有価証券報告書-第26期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)

【提出】
2016/06/27 14:53
【資料】
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【項目】
56項目

業績等の概要

(1)業績
当社グループは、日本に軸足を置いた国際的なバイオ企業になることをビジョンに掲げ、新薬の提供を通じて世界中の人々の健康・生活の質の向上に寄与することを目指し、グローバルな研究開発活動やライセンス活動などの事業展開を推進しています。
当社グループのビジネスモデルの根幹を担うのは、複数の創薬基盤技術を活用した画期的な新薬の研究開発です。
まず、子会社であるHeptares Therapeutics Ltd.(以下「Heptares社」)は、熱力学的に安定化したGPCRを作成させることができる世界初となるStaRⓇ技術を活用したGPCR構造ベース創薬技術を有しています。GPCRは、細胞膜に埋まっているタンパク質であり、細胞外から細胞内へ生化学的情報伝達の役割を担い、味覚、視覚、嗅覚、行動、自律神経系機能、免疫機能等、様々な生理学的及び生物学的反応に関与しているため、GPCRは、薬物治療上、最も重要な標的分子であるとされています。しかし、細胞膜から抽出されると分子構造が不安定となるためその構造が明らかとなっていないものが多く、立体構造に基づく創薬研究は難しいとされてきました。StaRⓇ技術の応用によりGPCRの構造解析が進み、これまで難しいとされてきた分子構造設計に基づいた強力かつ選択性の高い候補物質の創製が可能となります。Heptares社は神経疾患領域、がん免疫から代謝疾患、希少疾患領域まで充実したパイプラインを有しており、研究開発において複数のパイプラインの開発を着実に推進しています。同時に、基盤技術を用いた提携、自社パイプラインの導出に積極的に取り組んでいます。当期においては、AstraZeneca UK Limited(以下「AstraZeneca社」)、Teva Pharmaceutical Industries Ltd.(以下「Teva社」)等大手製薬企業へパイプライン(開発品)を導出、また同社とPfizer Inc.(以下「Pfizer社」)との新規医薬品に係る戦略的な提携等、大きな成果を得ることができました。
次に、子会社アクティバスファーマ株式会社は、不純物の混入を最小限に防ぎつつ、難溶性の医薬品原料を50-200nm(ナノメートル)レベルの結晶粒子径に粉砕することが可能であるナノ粉砕化技術(APNT:Activus Pure Nano-particle Technology)を活用し、これまで開発が困難、不可能であった難溶性薬物の注射、点眼、吸入製剤等への応用に取り組んでいます。
また、子会社JITSUBO株式会社は、ペプチド合成を高効率かつ低コストで実現可能とする革新的な液相合成法技術であるMolecular Hiving™、ペプチドの立体構造を改変することにより有効性や安全性の向上、更に薬剤の安定性の改善にも役立つとされるペプチド修飾の新たな要素技術であるPeptune™を有しています。
既にNovartis International AG(以下「ノバルティス社」)に導出している慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療薬である「シーブリⓇ(NVA237)」及び「ウルティブロⓇ(QVA149)」については、当期の販売が順調に推移したことにより、前期を上回るロイヤリティ収入を計上し、世界最大の医薬品市場である米国において、両剤が承認されることに伴うマイルストン収入も受領しました。加えて、NVA237を含有する新規3剤配合型吸入喘息薬QVM149の第Ⅲ相臨床試験が開始され、これによりマイルストン収入を受領しました。
これらの結果、当連結会計年度の経営成績は、売上収益8,151百万円、営業利益1,075百万円、当期損益△1,547百万円となりました。
当連結会計年度における、事業セグメント別の業績は次のとおりです。当社は国内医薬品事業・海外医薬品事業にセグメントを区分しております。
① 国内医薬事業
当期における国内医薬事業の売上収益は197百万円となりました。これは前連結会計年度に比べてノルレボ錠に関するロイヤリティが増加したことによるものです。また営業損益は192百万円減少し、537百万円の営業損失となりました。
国内医薬事業に係る製品及び主要開発品の主な進捗は、SO-1105(適応:口腔咽頭カンジダ症)の有効性及び安全性を検証する第Ⅲ相臨床試験を実施しています。販売については既に富士フイルムファーマ株式会社と独占販売契約を締結しています。
その他、ナノ粉砕化技術(APNT:Activus Pure Nano-particle Technology)を用いた開発品は、APP13002 (適応:感染性眼疾患)、APP13007 (適応:炎症性眼疾患) があり、現在、前臨床試験を実施しています。Molecular Hiving™:新規ペプチド液相合成法を用いた開発品は、後発品であるJIT-2001(適応:循環器系疾患)及びJIT-1007(適応:希少性疾患)の前臨床試験を実施しています。
② 海外医薬事業
当期おける海外医薬事業の売上収益は、前連結会計年度に比べ4,464百万円増加し、7,954百万円となりました。前連結会計年度との差は、主にシーブリⓇ(NVA237)及びウルティブロⓇ(QVA149)のマイルストンの発生とロイヤリティ収入が増加したこと、Heptares社のパイプラインを導出したことに伴う一時金を受領したことによるものです。また営業利益は、前連結会計年度に比べ698百万円減少し、1,665百万円となりました。
海外医薬事業の主な進捗は、次のとおりです。
■QVA149 適応:慢性閉塞性肺疾患(COPD)ノバルティス社により上市済み(欧州・日本)
QVA149(一般名:グリコピロニウム臭化物/インダカテロールマレイン酸塩、製品名:UltibroⓇ BreezhalerⓇ(欧州)、ウルティブロⓇ吸入用カプセル(日本))は、1日1回吸入のLAMA(グリコピロニウム臭化物)とLABA(インダカテロールマレイン酸塩)の固定用量の配合剤であり、慢性閉塞性肺疾患(以下、「COPD」)の諸症状を緩和するための気管支拡張剤です。ウルティブロⓇは、欧州、日本、カナダ、メキシコ、オーストラリア等を含む80ヵ国以上において1日1回吸入のLAMA/LABA配合剤として初めて承認され、現在は、日本、ドイツ、カナダを含40ヵ国以上において販売されております。また、米国においては、QVA149(グリコピロニウム15.6μg/インダカテロール27.5μg)は2015年10月に慢性気管支炎や肺気腫を含むCOPDに基づく気道閉塞性障害の新規1日2回吸入の長期維持療法として、2015年10月にUtibron™NeohalerⓇの製品名で承認されました。
■NVA237 適応:慢性閉塞性肺疾患(COPD)ノバルティス社により上市済み(欧州・日本)
NVA237(一般名:グリコピロニウム臭化物、製品名:SeebriⓇ BreezhalerⓇ(欧州)、シーブリⓇ吸入用カプセル50μg(日本))は、1日1回吸入の長時間作用性抗コリン薬(以下、LAMA)であり、COPDの諸症状を緩和するための気管支拡張剤です。当社とベクチュラ・グループは2005年4月にノバルティス社に全世界の独占的開発・販売権を導出しております。現在は、欧州、日本、カナダ、南米、アジア、オーストラリア、中東を含む90ヵ国以上において承認されています。また、米国におけるNVA237(グリコピロニウム15.6μg)は、2015年10月に慢性気管支炎や肺気腫を含むCOPDに基づく気道閉塞性障害の新規1日2回吸入の長期維持療法として、2015年10月にSeebri™ NeohalerⓇの製品名で承認されました。
当社はノバルティス社との契約に基づき、両剤の全世界の売上に対する一定率のロイヤリティ収入を受領できることになっています。当期においては、米国における両剤の承認を契機に、ノバルティス社より22.5百万ドルのマイルストン収入も受領しました。
※「ウルティブロⓇ」、「シーブリⓇ」、「ブリーズヘラーⓇ」及び「NeohalerⓇ」はノバルティス社の登録商標です。
「UtibronTM」及び「SeebriTM」はノバルティス社の商標です。
■QVM149(適応:喘息)
2015年12月、当社NVA237(グリコピロニウム臭化物)の導出先であるノバルティス社が、NVA237を含有する新規3剤配合型吸入喘息治療薬QVM149の第Ⅲ相臨床試験を開始したことを発表しました。ノバルティス社とのライセンス契約に基づき、当社は2015年12月に本臨床試験における最初の被験者への投与を契機に、3.75百万ドルのマイルストン収入を受領しました。
ノバルティス社はQVM149の承認申請を2018年に予定しています。
■StaRⓇ技術を活用したGPCR構造ベース創薬
当連結会計年度の主な進捗は、次のとおりです。
・AstraZeneca社とのがん免疫療法開発に関する提携契約の締結
Heptares社は、2015年8月に英国AstraZeneca社とがん免疫療法開発に関する提携契約を締結しました。この提携により、Heptares社は10百万ドルの契約一時金を受領し、加えて、早期達成が見込まれる前臨床研究結果及び臨床試験開始に応じて相当額のマイルストン収入を受領することになっています。さらに、予め定められた開発及び販売の目標の達成に応じて、総額500百万ドルを超える開発及び販売マイルストンや、販売高に応じた最大二桁比率の段階的ロイヤリティ収入を受領することが可能となります。
・Teva社との研究開発契約締結
Heptares社とTeva社は、2015年11月に、Heptares社が創出した新規低分子CGRP受容体拮抗薬について、片頭痛治療を目指した独占的開発・製造販売権に係る研究開発契約を締結いたしました。この契約により、Heptares社は契約一時金10百万ドルを受領しました。研究開発支援金さらに最大400百万ドルの開発・販売マイルストン収入を受領することが可能となります。また、本提携によりHeptares社は、販売高に応じたロイヤリティ収入を受領することが可能となります。
・Pfizer社との共同研究開発契約締結
Heptares社はPfizer社は、2015年11月に、複数の領域における最大10種のGPCRターゲットに関する新規医薬品の戦略的提携契約を締結しました。本提携のもとで、Heptares社はPfizer社が選択した複数のGPCRに対して、独自のGPCR構造ベース創薬プラットフォームを用いて、固定化された受容体(StaR®タンパク質)や高解像度の結晶構造情報、その他新薬の開発をサポートする技術をPfizer社に提供、Pfizer社は本提携から生み出された全てのターゲット(低分子およびStaR®抗原をもととするバイオ医薬品)に関して開発・製造販売の責任を負い、独占的開発・製造販売権を保有します。本契約により、Heptares 社は今後、開発、申請・承認、商業化に伴い、各ターゲット毎に最大189百万ドルのマイルストン収入を受領できる条件となっております。さらに、商業化された全ての製品について売上高に応じた段階的ロイヤリティ収入を受け取る契約となっています。
(2)キャッシュ・フロー
キャッシュ・フローについては、「第一部 企業情報、第2 事業の状況、7 財政状態、経営成績及びキャッ
シュ・フローの状況の分析、(3)財政状態に関する分析」に記載のとおりです。
(3)IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項
(開発費)
日本基準において費用処理している一部の開発費用について、IFRSにおいては資産計上要件を満たすことから、無形資産に計上しております。この影響により、当連結会計年度にて、IFRSでは日本基準に比べ研究開発費が199百万円減少し、同額の無形資産が増加しております。
(のれんの償却停止)
日本基準においてのれんは定額法により償却を行っていましたが、IFRSにおいてはのれんの償却は行わず、毎期減損テストを実施することが要求されます。この影響により、当連結会計年度にて、IFRSでは日本基準に比べ販売費及び一般管理費が1,814百万円減少しています。