有価証券報告書-第119期(2023/01/01-2023/12/31)

【提出】
2024/03/27 9:25
【資料】
PDFをみる
【項目】
159項目
①戦略
1)人事に関する基本的方針
当社グループは、企業発展の源泉となる最大の資本は「人」であり、個々人の能力開発・育成を図り、意欲にあふれる人財が束となって変革を推し進めること、またそうした変革を推進する人財が次々と育つ企業風土を醸成することが重要であると考えております。さらに、多種多様な社会課題の解決のために、ダイバーシティ&インクルージョンにも真摯に取り組み、様々な個性を持つ社員一人ひとりが、適切な配置や機会の提供を受けることで自身の能力や経験を生かして活躍できると考えております。こうした考え方に基づいて、社会から支持、信頼、尊敬される企業であることを通じ、当社グループの持続的な発展と社員の幸福の実現を目指しております。
2)当社グループにおける人的資本に関する取組みの全体像
当社グループが目指すのは、創業時から変わることなく、「食品による国民の体位向上」であり「事業を通じて社会に貢献すること」であります。おいしさや健康に対する価値観と期待水準が変化するなか、当社グループが発展していくためには、全社員が一つになって社会課題と向き合い、お客様起点の価値を創造し続けなければなりません。2030年の長期経営構想の実現に向け、経営理念体系を見直し、存在意義(パーパス)「すこやかな毎日、ゆたかな人生」を最上位に位置づけるとともに、ありたい会社の姿(ビジョン)として、「Glicoグループは人々の良質なくらしのため、高品質な素材を創意工夫することにより『おいしさと健康』を価値として提供し続けます。」と制定しました。
存在意義(パーパス)やありたい会社の姿(ビジョン)を実現する事業戦略として、ゆたかな人生のために「おいしさと健康の価値の創出」、「すこやかな毎日に貢献するビジネスモデルの構築」、「日本、中国、ASEAN、米国での事業展開」に注力しております。
当社グループ 人的資本に関する取組みの全体像
0102010_002.png
3)人財育成方針、社内環境整備方針
組織・人財のあるべき姿を目指す上で必要な5つの要素は、「a オーナーシップマインド」、「b 顧客志向」、「c グロースマインドセット」、「d 変化対応力」、「e グローバルマインドセット」であります。これらの能力開発のための人財開発への投資を行うとともに、能力を十分に発揮できるような社内環境整備への投資を実行し、課題に沿った各種アクションを実行、加速してまいります。
a.オーナーシップマインド:社員全員が創業者マインドを持ち、自立して行動する
Glicoグループのパーパス実現のためには、一人ひとりが創意工夫を体現することで、新たな価値を創出し、生活者のみなさまの課題解決に貢献する意欲を持つ必要があります。創業者マインドを高めるために、以下の取組みを実施しております。
・次世代イノベーター育成研修:起業家マインドとグローバルに通じるイノベーション創出力を目的に2019年より開始し、これまでに36名が受講しております。今後もこうした起業家精神を育む機会を強化してまいります。
・選抜リーダーシップ研修:3つの層からメンバーを選抜して実施しております。
ⅰ.CLC(Change Leader’s Camp)研修:2014年に部門長及び部門長候補を対象に経営リテラシーやリーダーシップの獲得を主目的として開始しました(3年間で受講者計48名)。4年目以降はACLC(Advanced Change Leader’s Camp)研修を実施しております(累計受講者数39名)。
ⅱ.LDC(Leadership Development Camp)研修:係長クラスから経営職を目指すメンバーを対象にした研修であります(累計受講者数101名)。
ⅲ.LLC(Leadership Learning Camp)研修:主任クラスから係長クラスを目指すメンバーを対象とした研修であります(累計受講者数18名)。
・社内公募制度:社員個々の自律的キャリア形成の促進とキャリアニーズにこたえることを目的に2010年より導入し、2023年度には37名が社内公募に合格しております。
・JICA民間ボランティア制度への派遣:国際感覚を備えた人財の育成と同時に、異なる文化や環境の中で自ら課題を設定し、一年という限られた期間の中で持続性のある解決策を仕組み化して生み出す体験として、2016年以降、独立行政法人 国際協力機構JICA(Japan International Cooperation Agency)の民間連携ボランティア制度を活用し、社内公募による海外への社員派遣を実施しております。8か国8地域へのべ14名を派遣しております。
・smile.box(社内提案制度):社員なら誰でも業務改善につながるアイデアを直接会社に提案できる制度を2016年より導入しております。提案されたアイデアは社長、役員、関係部門によって検討され、社員に返答される仕組みになっております。
b.顧客志向:社員全員が常に顧客起点の発想と、新たな価値を創造・実現できるスキルを持つ
現状の製品(モノ)起点の価値フローから、「お客様起点のバリューチェーン」に切り替えるにあたり、顧客起点の思考は一層重要度を増しており、以下の取組みを実施しております。
・デザイン思考ワークショップ:顧客視点での課題設定力、問題解決力の向上を目的に2019年より実施し、これまでに約200名が受講しております。
・デジタルスキル学習:デジタルリテラシーの強化、デジタルを活用した新たな価値創出や業務変革等における職務遂行能力の獲得・向上を目的に2022年から全社員を対象に順次開始しております(2024年までに当社正社員全員(約1,400名)が受講予定)。
c.グロースマインドセット:社員全員が協同一致で「One Glico」を実践するマインドを持つ
社員全員がパーパス、ビジョンを理解・共鳴した上で、グループ全体が一丸となり結果を出し切れる組織文化を目指して取組みを進めております。
・役割等級制度:経営推進職は2018年から、総合職は2022年から、従来の職能資格制度を廃止し、役割の大きさを基準に等級を設定する役割等級制度へ移行しました。
・自律的な能力開発:並行して計画的な能力開発を目的にスキルステージを導入しました。各等級に求められるスキル、知識を明示することで、上司の支援のもと、社員一人ひとりが自律的に自身の成長に取り組める仕組みとして整備しました。
・キャリア採用:経営戦略上必要な、専門性、経験、知見、チームで課題を解決する能力等の強化施策として外部からの人財獲得を推進しております。2023年度は当社及び国内連結子会社合計で全採用者の82.3%を占めました。新卒採用で優秀なポテンシャル人財を採用すると共に、多様なスキルや価値観を持つキャリア採用も積極的に行うことで、新たな視点の製品開発や、多様な視点を取り入れたマーケティング活動を推進してまいります。
d.変化対応力:市場や環境の変化に常にアンテナを張り、現場、現物、現実を正確に把握しながら迅速に対応を図る
持続的な発展のためには、社会の動向を見定め素早く動く「俊敏な組織」でなければなりません。社員一人ひとりが、日常生活の中でニーズの変化や技術の動向を敏感に察知し、ビジネスチャンスに変えてアウトプットを生み出す判断力を鍛え、組織能力を高めます。当社グループ全体での俊敏性を高め、正確で迅速な意思決定により、事業の発展を目指します。
・各部門目標への設定:各部門の目標に俊敏な組織活動に繋がる目標を設定しております。
・能力開発:個々の能力開発機会として、戦略策定のトレーニングや実践の機会を設けております。
e.グローバルマインドセット:社員全員がグローバル目線で事業構想を考えることができ、また異なる意見や価値観を異質とせず受容することができる
海外市場への積極的な展開においては、全社員がグローバル視点で思考することが必要不可欠であります。人財の獲得への努力と同時にグローバルリーダーの育成や活躍しやすい環境整備を推進しております。
・海外での新卒採用:世界の多彩なスキルを持つ学生の獲得による、グローバルリーダーの育成を目的に2007年より海外採用を開始し、海外での採用イベントや、キャンパスリクルーティングへ参加しております。これまでに44名を採用しています。
・グローバルブランドマネジメント体制の導入:海外展開を前提とした製品開発やマーケティングのあり方をリードする専門組織を設定しております。
・D&I(ダイバーシティ&インクルージョン):D&Iへの取組みはイノベーションを創出するとともに、組織運営においても意思決定のレベルを引き上げ、組織マネジメント力を向上させるものと捉えております。国籍や性別、キャリア、障がいの有無などに関わらず、多様な人財が適材適所で一体となって目標に向かっていける環境づくりが非常に重要であると考え、以下の取組みを実施しております。
ⅰ.社員一人ひとりがD&Iを深く理解し、インクルーシブルな言葉や行動を選択して実践するスキルを学び、行動発揮を促すことを目的とした、グループ全社員が参加する“D&Iイベント”を2021年から毎年開催しております。2023年度実施の社員アンケートでは、およそ8割がインクルーシブな職場環境であると回答しております。
ⅱ.女性活躍推進の観点から、女性社員のキャリア開発研修や上司を対象としたダイバーシティマネジメント研修等を実施し、現状当社及び国内連結子会社合計の女性管理職比率は6.5%であります。
ⅲ.創業当時と変わらない、子どものココロとカラダの成長を育む世の中にしていきたいという想いから2019年に「Co育てPROJECT」を発足。その一環として「Co育てMonth」(子どもの出生後6ヵ月以内に1ヵ月の有給休暇の取得を必須とする制度)に代表する子育て支援に関する各種制度の充実に取り組み、男性育児休業取得率は当社及び国内連結子会社合計で90.2%に至っております。
ⅳ.障がいのある人がその障がいの種類にかかわらず活躍できる職場として、本社敷地内に「スマイルファクトリー」を設置し、輸出商品のラベル貼り等、従来外部委託してきた業務の内製化を図っております。当社において、障がい者雇用率は法定雇用率を超える3.34%を実現しております。
4)その他
・人財育成投資:人財育成への投資を積極的に進めており、当社及び国内連結子会社における研修費用総額は、2021年対比で1.73倍の201百万円に増加し、一人あたり61千円となりました。
研修費用総額及び社員一人当たりの研修費の推移
0102010_003.png
・健康経営:当社グループが持続的に成長・発展し、事業を通して社会に貢献し続けるためには、当社グループで働く社員自身が、心身ともに健康であり、働きがいをもっていきいきと働き続けられることが欠かせないと考えております。当社グループでは社員の健康維持・増進を重要な経営課題と位置づけ、社員自身の主体的な健康づくりを積極的に支援しております。そして、働き方改革や業務効率化、生産性やエンゲージメントの改善・向上、D&Iといった他の組織的課題とも連動して中長期的な視点で健康経営を体系的に推進しております。Glicoらしい健康経営により、ココロもカラダも健康な社員が多様な個性を引き出し合い、存在意義(パーパス)とありたい会社の姿(ビジョン)の実現を目指すことで、イノベーティブなアイデアやチャレンジを生み出し、自社の健康課題はもちろん、社会の健康課題解決に貢献してまいります。社外からの評価として、経済産業省と日本健康会議が共同で実施する「健康経営優良法人ホワイト500」に認定されました。また、2020年11月、総務省が主催する「テレワーク先駆者百選」において、最高位となる「総務大臣賞」を受賞しました。
総合健康リスク※85
総労働時間2,041時間
有給休暇取得率75.8%

※厚生労働省ストレスチェックプログラムに基づく指標。全国平均100に対して、低い方が良好値を示す