有価証券報告書-第59期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/26 14:49
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業績等の概要

(1)業績
当期における国内医薬品業界は、平成28年4月に実施された薬価改定(業界平均7.8%、杏林製薬6%台)等の影響により市場は低調に推移しました。また、当社グループにおきましては、主力製品の特許満了への対応など、これまでにない企業行動が必要な局面を迎えました。
さらに、平成28年12月に策定された薬価制度の抜本改革に向けた基本方針のもと、薬価制度の改革など具体的な検討がスタートし、将来的に厳しい事業環境を予想させる一方、イノベーション評価の加速化を図る取り組みについても議論され、研究開発支援を期待させる動向もありました。
ヘルスケア事業を取り巻く環境は、景気は緩やかに持ち直したものの、個人消費は横ばいにとどまり、依然、不透明感を払拭できない状況が継続しました。
このような中で、当社グループは、長期ビジョン「HOPE100」の実現に向けて、平成28年度を初年度とする中期経営計画「HOPE100-ステージ2-(平成28年度~平成31年度)」のもと、医療用医薬品事業では持続成長を可能とする医薬事業モデルの進化に取り組み、ヘルスケア事業※1では核となる事業作りを推進し、成果目標の達成とステークホルダーの皆様からの支持・評価の向上に努めました。
※1:スキンケア、環境衛生、一般用医薬品他
当連結会計年度における売上高につきましては、薬価改定の影響、長期収載品の処方数量減により新医薬品(国内)の売り上げは減少しましたが、モンテルカスト(キプレス)のオーソライズド・ジェネリック(以下、AG)発売等により後発医薬品の売り上げは増加し、国内における医療用医薬品事業の売り上げは前年を上回る実績で推移しました。他方、前年に計上したライセンス契約に関わる一時金収入の反動減を要因として海外における新医薬品の売り上げは減少し、全体として売り上げは前年度を下回り、1,153億73百万円と前年同期比41億09百万円(前年同期比3.4%減)の減収となりました。
利益面では、薬価改定及び導出品の一時金収入の減少等により売上総利益は前年同期に対して75億95百万円減となりました。また、販売費及び一般管理費が前年同期に対して16億27百万円増加(内、研究開発費5億49百万円増)したことから、営業利益は、104億13百万円と前年同期比92億22百万円(前年同期比47.0%減)の減益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、導出品(ガチフロキサシン点眼液)に関する米国反トラスト法違反を理由とした訴訟の和解関連費用約10億円を特別損失として計上したことから73億05百万円(前年同期比46.4%減)となりました。
当連結会計年度の業績
売上高 1,153億73百万円(前年同期比 3.4%減)
営業利益 104億13百万円(前年同期比 47.0%減)
経常利益 108億74百万円(前年同期比 45.6%減)
親会社株主に帰属する
当期純利益 73億05百万円(前年同期比 46.4%減)
セグメントごとの業績は、次のとおりです。
平成29年3月期第1四半期連結累計期間より、当社グループは報告セグメントの区分を変更しております。変更後の「医療用医薬品事業」の内容は新医薬品、後発医薬品、「ヘルスケア事業」はスキンケア・環境衛生・一般用医薬品他で構成しています。以下の前年同期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
①医療用医薬品事業
[新医薬品(国内)]
主力製品では、喘息治療配合剤「フルティフォーム」の売り上げが前年同期に対して大幅に増加しました。他方、気管支喘息・アレルギー性鼻炎治療剤「キプレス」につきましては、特許満了を迎え売り上げは減少しました。また、長期収載品である潰瘍性大腸炎・クローン病治療剤「ペンタサ」、気道粘液調整・粘膜正常化剤「ムコダイン」も前年の売り上げを下回りました。
杏林製薬㈱は、特定領域(呼吸器科・耳鼻科・泌尿器科)の医師、医療機関に営業活動を集中するFC(フランチャイズカスタマー)戦略の進化、エリアマネジメントを軸とした営業戦略の実行という方針のもと、急激な事業環境の変化に対応しつつ、既存の主力製品については普及の最大化に、新製品については製品特性の早期浸透に取り組みました。本年度は、アレルギー性疾患治療剤「デザレックス錠5mg」を平成28年11月に新発売し、耳鼻科領域のプレゼンス向上に努めました。なお、杏林製薬㈱は、同薬剤について科研製薬㈱と皮膚科の医師・医療機関を対象とするコ・プロモーション(共同販促)契約を締結し、両社で早期普及に取り組みました。
また、MSD㈱が製造販売している定量噴霧式アレルギー性鼻炎治療剤「ナゾネックス点鼻液50㎍」について、杏林製薬㈱は同社とコ・プロモーション契約を締結し、平成28年11月よりプロモーション活動を開始しました。当社グループは、積極的なライセンス活動を展開することにより、重点領域(呼吸器科・耳鼻科・泌尿器科)での製品ラインナップ拡充を図り、引き続き同領域での高いプレゼンス確立を目指します。
この結果、新医薬品(国内)の売上高は837億77百万円(前年同期比9.9%減)となりました。
[新医薬品(海外)]
前年の12月に計上した米国ブリストル・マイヤーズスクイブ社とのライセンス契約に関わる一時金収入の反動減、広範囲抗菌点眼剤「ガチフロキサシン(導出先:米国アラガン社)」のロイヤリティ収入の減少により、売上高は7億64百万円(前年同期比86.3%減)となりました。
[後発医薬品]
杏林製薬㈱の主力製品である気管支喘息・アレルギー性鼻炎治療剤「キプレス」の特許満了に対応すべく、平成28年9月にキョーリン リメディオ㈱より「モンテルカスト錠10mg・5mg「KM」」(杏林製薬㈱及びMSD㈱が販売している「キプレス」及び「シングレア」のAG)を発売し、その売り上げが大幅な増加要因となりました。また、政府が掲げる後発医薬品に係る数量シェア80%という目標の実現に向け、後発医薬品使用促進策が実施される中、同剤以外の売り上げも伸長し、後発医薬品全体の売上高は250億24百万円(前年同期比62.0%増)となりました。
以上の結果、当セグメントの売上高は1,095億66百万円(前年同期比3.9%減)となり、セグメント利益は101億06百万円(前年同期比48.5%減)となりました。
②ヘルスケア事業
スキンケア製品の売り上げは前年を下回りましたが、環境衛生・一般用医薬品他の売り上げは、主要製品である環境除菌・洗浄剤「ルビスタ」、哺乳びん・乳首・器具等の消毒剤「ミルトン」の伸長、新製品(一般用医薬品等)の発売により増加しました。
環境衛生に関わる事業の強化策として、杏林製薬㈱は日本エア・リキード㈱と手指衛生製品群の日本市場における販売業務提携に関する契約を平成29年1月に締結し、同3月より製品の販売を開始いたしました。ヘルスケア事業の中で核を作るべく、今後とも環境衛生における製品ラインアップ拡充に努めます。
この結果、当セグメントの売上高は58億07百万円(前年同期比5.3%増)となり、セグメント損失は1百万円(前年同期はセグメント損失1億87百万円)となりました。
なお、スキンケア製品を主に取り扱うドクタープログラム㈱については、同社の全株式を大正製薬㈱に譲渡することにいたしました。B to Cに強みを持つ企業の傘下でビジネスを進めることが、より同社事業の発展に資するとの判断によるもので、平成29年4月1日に全株式を譲渡いたしました。
(2)キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、163億86百万円の収入であり、これは主に税金等調整前当期純利益
97億16百万円、減価償却費36億19百万円、退職給付に係る資産の増加13億26百万円、売上債権の減少21億02百万円、たな卸資産の減少32億86百万円、未払消費税等の増加9億45百万円、法人税等の支払額37億69百万円によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、131億42百万円の支出で、これは主に有形固定資産の取得による支出22億08百万円、投資有価証券の取得による支出166億00百万円、投資有価証券の売却及び償還による収入64億03百万円によるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、57億21百万円の支出で、これは主に長期借入れによる収入9億
16百万円、長期借入金の返済による支出11億53百万円、配当金の支払額43億22百万円によるものです。
この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末と比較して25億43百万円減少し、424億99百万円となりました。