当社のPepMetics技術とシナジーのある技術を有する複数の国内外のバイオテック企業と共同で、新たな標的探索に対して新規ヒット化合物を創出する事業を展開する計画を立案し、複数の有望な企業と共同開発の交渉を進めております。
当中間会計期間におきましては、2025年12月に、Talus Bioscience, Inc.(以下、「Talus Bio」という。)との間で、転写因子(Transcription Factors, TF)及びPPIに対する新規阻害剤の探索を目的とした共同研究契約を締結しました。当社のPepMetics技術と、Talus Bioのレギュロームプロファイリング技術を組み合わせることで、これまで”創薬不可能”とされてきた標的に起因する疾患に対する治療への道を開き、難易度の高い創薬領域に対して独自の地位を確立して参ります。
更に、2026年3月には、Receptor.AI Inc.(以下、「Receptor.AI」という。)との間で、PPI及び膜タンパク質を標的とした新規低分子医薬品の探索並びにAIナビゲート型・物理学ベースの統合創薬プラットフォームを構築する創薬提携契約を締結しました。当社のPepMeticsの化合物空間に、Receptor.Aiの物理学的知見を取り込んだ多目的AIナビゲーションエンジンを適用することで、従来の低分子創薬では困難とされてきたターゲットに対する革新的な化合物の創出を目指します。
このように当社は、PPI創薬に新たな可能性をもたらす革新的な技術を当社がハブとなって集約することで、当社を中心とした新規バイオテック企業間連携システム「PPI創薬コンソーシアム」構想の実現に向けた活動を進めて参ります。
以上の結果、当中間会計期間における売上高は253,211千円(前年同期比15.8%増)となりました。
費用につきましては、販売費及び一般管理費については666,565千円(前年同期比30.2%増)となりました。その内訳は、研究開発費が456,744千円(前年同期比55.0%増)、その他販売費及び一般管理費が209,821千円(前年同期比3.5%減)であります。
この結果、営業損失は584,864千円(前中間会計期間は460,605千円の営業損失)、経常損失は560,195千円(前中間会計期間は432,376千円の経常損失)、中間純損失は603,309千円(前中間会計期間は474,387千円の中間純損失)となりました。
なお、当社は、創薬事業の単一セグメントであるため、セグメント別の業績の記載を省略しております。
② 財政状態の状況
(資産)
当中間会計期間末における資産合計は2,586,325千円となり、前事業年度末と比較して499,367千円減少しました。これは主として、現金及び預金が461,085千円、未収消費税等が37,822千円減少したこと等によるものであります。
(負債)
当中間会計期間末における負債合計は456,555千円となり、前事業年度末と比較して79,693千円増加しました。これは主として、小野薬品とのライセンス契約等に基づく契約負債が63,633千円増加したこと等によるものであります。
(純資産)
当中間会計期間末における純資産合計は2,129,769千円となり、前事業年度末に比べ579,061千円減少しました。これは主として、ストックオプションの権利行使に伴い資本金及び資本準備金がそれぞれ8,844千円増加した一方、中間純損失の計上により利益剰余金が603,309千円減少したこと等によるものであります。
(2) キャッシュ・フローの状況
当中間会計期間における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、954,487千円となり、前事業年度末に比べ1,961,085千円減少しました。当中間会計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当中間会計期間において営業活動により支出した資金は、462,510千円(前中間会計期間は696,518千円の支出)となりました。これは主に、減損損失41,804千円の計上及び、契約負債が63,633千円増加した一方、税引前中間純損失602,099千円を計上したこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当中間会計期間において投資活動により支出した資金は、1,535,462千円(前中間会計期間は18,343千円の支出)となりました。これは主に、定期預金の預入による支出1,500,000千円及び、固定資産の取得による支出36,683千円があったこと等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当中間会計期間において財務活動により獲得した資金は、17,303千円(前中間会計期間は29,079千円の収入)となりました。これは、ストックオプションの行使による収入があったことによるものであります。
(3) 経営方針・経営戦略等
当中間会計期間において、当社が定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当中間会計期間において、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(5) 研究開発活動
当中間会計期間における研究開発活動の金額は、456,744千円であります。
なお、当中間会計期間において、当社の研究開発活動の状況に重要な変更はありません。