有価証券報告書-第201期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
当社は、人々の健康で豊かな生活のために、研究開発を基盤とした新たな価値の創造により、広く社会に貢献することを企業理念とし、以下の経営理念を掲げております。
■ 顧客視点の経営と革新的な研究を旨とし、これからの医療と健やかな生活に貢献する
■ たゆまぬ事業の発展を通して企業価値を持続的に拡大し、株主の信頼に応える
■ 社員が自らの可能性と創造性を伸ばし、その能力を発揮することができる機会を提供していく
■ 企業市民として社会からの信用・信頼を堅持し、よりよい地球環境の実現に貢献する
当社は、この企業理念の実践を「CSR経営」と定義し、事業活動を通してSDGs(持続可能な開発目標)の達成にも貢献していきます。
高齢化社会の進展や医療財政のさらなるひっ迫が想定されるなか、製薬業界は、デジタル技術を活用した創薬や治療方法の創出、予防医療の普及など「変革の時」を迎えています。かかる環境において、当社は、企業理念のもと、ヘルスケア領域での課題解決に貢献するため、新たなビジョン「もっと、ずっと、健やかに。最先端の技術と英知で、未来を切り拓く企業」と、2018年度を起点とした2022年度までの5か年の「中期経営計画2022」を2019年4月に発表しました。
「中期経営計画2022」の基本方針は、次のとおりです。
中期経営計画2022
<基本方針>ポスト・ラツーダ、すなわち、2023年2月20日以降に米国において非定型抗精神病薬「ラツーダ」の後発医薬品の市場参入が可能となる将来の事業環境を見据えつつ、「変革の時」に対応するため、「成長エンジンの確立」と「柔軟で効率的な組織基盤づくり」により、事業基盤の再構築に取り組む。
この方針に則り、当社は、2019年12月からロイバント・サイエンシズ・リミテッド(以下「ロイバント社」)との戦略的提携を開始するとともに、新設子会社であるスミトバント・バイオファーマ・リミテッド(以下「スミトバント社」)の傘下に5社の子会社を迎えました。この戦略的提携では、米国における「ラツーダ」の独占販売期間終了後の持続的成長に向けて、大型化を期待するレルゴリクス(ゴナドトロピン放出ホルモン受容体アンタゴニスト)およびビベグロン(β3アドレナリン受容体アゴニスト)を含む多数のパイプラインならびに当社のデジタル革新を加速するヘルスケアテクノロジープラットフォームであるDrugOMEおよびDigital Innovationとそれらに関わる人材を獲得しました。他方で、ポスト・ラツーダの成長ドライバーとして期待していたナパブカシンの開発を2021年3月に中止しました。
ナパブカシンの開発中止による影響は、売上収益の減少はスミトバント社新製品の売上増加により補えるものの、スミトバント社新製品の販売関連費用および特許権償却費の計上の影響もあり、コア営業利益は減少すると見込んでいます。これを踏まえて、「中期経営計画2022」で掲げた2022年度の経営目標について、次のとおり修正しました。
2022年度の経営目標
※1 ROIC=(コア営業利益-法人所得税)/(資本合計+有利子負債)
※2 ROE=親会社の所有者に帰属する当期利益/親会社の所有者に帰属する持分
当社グループは、レルゴリクスおよびビベグロンの製品価値最大化を追求すると同時に、中長期的な事業拡大に向け、精神神経領域、がん領域および再生・細胞医薬分野において大型化が期待できる製品の開発に最大限注力してまいります。また、フロンティア事業の展開も推進してまいります。事業運営においては、各事業ユニットおよび地域での基盤強化などの経営体質の強化を進めるとともに、変革を加速する企業文化の醸成と人材の育成にも継続して取り組みます。
また、DrugOMEの解析担当者およびDigital Innovationの活用を推進する専任技術者を日米で合わせて約35名擁し、生産性の向上と業務課題の解決を進めていますが、今後もデジタル技術を積極的に活用し、データ駆動型企業への変革を加速してまいります。
当社グループは、これらの取組を通じて持続的に成長することにより、2020年代の後半にROE10%以上となることを目指してまいります。
2021年度活動方針
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行により、当社グループが事業を展開する各国・地域において、情報提供活動の制限や臨床試験の遅延が生じるなど、事業活動への様々な影響が続いています。当社グループは、引き続き、患者さんに確実に医薬品をお届けするため、原材料の確保から製品の製造および販売に至る各段階の活動が停滞しないよう細心の注意を払い、医薬品の安定供給に努めるとともに、医療関係者、取引先、従業員等の安全を最優先に事業活動を進めてまいります。また、オンラインコミュニケーションツールの活用など、テレワークにより対面での意思疎通ができないことを補う取組を推進してまいります。
当社グループの2021年度の事業活動方針は、次のとおりです。
①CSR経営
当社グループは、CSR経営を実践していくための重要課題をマテリアリティとして特定しています。マテリアリティでは、革新的な医薬品と医療ソリューションの創出、サイエンス発展への貢献などの持続的成長のために重要な独自性の高い「価値創造につながるマテリアリティ」と、コーポレートガバナンス、コンプライアンスなどの事業活動継続のために不可欠である「事業継続の基盤となるマテリアリティ」に分類して取り組んでいます。今後も様々なステークホルダーからのご意見を踏まえ、定量目標の設定も含め、当社の企業理念に整合する適切な目標となるよう継続的な見直しを行い、また、これを実践することを通じて、企業価値の向上に取り組んでまいります。

②研究開発活動
当社グループは、「グローバル・スペシャライズド・プレーヤー」を2033年の目指す姿として掲げています。精神神経領域、がん領域および再生・細胞医薬分野の重点3領域でグローバルリーダーになることを目指し、積極的に研究開発に取り組むとともに、価値にフォーカスしたベストインクラスの医薬品の開発や、感染症領域の研究開発にも取り組んでまいります。また、医薬品以外のヘルスケア領域でのソリューションを提供することを目的として、フロンティア事業にも取り組んでまいります。また、AIを用いた創薬やDrugOMEなどの積極的なデジタル技術の活用および日米各グループ会社の連携強化を通じたシナジー効果の発揮により、研究開発の生産性向上にも取り組んでまいります。

(ア)精神神経領域
先端技術を取り入れながら築いた自社独自の創薬技術プラットフォームを基盤に、競争力のある創薬研究を推進しています。精神疾患領域(統合失調症、うつ、神経疾患周辺症状など)においては、神経回路病態に基づく創薬によりアンメット・メディカル・ニーズを満たす治療の最適化を目指し、神経疾患領域(認知症、パーキンソン病、希少疾患など)においては、分子病態メカニズムに基づく創薬により神経変性疾患の根治療法を目指しています。また、自社製品の臨床試験の情報から得られた知見をトランスレーショナル研究に活用し、ゲノム情報やイメージング画像などのビッグデータから適切な創薬ターゲットやバイオマーカーを選定することで、研究開発の確度の向上を図ってまいります。
開発段階では、日米が一体となったグローバル臨床開発体制のもと、戦略的な開発計画を策定し、効率的に臨床開発を推進して、早期に承認取得することを目指しています。
SEP-363856について、米国での統合失調症を対象としたフェーズ3試験ならびに日本および中国での統合失調症を対象としたフェーズ2/3試験を推進し、加えて、他の疾患を対象とした臨床試験の開始に向けて検討を進めてまいります。また、SEP-4199について、国際共同フェーズ2試験の結果を踏まえて、双極Ⅰ型障害うつを対象としたフェーズ3試験を開始します。さらには、エクセンティア・リミテッドとの共同研究を通じて、AIを活用して創製した、強迫性障害を対象としたフェーズ1試験を実施中のDSP-1181や、治療抵抗性うつを対象としたフェース1試験を実施中のSEP-378614などの初期開発品についても、積極的に取り組んでまいります。
(イ)がん領域
当社グループは、これまでの研究開発活動を通じて、様々な知見を得るとともに、創薬力を強化し、特長を有する複数の開発パイプラインを創出してまいりました。これらを生かし、引き続きアンメット・メディカル・ニーズの高いがん領域の研究開発に注力してまいります。
創薬においては、自社が有する新規技術を用いたモダリティ展開やアカデミアとの共同研究などの取組を通じて競争力を高め、革新的な新薬の創出を目指してまいります。
開発段階では、当社の特長を有する開発パイプラインについて、短期、小規模の試験により最適な対象がん種および製品価値を見極め、成功確度の向上と早期の承認取得を目指してまいります。
膠芽腫を対象とした併用での国際共同フェーズ3試験を実施中のがんペプチドワクチンであるアデグラモチド酢酸塩/ネラチモチドトリフルオロ酢酸塩(開発コード:DSP-7888)のほか、急性骨髄性白血病を対象として外部研究機関主導治験によるフェーズ1/2試験を実施中のdubermatinib(開発コード:TP-0903)に加えて、初期開発品の臨床開発を進めてまいります。
(ウ)再生・細胞医薬分野
オープンイノベーションを基軸に、高度な工業化・生産技術と最先端のサイエンスを追求する当社独自の成長モデルにより早期事業化を目指し、複数の研究開発プロジェクトを推進してまいります。神経領域および眼疾患領域に関するプロジェクトを着実に推進するとともに、立体臓器の再生を含む次世代の再生医療の取組も視野に入れ、グローバル(日本、米国およびアジア)での展開を目指し、まずは日本および米国を中心に次期中期経営計画(以下「次期中計」)の期間(2023年度から2027年度まで)での収益貢献を目指してまいります。
小児先天性無胸腺症を対象として2021年4月に再申請を行ったRVT-802について、2021年度中の承認取得に向けて取り組んでまいります。iPS細胞由来では、パーキンソン病を対象として京都大学にて医師主導治験実施中の先駆け審査指定制度の指定品目である「非自己iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞」について、2021年度中に7例すべての治験予定の患者さんへの細胞移植が完了する予定であり、当社グループは、京都大学と連携して実用化に向けて取り組むとともに、米国での2022年度の企業治験開始を目指した準備を進めてまいります。また、加齢黄斑変性について、2021年度中の企業治験開始を目指し、網膜色素変性、脊髄損傷および腎不全の研究開発プロジェクトについても提携先とともに積極的に推進してまいります。さらには、次世代技術を取り入れたパイプラインの拡充にも取り組んでまいります。
(エ)感染症領域
薬剤耐性菌感染症治療薬、マラリアワクチンおよびユニバーサルインフルエンザワクチンの共同研究を推進するなど、グローバルヘルスに貢献するため、引き続き研究開発に積極的に取り組み、次期中計の期間中の実用化を目指してまいります。
(オ)その他の領域
米国における「ラツーダ」の独占販売期間終了後の成長に向けて、価値にフォーカスしたベストインクラスの医薬品の開発などを推進してまいります。米国において、子宮筋腫を対象とした承認申請を行ったレルゴリクス配合剤について、着実な承認取得に向けて取り組む(2021年5月承認取得済)とともに、子宮内膜症を対象とした承認申請に向けて準備を進めてまいります。また、rodatristat ethylについて、肺動脈性肺高血圧症(PAH)を対象としたフェーズ2試験を進めてまいります。
日本においては、イメグリミン塩酸塩の2型糖尿病を対象とした承認取得に向けて取り組んでまいります。(2021年6月承認取得済)
(カ)フロンティア事業
株式会社Save Medicalとの2型糖尿病管理指導用モバイルアプリケーション(開発コード:SMC-01)の共同開発を推進するなど、自社医薬事業とシナジーが見込める領域として、メンタルレジリエンス(精神神経疾患の兆候を早期に把握することによる悪化の未然防止)およびアクティブエイジング(高齢者の健康の意識レベルからの改善および維持・向上)にフォーカスし、核となる技術(情報系、工学系等)やネットワーク(アライアンス、ベンチャー投資等)などの事業基盤の構築を進めることにより、次期中計の期間に成長エンジンとして確立することを目指し、日本、米国および中国を中心に様々な展開の可能性を追求してまいります。
③各地域セグメントにおける事業活動
日本においては、薬価中間年改定の開始などの薬剤費抑制策により厳しさを増す市場環境に対応すべく、より一層の効率的な事業運営を推進してまいります。精神神経領域では、2020年6月に統合失調症および双極性障害におけるうつ症状の改善を適応症として上市した「ラツーダ」の市場浸透に努めてまいります。糖尿病領域では、2型糖尿病治療剤「トルリシティ」、「エクア」および「エクメット」の販売拡大に努めるとともに、2021年度に上市を計画しているイメグリミン塩酸塩の販売準備活動を進めてまいります。
北米セグメントでは、ポスト・ラツーダを見据えた成長路線の確立を目指し、サノビオン・ファーマシューティカルズ・インク(以下「サノビオン社」)およびスミトバントグループにおいて事業活動を進めてまいります。サノビオン社では、当社グループの収益の柱である「ラツーダ」のさらなる収益拡大、また、2020年9月に上市したパーキンソン病に伴うオフ症状治療剤「キンモビ」に注力してまいります。スミトバントグループでは、マイオバント・サイエンシズ・リミテッド(以下「マイオバント社」)が2021年1月に上市した進行性前立腺がん治療剤「オルゴビクス」(一般名:レルゴリクス)および2021年度に上市を計画している子宮筋腫を対象としたレルゴリクス配合剤「マイフェンブリー」について、ファイザー・インク(以下「ファイザー社」)とのコ・プロモーションにより速やかな市場浸透および販売拡大に注力してまいります。ユーロバント・サイエンシズ・リミテッド(以下「ユーロバント社」)では、2021年4月に上市した過活動膀胱治療剤「ジェムテサ」(一般名:ビべグロン)の市場浸透に努めてまいります。マイオバント社およびユーロバント社の販売に際しては、サノビオン社が有するコマーシャル機能を有効活用するなど、効率的な販売に努めてまいります。 当社グループは、中国を第3の柱として基盤強化に取り組むとともに、アジアを成長市場として捉えて足場固めを推進してまいります。中国セグメントでは、薬剤費抑制策が進んではいるものの、さらなる成長に向けて、カルバペネム系抗生物質製剤「メロペン」、非定型抗精神病薬「ロナセン」および「ラツーダ」の販売拡大に努めてまいります。東南アジアでは、自社パイプラインに適した国での事業拡大を進めるとともに、提携企業との連携による「メロペン」および「ラツーダ」の販売拡大に努めてまいります。
④柔軟で効率的な組織基盤の構築
当社グループは、「変革の時」に対応し、「ちゃんとやりきる力」を強化するため、「粘り強く精緻に物事を進める文化」を維持しつつ、環境変化を好機と捉えて潮流を読み、自ら変革して柔軟に動く文化の醸成および人材の育成を推進してまいります。
また、事業環境の変化に対応していくため、基盤強化を進めるとともに、Digital Innovationの利用拡大などデジタル革新を推進してまいります。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響によりテレワークを余儀なくされるなかでの業務効率の向上など、これを機に働き方改革の加速に取り組んでまいります。
株主還元
当社は、株主への還元について、安定的な配当に加えて、業績向上に連動した増配を行うことを基本方針としており、「中期経営計画2022」で掲げているとおり、2018年度から2022年度までの5年間における平均の配当性向20%以上を目指してまいります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
■ 顧客視点の経営と革新的な研究を旨とし、これからの医療と健やかな生活に貢献する
■ たゆまぬ事業の発展を通して企業価値を持続的に拡大し、株主の信頼に応える
■ 社員が自らの可能性と創造性を伸ばし、その能力を発揮することができる機会を提供していく
■ 企業市民として社会からの信用・信頼を堅持し、よりよい地球環境の実現に貢献する
当社は、この企業理念の実践を「CSR経営」と定義し、事業活動を通してSDGs(持続可能な開発目標)の達成にも貢献していきます。
高齢化社会の進展や医療財政のさらなるひっ迫が想定されるなか、製薬業界は、デジタル技術を活用した創薬や治療方法の創出、予防医療の普及など「変革の時」を迎えています。かかる環境において、当社は、企業理念のもと、ヘルスケア領域での課題解決に貢献するため、新たなビジョン「もっと、ずっと、健やかに。最先端の技術と英知で、未来を切り拓く企業」と、2018年度を起点とした2022年度までの5か年の「中期経営計画2022」を2019年4月に発表しました。
「中期経営計画2022」の基本方針は、次のとおりです。
中期経営計画2022
<基本方針>ポスト・ラツーダ、すなわち、2023年2月20日以降に米国において非定型抗精神病薬「ラツーダ」の後発医薬品の市場参入が可能となる将来の事業環境を見据えつつ、「変革の時」に対応するため、「成長エンジンの確立」と「柔軟で効率的な組織基盤づくり」により、事業基盤の再構築に取り組む。
この方針に則り、当社は、2019年12月からロイバント・サイエンシズ・リミテッド(以下「ロイバント社」)との戦略的提携を開始するとともに、新設子会社であるスミトバント・バイオファーマ・リミテッド(以下「スミトバント社」)の傘下に5社の子会社を迎えました。この戦略的提携では、米国における「ラツーダ」の独占販売期間終了後の持続的成長に向けて、大型化を期待するレルゴリクス(ゴナドトロピン放出ホルモン受容体アンタゴニスト)およびビベグロン(β3アドレナリン受容体アゴニスト)を含む多数のパイプラインならびに当社のデジタル革新を加速するヘルスケアテクノロジープラットフォームであるDrugOMEおよびDigital Innovationとそれらに関わる人材を獲得しました。他方で、ポスト・ラツーダの成長ドライバーとして期待していたナパブカシンの開発を2021年3月に中止しました。
ナパブカシンの開発中止による影響は、売上収益の減少はスミトバント社新製品の売上増加により補えるものの、スミトバント社新製品の販売関連費用および特許権償却費の計上の影響もあり、コア営業利益は減少すると見込んでいます。これを踏まえて、「中期経営計画2022」で掲げた2022年度の経営目標について、次のとおり修正しました。
2022年度の経営目標
| 従来目標 | 修正目標 | |
| 売上収益 | 6,000億円 | 6,000億円 |
| コア営業利益 | 1,200億円 | 600億円 |
| ROIC ※1 | 10% | 3% |
| ROE ※2 | 12% | 3% |
※1 ROIC=(コア営業利益-法人所得税)/(資本合計+有利子負債)
※2 ROE=親会社の所有者に帰属する当期利益/親会社の所有者に帰属する持分
当社グループは、レルゴリクスおよびビベグロンの製品価値最大化を追求すると同時に、中長期的な事業拡大に向け、精神神経領域、がん領域および再生・細胞医薬分野において大型化が期待できる製品の開発に最大限注力してまいります。また、フロンティア事業の展開も推進してまいります。事業運営においては、各事業ユニットおよび地域での基盤強化などの経営体質の強化を進めるとともに、変革を加速する企業文化の醸成と人材の育成にも継続して取り組みます。
また、DrugOMEの解析担当者およびDigital Innovationの活用を推進する専任技術者を日米で合わせて約35名擁し、生産性の向上と業務課題の解決を進めていますが、今後もデジタル技術を積極的に活用し、データ駆動型企業への変革を加速してまいります。
当社グループは、これらの取組を通じて持続的に成長することにより、2020年代の後半にROE10%以上となることを目指してまいります。
2021年度活動方針
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行により、当社グループが事業を展開する各国・地域において、情報提供活動の制限や臨床試験の遅延が生じるなど、事業活動への様々な影響が続いています。当社グループは、引き続き、患者さんに確実に医薬品をお届けするため、原材料の確保から製品の製造および販売に至る各段階の活動が停滞しないよう細心の注意を払い、医薬品の安定供給に努めるとともに、医療関係者、取引先、従業員等の安全を最優先に事業活動を進めてまいります。また、オンラインコミュニケーションツールの活用など、テレワークにより対面での意思疎通ができないことを補う取組を推進してまいります。
当社グループの2021年度の事業活動方針は、次のとおりです。
①CSR経営
当社グループは、CSR経営を実践していくための重要課題をマテリアリティとして特定しています。マテリアリティでは、革新的な医薬品と医療ソリューションの創出、サイエンス発展への貢献などの持続的成長のために重要な独自性の高い「価値創造につながるマテリアリティ」と、コーポレートガバナンス、コンプライアンスなどの事業活動継続のために不可欠である「事業継続の基盤となるマテリアリティ」に分類して取り組んでいます。今後も様々なステークホルダーからのご意見を踏まえ、定量目標の設定も含め、当社の企業理念に整合する適切な目標となるよう継続的な見直しを行い、また、これを実践することを通じて、企業価値の向上に取り組んでまいります。

②研究開発活動
当社グループは、「グローバル・スペシャライズド・プレーヤー」を2033年の目指す姿として掲げています。精神神経領域、がん領域および再生・細胞医薬分野の重点3領域でグローバルリーダーになることを目指し、積極的に研究開発に取り組むとともに、価値にフォーカスしたベストインクラスの医薬品の開発や、感染症領域の研究開発にも取り組んでまいります。また、医薬品以外のヘルスケア領域でのソリューションを提供することを目的として、フロンティア事業にも取り組んでまいります。また、AIを用いた創薬やDrugOMEなどの積極的なデジタル技術の活用および日米各グループ会社の連携強化を通じたシナジー効果の発揮により、研究開発の生産性向上にも取り組んでまいります。

(ア)精神神経領域
先端技術を取り入れながら築いた自社独自の創薬技術プラットフォームを基盤に、競争力のある創薬研究を推進しています。精神疾患領域(統合失調症、うつ、神経疾患周辺症状など)においては、神経回路病態に基づく創薬によりアンメット・メディカル・ニーズを満たす治療の最適化を目指し、神経疾患領域(認知症、パーキンソン病、希少疾患など)においては、分子病態メカニズムに基づく創薬により神経変性疾患の根治療法を目指しています。また、自社製品の臨床試験の情報から得られた知見をトランスレーショナル研究に活用し、ゲノム情報やイメージング画像などのビッグデータから適切な創薬ターゲットやバイオマーカーを選定することで、研究開発の確度の向上を図ってまいります。
開発段階では、日米が一体となったグローバル臨床開発体制のもと、戦略的な開発計画を策定し、効率的に臨床開発を推進して、早期に承認取得することを目指しています。
SEP-363856について、米国での統合失調症を対象としたフェーズ3試験ならびに日本および中国での統合失調症を対象としたフェーズ2/3試験を推進し、加えて、他の疾患を対象とした臨床試験の開始に向けて検討を進めてまいります。また、SEP-4199について、国際共同フェーズ2試験の結果を踏まえて、双極Ⅰ型障害うつを対象としたフェーズ3試験を開始します。さらには、エクセンティア・リミテッドとの共同研究を通じて、AIを活用して創製した、強迫性障害を対象としたフェーズ1試験を実施中のDSP-1181や、治療抵抗性うつを対象としたフェース1試験を実施中のSEP-378614などの初期開発品についても、積極的に取り組んでまいります。
(イ)がん領域
当社グループは、これまでの研究開発活動を通じて、様々な知見を得るとともに、創薬力を強化し、特長を有する複数の開発パイプラインを創出してまいりました。これらを生かし、引き続きアンメット・メディカル・ニーズの高いがん領域の研究開発に注力してまいります。
創薬においては、自社が有する新規技術を用いたモダリティ展開やアカデミアとの共同研究などの取組を通じて競争力を高め、革新的な新薬の創出を目指してまいります。
開発段階では、当社の特長を有する開発パイプラインについて、短期、小規模の試験により最適な対象がん種および製品価値を見極め、成功確度の向上と早期の承認取得を目指してまいります。
膠芽腫を対象とした併用での国際共同フェーズ3試験を実施中のがんペプチドワクチンであるアデグラモチド酢酸塩/ネラチモチドトリフルオロ酢酸塩(開発コード:DSP-7888)のほか、急性骨髄性白血病を対象として外部研究機関主導治験によるフェーズ1/2試験を実施中のdubermatinib(開発コード:TP-0903)に加えて、初期開発品の臨床開発を進めてまいります。
(ウ)再生・細胞医薬分野
オープンイノベーションを基軸に、高度な工業化・生産技術と最先端のサイエンスを追求する当社独自の成長モデルにより早期事業化を目指し、複数の研究開発プロジェクトを推進してまいります。神経領域および眼疾患領域に関するプロジェクトを着実に推進するとともに、立体臓器の再生を含む次世代の再生医療の取組も視野に入れ、グローバル(日本、米国およびアジア)での展開を目指し、まずは日本および米国を中心に次期中期経営計画(以下「次期中計」)の期間(2023年度から2027年度まで)での収益貢献を目指してまいります。
小児先天性無胸腺症を対象として2021年4月に再申請を行ったRVT-802について、2021年度中の承認取得に向けて取り組んでまいります。iPS細胞由来では、パーキンソン病を対象として京都大学にて医師主導治験実施中の先駆け審査指定制度の指定品目である「非自己iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞」について、2021年度中に7例すべての治験予定の患者さんへの細胞移植が完了する予定であり、当社グループは、京都大学と連携して実用化に向けて取り組むとともに、米国での2022年度の企業治験開始を目指した準備を進めてまいります。また、加齢黄斑変性について、2021年度中の企業治験開始を目指し、網膜色素変性、脊髄損傷および腎不全の研究開発プロジェクトについても提携先とともに積極的に推進してまいります。さらには、次世代技術を取り入れたパイプラインの拡充にも取り組んでまいります。
(エ)感染症領域
薬剤耐性菌感染症治療薬、マラリアワクチンおよびユニバーサルインフルエンザワクチンの共同研究を推進するなど、グローバルヘルスに貢献するため、引き続き研究開発に積極的に取り組み、次期中計の期間中の実用化を目指してまいります。
(オ)その他の領域
米国における「ラツーダ」の独占販売期間終了後の成長に向けて、価値にフォーカスしたベストインクラスの医薬品の開発などを推進してまいります。米国において、子宮筋腫を対象とした承認申請を行ったレルゴリクス配合剤について、着実な承認取得に向けて取り組む(2021年5月承認取得済)とともに、子宮内膜症を対象とした承認申請に向けて準備を進めてまいります。また、rodatristat ethylについて、肺動脈性肺高血圧症(PAH)を対象としたフェーズ2試験を進めてまいります。
日本においては、イメグリミン塩酸塩の2型糖尿病を対象とした承認取得に向けて取り組んでまいります。(2021年6月承認取得済)
(カ)フロンティア事業
株式会社Save Medicalとの2型糖尿病管理指導用モバイルアプリケーション(開発コード:SMC-01)の共同開発を推進するなど、自社医薬事業とシナジーが見込める領域として、メンタルレジリエンス(精神神経疾患の兆候を早期に把握することによる悪化の未然防止)およびアクティブエイジング(高齢者の健康の意識レベルからの改善および維持・向上)にフォーカスし、核となる技術(情報系、工学系等)やネットワーク(アライアンス、ベンチャー投資等)などの事業基盤の構築を進めることにより、次期中計の期間に成長エンジンとして確立することを目指し、日本、米国および中国を中心に様々な展開の可能性を追求してまいります。
③各地域セグメントにおける事業活動
日本においては、薬価中間年改定の開始などの薬剤費抑制策により厳しさを増す市場環境に対応すべく、より一層の効率的な事業運営を推進してまいります。精神神経領域では、2020年6月に統合失調症および双極性障害におけるうつ症状の改善を適応症として上市した「ラツーダ」の市場浸透に努めてまいります。糖尿病領域では、2型糖尿病治療剤「トルリシティ」、「エクア」および「エクメット」の販売拡大に努めるとともに、2021年度に上市を計画しているイメグリミン塩酸塩の販売準備活動を進めてまいります。
北米セグメントでは、ポスト・ラツーダを見据えた成長路線の確立を目指し、サノビオン・ファーマシューティカルズ・インク(以下「サノビオン社」)およびスミトバントグループにおいて事業活動を進めてまいります。サノビオン社では、当社グループの収益の柱である「ラツーダ」のさらなる収益拡大、また、2020年9月に上市したパーキンソン病に伴うオフ症状治療剤「キンモビ」に注力してまいります。スミトバントグループでは、マイオバント・サイエンシズ・リミテッド(以下「マイオバント社」)が2021年1月に上市した進行性前立腺がん治療剤「オルゴビクス」(一般名:レルゴリクス)および2021年度に上市を計画している子宮筋腫を対象としたレルゴリクス配合剤「マイフェンブリー」について、ファイザー・インク(以下「ファイザー社」)とのコ・プロモーションにより速やかな市場浸透および販売拡大に注力してまいります。ユーロバント・サイエンシズ・リミテッド(以下「ユーロバント社」)では、2021年4月に上市した過活動膀胱治療剤「ジェムテサ」(一般名:ビべグロン)の市場浸透に努めてまいります。マイオバント社およびユーロバント社の販売に際しては、サノビオン社が有するコマーシャル機能を有効活用するなど、効率的な販売に努めてまいります。 当社グループは、中国を第3の柱として基盤強化に取り組むとともに、アジアを成長市場として捉えて足場固めを推進してまいります。中国セグメントでは、薬剤費抑制策が進んではいるものの、さらなる成長に向けて、カルバペネム系抗生物質製剤「メロペン」、非定型抗精神病薬「ロナセン」および「ラツーダ」の販売拡大に努めてまいります。東南アジアでは、自社パイプラインに適した国での事業拡大を進めるとともに、提携企業との連携による「メロペン」および「ラツーダ」の販売拡大に努めてまいります。
④柔軟で効率的な組織基盤の構築
当社グループは、「変革の時」に対応し、「ちゃんとやりきる力」を強化するため、「粘り強く精緻に物事を進める文化」を維持しつつ、環境変化を好機と捉えて潮流を読み、自ら変革して柔軟に動く文化の醸成および人材の育成を推進してまいります。
また、事業環境の変化に対応していくため、基盤強化を進めるとともに、Digital Innovationの利用拡大などデジタル革新を推進してまいります。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響によりテレワークを余儀なくされるなかでの業務効率の向上など、これを機に働き方改革の加速に取り組んでまいります。
株主還元
当社は、株主への還元について、安定的な配当に加えて、業績向上に連動した増配を行うことを基本方針としており、「中期経営計画2022」で掲げているとおり、2018年度から2022年度までの5年間における平均の配当性向20%以上を目指してまいります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。