有価証券報告書-第74期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

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2022/06/24 9:00
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135項目

研究開発活動

当社グループは、「病気と苦痛に対する人間の闘いのために」という企業理念のもと、これまで克服されていない病気や、いまだ患者さんの治療満足度が低く、医療ニーズの高い疾患領域に挑戦し、独創的かつ画期的な医薬品の創製に向けて努力を積み重ねています。
現在、開発パイプラインには、オプジーボに加えて、抗体医薬品を含む抗がん剤の新薬候補化合物をはじめ、自己免疫疾患や神経系疾患の治療薬候補などがあり、開発を進めています。なかでも、がん治療の領域は医療ニーズが高いことから、重要な戦略分野と位置づけています。
創薬研究においては、医療ニーズの高いがんや免疫、神経、スペシャリティ領域を重点領域に定め、それぞれの領域でヒト疾患バイオロジーを掘り下げ、医療ニーズを満たし得る新薬の創製を目指して、創薬力の強化に努めています。そのために、当社が得意とするオープンイノベーションを積極的に推進することで、独創的な創薬シーズを見出し、インフォマティクスやヒト疾患モデル作製、新薬候補化合物作製など、様々な社内外の最新技術を利用して、医療インパクトのある画期的新薬の創製を目指します。
重点領域において8つの新薬候補化合物が臨床ステージに移行しており、今後さらに創薬のスピードと成功確率を向上させるために、基礎と臨床の橋渡しを担うトランスレーショナル研究も強化しています。研究早期段階からヒトゲノム情報やヒトiPS細胞などの研究ツールとインフォマティクスを有機的に活用することで、標的分子の疾患との関連性を解析し、新薬候補化合物のヒトにおける有効性をより正確に予測・評価できる生理学的指標(バイオマーカー)を見出せるよう努めています。
開発のスピードと成功確率を向上させるために、蓄積した臨床試験データを用いて、有効性、安全性の予測精度を向上させる取り組みを行っています。また、新薬候補化合物の価値を最大化するために、研究段階から研究本部と連携して早期に開発戦略の立案に着手し、複数の疾患を対象に早期臨床試験を実施することを目指しています。欧米の臨床開発の機能の充実を図ることで、今後は、日本、米国、欧州で柔軟に早期臨床試験を実施できる体制を構築していきます。
また、ライセンス活動による有望な新薬候補化合物の導入にも努め、研究開発活動の一層の強化に取り組んでいます。
当連結会計年度における研究開発活動の主な成果(2022年4月26日時点まで)は、以下のとおりです。
[開発品の主な進捗状況]
<がん領域>「オプジーボ/ニボルマブ」
胃がん
・昨年6月、フルオロピリミジン系薬剤およびプラチナ系薬剤を含む化学療法との併用療法について、韓国で「進行又は転移性胃がん、胃食道接合部がん及び食道腺がん」を効能・効果とした承認を取得しました。
・昨年10月、フルオロピリミジン系薬剤およびプラチナ系薬剤を含む化学療法との併用療法について、台湾で「HER2過剰発現を伴わない進行又は転移性胃がん、胃食道接合部がん及び食道腺がん」を効能・効果とした承認を取得しました。
・昨年11月、化学療法との併用療法について、国内で「治癒切除不能な進行・再発の胃がん」を効能・効果とした承認を取得しました。
食道がん
・昨年9月、「ヤーボイ」との併用療法および化学療法との併用療法について、国内で「根治切除不能な進行・再発の食道がん」を効能・効果とした承認申請を行いました。
・昨年11月、国内で「食道がん又は食道胃接合部がんの術後補助療法」を効能・効果とした承認を取得しました。
・昨年12月、台湾で「術前補助化学放射線療法を受け病理学的残存病変を認めた完全切除後の食道がん又は胃食道接合部がん患者の術後補助療法」を効能・効果とした承認を取得しました。
・本年2月、韓国で「術前補助化学放射線療法及び完全切除後に病理学的残存病変を認めた食道がん又は胃食道接合部がん患者の術後補助療法」を効能・効果とした承認を取得しました。
悪性胸膜中皮腫
・昨年5月、「ヤーボイ」との併用療法について、国内で「切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫」を効能・効果とした承認を取得しました。
・昨年6月、「ヤーボイ」との併用療法について、韓国で「切除不能な悪性胸膜中皮腫」を効能・効果とした承認を取得しました。
・昨年9月、「ヤーボイ」との併用療法について、台湾で「切除不能な悪性胸膜中皮腫」を効能・効果とした承認を取得しました。
腎細胞がん
・昨年8月、武田薬品工業株式会社が開発中のキナーゼ阻害剤「カボメティクス錠/カボザンチニブリンゴ酸塩」との併用療法について、国内で「根治切除不能又は転移性の腎細胞がん」を効能・効果とした承認を取得しました。
・本年2月、「カボメティクス錠/カボザンチニブリンゴ酸塩」との併用療法について、韓国で「進行腎細胞がん患者のファーストライン治療」を効能・効果とした承認を取得しました。
尿路上皮がん/膀胱がん
・本年2月、韓国で「根治切除後の再発リスクが高い筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)患者の術後補助療法」を効能・効果とした承認を取得しました。
・本年3月、国内で「尿路上皮がん患者の術後補助療法」を効能・効果とした承認を取得しました。
・本年4月、台湾で「根治切除後の再発リスクが高い筋層浸潤性尿路上皮がん患者の術後補助療法」を効能・効果とした承認を取得しました。
結腸・直腸がん
・本年2月、「ヤーボイ」との併用療法について、韓国で「フルオロピリミジン、オキサリプラチン及びイリノテカンによる治療後に病勢進行した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)又はDNAミスマッチ修復機構欠損(dMMR)を有する大腸がん(CRC)」を効能・効果とした承認を取得しました。
非小細胞肺がん
・昨年6月、抗VEGFヒト化モノクローナル抗体「ベバシズマブ」と化学療法との併用療法について、国内で「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を効能・効果とした添付文書の改訂を行いました。
・本年1月、「ベバシズマブ」と化学療法との併用療法について、台湾で「EGFR又はALK遺伝子変異陰性の進行・再発の非扁平上皮非小細胞肺がんのファーストライン治療」を効能・効果とした承認を取得しました。
・本年2月、「ベバシズマブ」と化学療法との併用療法について、韓国で「EGFR又はALK遺伝子変異陰性の進行・再発の非扁平上皮非小細胞肺がんのファーストライン治療」を効能・効果とした承認を取得しました。
・本年4月、化学療法との併用療法について、国内で「非小細胞肺がんの術前補助療法」を効能・効果とした承認申請を行いました。
原発不明がん
・昨年12月、国内で「原発不明がん」を効能・効果とした承認を取得しました。
ホジキンリンパ腫
・昨年9月、国内で「再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫」に対する小児の用法および用量の追加に係る承認を取得しました。
固形がん
・昨年4月、国内で「固形がん(子宮頸がん、子宮体がん及び軟部肉腫)」を対象とした開発を実施していましたが、戦略上の理由により開発を中止しました。
中枢神経系原発リンパ腫/精巣原発リンパ腫
・昨年4月、国内で「中枢神経系原発リンパ腫/精巣原発リンパ腫」を対象とした開発を実施していましたが、戦略上の理由により開発を中止しました。
頭頸部がん
・昨年7月、「ヤーボイ」との併用療法について、日本、韓国および台湾で「頭頸部がん」を対象とした開発を実施していましたが、主要評価項目を達成できませんでした。
胆道がん
・本年4月、国内で「胆道がん」を対象としたフェーズⅡ試験を実施していましたが、戦略上の理由により申請を断念したため、開発パイプラインから削除しました。
「ベレキシブル錠/チラブルチニブ塩酸塩/ONO-4059」
・昨年11月、BTK阻害剤「ベレキシブル錠」について、韓国で「再発又は難治性の中枢神経系原発リンパ腫」を効能・効果とした承認を取得しました。
・本年2月、BTK阻害剤「ベレキシブル錠」について、台湾で「再発又は難治性の中枢神経系原発リンパ腫」を効能・効果とした承認を取得しました。
・昨年7月、BTK阻害薬「ONO-4059」について、米国で「中枢神経系原発悪性リンパ腫」を対象としたフェーズⅡ試験を開始しました。
「ビラフトビカプセル/エンコラフェニブ」「メクトビ錠/ビニメチニブ」
・昨年8月、BRAF阻害剤「ビラフトビカプセル/エンコラフェニブ」について、抗ヒトEGFRモノクローナル抗体「セツキシマブ」との併用療法で、韓国で「治療歴を有するBRAFV600E変異を有する成人の進行・再発の結腸・直腸がん」の効能・効果とした承認を取得しました。
・昨年8月、BRAF阻害剤「ビラフトビカプセル」およびMEK阻害剤「メクトビ錠」について、韓国で「悪性黒色腫」を対象としたフェーズⅢ試験を実施していましたが、戦略上の理由により開発を中止しました。
・昨年8月、MEK阻害剤「メクトビ錠」について、韓国で「結腸・直腸がん」を対象としたフェーズⅢ試験を実施していましたが、戦略上の理由により開発を中止しました。
「ONO-7475」
・昨年4月、Axl/Mer阻害薬「ONO-7475」について、国内で「EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん」を対象としたフェーズⅠ試験を開始しました。
「ONO-7913/Magrolimab」
・昨年10月、抗CD47抗体「ONO-7913」について、国内で「TP53変異陽性急性骨髄性白血病」を対象としたフェーズⅢ試験を開始しました。
・本年1月、抗CD47抗体「ONO-7913」について、韓国および台湾で「急性骨髄性白血病」を対象としたフェーズⅢ試験を開始しました。
・昨年4月、「オプジーボ」と抗CD47抗体「ONO-7913」との併用療法について、国内で「膵がん」、「結腸・直腸がん」を対象としたフェーズⅠ試験を開始しました。
・昨年4月、抗CD47抗体「ONO-7913」について、国内で「骨髄異形成症候群」を対象としたフェーズⅠ試験を開始しました。
「ONO-7119」
・昨年8月、「オプジーボ」とPARP7阻害薬「ONO-7119」との併用療法について、国内で「固形がん」を対象としたフェーズⅠ試験を開始しました。
「ONO-4578」
・昨年7月、プロスタグランディン受容体(EP4)拮抗薬「ONO-4578」について、国内で「ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がん」を対象としたフェーズⅠ試験を開始しました。
「ONO-4483」
・昨年7月、「オプジーボ」と抗KIR抗体「ONO-4483」との併用療法について、国内で「固形がん」を対象とした開発を実施していましたが、戦略上の理由により国内での開発を中止しました。
「ONO-4685」
・昨年10月、PD-1×CD3二重特異性抗体「ONO-4685」について、米国で「T細胞リンパ腫」を対象としたフェーズⅠ試験を開始しました。
「ONO-7122」
・昨年10月、「オプジーボ」とTGF-β阻害薬「ONO-7122」との併用療法について、国内で「固形がん」を対象としたフェーズⅠ試験を開始しました。
「ONO-7914」
・昨年11月、「オプジーボ」とSTINGアゴニスト「ONO-7914」との併用療法について、国内で「固形がん」を対象としたフェーズⅠ試験を開始しました。
「ONO-7701/Linrodostat」
・本年2月、「オプジーボ」とIDO1阻害薬「ONO-7701」との併用療法について、日本、韓国および台湾で「膀胱がん」を対象としたフェーズⅢ試験を実施していましたが、戦略上の理由により開発を中止しました。
「ONO-7807」
・本年3月、「オプジーボ」と抗TIM-3抗体「ONO-7807」との併用療法について、国内で「固形がん」を対象としたフェーズⅠ/Ⅱ試験を実施していましたが、戦略上の理由により開発を中止しました。
「ONO-7912」
・がん代謝阻害薬「ONO-7912」について、ラファエル社(本年5月にコーナーストーン社に社名変更)が「膵がん」を対象としたフェーズⅢ試験および「急性骨髄性白血病」を対象としたフェーズⅢ試験を実施していましたが、期待していた有効性が確認できませんでした。その結果を踏まえ、本年2月、「膵がん」を対象とした国内のフェーズⅠ試験を中止しました。
「ONO-7911」
・本年4月、「オプジーボ」とPEG化IL-2「ONO-7911」との併用療法について、国内で「固形がん」を対象としたフェーズⅠ試験を実施していましたが、戦略上の理由により開発を中止しました。
<がん領域以外>「フォシーガ錠/ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物」
・昨年8月、選択的SGLT2阻害剤「フォシーガ錠」について、国内で「慢性腎臓病(ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く)」を効能・効果とした承認を取得しました。
「オノアクト点滴静注用/ランジオロール塩酸塩」
・昨年10月、短時間作用型β1選択的遮断剤「オノアクト点滴静注用」について、国内で「小児の心機能低下例における頻脈性不整脈(上室頻脈、心房細動、心房粗動)」を効能・効果とした承認申請を行いました。
「ベレキシブル錠/チラブルチニブ塩酸塩/ONO-4059」
・本年4月、BTK阻害剤「ベレキシブル錠」について、国内で「天疱瘡」を対象としたフェーズⅢ試験を開始しました。
・BTK阻害剤「ONO-4059」について、2014年に米国ギリアド社に導出しましたが、既に返還されているがん領域で開発・商業化する権利に加え、当期中にがん領域以外での同権利が返還されました。
「フオイパン錠/カモスタットメシル酸塩」
・昨年6月、経口蛋白分解酵素阻害剤「フオイパン錠」について、国内で「新型コロナウイルス感染症」を対象としたフェーズⅢ試験を実施していましたが、期待していた有効性が確認できなかったため、開発を中止しました。
「オレンシア皮下注/アバタセプト」
・本年1月、T細胞活性化抑制剤「オレンシア皮下注」について、国内で「多発性筋炎・皮膚筋炎」を対象としたフェーズⅢ試験を実施していましたが、期待していた有効性が確認できなかったため、開発を中止しました。
「ジョイクル関節注/ジクロフェナクエタルヒアルロン酸ナトリウム」
・本年3月、NSAID結合ヒアルロン酸「ジョイクル関節注」について、国内で「腱・靭帯付着部症」を対象としたフェーズⅡ試験を実施していましたが、主要有効性評価を達成できなかったため、開発パイプラインから削除しました。
「ONO-2017」
・昨年12月、電位依存性ナトリウム電流阻害/GABAAイオンチャネル機能増強薬「ONO-2017」について、国内で「てんかん強直間代発作」を対象としたフェーズⅢ試験を開始しました。
・電位依存性ナトリウム電流阻害/GABAAイオンチャネル機能増強薬「ONO-2017」について、国内で「てんかん部分発作」を対象としたフェーズⅢ試験を実施しています。
「ONO-2910」
・昨年4月、シュワン細胞分化促進薬「ONO-2910」について、国内で「糖尿病性多発神経障害」を対象としたフェーズⅡ試験を開始しました。
「ONO-4685」
・昨年9月、PD-1×CD3二重特異性抗体「ONO-4685」について、欧州で「自己免疫疾患」を対象としたフェーズⅠ試験を開始しました。
[創薬/研究提携活動の状況]
・昨年8月、英国Healx社と、同社独自の人工知能技術を活用した、アンメットメディカルニーズを満たす革新的な治療薬の創製を目的とした研究提携契約を締結しました。
・昨年8月、ミラバイオロジクス社と同社独自の環状ペプチド探索法とタンパク質工学を融合させた新技術(LassoGraft Technology®)を活用した次世代バイオ医薬品の創製を目的とした創薬提携契約を締結しました。
・昨年12月、米国Vanderbilt大学との創薬提携を継続する契約を締結しました。同大とは2015年11月に締結した創薬提携契約に基づき、未開拓のイオンチャネルあるいはトランスポーターが創薬標的となり得るかを検証するための化合物を見出し、その検証結果に基づいて、新規の中枢神経系疾患に対する治療薬候補の創製に取り組んでいます。
・本年1月、スイスNeurimmune社と、同社独自の抗体創出アプローチであるReverse Translational MedicineTM技術を活用し、神経変性疾患領域における創薬標的に対する抗体医薬品の創製を目的とした創薬提携契約を締結しました。
・本年3月、仏国Iktos社と、新規の化学構造を設計する同社独自の人工知能(AI)創薬技術を活用して、当社が提示する創薬標的に対する革新的な低分子化合物を創製することを目的とした創薬提携契約を締結しました。
・本年3月、スイスNumab社と、2017年に締結したがん免疫領域における多重特異性抗体の創製に関する契約のオプション権を行使し、新たに開発・ライセンス契約を締結しました。
・本年4月、仏国Domain社、カナダMontréal大学と、独自のGタンパク質共役受容体(以下、GPCR)創薬プラットフォームとGPCR創薬に対する医薬品化学及び薬理学における専門知識を応用して、代謝性疾患領域において当社が選択したGPCRを標的とした新規低分子化合物の創製を目的とする創薬提携契約を締結しました。
当連結会計年度の研究開発費の総額は、75,957百万円であります。
なお、当社グループの事業は医薬品事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載を省略しております。