有価証券報告書-第109期(2023/04/01-2024/03/31)
⦅戦略⦆
漁業と養殖における自然への依存と影響の関係を整理するため、LEAPアプローチ(注1)に沿って「依存と影響」の診断と「リスクと機会」の評価を行い、以下のように整理しました。なお、今回の評価では、バリューチェーン最上流における自然との接点である「漁業」および「養殖」を対象とし、外部ツール「ENCORE(注2)」を使用した一次評価を行った上で、当社グループの操業実態に合わせた二次評価(定性評価)を行いました。その結果、漁業では海域や水産資源などの海洋生態系サービスに大きく依存し、漁獲によって水産資源量や生物種に影響を与えていることが分かりました。養殖では、陸域・水域・海域の利用に加え、水温や水質などの生態系調整サービスに大きく依存している一方で、給餌による水質悪化など、養殖場水域の汚染により自然へ影響を与えていることが分かっています。
(注1)LEAPアプローチ:TNFDが開発した、自然関連のリスクと機会を評価するためのガイダンス。分析プロセスであるLocate、Evaluate、Assess、Prepareの頭文字をとったもの。
(注2)ENCORE:ビジネスセクターと生産プロセスごとの自然資本への依存と影響を評価するツール。

■リスクと機会の評価
<漁業>自社にとってのリスクと機会
<養殖>自社にとってのリスクと機会
漁業と養殖における自然への依存と影響の関係を整理するため、LEAPアプローチ(注1)に沿って「依存と影響」の診断と「リスクと機会」の評価を行い、以下のように整理しました。なお、今回の評価では、バリューチェーン最上流における自然との接点である「漁業」および「養殖」を対象とし、外部ツール「ENCORE(注2)」を使用した一次評価を行った上で、当社グループの操業実態に合わせた二次評価(定性評価)を行いました。その結果、漁業では海域や水産資源などの海洋生態系サービスに大きく依存し、漁獲によって水産資源量や生物種に影響を与えていることが分かりました。養殖では、陸域・水域・海域の利用に加え、水温や水質などの生態系調整サービスに大きく依存している一方で、給餌による水質悪化など、養殖場水域の汚染により自然へ影響を与えていることが分かっています。
(注1)LEAPアプローチ:TNFDが開発した、自然関連のリスクと機会を評価するためのガイダンス。分析プロセスであるLocate、Evaluate、Assess、Prepareの頭文字をとったもの。
(注2)ENCORE:ビジネスセクターと生産プロセスごとの自然資本への依存と影響を評価するツール。

■リスクと機会の評価
<漁業>自社にとってのリスクと機会
| リスク /機会 | 分類 | 想定される主なリスクと機会 | 事業インパクト | 主な対応策 | |
| 漁業 | 物理 リスク | 慢性 | 水産資源の枯渇化 | ・調達量の減少(サプライチェーンの不安定化) ・調達コストの上昇 | ・資源アクセスのさらなる強化・調達ネットワークの構築・養殖事業の強化・水産物代替原料の開発 |
| 急性・慢性 | 海水温の変化に伴う資源状態・漁場・種の変化 | ||||
| 移行 リスク | 規制 | 漁業規制の強化 | ・調達量の減少(サプライチェーンの不安定化) | ||
| 温室効果ガス排出規制の強化 | ・対応コストの発生 | ・漁場探索の効率化(ドローン活用等) | |||
| 市場 | 消費者の購買行動の変化 | ・対応遅れによる売上機会の損失 ・対応コストの発生(例:認証取得費用) | ・MSC・MEL等の認証取得 ・資源状態調査の継続と情報発信 | ||
| 小売・外食業からの要請拡大(トレーサビリティ・認証など) | |||||
| 評判 | 絶滅危惧種の調達による評判低下 | ・売上の減少、ブランド価値の毀損 | ・絶滅危惧種調達方針に基づいた調達 ・ステークホルダーとの対話 | ||
| 海鳥や哺乳類の偶発的捕獲による評判の低下 | ・各漁業会社における混獲防止策の継続 ・ステークホルダーとの対話 | ||||
| 海洋資源や環境への負の影響発生に伴う評判低下 | ・海洋環境への負荷低減とモニタリング ・地域社会との共生 | ||||
| 対応が不十分な場合の投資家・金融機関からの評判低下 | ・投資金融資産の引き揚げ | ・持続可能な各種取り組みと積極的な情報発信、対話 | |||
| 技術 | 漁船の温室効果ガス排出低減対応の遅れ | ・事業競争力の低下 ・対応コストの発生 | ・漁船の脱炭素化に向けた積極的な情報 収集 | ||
| 機会 | 製品・サービス/天然資源の持続可能な利用 | 水産物の持続的調達によるサプライチェーン安定化 | ・収益の安定化、販路の拡大 | ・調達における資源状態の確認 ・漁業認証取得や認証品の取り扱い増 | |
| 評判/生態系の保全 | 海鳥や哺乳類の偶発的捕獲防止による悪評の防止、生態系の保全 | ・レピュテーションリスクの回避 ・漁場の生態系保全→漁業継続性の確保 | ・各漁業会社における偶発的捕獲防止策の継続 | ||
| 資本の流れおよび資金 | 投資家・金融機関からの評判向上、資金調達の多様化 | ・資本コストの低減 | ・持続可能な水産資源の調達と情報発信 | ||
| 評判資本 | 消費者の購買行動の変化(持続可能性に配慮した製品に対する需要の増加) | ・売上の拡大 |
<養殖>自社にとってのリスクと機会
| リスク /機会 | 分類 | 想定される主なリスクと機会 | 事業インパクト | 主な対応策 | |
| 養殖 | 物理 リスク | 急性 | 風水害の激甚化による事業停止・管理コスト増加 | ・養殖施設の損壊による被害 | ・浮沈式生け簀の導入、施設の補強 ・赤潮発生を予測し、被害を最小化 ・陸上養殖への対応強化 |
| 魚病の蔓延 | ・魚の斃死による資産の喪失 | ・独自の養殖魚健康管理システム(N-AHMS)による予防管理 | |||
| 急性・ 慢性 | 養殖場周辺の水質の悪化 | ・操業停止、魚病の発生、魚の斃死 | ・養殖漁場の環境モニタリング | ||
| 渇水による操業停止 | ・養殖拠点の渇水被害 | ・高リスク拠点の特定、移転、設備強化、水源涵養 | |||
| 慢性 | 海洋環境の変化による水産物の調達リスク | ・養殖飼料向け原料魚の漁獲量減少による調達量への影響や調達コストの増加 | ・代替飼料の開発(低魚粉配合飼料) | ||
| 気候変動による海水温の上昇 | ・赤潮の発生 ・養殖適地の変化 | ・新規養殖エリアの開拓(高緯度地域へのシフト) | |||
| 移行 リスク | 規制 | 養殖における環境規制の強化 | ・事業規模縮小や養殖場の閉鎖 ・罰金や課税による財務影響 | ・養殖漁場の環境モニタリング ・飼料・給餌における海洋環境への負荷低減(EP飼料、自動給餌システム) ・沖合養殖への移行 | |
| 温室効果ガス排出規制の強化 | ・対応コストの発生 | ・船による給餌から遠隔給餌システムへの転換 ・水素燃料電池給餌船の開発・実証事業への参画 | |||
| 天然水産資源管理の強化に伴う飼料への影響 | ・調達量の減少 ・飼料価格上昇による養殖コストの増加 | ・代替飼料の開発(低魚粉配合飼料) | |||
| 市場 | 消費者の購買行動の変化 | ・対応遅れによる売上機会の損失 ・対応コストの発生(例:認証取得費用) | ・ASC・MEL等の認証取得 | ||
| 小売・外食業からの要請拡大(トレーサビリティ・認証など) | ・対応遅れによる売上機会の損失 ・対応コストの発生 | ・飼料のトレーサビリティ確保 ・ASC・MEL等の認証取得 | |||
| 評判 | 環境への負の影響発生に伴うステークホルダーからの評判低下 | ・ブランド価値毀損、抗議行動、不買運動 | ・海洋環境への負荷低減とモニタリング ・地域社会との共生 | ||
| 持続性対応が不十分な場合の投資家・金融機関からの評判低下 | ・投資金融資産の引き揚げ | ・持続可能な各種取り組みと積極的な情報発信、対話 | |||
| 技術 | 低環境負荷型養殖技術の開発の遅れ | ・優位性喪失、事業競争力の低下 | ・経営資源の集中による対応強化 |
| リスク /機会 | 分類 | 想定される主なリスクと機会 | 事業インパクト | 主な対応策 | |
| 養殖 | 機会 | 製品・サービス/生態系の保全 | 完全養殖技術の確立による天然資源への依存低減 | ・ビジネスのレジリエンス強化、競争優位性の確立 | ・ブリ以外の魚種への展開(100%人口種苗化) |
| 健康管理による養殖魚の健康増進、周辺海域への魚病拡大防止 | ・養殖成績の向上、収益の安定化 ・競争優位性の確立 | ・独自の養殖魚健康管理システム(N-AHMS)による予防管理 | |||
| 抗菌剤に頼らない養殖方法の研究開発による海洋環境負荷の低減 | ・輸出機会の拡大 ・競争優位性の確立 | ・SeaBOSを通じたステークホルダーとの協働 | |||
| 陸上養殖技術の開発による海洋環境への負荷の低減 | ・競争優位性の確立、販路の拡大 ・レピュテーションリスクの回避 | ・現状の取り組みの深化(エビ、サーモン、マサバ) | |||
| 製品・サービス | 陸上養殖技術開発による気候変動耐性の確保 | ・物理リスク(風水害、海水温上昇等)回避によるビジネスのレジリエンスの強化 | |||
| 製品・サービス/生態系の保全 | スマート養殖による環境負荷低減、動物福祉向上 | ・養殖コストの低減、養殖成績の向上 ・労働環境の改善 | ・AI・IoTを活用した生産管理 ・遠隔給餌システムの開発 | ||
| マーケット /生態系の保全 | 作業船の脱炭素化による環境負荷低減 | ・将来のカーボンプライシングによる影響回避 ・ステークホルダーからの評判の向上 | ・水素燃料電池給餌船の開発 ・実証事業への参画 | ||
| 資本の流れおよび資金 | 投資家・金融機関からの評判の向上、資金調達の多様化 | ・資本コストの低減 | ・持続可能な養殖事業構築と情報発信 | ||
| 評判資本 | 消費者の購買行動変化(持続可能性に配慮した製品に対する需要増加) | ・売上の拡大 |