半期報告書-第95期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2018/11/30 14:03
【資料】
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【項目】
99項目

研究開発活動

「社会の未来をかえる新しい価値を発見し、社内外の技術を活用して価値創造のビジネスモデルを継続的に提案する。」を研究開発方針に掲げ、事業価値の拡大に向けた研究開発を推進しています。当中間連結会計期間末における研究開発要員はグル-プ全体で335名、研究開発費は約36億円でした。
セグメントごとの研究開発の概要は次のとおりです。
(1) 機能材料事業
当セグメントでは主に以下の研究開発に取り組んでいます。
a)ディスプレイ材料及び関連材料の研究開発
b)ディスプレイ以外の用途に向けた液晶材料の研究開発
c)プリンテッド・エレクトロニクス材料の研究開発
液晶材料では、大型化の進むTV向け製品の材料開発を大きな柱と認識して鋭意推進しています。特に国内でもこれから開始される8K放送対応の高精細TVへの対応を目標に開発を進めています。高精細ディスプレイは配線部分によって透過率が大きく低下することから、材料面で透過率を改善できる技術が重要です。また、自動運転技術の実現に伴い、大きく変貌を遂げている自動車搭載のディスプレイ用の材料開発にも力を入れています。これら車載ディスプレイ材料は過酷な環境で長期間使用されるため特に信頼性が重視されます。品質に定評のある当社グループの液晶材料は他社の材料と差別化されており、ディスプレイメーカー各社から好評をいただいています。また、成熟しつつある液晶ディスプレイ(LCD)市場のコスト改善要求に対応する開発活動も行っています。すなわち、部材点数が多く、調達が複雑化するLCD製造工程を鑑み、他部材の機能を併合した液晶材料の開発を推進し、コスト、プロセスの両面で顧客利便を達成できる製品の開発も行っています。
有機EL材料では、2018年度上期に新規構造の発光材料が初めてディスプレイメーカーに採用されました。画期的な構造・機能・性能を有する材料であり、業界でも注目を集めています。他の大手ユーザーからも高評価を得ており、採用間近な状況です。今後も同機能の新規材料の開発のみならず、関連部材のテーマ獲得にも邁進し、今後の事業の中核として確立すべく注力しています。
光配向膜材料は、特性の改善が進み、高感度、高透過率、高安定性の材料系を新規開発し、高機能特性を有する材料を提供出来る体制の構築を進めています。
オーバーコート材料は、当社材料の特徴である高バリア性能、高耐熱性、高平坦性に高い評価をいただいています。
重合性液晶材料(PLC)は、顧客評価で小型ディスプレイでの表示特性の顕著な改善が確認されており、更なるステージアップの段階を向かえています。また最近では大型ディスプレイテーマへの適用を検討する顧客もあり、大型製品への展開の可能性も広がっています。
LCDマーケットの定着、関連材料の大量生産に並行して、ディスプレイ業界以外でも液晶材料の入手が容易になってきました。液晶という異方性を有する特異な材料の応用分野を異分野業界とともに探索するために各種検討、調整を進めています。特に以前から特殊用途に少量流動していた、プライバシーウインドウのための高分子分散型液晶材料に最新のディスプレイ材料の開発知見を適用して高性能の調光材料の開発を行っています。汎用液晶を用いた関連の製品よりも信頼性で格段に優れ、評価中の顧客から好評をいただいています。
プリンテッド・エレクトロニクス材料は、既に採用されているフィルムセンサー、コンデンサー用途の拡大、半導体向け材料の開発を進めており、顧客評価が順調に進んでいます。
(2) 加工品事業
当セグメントでは主に以下の研究開発に取り組んでいます。
a)高機能複合繊維の開発及び不織布の開発
b)肥効調節型肥料の開発
繊維・不織布関連では高機能複合繊維の開発とスルーエア不織布、メルトブローン不織布、エレクトロスピニング法を用いたナノ繊維不織布やこれらの不織布を用いた複合製品の開発及び生産技術開発を推進し、衛生材料分野、産業資材分野等において新製品の提案に取り組んでいます。
肥効調節型肥料は、新機能を付与した肥効調節型肥料の開発及び拡販に注力しています。
(3) 化学品事業
当セグメントでは主に以下の研究開発に取り組んでいます。
a)高機能有機化学品の研究開発及び生産技術開発
b)シリコン化合物の開発及び生産技術開発
c)ライフケミカル製品の開発
有機化学品では社内コア技術を活用し、電子情報材料をターゲットとした機能性化学品のユーザー評価が進んでいます。
シリコン化合物では高機能新規シラン化合物や樹脂変性用の反応性シリコーンの開発を行っています。シリコン系LED用封止材は採用が進むと共に、新用途材料として評価を行うユーザーも増加しています。
ライフケミカル製品においては、医薬品原料を精製するためのクロマトグラフィー充填剤(商品名:セルファイン)について、インドでの展開を強化するため現地にラボを設置しました。体外用診断薬では、新たに人用の体外診断用医薬品(白癬菌抗原キット)の承認を受け、海外での販売を強化しています。微生物検査用のシート培地は、新シリーズの開発を進めています。
(4) 新規分野
精密加工品開発室では、各種機能性フィルム、リチウムイオン電池用セパレータの製造販売を継続しています。特にペイント・プロテクションフィルムは、防汚性、自己修復性の特徴に加えて、高光沢、施工の容易さなどの優位性が好評を得ており米国、中国、アジアで販売を伸ばしています。更に販売を支えるツールとしてWEB上に専用のサイトを開設しました。その他、スマホ向け防眩、防指紋の光学フィルム、自動車内装部品向けの加飾成型用フィルム、賃貸住宅向け床材用保護フィルムなどの用途開発を継続しています。リチウムイオン電池用セパレータ材料は、PP単層である特徴と細孔の大きさ分布の高度制御による低温特性・レート特性に優れた高性能セパレータとして、各種リチウムイオン電池への採用が加速しています。
(5) コーポレートテーマ
機能材料事業、加工品事業、化学品事業、エネルギー・環境事業をターゲットとした新技術、新商品の開発を推進しています。精密フィルター材料の開発では、特異な表面微細構造を有する高通水膜の連続製造技術を確立し、フィルターメーカーへのサンプル提供を行いました。今後、特性を活かしたフィルターの用途開拓を進めています。二次電池負極材は、シリコン系材料において、ユーザーとともに市場要求特性に応じるため材料の改善を進め、顧客評価を行っています。低環境負荷で高栄養作物の栽培を実現する新農業システムの開発は、技術の価値化を進めています。
(6) 研究開発支援部門
事業開発推進室、知的財産室及び市原研究所、水俣研究所の分析・基盤グループと共に以下の研究開発支援を推進しています。
a)事業開発支援
b)知的財産支援
c)全社研究開発支援としての分析・基盤研究
事業開発推進室では、開発テーマの早期事業化と既存テーマの利益最大化を目指し、市場調査に立脚した方針立案等でコーポレートテーマおよび事業部門を支援しています。知的財産支援では、2018年度上期に100件の国内新規特許を出願しました。研究開発支援では、当社グループのコア事業である、ディスプレイ材料に対して高度な分析・解析技術を使って研究開発推進に貢献しています。