有価証券報告書-第58期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)

【提出】
2016/06/27 14:25
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105項目

業績等の概要

(1)業績
当期における国内医薬品業界は、医療費・薬剤費の抑制策が継続的に実施される中、1桁台後半の市場成長を示しましたが、「医薬品産業強化総合戦略」が厚生労働省より公表されるとともに社会保障費の歳出抑制を強化する平成28年度薬価制度改革等が固まり、市場構造の大幅な変化を予感させる厳しい事業環境となりました。
ヘルスケア事業を取り巻く環境は、景気が横ばい圏内にとどまり、個人消費の動きは弱い状況で推移しました。
こうした環境の中で、当社グループは、中期経営計画「HOPE100-ステージ1-(平成22年度~平成27年度)」、(以下『当中計』と略す)の最終年度として、経営方針に「ファーマ・コンプレックス・モデル(PCモデル:新たな医薬事業モデル)への取り組み促進」「ヘルスケア事業の成長加速化」を掲げ、様々な環境変化に対応できる事業戦略の再構築と新たな核となる事業の成長に取り組み、持続成長とステークホルダーの皆様からの支持・評価の向上に努めました。
当連結会計年度における売上高は、当中計の成果目標を下回ったものの、新医薬品の売上が前年を大幅に上回
り、過去最高の1,194億83百万円と前年同期比63億62百万円(前年同期比5.6%増)の増収になりました。
利益面では、主力製品の増収と契約一時金収入の計上等により売上総利益が前年同期に対して55億99百万円増加しました。一方、販売費及び一般管理費は増加(7億00百万円増加、うち研究開発費は前年同期比4億95百万円減)しましたが、営業利益は、前年同期比48億98百万円の増益となり過去最高の196億36百万円(前年同期比33.2%増)を達成し、当中計の成果目標に近い利益額を獲得しました。経常利益は199億95百万円(前年同期比29.1%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、杏林製薬㈱の旧東京支店ビル(東京都新宿区)の土地・建物の譲渡益約18億円を含む約19億円を特別利益に計上し、同社の岡谷工場閉鎖に関わる損失約27億円を含む約31億円を特別損失に計上したことから136億39百万円(前年同期比13.1%増)となりました。
当連結会計年度の業績
売上高 1,194億83百万円(前年同期比 5.6%増)
営業利益 196億36百万円(前年同期比 33.2%増)
経常利益 199億95百万円(前年同期比 29.1%増)
親会社株主に帰属する
当期純利益 136億39百万円(前年同期比 13.1%増)
セグメントごとの業績は、次のとおりであります。
①医薬品事業
[国内新医薬品]
杏林製薬㈱では、特定領域(呼吸器科・耳鼻科・泌尿器科)の医師、医療機関に営業活動を集中するFC(フランチャイズカスタマー)戦略を推進しており、本年度は呼吸器領域において、喘息治療配合剤「フルティフォー
ム」や気管支喘息・アレルギー性鼻炎治療剤「キプレス」等、主力製品の普及の最大化に努めるとともに、COPD(慢性閉塞性肺疾患)治療剤「エクリラ ジェヌエア」を平成27年5月に新発売し、同領域でのプレゼンス向上に努めました。また新しい剤型として「キプレスOD錠(口腔内崩壊錠)」及び潰瘍性大腸炎・クローン病治療剤「ペンタサ顆粒94%」を同12月に新発売し、医薬品事業の売上拡大を図りました。
主力製品では、「フルティフォーム」の売上が前年同期に対して36億円増加したほか、「キプレス」、過活動膀胱治療剤「ウリトス」も前年を上回る実績で推移しました。他方、長期収載品である「ペンタサ」、気道粘液調整・粘膜正常化剤「ムコダイン」は前年の売上を下回りました。これらの結果、売上高は926億95百万円(前年同期比1.8%増)となりました。
生産部門では、グループ新生産体制の構築(生産体制の全体最適化、ローコストオペレーション等)を推進しており、その一環として杏林製薬㈱岡谷工場の全ての生産機能を当社の子会社であるキョーリン製薬グループ工場㈱に移転し、平成28年9月(予定)に同工場を閉鎖することといたしました。
[海外新医薬品]
広範囲抗菌点眼剤「ガチフロキサシン(導出先:米国アラガン社)」に関わる収入が前年を上回り、また杏林製薬㈱が米国ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)社と「FPR2作動薬プログラム」に関するライセンス契約を締結し、契約一時金収入を売上に計上したことから、売上高は55億86百万円(前年同期比441.2%増)となりました。
[後発医薬品]
後発医薬品の使用促進策の浸透、オーソライズド・ジェネリック※1の発売等の影響により市場が拡大する中で、自社販売による売上は増加したものの、他社受託ビジネスの売上が減少し、売上高は154億65百万円(前年同期比0.1%減)となりました。
[一般用医薬品他]
主要製品である環境除菌・洗浄剤「ルビスタ」、哺乳びん・乳首・器具等の消毒剤「ミルトン」の伸長により、環境衛生に関わる売上が増加し、売上高は44億90百万円(前年同期比7.3%増)となりました。
この結果、当セグメントの売上高は1,182億38百万円(前年同期比5.8%増)となり、営業利益は194億99百万円(前年同期比33.8%増)となりました。
②ヘルスケア事業
[スキンケア]
個人消費の低迷、企業間競争の激化によりスキンケア製品を取り扱うドクタープログラム㈱の売上が前年を下回り、当セグメントの売上高は12億44百万円(前年同期比7.8%減)、営業損失は77百万円(前年同期は営業損失20百万円)となりました。
※1 : 製造販売承認を保有する企業より特許権等を許諾されたジェネリック医薬品
(2)キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、111億37百万円の収入であり、これは主に税金等調整前当期純利益
188億15百万円、減価償却費37億30百万円、工場閉鎖損失26億95百万円、固定資産除売却損益14億
67百万円、売上債権の増加12億88百万円、たな卸資産の増加17億36百万円、未払消費税等の減少14億
46百万円、法人税等の支払額45億04百万円によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、6億50百万円の収入で、これは主に有価証券の売却及び償還による収
入51億00百万円、有形固定資産の取得による支出68億12百万円、有形固定資産の売却による収入20億
66百万円、投資有価証券の取得による支出80億08百万円、投資有価証券の売却及び償還による収入83億
01百万円によるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、22億45百万円の支出で、これは主に長期借入れによる収入28億
53百万円、長期借入金の返済による支出7億64百万円、配当金の支払額38億76百万円によるものです。
この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末と比較して93億15百万円増加し、450億43百万円となりました。