訂正有価証券報告書-第90期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

【提出】
2017/12/14 9:18
【資料】
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【項目】
148項目

研究開発活動

当社グループの研究開発活動は、全体の研究開発を統括するイノベーション推進本部と各カンパニーの研究開発部門、各工場の研究技術部等が機動的に連携しながら取り組んでいます。イノベーション推進本部では、各センター、各研究所が革新事業推進センターとともに、新事業創出を目指した研究開発、及び各事業の競争力強化のための研究開発を行っています。知的財産部では研究開発部門・事業部門との連携を緊密化し、事業に必要な知的財産活動を戦略的に行っています。当連結会計年度末における当社の保有特許・実用新案権の総数は国内1,336件、海外383件です。
当連結会計年度における各セグメントの研究開発活動を示すと、次のとおりです。
(1)生活産業資材
既存事業の競争力強化の一環として、パルプ、抄紙、塗工、紙物性に関する基盤技術を応用し、コストダウン、各工場の品質、操業の安定化、新製品開発に取り組んでいます。具体的には、白板紙の処方変更、板紙の使用薬品原単位削減や安価な輸入材料の使用によるコストダウン、調成工程の最適化による欠点削減等の操業性改善等を推進しました。段ボール原紙ケーサー適性対策として強度解析を行い、罫割れ及びフラップ差込不良を解消しました。また、素材・加工一体型ビジネスとして、新たな国内美粧包装市場を創出すべく、軽量かつ環境に優しいフレキソ印刷対応の美粧薄物コート白ライナー「PICライナ」を開発し、販売準備を進めています。
当事業に係る研究開発費は748百万円です。
(2)印刷情報メディア
既存事業の競争力強化の一環として、パルプ、抄紙、塗工、紙物性に関する基盤技術を応用し、コストダウン、各工場の品質、操業の安定化、新製品開発に取り組んでいます。具体的には、東南アジア産の木材チップ利用推進によるコストダウン、調成工程の最適化による欠点・断紙削減等の操業性改善、燃焼灰の処理技術確立による廃棄物の有効利用・処理費削減、安価な輸入材料の使用によるコストダウン等を推進しました。江蘇王子製紙有限公司南通工場新マシンにおける調成・抄紙条件の最適化を進めて操業性を改善し、製品の品質改善を行いました。
当事業に係る研究開発費は1,461百万円です。
(3)機能材
研究開発型ビジネスの形成を目指し、王子グループのコア技術であるシートの製造・加工技術を活用した機能性シート・フィルム分野での新製品開発を進めるとともに、国内外の製品競争力をより強固なものにするため、既存品のコストダウン、品質・操業の安定化にも取り組んでいます。
特殊紙事業では、炭素繊維、エンプラ繊維等の特殊繊維を使用した高機能性シートを開発し、成長分野への投入を進めています。一方、王子エフテックス株式会社江別工場6号抄紙機に新たに設置されたオンライン塗工設備を活用し、直接シリコーン処理が可能な剥離紙原紙を開発する等、パルプ生産から抄紙までの一貫生産による競争力強化も進めています。
イメージングメディア事業では、高い薬品耐性をもつ医療用合成紙ラベル等を開発し、市場ニーズに適合したラインナップの拡充を進めています。さらに、感熱紙の新しい用途展開に向けた技術開発を行っています。また、海外子会社も含め、新製品開発、コストダウンに繋がる技術支援を進めています。
粘着事業では、新たな市場開拓として土木や自動車の分野に目を向け、道路工事用養生フィルムを開発するとともに、自動車部品用の加飾フィルムの開発にも着手しています。
フィルム事業では、フィッシュアイと呼ばれる微小欠陥を大幅に低減した2軸延伸ポリプロピレンフィルムを開発し、非シリコン系剥離フィルムとして拡販を進めています。コンデンサー用極薄ポリプロピレンフィルムでは、次世代に向けたさらなる高機能化を進めています。また、タッチパネルに用いられる各種高機能フィルムの開発を進めており、印刷適性を付与した飛散防止フィルムや、タッチパネルモジュールと液晶モジュール等の貼り合せに使用される光学用両面粘着フィルムがスマートフォン向け等で採用が進んでいます。
新規フィルム製品である異方性拡散シート「ナノバックリング」、等方性拡散シート「パルーチェ」は各種LED光源の拡散シートとして採用が広がり、事業会社への移管を進めています。
当事業に係る研究開発費は2,983百万円です。
(4)資源環境ビジネス
海外植林分野では、海外植林地の生産性向上と植林木の品質向上を目指し、ユーカリ及びアカシアについてクローン植林の推進に取り組んでいます。総合林産業の推進に向け、製材、合板材や家具材の適性を備えたクローンの創出のほか、新たに木材乾燥等木材加工技術開発も進めています。
また、生体情報(DNA、RNA、代謝物)を利用した優良クローンの早期選定や、施肥時期及び量の見極めができる技術の開発に取り組んでおり、これまでに派生技術として新しいクローン識別法を開発し、現地に適用しています。
王子製紙株式会社米子工場に設置したバイオリファイナリー効率的一体型連続工業プロセスにて、溶解パルプ生産とフルフラールの連続製造の実証を行っています。溶解パルプは、レーヨンやアセテートの原料として今後の需要増が期待でき、また、フルフラールは将来のバイオプラスチック原料として期待されています。
当事業に係る研究開発費は265百万円です。
(5)その他
未利用森林資源等の木質バイオマスを用い、パルプ化技術、酵素と微生物によるバイオ技術を組み合わせる当社独自のバイオエタノール生産方法を開発しました。王子マテリア株式会社呉工場に2011年に設置したパイロットプラントを用いた実証試験で、製造コスト、エネルギー収支、温暖化ガス排出量等の評価を進めています。
ドット型周期微細構造を表面に賦形するナノドットアレイ技術を開発し、反射防止機能付与や、LEDや有機ELの光取り出し効率の向上を検討しています。
セルロースナノファイバーの樹脂複合化、透明シート化に関して、効率的な製造プロセスの確立、有望な複合材料の選定、具体的な用途の開発を進めています。
2013年9月に北海道下川町に医療植物研究室を立上げ、薬草の研究を開始しました。薬草はほとんどを中国からの輸入に依存しており、国産化が期待されています。ユーカリやアカシアで培った植栽技術を取り入れ、成長性と薬効成分量が優れる薬草の開発を進めています。
その他に係る研究開発費は5,452百万円です。
なお、(1)~(4)の各セグメントに関わる研究開発活動のうち、事業化段階に無い、探索段階及び開発段階の研究開発活動の研究開発費はここに含まれます。