有価証券報告書-第80期(2025/04/01-2026/03/31)
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)経営の基本方針
当社は、「独創 公正 夢と情熱」を経営綱領のモットーとして掲げ、糖質科学の知見を活かした、独創的な医薬品等を継続して創製し、患者の方々に提供することを通じて、世界の人々の健康で心豊かな生活に貢献することを基本方針としています。これにより、医療を含む社会の持続的な発展に寄与するとともに、当社の持続的成長及び中長期的な企業価値向上を目指してまいります。また、製薬企業としての社会的使命及び責任を深く自覚し、高い倫理観のもと法令等の遵守を徹底するほか、コーポレート・ガバナンスの充実を図り、株主をはじめとするステークホルダーの皆さまとの信頼関係の強化に努めてまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループでは、2023年3月期から2026年3月期までの中期経営計画において、経営指標として売上高および営業利益に係る目標値を設定していました。
当該中期経営計画においては、重点施策のひとつとして、米国における腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603の承認取得及び上市を掲げておりましたが、これを達成するに至りませんでした。
今後の経営方針については、本剤の審査結果の影響を受けることから、当該結果の取得後に改めて検討を進める方針としています。
なお、短期的な指標として、2027年3月期の業績予想は以下のとおりとしています。
| 2027年3月期業績予想 | |
| 売上高 | 41,850百万円 |
| 営業利益 | 2,050百万円 |
| 経常利益 | 4,200百万円 |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 2,250百万円 |
(3)経営環境及び中長期的な経営戦略と対処すべき課題
≪経営環境≫
医薬品産業を取り巻く経営環境は、国内薬価制度の抜本改革をはじめとした医療費抑制策の進展や、治療選択肢の多様化等に伴う企業間競争の激化に加え、新薬開発の難易度が高まるなか研究開発コストが増大するなど、極めて厳しい状況が継続しています。当社が持続的に成長軌道を描くためには、このように環境変化が激しい時代への柔軟な対応が必要となります。また、社会の持続的発展と企業価値向上に向け、サステナビリティ推進をはじめとした社会的責任を果たすことの重要性が高まり、それらへの対応が急務となっています。
≪直近の市場環境≫
当社の主力製品である関節機能改善剤の国内市場は、高齢者人口が増加傾向にあるものの、注射剤以外の外用薬や内服薬の処方拡大により数量ベースでは横ばいで推移しており、金額ベースでは薬価引き下げの影響を受けて縮小傾向にあります。そのような状況の中、国内市場において当社製品は高いシェアを獲得しており、需要が高い状況を維持しています。
海外の主力市場の一つである米国市場については、高齢者人口の増加を背景に緩やかな拡大傾向にあります。しかしながら、政府の政策による医薬品業界への影響は依然として不透明な状況となっており、販売提携先とも連携を取りながら動向を注視しています。
中国市場については、米国と同じく高齢者人口の増加により緩やかな拡大傾向にあるものの、政府や省による集中購買が拡大し、価格競争が激化しています。
≪中期経営計画(2023年3月期~2026年3月期)の概要≫
Ⅰ. 目指すべき姿
当社は、本中期経営計画期間である2023年3月期からの4ヵ年を「成長を実現する期間」として定めています。前中期経営計画期間に強化した基盤をもとに、各重点施策を推し進めることで、持続的に成長軌道を描くための実力を養い、最終年度には過去最高の業績達成を目指します。
Ⅱ. 重点施策
当社が持続的に成長軌道を描くための実力を養うべく、次の5つの重点施策に取り組みます。
① 腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603の製品価値最大化
腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603の米国における承認取得及び上市を実現するために、カナダに設立したセイカガク ノース アメリカ コーポレーションを最大限に活用し迅速かつ確実な承認申請、審査対応を行います。また、販売提携先との密な連携のもと販売準備を進め、医療現場への早期浸透による製品価値の最大化を図ります。
② 独自の創薬技術を活かした研究開発の加速
当社が保有するGAG*に関する基盤技術を応用展開することで、既存領域における新規開発テーマや新規疾患領域を含む革新的な研究テーマの創出に注力し、アンメットメディカルニーズを中心とした患者の方々が真に必要とする新薬の創製を目指します。また、これらの成功確度を高め、早期進捗を図るために各種アライアンスを推進します。同時に既存パイプラインを着実に進展させ、腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603の米国における承認取得及び上市、ドライアイ治療剤SI-614の米国第Ⅲ相臨床試験の終了、癒着防止材SI-449の国内承認取得及び米国での臨床試験開始を目指します。
*GAG:グリコサミノグリカン。複合糖質の構成成分のひとつ(ヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸等)。
③ 関節機能改善剤の事業価値維持・向上
主力である国内関節機能改善剤市場において当社製品のプレゼンスを強化し、経営を支える基盤製品としての事業性の維持・向上に努めます。国内医薬品は薬価引き下げの影響を大きく受けることから、原価構造の改善が不可欠であり、安定供給継続のためにも製品資材の仕様変更や製造工程の効率化等をさらに進めてまいります。また、関節機能改善剤ジョイクルの安全性情報等の収集及び提供を継続するとともに、臨床研究の結果をもとに適切な処方への貢献を目指してまいります。
④ グローバル生産体制の構築
海外子会社ダルトン ケミカル ラボラトリーズ インク(カナダ、トロント)と当社高萩工場(日本、茨城県)の2拠点化を図ることで、適切かつ効率的な製造体制のもと安定供給のさらなる強化を図ります。
⑤ 遺伝子組換え技術によるLAL事業の拡大
海外子会社アソシエーツ オブ ケープ コッド インクとの連携のもと、遺伝子組換えエンドトキシン測定用試薬パイロスマート ネクストジェンを活用し信頼できる科学的データの蓄積や遺伝子組換え技術を活かした新たな診断薬の開発促進に取り組むとともに、関連企業との協働による測定機器やソフトウエアの開発・改良などを行うことで、新たな価値の創造を目指します。
また、上記の5つの重点施策を実行するうえで、社員エンゲージメントの向上や組織強化・人材育成は経営の基盤となる重要な要素となります。事業の中核である人材の育成や、成長を促進する環境を醸成するための投資を積極化させ、持続的な成長を実現するための基盤強化・改善を図っていきます。
Ⅲ.サステナビリティ
当社は、社会の持続的発展と企業価値向上に向けて、優先的に取り組むべき重要課題として6つのマテリアリティを特定しています。中期経営計画の重点施策のベースとなるこれらのマテリアリティに注力し、医療関連事業の発展に加え、ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みを強化するとともに、サプライチェーンやステークホルダーの皆さまとの十分なコミュニケーションによる、社会的課題の解決を目指します。
≪中期経営計画の総括(2023年3月期~2026年3月期)≫
本中期経営計画を「成長を実現する期間」と定め、持続的に成長軌道を描くための実力を養い、過去最高の業績達成を目指しました。
結果として、数値目標(売上高400億円、営業利益70億円)は、期間中に腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603の米国における承認取得及び上市を達成できなかったことが大きく影響し、未達となりました。しかしながら、研究開発や既存製品の安定供給維持に向けた体制構築、グローバル生産体制の構築、及びLAL事業の拡大について着実に進展させることができました。
今後も世界中の患者の方々の健康で心豊かな生活の質の向上に貢献するとともに、企業価値の更なる向上にむけて取り組みを加速してまいります。
本中期経営計画での重点施策に関する結果と実施内容は以下のとおりです。
① 腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603の製品価値最大化
2024年3月に米国食品医薬品局(FDA)へ承認申請を行ったものの、2025年3月に審査完了報告通知を受領し、承認の取得には至りませんでした。その後、FDAからの追加の指摘事項への対応を完了し、2026年3月に再度FDAへ申請を行いました。
<主な実施内容>・米国第Ⅲ相追加臨床試験の主要評価項目において、統計学的に有意な改善結果を示すトップライン結果を取得(2023年5月)
・FDAへの生物製剤承認申請が受理される(2024年5月)
・FDAによる審査行程のひとつである公聴会で本剤のリスク&ベネフィットについて議論され、承認への支持を多数得る(2025年1月)
・FDAより審査完了報告通知を受領。有効性及び安全性を含む臨床試験結果等に関連した懸念は表明されなかったものの、製造施設及び原薬・製剤の管理について追加の指摘事項が示される(2025年3月)
・指摘事項への対応を完了し、FDAへ生物製剤承認の再申請を実施(2026年3月)
② 独自の創薬技術を活かした研究開発の加速
大きな目標としていた腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603や癒着防止材SI-449の承認取得や上市までには至らなかったものの、承認申請まで着実に達成しました。その他、革新的な研究テーマの創出に着実に取り組むとともに、新たなパイプラインを追加しました。
<主な実施内容>1)癒着防止材SI-449
・国内ピボタル試験の主要評価項目及び副次評価項目において、統計学的に有意な改善効果を示す結果を
取得(2023年7月)
・日本において医療機器製造販売承認の申請を実施(2025年8月)
2)内視鏡用粘膜下注入材MucoUpⓇ
・中国において承認を取得(2024年9月)
3)変形性関節症治療剤Gel-One
・日本において第Ⅲ相臨床試験(膝・股関節)を開始し、新たにパイプラインに追加(2025年2月)
4)ドライアイ治療剤SI-614
・米国における第Ⅲ相臨床試験は完了したものの、主要評価項目において統計学的に有意な改善効果が認められなかったことから、開発を中止
③ 関節機能改善剤の事業価値維持・向上
国内で高いシェアを持つアルツの安定供給維持や既存製品の製品資材の仕様変更、製造工程の効率化に向けて取り組みました。未達事項はあるものの、一定の成果を上げることができました。
<主な実施内容>・人員増強や設備メンテナンスによりアルツの増産体制を構築
・原価構造改善を目的とした製品資材の変更を実施
・関節機能改善剤ジョイクルの安全性情報等の収集及び提供の体制維持
④ グローバル生産体制の構築
製造拠点の2拠点化に向けた体制構築について、想定より時間を要したものの、着実な進展が見られました。
<主な実施内容>・海外子会社ダルトン ケミカル ラボラトリーズ インク(DCL社)への設備投資の実施
・日本からDCL社への製造技術移転の推進
⑤ 遺伝子組換え技術によるLAL事業の拡大
海外子会社アソシエーツ オブ ケープ コッド インクと連携し、エンドトキシン測定用試薬やグルカン測定体外診断用医薬品の展開の加速により、LAL事業の拡大を達成しました。
<主な実施内容>・遺伝子組換えエンドトキシン測定用試薬パイロスマート ネクストジェン(PSNG)に関する科学データの論文化や学会発表などによるプレゼンス向上
・営業活動によるPSNGの市場への浸透
・グルカン測定体外診断用医薬品の販売国拡大及び病院市場の新規開拓
これらの重点施策に加え、人材戦略に関わる課題への対応や人的資本経営を推進するため、持続的な成長を支える経営基盤の強化にも取り組みました。具体的には、組織力の一層の向上を図るべく、事業環境の変化に対応した組織編制の見直しを行うとともに、将来を見据えた人材育成を推進しました。また、当社の行動指針である「心と情報の通い合う、個性を活かす明るい社風の確立を推進する」取組みの一環として、社員一人ひとりが能力を最大限発揮できる環境づくりを目的とした、タウンホールミーティングを開催しました。併せて、これらの施策の浸透度や課題を把握するための一手段として、社員エンゲージメントの状況を確認する目的でエンゲージメントサーベイ等を実施しました。
また、サステナビリティ活動についても重要なテーマとして取り組み、2021年に策定したサステナビリティ基本方針及び6つのマテリアリティを基軸とした実効的な施策の立案・実施や、子会社への適用範囲拡大等を行ってまいりました。これらの取り組みに関しては、外部評価機関より以下の評価を受け、当社ウェブサイトに公表しております。
・EcoVadis評価:コミットメント・バッジ獲得
・CDP(気候変動分野):Bスコア
・改正省エネ法に基づく事業者クラス分け評価:Sクラス
≪今後の方針について≫
前述の中期経営計画における重点施策への取り組みでは一定の成果が得られたものの、米国における腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603の承認取得及び上市を含め、未達成となった項目もあることから、これらについて継続して取り組む方針です。