有価証券報告書-第96期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものですが、予測しえない経済状況の変化等さまざまな要因があるため、その結果について当社が保証するものではありません。
(1)企業集団の経営戦略
当社グループは、「革新的価値の創造」、「未来と世界への貢献」、「環境・社会との共生」を経営理念とし、「領域をこえ 未来へ」向かって、中長期的な企業価値向上に取り組んでいます。
これらの経営理念の下、「森のリサイクル」、「紙のリサイクル」、「水のリサイクル」という、バリューチェーンを通じた3つの資源循環を引き続き推進し、事業を通じて社会に対し価値を提供していくことで、真に豊かな社会の実現に貢献していきます。また、企業存続の根幹である「安全・環境・コンプライアンス」を経営の最優先・最重要課題と認識しており、労働災害リスクの撲滅、環境事故の防止、企業としての社会的責任を果たすための法令遵守等、経営層から世界中の従業員まで確実に浸透させる取り組みを続けていきます。
近年の経営環境は大きくかつ急速に変化していますが、変わり続ける時代のニーズを充足し、新しい未来を支えるモノづくりを行い、持続可能な社会の発展を目指していきます。現在取り組んでいる2019年度から2021年度を対象とする中期経営計画では、「国内事業の収益力アップ」、「海外事業の拡充」、「イノベーションの推進」をグループ経営戦略の基本方針に据え、「持続可能な社会への貢献」を通じて連結営業利益1,000億円以上を安定的に継続するグローバルな企業集団を目指すにあたり、これまでと同様、事業の選択と集中を進め、当社グループ全体としての最適生産体制を築くと同時に、成長が見込まれる有望事業の強化や新しい軸となり得る新規事業の創出に取り組んでいきます。一方で、経営環境の変化には迅速かつ的確に対応していきます。これまで、世界情勢、国内情勢を機敏に察知し、先回りして様々なアクションを取りながら、多彩なポートフォリオを築いてまいりました。幅広く展開している事業の領域、地域の領域、そのそれぞれが補完し合い、相乗効果を生み、さらなる成長を追求できるよう、これまで以上に強靭で外部環境に対する耐性を持った事業ポートフォリオの構築を推し進めていきます。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は内外経済を下振れさせており、当社グループにつきましても、国内外で印刷用紙を中心に足元で需要が落ち込んでいます。今後は緩やかに回復するものと思われますが、引続き、グループ経営戦略に沿った諸施策を着実に推し進め、収益力の強化、中長期的な企業価値向上に努めてまいります。
なお、当中期経営計画の最終年度である2021年度の経営数値目標は以下のとおりです。
※ネットD/Eレシオ=純有利子負債残高/純資産
「国内事業の収益力アップ」では、国内需要の変化に応じて生産体制再構築や保有設備の有効活用等によって資本効率化を図る一方、有望事業に経営資源を集中し、キャッシュを稼ぐ力を強化いたします。「海外事業の拡充」では、既存拠点からの有機的拡大や事業、拠点間シナジーの創出を進めていきます。また、「イノベーションの推進」では環境・社会ニーズに対応した新事業・新製品の開発推進と早期事業化を図り、これらの取り組みを通して「持続可能な社会への貢献」を進めていきます。
具体的には以下の取り組みを行っています。
(a)生活産業資材
・産業資材(段ボール原紙・段ボール加工事業、白板紙・紙器事業、包装用紙・製袋事業)
海外においては、事業基盤をより強固なものとするため、マレーシアで段ボール原紙マシンの増設(2021年4月稼働予定)とエネルギー供給及び用排水設備更新を進めています。また、2019年7月にベトナムで5箇所目、2020年2月にカンボジアで3箇所目、2020年3月にインドで4箇所目の段ボール工場が稼働し、インドネシアでは初となる段ボール工場(2020年中稼働予定)の建設を進めています。さらに、ニュージーランドでは、クライストチャーチ市にある段ボール工場の新設・移転を進めています(2021年上期稼働予定)。今後も、東南アジア・インド・オセアニアにおける事業展開をさらに進めるために、既存の現地拠点からの有機的拡大を図っていきます。
国内では、段ボール需要の伸びが特に大きいと期待される関東において国内最大規模の段ボール工場を船橋地区で建設(2020年7月より営業生産開始予定)を進めるとともに、段ボール原紙についても製造設備の停機・移設等により生産体制の再構築を実施し、国内需要の構造的な変化に対応しています。また、グループ全体のパッケージングに関する研究開発を一元的に担うパッケージング推進センターを中心に、段ボール原紙・白板紙・包装用紙から段ボール・紙器・製袋まで一貫した製造・販売・製品開発・提案等のトータルパッケージングを推進しています。その具体的な取り組みの一つとして、次世代の包装ソリューションとして包装資材の削減や省人化、配送費削減などにつながる「OJI FLEX PACK’AGE」の提供及びその包装資材である連続段ボールシート「らくだん」の販売を開始しました。
また、2019年12月に石塚硝子株式会社と紙容器関連事業に協同で取り組み、本事業に参入することを決定しました。経営資源及びノウハウを相互に活用して、本事業の基盤強化及び新製品開発による新たな領域への進出を図るとともに、世界的な環境意識の高まりを背景に拡大する紙素材のニーズに対応していきます。
全国に広がる販売チャネルと素材・加工一貫による提案力を軸に幅広く事業を拡大し、競争力・収益力の向上を図っていきます。
・生活消費財(家庭紙事業、紙おむつ事業)
家庭紙事業では、森林認証を取得した環境配慮型製品や「鼻セレブ」に代表される高品質製品を取り揃えた製品展開により、一層の「ネピア」ブランドの価値向上に努めています。また、昨年開始した三菱製紙株式会社との家庭紙合弁事業では、同社八戸工場の充実したインフラや東北地区で初となる家庭紙事業拠点の立地を生かした拡販と物流合理化等を進めています。さらに2020年7月から中国の家庭紙原紙製造設備、2020年8月からその原紙を活用した関東地区の新加工拠点が稼働する予定となっており、首都圏での拡販を進めて市場プレゼンスを高めるとともに、今後も安定した需要が期待される家庭紙事業の拡大を図っていきます。
紙おむつ事業の子供用分野では、国内外の統一ブランドとして展開しており、2020年5月にリニューアルを行った「Genki!(ゲンキ!)」の拡販に加えて、新技術で赤ちゃんの快適性を追求した最高品質のブランド「Whito(ホワイト)」で高品質・高価格帯市場を開拓することにより、おむつ事業においても「ネピア」ブランドの価値向上に努めていきます。中国では「Genki!(ゲンキ!)」に加え「Whito(ホワイト)」の販売を開始し拡販に努めており、マレーシアでは2拠点での製造販売を展開しています。さらにインドネシアでは合弁会社での販売に加え、2020年1月に現地紙おむつ工場が稼働することで、コスト競争力の確保と事業基盤の強化を図るなど、周辺国を含めて一層の事業拡大を図っています。大人用紙おむつについては、高齢化が進むわが国の介護現場が抱える課題を解決する商品の開発を続けていきます。
(b)機能材(特殊紙事業、感熱紙事業、粘着事業、フィルム事業)
東南アジアでの中心事業である感熱紙・粘着紙については、原反生産・販売の川上事業をより強固で確実なものとするため、マレーシアで感熱紙・粘着紙の加工・印刷及び販売を行う川下事業会社のM&Aにより素材加工一体型ビジネスを推し進め、エンドユーザーニーズを適時的確に把握し、事業領域の拡大を図っています。
また、ブラジルでは南米での旺盛な感熱紙需要に対応するため、生産能力をほぼ倍増とする設備増強・増設工事を行うことを決定しました(2021年12月完成予定)。今後も東南アジア・南米・中東・アフリカ等の新興国市場の経済発展に伴って拡大する需要に応じて、これまで培ってきた「抄紙」や「紙加工(塗工・粘着)」、「フィルム製膜」といった当社グループの強みであるコア技術を梃子に新たな事業エリアの拡大を図っていきます。
国内については、生産体制の継続的な見直し等により、競争力・収益力を高めることで既存事業の基盤を強化しています。具体的には2019年11月にノーカーボン紙事業について、生産・販売を三菱製紙株式会社へ完全移管することを決定しました。これは、需要構造の変化や電子化によるノーカーボン紙市場の縮小が続く中、同事業の生産及び販売を三菱製紙株式会社へ集約することで、王子グループでは経営資源の選択と集中を進め、生産性の向上及び競争力の強化を図るものです。一方、三菱製紙株式会社でもシェア拡大と収益性の改善を見込んでいます。
特殊紙事業においては、脱プラスチック化の対応として紙トレー・容器・ストロー等に使用される各種素材の提案を進めています。このほかセルロースを他素材と組み合わせた複合素材や耐熱性・低誘電性に優れた耐熱ガラスペーパーなどの開発を行っており、引き続き様々な分野のニーズに応えるべく新製品の開発・普及を進めていきます。
今後も、コア技術と新素材との融合により、高機能・高付加価値製品の迅速な開発を継続し、また、研究開発型ビジネスのたゆまざる追求により、電気自動車用コンデンサフィルムの拡販等の新たな事業領域の拡大に取り組んでいきます。
(c)資源環境ビジネス(パルプ事業、エネルギー事業、植林・木材加工事業)
パルプ事業では、パルプ市況の変動に耐え得る事業基盤を強化するため、主要拠点において戦略的収益対策を継続して実施しています。ニュージーランドでは、当社グループのノウハウや操業管理手法等を導入・活用し、操業の安定化及び効率化対策に取り組み、ブラジルでは製造設備の最新鋭化等による継続的な収益対策を進めています。国内の溶解パルプ事業ではレーヨン用途向け製品に加えて、医療品材料や濾過材用途等の高付加価値品の生産を開始し、事業拡大を進めています。
エネルギー事業では、さらなる事業拡大を進めており、三菱製紙株式会社との合弁事業によるバイオマス発電設備が2019年に稼働しました。さらに、伊藤忠エネクス株式会社と合弁で徳島県にバイオマス発電設備を建設することを決定し、2022年の稼働に向けて準備を進めています。また、エネルギー事業の拡大にあわせバイオマス燃料事業の強化を進めており、国内では、未利用木材資源を活用した燃料用チップの生産拡大、海外では、インドネシアやマレーシアにおける燃料用パーム椰子殻の調達増に向けた取り組みを行っています。
木材加工事業では、アジア・オセアニア地域を中心に製材製品や木材加工品の仕入販売及び生産能力増強に取り組んでいます。また、中国・東南アジアに設立した販売拠点で、パルプ・木材製品等の拡販を進めています。
2019年11月に原料調達コストの削減を目的として製紙事業の主原料である輸入木材チップについて、中越パルプ工業株式会社並びに三菱製紙株式会社と3社で共同調達を開始しました。これにより、チップ船の効率的な運用、直接貿易の拡大、調達先の最適化、業務の効率化などによるコスト削減を進めていきます。
(d)印刷情報メディア(新聞用紙事業、印刷・出版・情報用紙事業)
国内では、ICT化の進展等に伴う事業環境の変化を見極めつつ、生産性・稼働率の向上等を図るべく洋紙マシンの停止や段ボール原紙マシンへの改造による最適生産体制の構築及び保有設備の有効活用を進め、国際競争力の強化を進めるとともにキャッシュ・フローの増大を図っていきます。また、交錯輸送の解消によるコストダウン等、三菱製紙株式会社との業務提携効果を早期に発現させ、競争力・収益力の向上を図っていきます。
また、中国では数少ない紙パルプ一貫生産体制の強みを最大限に活かしたコストダウンを継続して行い、さらなる競争力強化に取り組んでいます。
(e)イノベーションの推進と持続可能な社会の実現に向けた取り組み
当社グループは、経営理念の一つである「環境・社会との共生」の下、環境経営の推進を掲げ、環境と調和した企業活動を展開しています。柔軟かつ効率的な研究開発活動を充実させ、新たなニーズの探索に取り組み、イノベーションの推進による新製品・新事業の創出を通じて、真の豊かさと持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。
次世代素材として幅広い産業に応用が期待されているセルロースナノファイバー(CNF)については、これまで、CNFスラリーの「アウロ・ヴィスコ」がカーケミカル用品の増粘剤や生コンクリートの圧送先行剤として採用されてきました。加えて、2018年にオランダで開催された世界最大級の化粧品原料展でシルバー賞を受賞した「アウロ・ヴィスコCS」を、2019年4月に製品化しました。そして、2019年10月には「東京モーターショー」の環境省ブースにて、CNFとポリカーボネートを複合した樹脂ガラスが自動車部品として展示されました。この複合材は、無機ガラスに比べて軽量なため、自動車重量の大幅な低減効果が期待されています。さらに、当社独自の技術開発により実現したCNFシート「アウロ・ヴェール」が2020年2月に卓球ラケット用素材に採用されました。これらの用途で採用されたスラリー、複合樹脂、シートの他に、有機溶剤に分散可能なCNFパウダーも多様なCNFのラインアップに加え、今後もより幅広い分野での用途開発を進め、CNF実用化を牽引し、市場普及を積極的にリードしていきます。
海洋プラスチック問題への対応として世界中でプラスチックに替わる紙製品の需要が高まっているなか、地球環境に配慮した素材・製品開発に積極的に取り組んでいます。素材の開発においては、生分解性プラスチックとパルプの複合材、再生循環型の包装材料、耐水性・耐熱性を持ったパルプ製トラベラーリッド等の開発を加速し、採用間近の製品も出てきています。プラスチックストローの代替では、耐水性を有するストローの原紙が国内ストローメーカーに採用されました。また、水蒸気と酸素の両方に対してバリア性を有する紙素材「SILBIO BARRIER」は、多くの引き合いに対応し、製品化を進めながら、さらなる機能向上にも取り組んでいます。そして、市場においては、Nestlé Group製品のパッケージ素材に当社グループ紙製品がプラスチック代替として、タイに続き日本でも採用されました。今後もパッケージ素材のサプライヤーとして、地球環境へ配慮した取り組みに貢献していきます。
パルプを原料としたプラスチックの製造についても目下開発中です。従来の石油を原料としたプラスチックから、持続可能なバイオマスを原料としたバイオマスプラスチックに置き換えることにより、化石燃料由来のCO2排出を抑制し、地球温暖化防止に貢献することを目指していきます。一般的なバイオマスプラスチックはトウモロコシなどの可食原料から製造されますが、当社グループのバイオマスプラスチックは非可食である樹木由来のパルプを原料とすることで食品資源との競合を無くし、持続可能な社会にさらに深く貢献していきます。
土木分野においては、従来から仮設資材に利用されていた鋼材や木材の代替として、人と環境に優しく、取扱いが容易な紙素材を活用した仮設施工の生産性向上技術である「KAMIWAZA」を清水建設株式会社と共同開発しました。引き続き、紙素材を活用した新たなソリューションを進めていきます。
また、木質成分の1つであるヘミセルロースにおいては、当社グループの独自技術により抽出・精製した「加水分解キシラン」を上市し、化粧品原料素材として高い評価を受け、2019年1月に製品化しています。さらに、ヘミセルロースを化学的に変化させた新規の「硫酸化ヘミセルロース(既存の医薬品原料であるポリ硫酸ペントサンナトリウムの類似物質)」を医薬品として開発することを進めています。医薬事業への参入に向けた取り組みを加速するため、2020年4月に「王子ファーマ株式会社」を設立し、大学や製薬企業とのコラボレーションを推進しています。
水処理技術の分野では、長年培ってきた用水製造・排水処理技術を活かし、競争力のある水処理システムを実用化しています。当社水処理システムはタイの工業団地で稼働しているほか、新たにミャンマー最大手のビール会社の用水製造設備や、2020年竣工予定のミャンマーの大型複合施設の生活用水製造設備並びに排水処理設備でも採用されました。排水処理設備、工業用水設備、生活用水製造設備の全てにおいて、IoT技術を活用した遠隔監視機能を組み込むことができ、より最適な水処理設備の運用をサポートしています。これからも水処理システムの技術革新を進めながら普及拡大を目指し、国内外の水環境改善に貢献していきます。
今後も地球温暖化対策、生物多様性保全、環境配慮型製品の提供等も含め、地球環境に配慮した取り組みを進めていくとともに、持続可能な森林経営を推進し、木材原料をはじめとする原材料の責任ある調達に努めていきます。
また、中長期的な企業価値向上を図り、持続的発展を遂げるため、多様な人材が活躍できるよう働き方改革とダイバーシティの推進に取り組んでいきます。
多様なステークホルダーとの信頼関係を構築しながら、経営の効率性、健全性及び透明性を確保し、企業価値の向上と社会から信頼される会社を実現するため、コーポレートガバナンスの充実を経営上の最重要課題の一つと位置づけ、継続的に強化に努めていきます。
当社グループはこれらの諸施策を通して、社会に様々な価値を提供し、持続可能な開発目標(SDGs)達成の貢献をすると共に、常に時代のニーズを先取りし、イノベーションに挑戦して、持続的に成長する企業グループを目指していきます。
(1)企業集団の経営戦略
当社グループは、「革新的価値の創造」、「未来と世界への貢献」、「環境・社会との共生」を経営理念とし、「領域をこえ 未来へ」向かって、中長期的な企業価値向上に取り組んでいます。
これらの経営理念の下、「森のリサイクル」、「紙のリサイクル」、「水のリサイクル」という、バリューチェーンを通じた3つの資源循環を引き続き推進し、事業を通じて社会に対し価値を提供していくことで、真に豊かな社会の実現に貢献していきます。また、企業存続の根幹である「安全・環境・コンプライアンス」を経営の最優先・最重要課題と認識しており、労働災害リスクの撲滅、環境事故の防止、企業としての社会的責任を果たすための法令遵守等、経営層から世界中の従業員まで確実に浸透させる取り組みを続けていきます。
近年の経営環境は大きくかつ急速に変化していますが、変わり続ける時代のニーズを充足し、新しい未来を支えるモノづくりを行い、持続可能な社会の発展を目指していきます。現在取り組んでいる2019年度から2021年度を対象とする中期経営計画では、「国内事業の収益力アップ」、「海外事業の拡充」、「イノベーションの推進」をグループ経営戦略の基本方針に据え、「持続可能な社会への貢献」を通じて連結営業利益1,000億円以上を安定的に継続するグローバルな企業集団を目指すにあたり、これまでと同様、事業の選択と集中を進め、当社グループ全体としての最適生産体制を築くと同時に、成長が見込まれる有望事業の強化や新しい軸となり得る新規事業の創出に取り組んでいきます。一方で、経営環境の変化には迅速かつ的確に対応していきます。これまで、世界情勢、国内情勢を機敏に察知し、先回りして様々なアクションを取りながら、多彩なポートフォリオを築いてまいりました。幅広く展開している事業の領域、地域の領域、そのそれぞれが補完し合い、相乗効果を生み、さらなる成長を追求できるよう、これまで以上に強靭で外部環境に対する耐性を持った事業ポートフォリオの構築を推し進めていきます。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は内外経済を下振れさせており、当社グループにつきましても、国内外で印刷用紙を中心に足元で需要が落ち込んでいます。今後は緩やかに回復するものと思われますが、引続き、グループ経営戦略に沿った諸施策を着実に推し進め、収益力の強化、中長期的な企業価値向上に努めてまいります。
なお、当中期経営計画の最終年度である2021年度の経営数値目標は以下のとおりです。
| 2021年度経営目標 | |||
| 連結営業利益 | 海外売上高比率 | ROE | ネットD/Eレシオ※ |
| 1,500億円以上 | 40% | 10.0% | 0.7倍 (2018年度実績を維持) |
※ネットD/Eレシオ=純有利子負債残高/純資産
「国内事業の収益力アップ」では、国内需要の変化に応じて生産体制再構築や保有設備の有効活用等によって資本効率化を図る一方、有望事業に経営資源を集中し、キャッシュを稼ぐ力を強化いたします。「海外事業の拡充」では、既存拠点からの有機的拡大や事業、拠点間シナジーの創出を進めていきます。また、「イノベーションの推進」では環境・社会ニーズに対応した新事業・新製品の開発推進と早期事業化を図り、これらの取り組みを通して「持続可能な社会への貢献」を進めていきます。
具体的には以下の取り組みを行っています。
(a)生活産業資材
・産業資材(段ボール原紙・段ボール加工事業、白板紙・紙器事業、包装用紙・製袋事業)
海外においては、事業基盤をより強固なものとするため、マレーシアで段ボール原紙マシンの増設(2021年4月稼働予定)とエネルギー供給及び用排水設備更新を進めています。また、2019年7月にベトナムで5箇所目、2020年2月にカンボジアで3箇所目、2020年3月にインドで4箇所目の段ボール工場が稼働し、インドネシアでは初となる段ボール工場(2020年中稼働予定)の建設を進めています。さらに、ニュージーランドでは、クライストチャーチ市にある段ボール工場の新設・移転を進めています(2021年上期稼働予定)。今後も、東南アジア・インド・オセアニアにおける事業展開をさらに進めるために、既存の現地拠点からの有機的拡大を図っていきます。
国内では、段ボール需要の伸びが特に大きいと期待される関東において国内最大規模の段ボール工場を船橋地区で建設(2020年7月より営業生産開始予定)を進めるとともに、段ボール原紙についても製造設備の停機・移設等により生産体制の再構築を実施し、国内需要の構造的な変化に対応しています。また、グループ全体のパッケージングに関する研究開発を一元的に担うパッケージング推進センターを中心に、段ボール原紙・白板紙・包装用紙から段ボール・紙器・製袋まで一貫した製造・販売・製品開発・提案等のトータルパッケージングを推進しています。その具体的な取り組みの一つとして、次世代の包装ソリューションとして包装資材の削減や省人化、配送費削減などにつながる「OJI FLEX PACK’AGE」の提供及びその包装資材である連続段ボールシート「らくだん」の販売を開始しました。
また、2019年12月に石塚硝子株式会社と紙容器関連事業に協同で取り組み、本事業に参入することを決定しました。経営資源及びノウハウを相互に活用して、本事業の基盤強化及び新製品開発による新たな領域への進出を図るとともに、世界的な環境意識の高まりを背景に拡大する紙素材のニーズに対応していきます。
全国に広がる販売チャネルと素材・加工一貫による提案力を軸に幅広く事業を拡大し、競争力・収益力の向上を図っていきます。
・生活消費財(家庭紙事業、紙おむつ事業)
家庭紙事業では、森林認証を取得した環境配慮型製品や「鼻セレブ」に代表される高品質製品を取り揃えた製品展開により、一層の「ネピア」ブランドの価値向上に努めています。また、昨年開始した三菱製紙株式会社との家庭紙合弁事業では、同社八戸工場の充実したインフラや東北地区で初となる家庭紙事業拠点の立地を生かした拡販と物流合理化等を進めています。さらに2020年7月から中国の家庭紙原紙製造設備、2020年8月からその原紙を活用した関東地区の新加工拠点が稼働する予定となっており、首都圏での拡販を進めて市場プレゼンスを高めるとともに、今後も安定した需要が期待される家庭紙事業の拡大を図っていきます。
紙おむつ事業の子供用分野では、国内外の統一ブランドとして展開しており、2020年5月にリニューアルを行った「Genki!(ゲンキ!)」の拡販に加えて、新技術で赤ちゃんの快適性を追求した最高品質のブランド「Whito(ホワイト)」で高品質・高価格帯市場を開拓することにより、おむつ事業においても「ネピア」ブランドの価値向上に努めていきます。中国では「Genki!(ゲンキ!)」に加え「Whito(ホワイト)」の販売を開始し拡販に努めており、マレーシアでは2拠点での製造販売を展開しています。さらにインドネシアでは合弁会社での販売に加え、2020年1月に現地紙おむつ工場が稼働することで、コスト競争力の確保と事業基盤の強化を図るなど、周辺国を含めて一層の事業拡大を図っています。大人用紙おむつについては、高齢化が進むわが国の介護現場が抱える課題を解決する商品の開発を続けていきます。
(b)機能材(特殊紙事業、感熱紙事業、粘着事業、フィルム事業)
東南アジアでの中心事業である感熱紙・粘着紙については、原反生産・販売の川上事業をより強固で確実なものとするため、マレーシアで感熱紙・粘着紙の加工・印刷及び販売を行う川下事業会社のM&Aにより素材加工一体型ビジネスを推し進め、エンドユーザーニーズを適時的確に把握し、事業領域の拡大を図っています。
また、ブラジルでは南米での旺盛な感熱紙需要に対応するため、生産能力をほぼ倍増とする設備増強・増設工事を行うことを決定しました(2021年12月完成予定)。今後も東南アジア・南米・中東・アフリカ等の新興国市場の経済発展に伴って拡大する需要に応じて、これまで培ってきた「抄紙」や「紙加工(塗工・粘着)」、「フィルム製膜」といった当社グループの強みであるコア技術を梃子に新たな事業エリアの拡大を図っていきます。
国内については、生産体制の継続的な見直し等により、競争力・収益力を高めることで既存事業の基盤を強化しています。具体的には2019年11月にノーカーボン紙事業について、生産・販売を三菱製紙株式会社へ完全移管することを決定しました。これは、需要構造の変化や電子化によるノーカーボン紙市場の縮小が続く中、同事業の生産及び販売を三菱製紙株式会社へ集約することで、王子グループでは経営資源の選択と集中を進め、生産性の向上及び競争力の強化を図るものです。一方、三菱製紙株式会社でもシェア拡大と収益性の改善を見込んでいます。
特殊紙事業においては、脱プラスチック化の対応として紙トレー・容器・ストロー等に使用される各種素材の提案を進めています。このほかセルロースを他素材と組み合わせた複合素材や耐熱性・低誘電性に優れた耐熱ガラスペーパーなどの開発を行っており、引き続き様々な分野のニーズに応えるべく新製品の開発・普及を進めていきます。
今後も、コア技術と新素材との融合により、高機能・高付加価値製品の迅速な開発を継続し、また、研究開発型ビジネスのたゆまざる追求により、電気自動車用コンデンサフィルムの拡販等の新たな事業領域の拡大に取り組んでいきます。
(c)資源環境ビジネス(パルプ事業、エネルギー事業、植林・木材加工事業)
パルプ事業では、パルプ市況の変動に耐え得る事業基盤を強化するため、主要拠点において戦略的収益対策を継続して実施しています。ニュージーランドでは、当社グループのノウハウや操業管理手法等を導入・活用し、操業の安定化及び効率化対策に取り組み、ブラジルでは製造設備の最新鋭化等による継続的な収益対策を進めています。国内の溶解パルプ事業ではレーヨン用途向け製品に加えて、医療品材料や濾過材用途等の高付加価値品の生産を開始し、事業拡大を進めています。
エネルギー事業では、さらなる事業拡大を進めており、三菱製紙株式会社との合弁事業によるバイオマス発電設備が2019年に稼働しました。さらに、伊藤忠エネクス株式会社と合弁で徳島県にバイオマス発電設備を建設することを決定し、2022年の稼働に向けて準備を進めています。また、エネルギー事業の拡大にあわせバイオマス燃料事業の強化を進めており、国内では、未利用木材資源を活用した燃料用チップの生産拡大、海外では、インドネシアやマレーシアにおける燃料用パーム椰子殻の調達増に向けた取り組みを行っています。
木材加工事業では、アジア・オセアニア地域を中心に製材製品や木材加工品の仕入販売及び生産能力増強に取り組んでいます。また、中国・東南アジアに設立した販売拠点で、パルプ・木材製品等の拡販を進めています。
2019年11月に原料調達コストの削減を目的として製紙事業の主原料である輸入木材チップについて、中越パルプ工業株式会社並びに三菱製紙株式会社と3社で共同調達を開始しました。これにより、チップ船の効率的な運用、直接貿易の拡大、調達先の最適化、業務の効率化などによるコスト削減を進めていきます。
(d)印刷情報メディア(新聞用紙事業、印刷・出版・情報用紙事業)
国内では、ICT化の進展等に伴う事業環境の変化を見極めつつ、生産性・稼働率の向上等を図るべく洋紙マシンの停止や段ボール原紙マシンへの改造による最適生産体制の構築及び保有設備の有効活用を進め、国際競争力の強化を進めるとともにキャッシュ・フローの増大を図っていきます。また、交錯輸送の解消によるコストダウン等、三菱製紙株式会社との業務提携効果を早期に発現させ、競争力・収益力の向上を図っていきます。
また、中国では数少ない紙パルプ一貫生産体制の強みを最大限に活かしたコストダウンを継続して行い、さらなる競争力強化に取り組んでいます。
(e)イノベーションの推進と持続可能な社会の実現に向けた取り組み
当社グループは、経営理念の一つである「環境・社会との共生」の下、環境経営の推進を掲げ、環境と調和した企業活動を展開しています。柔軟かつ効率的な研究開発活動を充実させ、新たなニーズの探索に取り組み、イノベーションの推進による新製品・新事業の創出を通じて、真の豊かさと持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。
次世代素材として幅広い産業に応用が期待されているセルロースナノファイバー(CNF)については、これまで、CNFスラリーの「アウロ・ヴィスコ」がカーケミカル用品の増粘剤や生コンクリートの圧送先行剤として採用されてきました。加えて、2018年にオランダで開催された世界最大級の化粧品原料展でシルバー賞を受賞した「アウロ・ヴィスコCS」を、2019年4月に製品化しました。そして、2019年10月には「東京モーターショー」の環境省ブースにて、CNFとポリカーボネートを複合した樹脂ガラスが自動車部品として展示されました。この複合材は、無機ガラスに比べて軽量なため、自動車重量の大幅な低減効果が期待されています。さらに、当社独自の技術開発により実現したCNFシート「アウロ・ヴェール」が2020年2月に卓球ラケット用素材に採用されました。これらの用途で採用されたスラリー、複合樹脂、シートの他に、有機溶剤に分散可能なCNFパウダーも多様なCNFのラインアップに加え、今後もより幅広い分野での用途開発を進め、CNF実用化を牽引し、市場普及を積極的にリードしていきます。
海洋プラスチック問題への対応として世界中でプラスチックに替わる紙製品の需要が高まっているなか、地球環境に配慮した素材・製品開発に積極的に取り組んでいます。素材の開発においては、生分解性プラスチックとパルプの複合材、再生循環型の包装材料、耐水性・耐熱性を持ったパルプ製トラベラーリッド等の開発を加速し、採用間近の製品も出てきています。プラスチックストローの代替では、耐水性を有するストローの原紙が国内ストローメーカーに採用されました。また、水蒸気と酸素の両方に対してバリア性を有する紙素材「SILBIO BARRIER」は、多くの引き合いに対応し、製品化を進めながら、さらなる機能向上にも取り組んでいます。そして、市場においては、Nestlé Group製品のパッケージ素材に当社グループ紙製品がプラスチック代替として、タイに続き日本でも採用されました。今後もパッケージ素材のサプライヤーとして、地球環境へ配慮した取り組みに貢献していきます。
パルプを原料としたプラスチックの製造についても目下開発中です。従来の石油を原料としたプラスチックから、持続可能なバイオマスを原料としたバイオマスプラスチックに置き換えることにより、化石燃料由来のCO2排出を抑制し、地球温暖化防止に貢献することを目指していきます。一般的なバイオマスプラスチックはトウモロコシなどの可食原料から製造されますが、当社グループのバイオマスプラスチックは非可食である樹木由来のパルプを原料とすることで食品資源との競合を無くし、持続可能な社会にさらに深く貢献していきます。
土木分野においては、従来から仮設資材に利用されていた鋼材や木材の代替として、人と環境に優しく、取扱いが容易な紙素材を活用した仮設施工の生産性向上技術である「KAMIWAZA」を清水建設株式会社と共同開発しました。引き続き、紙素材を活用した新たなソリューションを進めていきます。
また、木質成分の1つであるヘミセルロースにおいては、当社グループの独自技術により抽出・精製した「加水分解キシラン」を上市し、化粧品原料素材として高い評価を受け、2019年1月に製品化しています。さらに、ヘミセルロースを化学的に変化させた新規の「硫酸化ヘミセルロース(既存の医薬品原料であるポリ硫酸ペントサンナトリウムの類似物質)」を医薬品として開発することを進めています。医薬事業への参入に向けた取り組みを加速するため、2020年4月に「王子ファーマ株式会社」を設立し、大学や製薬企業とのコラボレーションを推進しています。
水処理技術の分野では、長年培ってきた用水製造・排水処理技術を活かし、競争力のある水処理システムを実用化しています。当社水処理システムはタイの工業団地で稼働しているほか、新たにミャンマー最大手のビール会社の用水製造設備や、2020年竣工予定のミャンマーの大型複合施設の生活用水製造設備並びに排水処理設備でも採用されました。排水処理設備、工業用水設備、生活用水製造設備の全てにおいて、IoT技術を活用した遠隔監視機能を組み込むことができ、より最適な水処理設備の運用をサポートしています。これからも水処理システムの技術革新を進めながら普及拡大を目指し、国内外の水環境改善に貢献していきます。
今後も地球温暖化対策、生物多様性保全、環境配慮型製品の提供等も含め、地球環境に配慮した取り組みを進めていくとともに、持続可能な森林経営を推進し、木材原料をはじめとする原材料の責任ある調達に努めていきます。
また、中長期的な企業価値向上を図り、持続的発展を遂げるため、多様な人材が活躍できるよう働き方改革とダイバーシティの推進に取り組んでいきます。
多様なステークホルダーとの信頼関係を構築しながら、経営の効率性、健全性及び透明性を確保し、企業価値の向上と社会から信頼される会社を実現するため、コーポレートガバナンスの充実を経営上の最重要課題の一つと位置づけ、継続的に強化に努めていきます。
当社グループはこれらの諸施策を通して、社会に様々な価値を提供し、持続可能な開発目標(SDGs)達成の貢献をすると共に、常に時代のニーズを先取りし、イノベーションに挑戦して、持続的に成長する企業グループを目指していきます。