有価証券報告書-第110期(2024/04/01-2025/03/31)
⦅戦略⦆
漁業と養殖における自然への依存と影響の関係を整理するため、LEAPアプローチ(注1)に沿って「依存と影響」の 診断と「リスクと機会」の評価を行い、以下のように整理しました。なお、今回の評価では、バリューチェーン最上流における自然との接点である「漁業」および「養殖」を対象とし、外部ツール「ENCORE(注2)」を使用した一次評価を行った上で、当社グループの操業実態に合わせた二次評価(定性評価)を行いました。その結果、漁業では海域や水産資源などの海洋生態系サービスに大きく依存し、漁獲によって水産資源量や生物種に影響を与えていることが分かりました。養殖では、陸域・水域・海域の利用に加え、水温や水質などの生態系調整サービスに大きく依存している一方で、給餌による水質悪化など、養殖場水域の汚染により自然へ影響を与えていることが分かっています。
(注1)LEAPアプローチ:TNFDが開発した、自然関連のリスクと機会を評価するためのガイダンス。分析プロセスであるLocate、Evaluate、Assess、Prepareの頭文字をとったもの。
(注2)ENCORE:ビジネスセクターと生産プロセスごとの自然資本への依存と影響を評価するツール。
■依存と影響の診断

■想定される主なリスクと機会
(イ)水産資源の持続的な利用
イ.取り扱い水産物の資源状態調査の概要
当社では、3年ごとに取り扱い水産物の資源状態調査を行っています。2023年度に実施した第3回の調査では、当社およびグループ会社(国内16社、海外20社)において、2022年に取り扱った天然水産物・水産物加工品は原魚換算重量で約276万トンでした。調査データの分析はSFP(注)へ委託し、第三者性を確保しました。
(注)SFP:Sustainable Fisheries Partnership。持続可能な漁業のためのパートナーシップ、サプライチェーンで漁業改善を推進する米国NGO。
調査方法

調達した天然水産物および水産物加工品の原産地(2022年)

ロ.資源管理状態の評価結果
SFPによる分析の結果、2022年に取り扱った天然水産物および水産加工品のうち、約75%が適切に維持・管理できている資源(「優れた管理」および「管理」)であることがわかりました。一方で、「要改善」状態の資源が8%、「プロフィール未登録(スコアが欠損しており判定できない資源)」が約17%ありました。

ハ.絶滅危惧種への対応
第3回資源状態調査の結果、取り扱った水産物の一部にIUCN(国際自然保護連合)で定められた絶滅危惧種Ⅰ類(IUCNレッドリストにおけるCR, EN)に該当する魚種が含まれていることが分かりました。2022年に「ニッスイグループ絶滅危惧種(水産物)の調達方針」を策定し、方針に基づいて魚種ごとに対応策を決定することで、持続性を確保しています。
2022年時点の分類に基づく絶滅危惧I類と、ニッスイグループの対応策
ニ.今後の対応策
・資源状態の把握が困難な魚種(特に魚粉・魚油・すり身の加工原料となる魚種)に対し、ラウンドテーブルへの参加やFIPの支援など、優先して対応します。
・漁獲情報の収集が困難な品目の資源特定や、サプライヤーとの協働によるトレーサビリティの確保に取り組みます。
・調達資源について、人権侵害リスクを把握するための評価方法を検討します。
漁業と養殖における自然への依存と影響の関係を整理するため、LEAPアプローチ(注1)に沿って「依存と影響」の 診断と「リスクと機会」の評価を行い、以下のように整理しました。なお、今回の評価では、バリューチェーン最上流における自然との接点である「漁業」および「養殖」を対象とし、外部ツール「ENCORE(注2)」を使用した一次評価を行った上で、当社グループの操業実態に合わせた二次評価(定性評価)を行いました。その結果、漁業では海域や水産資源などの海洋生態系サービスに大きく依存し、漁獲によって水産資源量や生物種に影響を与えていることが分かりました。養殖では、陸域・水域・海域の利用に加え、水温や水質などの生態系調整サービスに大きく依存している一方で、給餌による水質悪化など、養殖場水域の汚染により自然へ影響を与えていることが分かっています。
(注1)LEAPアプローチ:TNFDが開発した、自然関連のリスクと機会を評価するためのガイダンス。分析プロセスであるLocate、Evaluate、Assess、Prepareの頭文字をとったもの。
(注2)ENCORE:ビジネスセクターと生産プロセスごとの自然資本への依存と影響を評価するツール。
■依存と影響の診断

■想定される主なリスクと機会
| 対象 | リスク/機会 | 想定される主なリスクと機会 | 事業インパクト | 主な対応策 |
| 漁業 | 物理リスク | 水産資源の枯渇化 | ・調達量の減少 ・調達コストの上昇 | ・資源アクセスのさらなる強化 ・調達ネットワークの構築 ・養殖事業の強化 ・水産物代替原料の開発 |
| 移行リスク | 漁業規制の強化 | |||
| 機会 | 水産物の持続的調達によるサプライチェーン安定化 | ・収益の安定化、販路の拡大 | ・調達における資源状態の確認 ・漁業認証取得や認証品の取り扱い増 | |
| 養殖 | 物理リスク | 風水害の激甚化による事業停止・管理コスト増加 | ・養殖施設の損壊による被害 | ・浮沈式生け簀の導入、施設の補強 ・陸上養殖への対応強化 |
| 魚病の蔓延 | ・魚の斃死による資産の損失 | ・独自の養殖魚健康管理システム「N-AHMSⓇ」による予防管理 | ||
| 移行リスク | 養殖における環境規制の強化 | ・事業規模縮小や養殖場の閉鎖 ・罰金や課税による財務影響 | ・養殖漁場の環境モニタリング ・飼料・給餌における環境負荷低減(EP飼料・自動給餌システム) ・沖合養殖への移行 | |
| 機会 | 完全養殖技術による天然資源への依存低減 | ・レジリエンス強化、競争優位性の確立 | ・技術確立と対応魚種の拡大 | |
| 陸上養殖技術による海洋環境への負荷低減 | ||||
| スマート養殖による環境負荷低減 | ・養殖コストの低減、養殖成績の向上 ・労働環境の改善 | ・AI・IoTを活用した生産管理 ・遠隔給餌システムの開発 | ||
| 共通 | 機会 | 消費者の購買行動の変化(持続可能性に配慮した製品に対する需要の増加) | ・売上の拡大 | ・持続可能な水産資源の調達 ・持続可能な養殖事業の構築 ・丁寧な情報発信 |
(イ)水産資源の持続的な利用
イ.取り扱い水産物の資源状態調査の概要
当社では、3年ごとに取り扱い水産物の資源状態調査を行っています。2023年度に実施した第3回の調査では、当社およびグループ会社(国内16社、海外20社)において、2022年に取り扱った天然水産物・水産物加工品は原魚換算重量で約276万トンでした。調査データの分析はSFP(注)へ委託し、第三者性を確保しました。
(注)SFP:Sustainable Fisheries Partnership。持続可能な漁業のためのパートナーシップ、サプライチェーンで漁業改善を推進する米国NGO。
調査方法

調達した天然水産物および水産物加工品の原産地(2022年)

ロ.資源管理状態の評価結果
SFPによる分析の結果、2022年に取り扱った天然水産物および水産加工品のうち、約75%が適切に維持・管理できている資源(「優れた管理」および「管理」)であることがわかりました。一方で、「要改善」状態の資源が8%、「プロフィール未登録(スコアが欠損しており判定できない資源)」が約17%ありました。

ハ.絶滅危惧種への対応
第3回資源状態調査の結果、取り扱った水産物の一部にIUCN(国際自然保護連合)で定められた絶滅危惧種Ⅰ類(IUCNレッドリストにおけるCR, EN)に該当する魚種が含まれていることが分かりました。2022年に「ニッスイグループ絶滅危惧種(水産物)の調達方針」を策定し、方針に基づいて魚種ごとに対応策を決定することで、持続性を確保しています。
2022年時点の分類に基づく絶滅危惧I類と、ニッスイグループの対応策
| 分類 | 学名 | 和名 | 重量(t) | 対応策 |
| CR | Anguilla anguilla | ヨーロッパウナギ | 0.9 | 販売先の拡大を停止している。 |
| EN | Leucoraja ocellata | ガンギエイ | 103 | MSC認証品の調達を推進している。また、販売先の拡大を停止している。 |
| Apostichopus japonicus | ナマコ | 38 | 新たに水産流通適正化法(日本)による管理が開始されているため、今後も管理枠内での調達が可能と判断。 | |
| Thunnus maccoyii | ミナミマグロ | 20 | 適切にRFMO(地域漁業管理機関)が管理しているため、今後も管理枠内での調達が可能と判断。 | |
| Anguilla japonica | ニホンウナギ | 5 | 水産流通適正化法の対象魚種に今後、ウナギの稚魚(シラス)が加わる予定であり、その動向を踏まえて、対応策を検討する。 | |
| Anguilla dieffenbachii | ニュージーランド オオウナギ | 0.3 | 販売先の拡大を停止している。 |
ニ.今後の対応策
・資源状態の把握が困難な魚種(特に魚粉・魚油・すり身の加工原料となる魚種)に対し、ラウンドテーブルへの参加やFIPの支援など、優先して対応します。
・漁獲情報の収集が困難な品目の資源特定や、サプライヤーとの協働によるトレーサビリティの確保に取り組みます。
・調達資源について、人権侵害リスクを把握するための評価方法を検討します。